村の渡しの船頭さんは(その2終わり)
時代はずいぶん変わり、会社勤めの定年も五十五歳から六十歳になり、しかも定年延長とか、再雇用と言う名目で七十歳まで勤める人も少なくはない時代になってしまいました。六十歳と言ったら、まだまだ現役バリバリの年齢で、それをお爺さん呼ばわりされたら、機嫌が悪くなるのは必定です。
私が当時の国鉄に職を求めたのは昭和四十一年でした。当時の国鉄の定年は五十五歳。五十歳を越えると、周りからは「じさ」なんて正面切って言われていました。事実、その年齢になるとなんだか、大人と言うよりも年寄と言う言葉が似合うような容姿になっていたように記憶している。
今や「六十、七十鼻たれ小僧」なんて言葉もあるほどで、平均寿命が飛躍的に伸び始め、行年八十歳と聞くと「まだ、そんなに歳でもないのにもったいないのう」なんて言葉が聞かれるほど。
かくいう私もジーパンを愛用し、オートバイを乗り回して、いつまでも若いと思っていたら、なんと気が付くと七十歳も半ばになっていました。なんだか現代版「浦島太郎」のような、不思議な気分です。
(終わり)