夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「我が為に・・・」

2018-07-30 19:20:14 | 自作の小説
店の客だった
父の作る料理が気に入り東京からの出張があると寄ってくれるようになった
洗い場などをちょろちょろ邪魔するように手伝っていた私は・・・いつか少し年上のその客が随分気になるようになっていた

いいえ娘らしい一途さで好きになっていた

いつ姿を見られるかすらわからない片恋
ひどく大人に見えて十代の自分など想いを寄せても本気になど受け取ってもらえまい
相手になどされるわけがない

何か言って客として来てくれなくなるのは嫌だ

だから ただ想うばかりの恋


想いがけず 暖簾分けて入ってきてくれたら もう無茶苦茶嬉しくて嬉しくて その人の動きの一つ一つ話す声にも耳を澄ませて
姿を見られるだけで嬉しかった
声を聞けるだけで幸せだった

まだ独身のその人もいつかは結婚するだろう
それは辛いけれど

とても自分の想いを打ち明けることなどできず・・・
私が19歳にもうすぐなる頃 その人は友人と新しい仕事を始めた
その友人に裏切られ もうどうしようもないほどの額の借金を背負った
騙されたのだ


金だけ持って逃げた友人は彼の計画も横取り 他の人間と仕事を始める

あの日 久しぶりに店の暖簾をくぐって入ってきたその人は顔色がひどく悪かった
思いつめた表情

「ああ 美味しいな 仕事がうまく運ぶとここで食べるのが一番の楽しみだった」

食べ終わると「有難う いい時間を過ごさせてもらった」

店を出る後ろ姿がひどく寂しそうで・・・・・
このままだと二度と会えない
もう会えなくなる!
何故かそう思った

夕暮れの街 私はその後ろ姿を追いかけていた
彼は宿泊しているホテルの部屋に入る

少し待って・・・私はノックした

ドアを開けた彼はひどく驚いた表情

「あやみちゃん・・・」

彼が私の名前を憶えてくれている!それがどんなに嬉しかったか

ひどく唐突に呆れるほど泣きながら私は言い募っていた
「死んではいやです 死んではいやです」


ぎょっとしたような彼の表情

「何を・・・」とも「何故」とも「馬鹿なことを」とも言わなかった

私が泣き止むまで彼は窓から外を眺めていた

「好きなんです 生きていてくれるだけでいい 私を好きになってほしいなんて思いません
この世界にあなたがいる
それだけでいいんです だからー」

「-だといいなと思っていた」
びっくりしてただ見上げる私に彼は寂し気な笑みをみせる

「大将の料理も美味しくて女将さんの雰囲気もあったかくて とても居心地の良い店で
行く度に別嬪さんになるあやみちゃんを見るのも楽しみだった」

そう言ってちょっと黙る
「どうこうしようともできるとも思っていなかったけどね
こっちはただの客だし」


「あなたが死ぬのなら私も一緒に死にます あなたのいない世界で生きていたくありません」

「死なないよ・・・」
その人が笑う
「あやみちゃんが死ぬのは困る
何があっても君には生きていてほしい
生きて幸福で笑っていてほしい
何が起きようと死んでは駄目だ」


互いに同じ言葉を返すように

「遅くなるとご両親が心配する」

「死にませんよね」念をおすように確認する私に
「死なないよ」彼はそう言ったのに

「また明日会おう 待っているから」


そう言ってくれたのにー

それでも翌朝 気になってホテルに向かえば
人だかり


彼は夜明け前に飛び降りて・・・その命を絶った

約束したのに 一人きりで死んでしまった

私は涙も出なかった
心が凍り付いてしまった

もう幸せになんかなれない

それは もうずっと昔
心の奥底に仕舞い込んだ
ただ時にちくりと痛む
哀しみが心から流れ出す

どれだけ時が経とうとも
世間から「ババア」と呼ばれる年齢になっても


私はあの人の死を止めることができなかった
一緒に死ぬことも後を追うこともできなかった

私の想いは嘘だったのだろうか
本当の恋ではなかったのだろうか

ただ・・・生きている
生き続けてしまっている

あの人の死から長い長い時間が過ぎて
私は嫌な噂を聞いたのだ


あの人を裏切り多額の金も持ち逃げした挙句 始めた仕事に結局失敗した人間が あの人を悪く言っていると

ー奴はな金を使い込んだのよ
水商売の女にいれあげて
ろくな仕事もできないアイツのせいで俺の一生はなー


全部自分が悪い癖に 死ぬしかないとあの人を追い詰めたのも

許せなかった
これほどの時が経ち どうしてまた貶められなければならない
彼を騙し裏切った男


あの人は死んでその名を守る為に何もできない
何も言えない



だから私がその男を刺した

殺した


それで思いました

もうじゅうぶん
私はもうじゅうぶん生きました


あの人がいない此の世では どうしたって幸せになどなれません

だから私も夜明け前に此の世から居なくなりましょう

君が為の殺人?
いいえ 私は自分の為に殺したのです

我が為にこそーです


そうして我が為にこそ死んでいきます

スーパープレミアム「悪魔が来たりて笛を吹く」 BSプレミアムにて放送 2018年7月28日土曜日

2018-07-30 14:57:00 | テレビ番組
横溝正史先生原作のこの小説は映画やドラマで幾度も映像化されている
だから原作に忠実にではなく意外性を出したくて 新しい驚きを感じてほしいとイジりたくなるのはわかる
けれど必要性のない変更がされたりしていると ひどくイライラする

こんなに頭が悪く ちっとも金田一耕助らしくない金田一耕助を初めて観た


どうしたって金田一耕助には見えない
よく知られている金田一耕助の特徴は
おかま帽
よれよれの着物

そしてどもること

この話始めにちょっとどもることは 何かと言えば差別と騒ぐバカも多い昨今では 映像化してはいけないことなのか
だとしたら どんどんつまらない時代になっている
人と違うことを許容しない世の中とはー


これまで映像化された中で比較的イメージに近いのは毎日放送で古谷一行さんが金田一耕助をされた「悪魔が来たりて笛を吹く」
華族令嬢だった血筋として草笛光子さんには それらしい気品があった


今回 演じた女優さんに罪はないとしても 同じ役柄は随分下卑た個性に変えられてしまっている
兄を弟に変更したことに何か意味があったのだろうか


犯人の三島と名乗る男は・・・全てを知り復讐に来た

金田一耕助も椿子爵の遺した曲の意味に気付いて推理を進めている



それが今回のドラマ化では三島は自分の出生の秘密に気付かず犯行に及んでいる

金田一は犯人が殺されてから・・・・・事件が終わってから「悪魔が来たりて笛を吹く」の曲の秘密を知る


全体にもう滅茶苦茶である

出演俳優さんは悪くない

この原作の変更と意味不明なイジり方がつくづく謎である

観ていて全然スッキリしない

これでは不出来な泥探偵である


横溝正史作品に漂う美しさも失われてしまっている



美禰子の母親は圧倒的に年齢不詳に蠱惑的で美しく そして華族の血を引く娘として気品がなければ
その兄や医師が手を出さずにいられない性的魅力と
でなければ物語に説得性がない

知的だが母ほどには女性としての美しさと魅力には欠ける娘


父親違いの妹 母親違いの弟へと犯人が持つ思い

原作が持つ詩的美しさと登場人物の死の必然性すら破壊されてしまったドラマだった



このドラマ化で何が描きたかった
何を表現したかったのだろう


出演された俳優さん達がお気の毒である

中山七里著「連続殺人鬼カエル男ふたたび」 (宝島社)

2018-07-30 09:54:49 | 本と雑誌
連続殺人鬼カエル男ふたたび
中山 七里
宝島社




ひらがなばかりの犯行文
殺し方も書かれている内容も惨たらしくも残酷で背筋を凍らせる
そういう犯人と全身ぼろぼろになりながらもと戦った古手川刑事

捕らえた犯人の一人が精神の病気であったことから状態がましになったからと自由の身に

「爆ぜる」
「溶かす」
「轢く」
「破砕する」
「裁く」

家の中に散乱した爆死した人間の体

首から下は溶けている死体

電車に轢かれて散らばる体

生きながら足から砕かれていき・・・殺される
巨大なミキサーに足から突っ込まれたーと想像してください


前作で「え」で始まる名前の人物が殺された

それが「お」で始まる名前の人間が殺され 今度は「さ」で始まる名前の人間が殺されて

おかしくなっている人間が殺す相手を奇妙な選び方をしている
次に殺されるのが誰かはわからないーそう思えた


だが一筋縄ではいかないベテラン刑事はある読みを持っていた

できない管理官に自分の意見を言った古手川は捜査から外される
ーこれは俺の事件だー
ベテラン刑事の言葉もあり 単独捜査を始める古手川

彼は真犯人が誰かは読めなかったが 次に狙われる人間には当たりをつける
そして犯人との格闘 筋肉弛緩剤を打たれ 刺されぼろぼろになりながら戦う
そして馬並みの回復力を見せて・・・・



動機は復讐
娘と孫を殺した男への

精神異常者を装い極刑を逃れ自由の身となった男だがー


男を殺す為に待ち受けていた女の網にかかる


もしも続編があるとしたら
カエル男ならぬカエル女になるのでしょうか

罪の意識なく人を殺せる女が逃亡中のまま この物語は終っています
そしてこの女の弾くピアノの音に心が反応してしまうのが 事件のたびに重傷をおってぼろぼろになる古手川刑事と
かつて死体配達人と呼ばれた過去持つ弁護士

もしかしたらこの「連続殺人鬼カエル男ふたたび」は 殺す女・刑事・弁護士ー彼らが本格的にまみえることとなる恐ろしい物語への序曲になるのかもしれません



以前に書いた「連続殺人鬼カエル男」についてのものです↓

「贖罪の奏鳴曲」「魔女は甦る」他 様々な中山七里作品に登場する埼玉県警の渡瀬と古手川和也の活躍する物語
特に終盤 古手川刑事はもう生きているのが不思議なくらいにぼろぼろ凄惨な目にあいます

一 吊るす
二 潰す
三 解剖する
四 焼く
五 告げる

という章に分かれます


「きょう、かえるをつかまえたよ。
はこのなかにいれていろいろあそ
んだけど、だんだんあきてきた。
おもいついた。みのむしのかっこ
うにしてみよう。くちからはりを
つけてたかいたかいところにつる
してみよう。」


「きょうもかえるをつかまえたよ。
かえるをつかまえるのがうまくな
った。きょうはいたにはさんでぺ
ちゃんこにしてみよう。かえるは
ぜんぶぼくのおもちゃだ。」


「きょう、がっこうでずかんをみた。
かえるのかいぼうがのっていた。
かえるのおなかのなかは、あかや
しろやくろのないぞうがたくさん
つまっていてとてもきれいだ。
ぼくもかいぼうしてみよう。」


「きょうつかまえたかえるは、も
うしにかけていた。うごかない
おもちゃはつまらない。だから
もやしてみた。ひのついたかえ
るはもえながら、とんだりはね
たりしたのですごくたのしかっ
た。かえるのもえるにおいはい
いにおいだった。」


古手川は子供の頃 友人へのいじめを見て見ぬふりをして 
それで友人は自殺した
自責の念から古手川はある行動へ出た
「いじめ」ということに対し理性を失うくらいに人が変わる


いじめられていた子供を古手川は庇いそれでいじめっ子の父親(自衛隊員)とタイマン張り のされてしまう

そこまでして庇ったこどもが連続殺人鬼に殺された 解剖されて 内臓を取り出されて

そして古手川は案じて駆け付けた人間が犯人としての要素持つことに犠牲者とのつながりに気付き 駆け付けた時点で
パニックに陥った暴徒ともめたあとでボロボロなのに 容疑者からさらにぼこぼこにされる
しかし生き延びた


で 子供を解体して殺された母親のところへ行き ピアノの音の異常から 指の傷に気が付き それが真犯人の証拠と知る


前の負傷も治ってないのに また死ぬような目に


だが 渡瀬は逮捕できないさらに陰で操る人間に気付いていた


それでも因果はめぐる





食事しながら 読んではいけない本です

ぐるぐるまわる 

怪物をつくっているのは 誰だろう

古手川刑事受難の物語でもあります




じきに8月 早いです

2018-07-30 09:38:13 | 子供のこと身辺雑記


土用餅と 三角形のは水無月というお菓子です
今は文月(七月)も終わりですが 水無月(6月)は暑い間中作ってくれるお店があり 好きなお菓子なのでこのお菓子食べたさに時々買いに行きます




天卵丼
天つゆで玉葱煮ておいて 海老天加えてちょっと煮て溶き卵でとじる
そして三つ葉かネギをぱらぱら
ご飯にのっけて丼に
それだけです





ハンバーグとサラダ
胡瓜もミニトマトも畑からのもぎたてです



昨日は午前(長男の用事)・午後(主人の用事)で外出し 帰宅したら頭痛がひどくなり夕飯こさえた後はずっと横になってました

それでも眠かったりします

眠り姫はきれいだけど 眠りババアは難儀だわ・笑