ただいま発売中のオレンジページ2006年ベストレシピと2冊組ですが 作りやすいレシピがいっぱいです
今日は「でかもやしつくね」を作ってみました 材料は鶏ミンチともやし 薄切りした竹輪を加えて焼いてもいいかもしれません
買って良かったと思っております
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―ずっと若い頃 片思いをした 相手が結婚してからも暫くは どうして自分が愛されなかったのだろうと 思い出しては泣いた
今あの頃啓介さんが選んださつきさんの年齢(トシ)になろうとしている―
予定では25才で結婚し30才までには 二人の子の母になっているはずだった・・・計画は悪くなかったが 男がいなかったのだ! 致命的なミス 計画の失敗である
結婚するまでの腰掛けで始めた料理助手の仕事は 数年前に先生が倒れ 代理で生徒を教えることになった 今は専任の講師として運営も引き受けている 先生は将来は完全に引退し 後を珠洲香に任せる そう言っている
実際 結構忙しく恋してる暇はない 出会うチャンスもない 何故かノンビリ屋の友人ばかりで みんな独身と言うのも マズいのかもしれない―と珠洲香は思う
恋愛に興味なさそうに見えた従姉妹の三城千尋は 啓介の結婚式で 新婦さつきの弟に一目惚れされ 五年前にゴールインした
午後には結婚する生徒の為にケーキを焼く予定だ
ふわふわの花びらいっぱい 甘過ぎないクリームで飾って
他にリボンの形のクッキ―も焼いて
仕上がった頃 生徒が入ってきた
「わ~美味しそう!すっごく綺麗 なんで先生独身なんだろ 勿体ないなぁ」
「あ・・・・今の言葉は痛いわ」と珠洲香は笑う
若い娘は遠慮がない ずけずけ心に浮かんだことを言う
かつての自分もこうだったろうかと想う
さぞかし鼻持ちならないイヤな娘だったことだろう
弾むような足取りで 教室を出ていく生徒を見送り 仕事中はまとめている髪をおろす
教室を出る前に一巡し確認して 戸締まりをする
建物の入口で警備しているガードマンに 余分に焼いておいたクッキーを差し入れる
かつての若い娘は料理教室の中の人間関係で揉まれ 気配りでき しなやかな後ろ姿持つ女性へと成長していた
「あんな綺麗な女性なら さぞや素晴らしい恋人がいるんだろうなぁ―」と噂されていることを 珠洲香は知らない
女性として恋愛の対象とされる年齢は過ぎた―と思っている
でもって背筋伸ばした緊張感は 玄関が近付くにつれ消え失せ 部屋へ入る頃には だら~~~っと 既に人間以外の生き物へ変化する
「階段上るのに四つん這いで登るンじゃありません!」 悲鳴のような母親の注意が飛ぶ
着替えて降りてくると 長年使い込んだマグカップに昆布茶 で 又だらだらだら~っとソファーに沈み込む
「まったくアンタって娘(こ)は外面だけはいいのに 落差がどんどんひどくなってきてるわよ そのうち人間を維持できなくなるからね」
「ふぇぇぇい」
「返事は{はい}でしょ! そんなんだから大台に乗ろうかと言うのに 恋人はおろか男友達の一人もできないのよ
おかあさんは孫も抱けず寂しく死んでいくのだわ」
冗談半分の母の嘆きに「夜遊びして男の家を泊まり歩くよりいいでしょ おかあさんに長生きして欲しいから 清く正しく いい加減に美しく日々生きているのです」
「そ~いうのは努力って言わないの もてない!って言うのよ ああ情けない娘だわ たまにバンと化粧したかと思えば 似たよな独り身の女友達との集まりなんだから」
「ふぇいふぇいな」
昆布茶と母の趣味の愚痴に付き合った後は オーブントースターでチーズ乗せた餅を焼く 少し焦げ目つくぐらいが美味しい 有り合わせ野菜を適当に刻み ベーコンやソーセージぶち込み ひつこくグダグダ煮てケチャップと醤油 塩胡椒など適当に入れたスープを飲む 食べる時に スライス・チーズをちぎって入れても美味しい 圧力鍋で作れば早いのだ 一度作れば温め直すだけなので 三日はもつ 実家で暮らし続けていれば 楽で結婚する必要を感じない・・・のだった
―問題は ときめきよねぇ 感受性さびついちゃって―
だが捨てる神あれば拾う神あり・・・だ たぶん そういう展開なのだ
でないと話が終わらない~
けれどヒロインは呑気だった・・・
ハンドルを持っていない時は・・・だが
その日片側通行の工事中には ひっかかる 友人との待ち合わせには遅れそうになる―で 色々あり珍しく珠洲香は気が立っていた
と強引に割り込んだ車が 更に無理な車線変更したので ―このぉ! 抜き返し右折して駐車場へ入った
駐車して車を降りると さっき抜き返した車がいる 運転席側のドアが開き坊さんが降りてきた
「運転が無茶すぎるんじゃないか」
「あんなバカ運転するハゲに言われたくないわね」
「わた・・・わたしはハゲじゃない!」
「失礼」微笑んで会釈し「これは失礼 ツルツル不毛の頭に」向きを変え出口に向かう
何事かと警備員が近付いてきている 「どうかしましたか?」
尋ねてきたのへ 軽く肩を竦め「さぁ?わかりませんの」と すまして答えた
待ち合わせた店で さっそく友人へ 「もう最低!さっきさ~坊さんの癖に呆れた運転する奴がいて しつこくも駐車場までつけてきて いちゃもんつけたのよ あんなのにお経あげられたら成仏どころか悪霊になるわよ」
「でイイ男だった?」と美容師の美智留が聞く 色白 仕事柄か指が美しい
「ハゲよハゲ」と珠洲香はにべもない
と 「わたしはハゲじゃないぞ!」叫ぶ坊主頭
「また出た!」と頭を抱える珠洲香 「物の怪(もののけ)みたいなボーサンだわ」
「あっら―いい男じゃない」早智子はニヤニヤしている
「仁慶 遅れてきて何騒いでるんだ」 眉の太い はっきりした顔立ちの背の高い男が寄ってきた 「全く生臭坊主だな 美女ばかりの集まりにすり寄っていくんだから すみません ご迷惑かけました」 男はぺこりと頭を下げ 仁慶の耳を引っ張り「お前はこっちだろうが」と言いながら連れて行った
「殴るぞ 」 ひっぱられながら仁慶は ジタバタしている 背の高い二人は目立った
「さ 場所変えよ 場所」 珠洲香は立ち上がる
それぞれに仕事があるので ひと月かふた月に一度程度の集まりだ ご飯食べて カラオケというのが大抵のコースで 映画になる事もある
珠洲香は何か落ち着かず その夜は楽しめなかった
料理学校の生徒を連れて食事マナ―のレッスンにホテルのレストランへ出かけた帰り
入口で擦れ違いかけた男が急に立ち止まった 「仁慶と話してた方でしょう?」
あのボーサンの連れだった ホテルの制服が長身に映える
「マナ―教室を時々こちらでお願いしているのです」
「失礼しました 僕は橋本栄三郎と言います」言葉と共に名刺が手渡される
「さくら料理教室の葉宮珠洲香と申します」 「本日は当ホテルをご利用有難うございました」 職業に戻った声で橋本が言った