玄冬時代

日常の中で思いつくことを気の向くままに書いてみました。

嘘をついた男

2021-07-29 11:20:17 | 

著者はエマニュアル・カレール、田中千春訳、すでに絶版で市販されていないとか。ネットの「一月万冊」で安富歩が推奨していた。

アマゾンで買ったら3万円とあったので、ケチな私は図書館から借りた。割合中身がないのか、全く解らないのか、乱読の合間で10日間ぐらいで読めた。

現在では、コロナで誰でも知っているWHOという国際機関に勤めるエリート医者を装い、しかも十八年間もずっと嘘ついてきた。周りは誰も嘘を気付かなかった。学生時代から付き合っていた薬剤師の妻も気づかなかった。

嘘がばれる刹那、妻と子供二人、自分の両親、妻の父親、みんな殺して、自らは使用期限切れの古い睡眠薬を飲んで家族の死体とともに家に火をつけて自殺しようとしたが、自分だけ火傷を負ったが、生き残ったという男(ジャン・クロード・ロマン)の話だ。

1993年に実際起こった事件で、本は1999年に刊行された。「事実は小説より奇なり」だ。自分はWHOに勤める医者だという嘘をついて、毎日、WHOのあるビルに行き、1階フロアで冊子やパンフを集め、決してオフィスには上がらない。

そんな生活を18年間続ける、信じられない無駄な空虚な時間だ。時には自分で計画を立てて、出張や旅行もする。遠くに愛人も作る。お金はみんな親族から、国際機関に勤める者の特別優遇された金利の預金ができると集めて、それを生活費に充てていたという。

 

でも考えてみると、私も家族を仕事場に一度も連れて行ったことはなかった。駅から見えるビルの窓を指して「あそこに居るんだよ」と妻に言ったかもしれない。それと同じことを、この主人公も家族にやっていた。ということは、本人がそうした架空の生活に耐えられれば誰でも可能なのかもしれない。

まあ、読み終わっても、何の感動もない。噓がバレれば、自分以外の人は消去しなければならなかったということかな。この人は無期懲役刑だが、フランスは22年間で出れるかもしれないとか。出てくれば61歳だそうだ。

さっき読み終えたばかりだから、これだけ覚えている。私も捨てたものじゃない。なんか感動もない、奇妙な読書時間だった。

でも、今の自分の生活も、死を待つ時間を単に浪費しているだけだから、同じかな!コロナ禍を生き延びたら、ネオ自民党の暗愚で乱暴な政治に殺されなかったら、少しは遠くに動き始めようと思いだした。

興味のある方は、お近くの図書館へ。

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