プロ野球広島東洋カープについて、特別な事情発生により続編をアップする勝手をお許しあれ!
かつて、打撃の神様と崇められた川上哲治氏。その神様の後輩で、熊本工業高校出身の前田智徳選手。
広島カープ一筋24年のプロ野球人生。42歳にして、ついに引退する時が来た。
打撃の職人とか求道者とか、聖人的な呼び方をされることが多かった、広島カープ生え抜きの看板選手。
個人的にも極めて好きな選手である。寡黙がいい。自分のバットでチームが勝ち、ヒーローになっても多くをしゃべらないのがいい。心の奥に、自分に打たれた投手がいることを気遣っている姿勢がたまらなくいい。
所詮勝負の世界に生きる男。やられたらやり返す気迫は誰にも引けを取らなかった。
しかし、自分のバットで勝利を収めたことはあくまでも結果であり、みんなが見ている。それを敢えてヒーローインタビューでことさら強調しないところがいい。打点を挙げるヒットが打てたのはたまたまで、凡打になることの方がはるかに多いことを彼は十分すぎるほど心得ている。
生涯打率は3割2厘。100回バッターボックスに立って、30本のヒットを打った計算になる。
ということは、100回のうち70回は失敗しているという論理を、前田智徳という男はしっかり自覚している。
ここらあたりは、あの天下のイチローさんに似ている。だから好きなのかもしれない。
今一つ好きな理由を挙げれば、バッティングフォームがきれいなこと。どうかするとその華麗なフォームは芸術的な域に達している。それなのに「こんな自分を・・・」「こんなけがだらけの男を・・・」という表現で、応援してくれたファンに感謝の言葉を述べる。野球界の高倉健のような男・・・といったら健さんファンに叱られるだろうか。
4月に受けた死球による骨折で戦列を外れた。その後チームは若手や外人選手の活躍で、16年ぶりのAクラス、CS出場を決めた。「自分がいなくても、カープは強いチームになった」という彼らしい「引き際の美学」があったのではないか、などと。これは推測にすぎないが、彼の男気から察するにそう思えなくもない。
生涯安打2119本。堂々の名球界入り。 再び選手としてバットを握ることはないのだろうが、その汗と泥にまみれて這い上がった野球魂を後輩に伝授していって欲しい。「惜しまれて引退」 前田智徳選手、有難う。