「アメリカに潰された政治家たち」を飛ばし読みして、いくつか私の見解と一致した部分が有る。その一つが、アメリカが日本の領土問題に関し、裏で工作し解決の障害になっているとの見解だ。孫崎氏は元外交官としての根拠を示している。私の場合はこの書籍が出るずっと以前から気付き、ブログに書いてきた。
とりわけ、民主党政権下で尖閣諸島、北方領土、竹島の問題が同時に吹き出し、悪化した時にはその考えが間違いなかったと意を強くした。あくまで推測だが、民主党が反アメリカ色を出したために、アメリカが密かに、中国、ロシア、韓国に対して、例えば「アメリカは日本の領土問題に対して少し距離を置く」との信号を発信したのだ。
お断りするが、戦略上、日本はアメリカと共に発展すべきとの考えは大前提である。しかし、従来のような盲目の従属ではアメリカは日本が一人前とは認めない。言うべきは言い、良きパートナーとしてお互いを補完しつつ両国の発展を目指さなければ、結果的に良い協力関係にはなりえない。
例えば、原子爆弾投下に関して、日本はアメリカに何も主張していないが、これが逆の立場だったら、アメリカは必ず報復として原爆投下を目指す。アメリカから見て、何で公式に文句を言わないのか、言わないなら言わないで何で言わないかが分からない。その上、盲目の従属である。かなり軽んじられているというか、要求すれば何でも実現する植民地と同じような見方になっている。
(かつてスイス人と同行した時、スイス人は正しいと思ったことは絶対譲らなかった。とことん主張したのには驚かされた。アメリカでも、日本人留学生が誰かを議論で言い負かした時、初めて存在を認めて貰える。それまでは一人前とはみなされていない。)
現実の状況としても、日本政府の重要情報は全部把握できているし、官僚はマクロ的にコントロールできている。つまり、日本は掌の中で転がせる状態だ。その日本が反アメリカなどとんでもないとの考えは有るに違いない。
これまで日本が近隣国と連携しあうのはアメリカにとって極めて都合が悪かった。しかし、中国の覇権主義が明確になり、アメリカの地位を脅かすことが確実になった時点で、日本の重要度が増している。尖閣諸島の防衛線を日本が守ることが軍事予算を縮小してゆく中で絶対条件になっている。
安倍首相がアメリカ重視、アメリカとの同盟関係強化を打ち出したこともあるが、アメリカはアベノミクスを支持し、金融緩和を許容している。2011年秋以来、アメリカの日本に対する基本的な姿勢は変わってきた。
一方でロシアのプーチン大統領はアメリカのシェールガスに関して焦りを深めている。天然ガスの供給条件を戦略的な武器とし、ヨーロッパや周辺国に対する影響力を強め、かつ経済発展を推し進めようとしていた当てが外れてしまった。そこで、プーチンは北方領土を餌に、日本に新たな開発、パイプライン建設、天然ガス購入などを持ちかけるつもりかもしれない。
日本としては、最後のチャンの可能性が有るので、欲張らず話に乗ったらよい。(とりあえずは二島返還で十分)ただし、その前にオバマ大統領の協力を担保しておくことだ。そのためにはアメリカから出される交換条件を飲まなければならない。日本のマクロ政策に関して、アメリカの協力無しには何も進まない。