南米ペルー、アンデス4300mで高山蝶を採集。
その壱。
20XX-1-1 (土) 朝6時30分。 曇 たまに日が射す
正月元旦の早朝。もやーつとした怪しい空気がどんよりとよどむペルーの首都リマを出発、アンデス山脈越えに向かった。早朝で車はさすがに少ない。郊外のガススタンドで給油したらサービスにコカコーラ一本くれた。途中でスナック用にオレンジ色のバナナを買ったがフィリピンの高級オレンジバナナとくらべるとあまりおいしくなかった。
この時期は谷あいの川にもけっこう水があり山全体が緑で、乾期の荒涼とした風景とは別世界のようだ。
何となく昔の雰囲気がただようけっこう大きな街をいくつも通り過ぎた。
やがて人家は見えなくなりアンデスの山裾にとりついた。これからアンデス越えにかかる。
ペルーでは、このトヨタハイラックス4駆は圧倒的にパワフルな車だ。アンデスの山あいの道を息をつきながら登ってゆく車たちを、次々に抜き去ってひたすら登る。どんどん登り、またいつもの休憩地点のレストランで朝食。おなじみのチキンサンド。コーヒー。スープ。
リマを出て6時間、この間、実に色々なことがあったが今回はすべて省略。
ひたすら走りに走って、とうとう4800mの ラ・オヨラ ( La Oroya )を難なく超えた。いつの間にか、なんとなく息苦しくなっているのに気づく。
これは峠から、さらに続いている5000m級のアンデスの高山帯の風景をみあげたところです。万年雪がありそう。いつもは通り過ぎるだけの峠だが、今日はアンデスの高山蝶の採集をこころみる予定だ。
峠を越え、テンゴマリアへゆく道へ入りしばらく行くと今回の目的地の高山蝶採集ポイントに着いた。ここは初めてのところで、多少の草地もみられ、なにがしかの蝶がいるかも知れない。標高は4300m。半日もしないうちに一気に日本の富士山よりも高いところにきてしまい、高度順応もへったくれもない。
車を降りるとかなり気温が低く身震いするほど冷たい強風が吹いている。あいにく空は厚い雲におおわれて、強風で雲の流れがとても速い。
10歩も歩くと酸素が薄いため目の前が真っ暗になり、ぐらぐらめまいとともに呼吸困難になる。冷たい強風、曇天、とても寒い、自由にならない体。蝶の採集どころではない状況に見える。
かって北インド高山帯に高山蝶を採集に出かけた時、死の恐怖を十分に味わい、私の性格まで変えてしまった恐ろしい高山病を経験した記憶が頭をよぎる。
しかし、今までの経験上、こんなことであきらめては高山蝶は採れない。実は高山帯の天候とはいつもこんなものです。空をあおぎ、流れる雲の動きを見ながら、祈る。おてんとうさま、出てこい。いや。お願い。出てきてください。
この項、続く。
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