北海道昆虫同好会ブログ

北海道昆虫同好会は北海道の昆虫を中心に近隣諸国および世界の昆虫を対象に活動しています。

激減する北海道特産のチョウ、リンゴシジミ始末記。

2024-07-03 15:19:15 | リンゴシジミ

 

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激減する北海道特産のチョウ、リンゴシジミ始末記。

 

 

北海道特産種のリンゴシジミ Strymonidia  pruni  jezoensis  、英名 Black hairstreak  。 国外ではイギリス、北欧、ウクライナからモンゴル、朝鮮半島、から日本に至る旧北区全体的に見られ るとされるが欧州では減少しつつありイギリスでは最希少種とされ、デンマークでは絶滅が確認されている。

 

 

 

北海道でも今や希少な種類と思われ、最近では特定の小規模な産地以外では滅多にお目にかからない蝶になってしまいました。

 

 

以下に示す大きな理由のため、北海道では毎年、絶滅産地ばかりが増えてゆく状況です。

 

 

 

 

しかし、理由もはっきりせず、急速に絶滅寸前状態に陥ったイシダシジミと比べると激減の理由は、はっきりしています。

 

 

 

かって原始の北海道ではリンゴシジミの主たる食樹は在来種のシュウリザクラ、またはエゾノウワミズザクラであったと思われます。

 

 

私が子供の頃はもっぱらエゾノウワミズザクラの群落をチラチラ飛ぶリンゴシジミが主体で、エゾノウワミズザクラの花を食べている終令幼虫を採集したりしていました。

 

 

 

エゾノウワミズザクラの群落は広い河川敷や湿地に多く、やがてこれらの場所は洪水対策で盛んに樹木が伐採されるようになって樹木の無い河川敷や、畑や、パークゴルフ場、運動公園などに姿を変えて行きます。この間、オホーツクではリンゴシジミはエゾノウワミズザクラの伐採に伴いみるみる姿を消して行きました。

 

 

明治の頃、北海道開拓に伴い、入植した多くの農家の庭にはスモモが植栽されて当時は貴重な食べ物でした。しかし殺虫剤散布で実を食害する虫たちを完全に処分しなければ、とても食べられるスモモの実は収穫できず、そのためスモモの樹とリンゴシジミを関連ずける発想は全くありませんでした。

 

 

ちなみにスモモ Prunus salicina  は中国などから日本にもたらされた外来種です。

 

 

 

平成の時代になり、河川敷などでエゾノウワミズザクラに依存するリンゴシジミが次々に消滅してゆく一方で、いつの頃からか離農した農家のスモモにリンゴシジミが発生していることが知られるようになりました。当初はにわかには信じられませんでしたが、離農して廃屋となった農家の庭のスモモに群れ飛ぶリンゴシジミを見てとても驚いた記憶があります。

 

 

 

離農した農家では庭に放置したスモモが消毒されることはなくなります。スモモは多くの昆虫類に利用されることとなり、リンゴシジミもエゾノウワミズザクラからスモモに食性転換することによって生き延びたのでした。

 

 

 

かっては道東、道北にしか記録がなかったリンゴシジミは離農農家の庭のスモモを利用することにより生き残り、かつ 札幌、道央方面に次々に分布を広げ、一時は多くの産地が知られていました。チョウ愛好家の間で御神木と大切にされていたリンゴシジミ発生スモモもありました。

 

 

 

このようにいわば里のチョウとも言えるリンゴシジミは日々変遷する自然環境に素早く適応しながら、したたかに世代をつないだかに見えました。

 

 

ところが現実はそう甘いものではありませんでした。

 

 

 

実を収穫することもなくなったスモモは、やがて一般の人たちの目から見ると、やたらと根を張りどんどん巨木化する無用の樹木になってしまったのです。

 

 

 

やがて畑作地に近い場所のスモモはジャガイモの病害虫がつくなどの理由で魔女狩りみたいに切り倒され始めます。

 

 

 

さらに北海道全域での大規模農地造成で邪魔になる離農廃屋とともに多くのスモモが伐採されました。

 

 

 

害虫や種々病原体の発生木となる可能性を警戒されて、植林地の近くや、人家や畑の近く、時にはラブホテルの前にあったスモモなどは蝶愛好家がネットを持ってウロウロするのを嫌って、すべて伐採されてしまいました。

 

 

 

オホーツクではスモモかがことごとく伐採されたために、近くに植栽された梅やアンズに食性転換し、ほそぼそと命脈をつないでいるリンゴシジミ個体群がいますが、彼らの運命はまさに風前のともしびといった状況です。

 

ウメについたリンゴシジミ幼虫。

 

スモモへの食性転換で一時、勢を盛り返したかに見えたリンゴシジミですが、一時的な発生木となっていたスモモの多くが伐採され、彼らにとってはまことに住みにくい時代になったものです。

 

 

 

 

私の実家のエゾノウワミズザクラでは10年以上にわたってリンゴシジミが発生していましたが、私が北見市を離れてから、母が庭木にヤマボウシを植えるためにこのエゾノウワミズザクラを切り倒してしまいリンゴシジミは消えました。

 

 

 

どう見ても、今や風前の灯の希少種で、デンマークのように絶滅を待つしかない状態のリンゴシジミですが、スモモを利用することにより復活させることは比較的容易と考えています。日本蝶類○○会、○○省など従来採集禁止種を増やすしか脳のなかった方々も含め、本気でチョウ類の絶滅をなんとかしたいと考えるなら今が潮時かもしれません。イギリスではちょっと苦戦しているようですが。

 

 

 

ちなみに長年、チョウや渓流魚の盛衰をつぶさに見てきた私としては、あえてこれら自然の流れに介入する気持ちが日々薄くなって来てはいます。

 

 

閑話休題。

 

冷静に考えてみますと、私自身も酔心してきた生態系という概念には何やら人間のおごりたかぶりが垣間見られます。

 

今現在、おごりたかぶっている人間も宇宙人の視点からすると、地球の生態系をかたちずくっている、知能が高いようで実はとても低い性悪な生き物、の一種に過ぎないのではないかと気づき始めた昨今です。

 

 

このおごりたかぶりに気づくとき、真の生態系保全に向かえる可能性が出てくるのかもしれません。そのきっかけをつかめず人類はひたすら走っているように見えます。

 

 

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透明なリンゴシジミの蛹

2021-12-08 16:39:37 | リンゴシジミ

透明なリンゴシジミの蛹

 

近年、ラブホテル前のウワミズザクラ群落、離農した農家のスモモ、河川敷のシュウリザクラ群落など発生木が目の敵みたいに軒並み伐採され続けており、北海道ではリンゴシジミは激減の一途。

 

 

最近では滅多にお目にかからない蝶になってしまった。

 

 

理由もはっきりせず激減したイシダシジミなどと比べると激減の理由は、はっきりしている。

 

羽化直後のリンゴシジミ♀。

 

 

ただ、スモモやウワミズザクラがあるだけではリンゴシジミが見られないこともあり、何かプラスアルファの要因もあるかと思う。 

 

 

今回そのような話はさておいて、そんなリンゴシジミの透明な蛹を見る機会があったのでブログアップしておきます。

 

北見市の蝶友達の家に行った折、この透明な蛹が目にとまりデジカメで撮影させてもらった。

 

 

本当に綺麗な透明なリンゴシジミの蛹です。リンゴシジミは昔、結構飼育しましたが透明なリンゴシジミの蛹は初めて見た。 

 

 

実はこの蛹は今まさに蛹化したばかりのもので蛹化直後は、このように透明に見えるのです。 

 

 

時間が経過すると徐々に色が出てきて、鳥の糞そっくりのリンゴシジミの蛹になりました。

 

 

私はリンゴシジミの蛹化の瞬間を初めて見たということでした。

 

 

 

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銀紋リンゴシジミその後

2020-08-15 02:32:14 | リンゴシジミ
銀紋リンゴシジミその後



前回、銀紋リンゴシジミとして紹介した標本の展翅があがりましたので呈示します。














銀紋リンゴシジミについては 2002年に 川田光政氏が jezoensis に発表したものが知られている。jezoensis Vol. 28 P-8 リンゴシジミの異常型を採集。




川田光政氏。





また未発表データだが本会会員の M 氏は富良野市で1♂、 道北オホーツク海側の雄武で1♂を採集しているという。



このように同様のタイプの異常型 :  銀紋リンゴシジミ は比較的よく見られるタイプなのかも知れない。




近縁のカラスシジミ、ミヤマカラスシジミ、ひいては ゼフィルス類においても見られないだろうか。





発生機序については、遺伝的な異常や、終令幼虫時期の高温が関与しているのではとの意見があるが不明。 ちなみに2019年度5月下旬には30℃を越える猛暑日が続き、2019-5-26 北見市ではフェーン現象のため信じられない高温があり、北見市の我が家の庭では最高気温44℃を記録した。













採集データは 2♀♀とも 2019-6-11 北海道北見市 F 氏採集。

川田光政氏採集の個体と異なり翅表の橙色紋は広範に広がっている。







標本箱の横でF氏の愛猫君と。このにゃんこは決して標本箱の中をかき回すことはない由。





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春爛漫だがリンゴシジミ発生木のスモモが、また伐採された。

2020-05-31 15:36:25 | リンゴシジミ
春爛漫だがリンゴシジミ発生木のスモモが、また伐採された。



201X-5-19 (金)  晴れ 30度C 暑い


この日、朝早く起きて庭をみるとチューリップが満開であでやかに咲き誇っている。









快晴で気分が高揚してきたので、朝から蝶の撮影をかねて近郊の林道に入ってみた。



林道沿いにはヒトリシズカがたくさん花を付けていて エゾヤマザクラ、キタコブシの花が満開で、まさに春爛漫の風景であった。


エゾヤマザクラ。

















キタコブシ。








林道に何かがおちていると思って車を停めてみると、トガリネズミ君が転がっていた。



とくに外傷もなく何故こんなところで死んでいるのだろうか。毒物など摂取したのかも知れない。






林道沿いの渓流はとても渓相が良いところがありヤマベ二年魚が瀬尻にゆらゆら群れていた。











この渓流の下流域には大きな魚道付きダムがあるが、その魚道をサクラマスが遡上しているようであった。



しかし、この上流には魚道のない砂防ダムが連続しており、そこは以前調べたときは、魚住まずの渓流であった。




ヒトリシズカの大群落が見事でした。







種々の春の蝶の撮影など終わり、帰りに毎年リンゴシジミが発生していた離農農家跡地のスモモを見にいって唖然となった。



なんと、無惨にもすべて根本からチェンソーで切りたおされていた。




これで 長年リンゴシジミが発生していたスモモが、リンゴシジミもろともきれいさっぱり消えてしまったことになる。







リンゴシジミの主たる食樹であるシュウリザクラ、エゾノウワミズザクラ、スモモの伐採は、まれなことではなく、オホーツクでは近年あたかも目のカタキみたいに切られ続けている。


かって、どこの農家でも植えていたスモモは、いまや実を収穫することはなくなり、やたらと根を張る無用の樹木になった。


害虫や種々病原体の発生木と目されたり、人家や畑の近く、時にはラブホテルの前にあったスモモなどは蝶愛好家がネットを持ってウロウロするのを嫌って伐採された例もある。


かって常呂川や利別川の河川敷などではエゾノウワミズザクラの群落がひろがって、リンゴシジミも多かったが河川敷の樹木伐採でみんな切られてしまった。


最近ではリンゴシジミは植栽された梅などでほそぼそと命脈をつないでいる状況で、実際近年相次ぐスモモ伐採にともなって激減している。


リンゴシジミにとっては住みにくい時代になった。



シュウリザクラ。








常呂川沿いに生き残っているシュウリザクラ。 まだリンゴシジミいるかな。しかしすぐ近くはタマネギ畑で常に大量の農薬にさらされている。









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北見市でギンモンリンゴシジミの発見

2019-12-13 16:16:45 | リンゴシジミ
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北見市でギンモンリンゴシジミの発見


2019-6-11 (火)  晴れ


オホーツクではこのところ天候がパットせず、やっと晴れたものの、けっこう肌寒い。



F 氏から珍しい銀紋エゾリンゴ2♀♀を採集したぞとメールで写真が届いた。








この発生地のリンゴシジミとしてはやや時期が遅くこの2♀♀のみであった由。


採集データは  2♀♀  2019-6-11  北見市 某所   採集者 F氏。




図示したごとく 翅表は通常のリンゴシジミ♀の橙色紋発達型の色調斑紋を示すが、裏面をみるとびっくり 前・後翅亜外縁内側部分に銀紋列が出現した珍しい斑紋異常型でF氏や私は初めて見た。





近年、北見市界隈のリンゴシジミ発生地はいずれも孤立しており個体群間の交流は長年絶えた状態が続いており
遺伝的に血が濃くなったためにこのような異常型が出現したのかも知れない。



手持ちの図鑑などで画像を調べてみたがこんな異常型はみつけることができなかった。



この日、F氏たちは 道東方面にに ウスバシロチョウ×ヒメウスバシロチョウのF1 狙いで採集にいったようだがダメで、帰りにこのリンゴシジミのポイントを見にいったもよう。


どなたか、似たようなリンゴシジミ異常型を見た人はおられませんでしょうか?。





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