娘の学校での友人のお家がケーキ屋さん お父様がケーキを作っておられます
スポンジがしっとりしていて 中にはさまれてるクリームも甘さがくどくなく 大変美味しかったです
娘の学校での友人のお家がケーキ屋さん お父様がケーキを作っておられます
スポンジがしっとりしていて 中にはさまれてるクリームも甘さがくどくなく 大変美味しかったです
一つの鍋には厚揚げ・コンニャク・平天・薩摩揚げ・じゃがいも
大きい鍋には鶏肉・大根・スジ・茹で卵・竹輪・はんぺん・餅巾着など入っております
入院中の母が「おでんが食べたい」と言うので 夜病院帰りに買物してきました 丁度大根もスジも安くラッキーでした 明日の朝 生姜醤油を添えて持って行きます 料理するのは好きなので 何を作るか決まっていると余り苦にはなりません
何を作ろうか―と悩むのが しんどいですね 作りたい料理と家族の好き嫌いが一致しない時もありますし
さっき長男が「美味しそうな匂いがする」と覗きにきました ひと晩おいたら 味がしみて うまく食べ頃になるでしょうか
『え?』と珠洲香は思った 確認するように橋本を見上げる 狡さ 後ろめたさなど 何処にもなかった あるのは焦り・・・
不思議なくらい珠洲香は落ち着いていた
「私は葉宮珠洲香と言います あなたは?」 橋本さんとどういうご関係?の意味も込めて 自分より年上の女を見詰めた
貴代子は勝手が違った 馴々しくすれば泣いて逃げていくと思ったのだ ―それほど若くはない・・・ということね
橋本が貴代子の手をふり払う
「栄三郎とは昔からの仲だわ 可愛いお尻の黒子だって知っているんですからね この人タフで一晩中凄いの 寝不足になるのよね」
「そうなんですか?まるでロマンス小説のヒーローのようですね」 貴代子の表情に困った自分の立場を忘れ 橋本は吹き出しそうになった
「有難う どなたか存知ませんが おかげで私は自分の気持ちがはっきりしました」
橋本に視線を当て話しかける「過去の無い人間なんていやしません 私は貴方を愛しています いま現在 貴方の中で私の存在が一番であればと 願うばかりです」
貴代子が口をはさんだ「ちょい!こっちは」 「それは橋本さんが決めること 橋本さんを信じていますし それが間違いなら 見る目がなかったのだと自分を辛く思うだけです」
言葉より先に腕が伸びた ただ橋本は珠洲香を抱き締める
道行く人の目も気にしない
「貴代子の事は彼女が他の男と結婚したことで終わっている もう何年も前だ
何かして嫌われたらと手一つ握るにも覚悟がいるほど 君が大事だ 大切に想っている」
完全に二人の世界だった
貴代子を置いて 二人は歩きだす
駐車場近くの暗がりで たまらなくなったかのように橋本は珠洲香を強く抱き締めた 珠洲香の指が遠慮がちに彼の背へ触れたのが引き金のように その唇が彼女の唇に触れ 静かに重なった
唇を放したあとも橋本は暫く珠洲香を抱き締め・・・長い無言の時が過ぎ「送っていくよ」と言った
車内でも沈黙が続き橋を渡れば家というところで 橋本は車を停めた
「できるだけ早く結婚してくれないか・・・でないと・・・」
「でないと?」
「体がもたない」 照れたように言い 珠洲香の指を取り堅くなった自分に触れさせた 「迷ったんだ このまま勢いで何処かへ連れ込もうかと―」
「なぜ?」
「君の夢さ 結婚式の夜に初めて夫に抱かれたいという あれがいつのまにか俺の夢になってる 君が欲しい 触りたい 悲鳴あげるほど 目茶苦茶にしてやりたい」
「されてもかまわないのに―あなたなら」
「誘惑するんじゃない ぎりぎり踏みとどまっているんだから」 橋本はコツンとハンドルに額をあてた
珠洲香は男の指を握り返し自分の胸に押し当てさせた
はっと彼女に向いた男の顔を捕らえ ただ自分の唇を押しつける
今度は男の唇は触れるだけでは我慢せず その舌で彼女の唇を味わった
指は彼女の胸に触れ 自由に動く 重みをはかるように添え きゅっと胸の先をとらえ親指でなぶった 珠洲香の唇から吐息が洩れる 甘い痛みが全身に走った
「いけない人だ 」そう口では言いながら 男の指は 彼女の肌を求めていた
やがて彼女の胸に顔を埋め「駄目だ爆発する」 全身震わせ何かを堪えると 運転席に戻り上を向き 目を閉じて暫く動かなかった 身繕いをする珠洲香を押しとどめ その肌の色 胸の形を記憶する
「今夜は夢で君を抱く たぶん結婚式の朝まで毎夜―」 それから珠洲香の家の前へ車を運ぶ 降りる前 今一度激しい抱擁とキスがあった「このまま何処へ行ってもいいのよ」と珠洲香が誘う
「君も欲求不満に苦しんでくれ」橋本が笑った
一気に駆け上がった後は展開も早く 珠洲香の両親の都合を聞き 仲人をお願いしたい上司を連れ 橋本は家に来た 早々に日取りも決まり前後して 珠洲香は橋本の両親にもあった
時々貴代子からの嫌がらせの電話はあったが それもちょっとした刺激だった
後で橋本が「あの時は驚いた」と言った
「十年前 いえ五年前 ううん三年前の私なら泣いて逃げたかもしれない あの時は自分の気持ちより 貴方を失いたくなかったんです 貴方が一番大切でした」
珠洲香が自分を愛していると言い切った時の驚きと感動
貴代子を前に一歩もひかず逆にたじろがせた意外な強さ
最初 その美しさに魅かれた 仁慶と対等にやり合う気の強さに目を見張り・・・
その美しさを意識していない自信のなさ 何処か無垢なところ
何か会うたびに話すたびに 好きになっていき離れている時間がたまらなくなってきた
恋とは こういうものなのだと
「しあわせにするから」とだけ橋本は言った 美智留と仁慶は時々会っているらしい 早智子と高倉とでのダブルデートとか
そして秋 橋本栄三郎は葉宮珠洲香と結婚した
今ではすっかり落ち着いた遠矢啓介を こっそり指さし「あの人が片恋の初恋の相手なの」と教える
内心 橋本はたじろいだ『いい男じゃないか』
啓介は啓介で何かはかるように橋本を見ていた で妻から背中をつねられる ここは奥さんが強いのだった
それから従姉妹の千尋 夫の一は一見いい男なのにひょうきんで面白かった
啓介は三人の子持ち 千尋のところは二人
「負けないぞ」と橋本が呟く
「え・・・何?」式が終わり 皆に送られて駅で汽車に乗り込みながらの橋本の呟きを 珠洲香は聞き咎めた
指定席に珠洲香を先に座らせながら 橋本は答えた
「子供の数 まず今夜から頑張るぞ!」
すぐさま珠洲香に力強く足を踏まれた
「車両中に聞こえるじゃない」 窓越しに見送りの人達へ にこやかに手をふりながらの器用さ
その耳元で「これをどれだけ楽しみにしていたか 今夜泊まるホテルへの到着時間を秒でカウントしてるんだ」
―あ あほかも?! 「人生の選択早まったかしらん」と珠洲香
「もう遅い」と余裕でニンマリする橋本
この夫婦の将来やいかに?!
遠ざかる列車を見送りながら「人生は もし?の連続かな」と仁慶 その腕をとって「よりよい選択ができたか思案しつつ生きるのも人間よ」そう美智留が言う
言えなかった言葉 想いは暫く仁慶に残るだろう けれどいずれ笑い話になるに違いない
これからも人生は続いていくのだから