倒木が母屋のど真ん中を直撃
3年前に急逝した姉が、精魂を使い果たして新築した家が、今は空き家となっている。
新築した本人は、ホンの数か月を我が家で過ごしただけで、交通事故という痛ましさの中突然この世を去った。都会で生活する二人の息子たちは、いきなり田舎生活に切り替えられるわけもなく、取り敢えずは新築のまま住む人もなく3年あまり過ぎた。
そんな中で、長男夫婦は母親の遺志を汲んで、定年退職後は故郷でのんびり過ごす道を選択した。3月末の退職とともに帰って来るはずであった。それが、このたびの新型コロナウイルス感染騒動で身動き取れなくなった。ひと月、ふた月と先延ばししている間に、雑草やタケノコなど生い茂る季節を迎えてしまった。私たちも姉本人はもとより住人のいない家を訪ねることも少なくなっていた。
どんな状態になっているか気になって久素振りに訪ねてみた。雑草や破竹のタケノコ、ヤツデの葉っぱなどは想像に近い茂りで「まあこんなものか」であった。裏に回ってみて驚いたのは、隣接の急斜面に立っていたクヌギの大木が根っこ近くから折れて、枝葉が家の側面を直撃していた。不幸中の幸いで、修理がいるほどのダメージがなくて助かった。改めて脚立や道具を運び、倒木刻みに汗を流した。
建物は、施主の意気込みと工事人の意気込みを感じて、自分の生涯を全うしようとしているかの如く凛としている。当然呼吸もしているのだ。
窓という窓を開け広げ、風を通し空気を入れ変えてこそ建物は甦る。元気を出して住む人を守ろうとするのだ。
今も身動き取れない甥っ子にそんな話をして、倒木・倒木処理の写真を送っておいた。
私にとっては姉の、彼にとっては母親の、魂こもる故郷の家。1日も早く誰かが住んで、家にも深呼吸させて大切に守りたい。
ここにもコロナ禍という一大恐慌が影を落としている。