オランプが館に戻ると遅い時間にも関わらずディアネージュは起きて待っていた
日中は結い上げてある長い髪こそおろし夜着に着替えてはいたが くつろいでいた様子はない
「お客様が訪ねて来られました」
もの問いたげなオランプの視線を捉えてから ディアネージュは言葉を続ける
「持ち船を買ってほしいのだとか 数隻運んで来られたそうです」
「どのような男だった」
「ただの商人ではないようなーそう貴方に似た栗色の髪で身長も同じくらい ただ瞳の色は青でした 名前はオルディスとか」
「オルディス・・・」
「あたくしには難しいことは分かりませんが この国にはそんなに船が必要なのでしょうか
四つの島でそれぞれに かなり大きな船を造っているとか
その上に まだ買わねばならないほどー」
ディアネージュがドキリとするほど オランプはじっと彼女を見つめた
やがて長い脚を投げ出して椅子に座る
「今夜もその事を王とイリアッドと話していて遅くなった
だんだん激しくなってきた地揺れを どう思う」
「気持ちの良いものではありませんけれどー」
「うん そうだね」
それからオランプはソロクレスの出した予測
もしも大災害が起きた場合に備えている事を話した
「最悪 国が無くなるとー」
蒼ざめたもののディアネージュは冷静に話を聞いていた
「大地が割れて砕けて海に沈む・・・そういう伝説はルルドスだけのものじゃない」
ソロクレスはできるだけ多くの人間を救いたいーそう考えているとオランプは言う
「ええ 兄ならそうでしょう」小さくうなずいてディアネージュは言葉を続けた
「そして貴方が 兄の重荷を引き受けてくれているのですね
やっとやっと あたくしにも教えてくれた」
「いつ起きるかわからない その時あなたの傍にいたいとは願っているが」
「兄の負うべき責任と貴方の義務と 考えられないことが起きるかもしれないということ
ですから あたくしにできることを教えて下さいませんか」
ディアネージュは感情よりも理性を優先する事にした
この人に我儘な何もできない役立たずの姫だとは思われたくない
もしもそういう事が起きれば恐ろしくてたまらないだろうが やるべき事が分かっていれば心を鍛えて備えておくことはできる
見苦しく悲鳴を上げて逃げ回るだけの人間にはなりたくない
「では これからは同じ目的の為に動く同志だな」
前もって用意していた地図をオランプはディアネージュに渡した
それには海へ逃げる場合の効率よい経路が書き込まれていた
「だがー必ず わたしが迎えに行く」
オランプのその言葉は誓いのようだった
翌朝は早い時間にオランプはオルディスへ会いに出かけた
オルディスはルードブル島の船造りの技師ドルランクの家に泊まっている
ドルランクはファルラという娘がいた
青い瞳にいかにも気の強そうな赤毛
その赤毛は父親譲りだった
気性の荒いドルランクが娘と二人暮らしの家に泊めた男オルディス
ディアネージュの言葉を借りれば人畜無害ぶりを装った快活さ
ドルランクはオルディスの持つ船の知識が気に入ったのだ
朝から船を修理する時の事について言い合っている
その横でファルラは呆れていた
「仕事場へ行っても船のこと 家に帰っても寝るまで船のこと 起きれば食べながら船のこと」
歌うように話す
声は家の外まで聞こえ 訪ねて行ったオランプは「楽しそうだ」と声をかけた
「これはオランプ様」とドルランクが呼びかけるのへ「様は要らないと言ったろ」と気安げなオランプ
「こちらに滞在されるオルディス殿が訪ねてきてくださったとか」
「訪ねた用件をご存知なら まずは船を見ていただきたい」とオルディスは答えた
オルディスが船のある場所まで案内する
「なるほど 見事な船だ」
船の中を見て回りオランプは船を褒める「どちらでルルドスが船を必要としていると知られたのか」
「旅の途中で 探し物をしておりました」
「探し物は見つかられたのか」
「はい 見つけたと思っております」
「探して見つかるモノは良いな」オランプは微笑む
「貴方様は何か探しておられると」
「見つけようのないものかもしれぬがー」
日中は結い上げてある長い髪こそおろし夜着に着替えてはいたが くつろいでいた様子はない
「お客様が訪ねて来られました」
もの問いたげなオランプの視線を捉えてから ディアネージュは言葉を続ける
「持ち船を買ってほしいのだとか 数隻運んで来られたそうです」
「どのような男だった」
「ただの商人ではないようなーそう貴方に似た栗色の髪で身長も同じくらい ただ瞳の色は青でした 名前はオルディスとか」
「オルディス・・・」
「あたくしには難しいことは分かりませんが この国にはそんなに船が必要なのでしょうか
四つの島でそれぞれに かなり大きな船を造っているとか
その上に まだ買わねばならないほどー」
ディアネージュがドキリとするほど オランプはじっと彼女を見つめた
やがて長い脚を投げ出して椅子に座る
「今夜もその事を王とイリアッドと話していて遅くなった
だんだん激しくなってきた地揺れを どう思う」
「気持ちの良いものではありませんけれどー」
「うん そうだね」
それからオランプはソロクレスの出した予測
もしも大災害が起きた場合に備えている事を話した
「最悪 国が無くなるとー」
蒼ざめたもののディアネージュは冷静に話を聞いていた
「大地が割れて砕けて海に沈む・・・そういう伝説はルルドスだけのものじゃない」
ソロクレスはできるだけ多くの人間を救いたいーそう考えているとオランプは言う
「ええ 兄ならそうでしょう」小さくうなずいてディアネージュは言葉を続けた
「そして貴方が 兄の重荷を引き受けてくれているのですね
やっとやっと あたくしにも教えてくれた」
「いつ起きるかわからない その時あなたの傍にいたいとは願っているが」
「兄の負うべき責任と貴方の義務と 考えられないことが起きるかもしれないということ
ですから あたくしにできることを教えて下さいませんか」
ディアネージュは感情よりも理性を優先する事にした
この人に我儘な何もできない役立たずの姫だとは思われたくない
もしもそういう事が起きれば恐ろしくてたまらないだろうが やるべき事が分かっていれば心を鍛えて備えておくことはできる
見苦しく悲鳴を上げて逃げ回るだけの人間にはなりたくない
「では これからは同じ目的の為に動く同志だな」
前もって用意していた地図をオランプはディアネージュに渡した
それには海へ逃げる場合の効率よい経路が書き込まれていた
「だがー必ず わたしが迎えに行く」
オランプのその言葉は誓いのようだった
翌朝は早い時間にオランプはオルディスへ会いに出かけた
オルディスはルードブル島の船造りの技師ドルランクの家に泊まっている
ドルランクはファルラという娘がいた
青い瞳にいかにも気の強そうな赤毛
その赤毛は父親譲りだった
気性の荒いドルランクが娘と二人暮らしの家に泊めた男オルディス
ディアネージュの言葉を借りれば人畜無害ぶりを装った快活さ
ドルランクはオルディスの持つ船の知識が気に入ったのだ
朝から船を修理する時の事について言い合っている
その横でファルラは呆れていた
「仕事場へ行っても船のこと 家に帰っても寝るまで船のこと 起きれば食べながら船のこと」
歌うように話す
声は家の外まで聞こえ 訪ねて行ったオランプは「楽しそうだ」と声をかけた
「これはオランプ様」とドルランクが呼びかけるのへ「様は要らないと言ったろ」と気安げなオランプ
「こちらに滞在されるオルディス殿が訪ねてきてくださったとか」
「訪ねた用件をご存知なら まずは船を見ていただきたい」とオルディスは答えた
オルディスが船のある場所まで案内する
「なるほど 見事な船だ」
船の中を見て回りオランプは船を褒める「どちらでルルドスが船を必要としていると知られたのか」
「旅の途中で 探し物をしておりました」
「探し物は見つかられたのか」
「はい 見つけたと思っております」
「探して見つかるモノは良いな」オランプは微笑む
「貴方様は何か探しておられると」
「見つけようのないものかもしれぬがー」