電力会社では外の人からは、想像できないほどトラブルを嫌う。政府やマスコミや住民から叩かれる弱い立場だ。仕事ができないからと怒られることは滅多に無いが、ミスやチョンボは命取りになりかねない。そこで、上手にごまかし嘘をつける人が出世することになる。
原子力発電所では、建屋のペンキが剥げても、ちょっとした問題になるだろう。管理体制やメンテナンスは十分だから、そんなことは通常起こりえない。原因究明と共に、即座に補修されること間違いない。だから、原子力発電所建屋は常にピカピカで完璧。
然るに、このたびの福島原発は、屋根が吹っ飛び、内部が露出し、鉄骨がむき出しとなっている。とても容認できる状態ではない。社長や担当取締役は腰が抜けたと思う。技術的にも手に負えないトラブルで、東電が官邸に撤退したいと申し入れした心情も、無責任なことは間違いないが、状況から察するに余りある。
非常用発電機の問題は、多分、経営の効率化を進めすぎた。想定外の事態という官僚言葉はむなしい。原子力では予算をケチってはいけない。例えば、他電力の火力発電所の計測機器でも、仕様書の条件にはこう書かれていた。「世の中で最も良いもの」
原子力設備では、予算に関し、青天井は言い過ぎにしても、トップは予算に関して寛容だったと理解している。ところが東電はどうもそうではなかったようだ。細心の注意を払い努力してきた他電力にしてみれば、はっきり言って迷惑。日本の技術立国の信用も相当失った。
これまで、電力会社の問題点を指摘してきた。だから言ったじゃないかと書くつもりはない。多くの電力マンはまじめすぎるほどまじめで、OBとしては非常に残念。
柏崎刈羽のトラブルでも懸念したことだが(あの時は自社の問題がありながら、得意の作文でうまく切り抜けたと考えたのではないか)、電力会社の体質(例えば隠ぺい体質:早い段階で情報を開示していれば今回、このような深刻な問題にならなかった可能性あり)は改善の必要があり、今回、国家レベルで危険であることが明らかになった。