この本は、松本清張の遺作、未完の書であることを原武史の書いた『昭和天皇』岩波新書で読んで、急に買って読み始めた。
途中で休んでしまい、結局読むのに一年半ぐらいかかった。編集者が最後の結末は本人から聞いていたのか、まとめて種明かしをしてくれた。未完の推理小説はこうするのだと初めて知った。本人が生きていれば、たぶん三冊になったのではないかと思った。
松本清張は一九九二年に死んだ。享年83 かな。よくもこんな長いものを書いていたと感心した。
そういえば、現役時代は本を読む時間がなく、行き帰りの通勤電車で松本清張をよく読んでいた。新潮文庫はほとんど読んだが、本当に才能のある作家なのだと思う。
近頃は本屋に行くと、新潮文庫の暗い朱色の背表紙が宮部みゆきに代わっているのが寂しい。