遥かなる我が家(その2)
その柿の木が見える庭で、盥の中で水浴をさせてもらい、お湯か水の中で、放尿し笑われた記憶があるのだが、
いくら何でも1歳の頃のことを覚えているはずも無い。
きっと後年、母か姉たちに聞かされた話が私の記憶として頭の片隅に住み着いたのだろうが、
なんだか水の中にゆらゆらと立ち上がる小便が見えるような思いでさえも。
その、「坪庭」の前が、家では居間に続いた狭い縁側付きの座敷。(5番目に初めて生まれた男の子として珍しがられ、
抱いて取り合いをした挙句、縁側の外、石の上に落としてしまった事もあったとか)
ぐるりと右回りに池に続いた細い掘りがあり、家の角にあたる部分近くにグミの木が有り、
卑しい私は赤く熟するのを待ちかねてもぎ取っていた。
(続く)