遥かなる我が家(その1)
茅葺の何時の時代に立てられたかも分からないような古い家だったが、
その家の姿、家の周りの様子は60年近く過ぎた今でもかなり鮮明に思い出される。
村の中の主要道路だった一本の道の脇、村の鎮守様から50メートルほど離れたところが、我が家だった。
道を曲がると、すぐ右が我が家で、左には結構大きな池が有った。
その池には雑多な魚が住み着き「タナ替え」と呼ばれる秋の泥上げの際には、
外来魚の「雷魚」なども顔を見せて驚かされた。
その池の泥は周りの畑部分に上げられたのだが、
日を置くと泥と一緒に上げられた泥鰌が呼吸のための小さな穴を開け、すぐに居場所が分かり捉まえることも出来た。
その泥を上げた畑は、春が近づくと雪を掘って行けに投げ込み雪消しを行い、
藁で囲ったさつま芋苗取り用の「温床」が作られものだ。
その畑の角には小さな実を着ける渋柿が有ったが、渋みが強く、
囲炉裏の灰の中で焼いて渋を抜き食べたように覚えている。
家に近くなると「坪山」と呼んだ藪があり、結構大きい椿が大きな面積を占めていた。
その外側、畑との間に甘柿があり、形も大きくて甘味も強い美味しい柿で、
姉に聞いた話では遠足時に近所の親たちが子供に持たせるために貰いに来たものだったとか。
(続く)