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巨大ブラックホールの衝突が新宇宙を形成⇒循環宇宙論、有機物質から人間への進化メカニズム(循環論理の評価)⇒戦略的進化論

吉田調書で改めて浮かぶ故吉田昌郎氏の英雄行為と原発安全性を廃棄させた最高責任者としての大罪

2014年09月14日 13時28分14秒 | 深刻な問題

 吉田所長の凄かったところは、福島原発の1,2,3号機のメルトダウンという危機的状況で現場責任者として一歩も退かず指揮をとり続けた事と(普通は逃げる)、官邸からの指示にも拘らず炉心冷却のため海水を入れて更なる大惨事を防いだことだろうね。

 大量の放射能が東京にまで達し、日本が壊滅状態となってもおかしくは無かった。吉田調書を飛ばし読みして、彼は自ら放射能を浴びて死ぬことも有り得ると感じながら、嵐のように降り注ぐ難問の解決に当たっていたのだろう。

 アメリカ政府は福島原発4号機が空焚きで放射能が大拡散する事を恐れ、アメリカ人関係者に避難指示を出した。ヘリコプターを飛ばして撮影すると槽に水が溜まっているのが確認され安堵となったが、日本国内には知らされていなかった。

 吉田主張は確かに日本を救った英雄だった。しかし、見方を変えれば自ら招いた災害を最小限に抑制したいとの思いも、心の底では強かったのではないか。

 2008年原子力設備管理部の最高責任者だった吉田氏は、最大水位10.2m、浸水高15.7mの津波想定をそんな馬鹿な事が起こるはずがないと一蹴し、対策しなかった。今思うと東電にとって、これは表面化できないものの大変な業績だった。

 東電は津波を5.7mに設定していた。もし、15.7mに変更すると、対策設備費用は莫大である。防波堤だけではない。送電系統、非常用発電機ほか原発全体の安全設備を徹底的に見直すと1カ所の発電所で数千億円になるのではないか。

 電力会社は総括原価方式(自社で積み上げた見積もりが通る世界)で報酬率一定だから、設備費などが高いほど利益が向上する。しかし、東電は経営効率を追求していたから莫大な対策費は非常に痛い。

 責任問題も浮上する。こういう時、安全議論を叩き潰す人物が登場するとトップとしては大変助かる。電力会社はおしなべて優等生集団、特にトップを占める東大卒等の超優等生グループではできない。

 また、全電力喪失に至った事はとても原子力技術のトップとして、発電所所長として、安全管理をまともに実施していたとは言えない。現に東北電力女川原発では対策できていた(これが普通)から事故も起きなかった。

 吉田所長は、安全検討の障害になったね。技術トップが大きな声で15.7mの津波は有り得ないと言えば、東電社内では、若手だけでなく課長クラスもビビッて、誰も安全面で検討できないと判断する。

 吉田氏の事ではないが不都合な状況を一蹴するやくざは、どこの電力会社でも重宝されている。2010年6月、吉田氏は執行役員になっている。電力OBなら対策を潰した予算軽減が効いたと断言できる。

 調書では東京電力が原発に対する災害を甘く見た要因に柏崎刈羽原発に設計許容度を超える振動が加わりながらプラント停止と炉心冷却できたことが有ると指摘している。当時、マスコミは地震データを求めたが東電はデータ喪失と発表した。

 あの時も書いたが、東電は嘘を発表し逃げたと思われる。やはり、地震は設計許容度を超えていたので隠したのだ。プラントも安全に停止し、世間も簡単にごまかすことが出来、満身に繋がったと言える。

 実は某五国電力(どこか想像して下さい)の原発3号機建設では、電力中央研究所の水理実験設備が一杯で、自社に水理実験室を建設する事になった。その時、水理実験室天井を1m下げたのが建設土木部の某課長だった。

 建設費が安くなるのがその理由。東電津波の話と重なる。入社5年目の拓井は設備全般を一人で担当し(水槽等は土木が協力)、「安全性最優先」を宣言した。しかし暗礁に乗り上げた。撮影などの作業を兼ねた天井クレーンが設置できない。

《原子力関連設備で担当者が「安全最優先宣言」した例は全電力でも見当たらないだろう。福島原発事故でわかる通り、東電は安全よりコストを優先していた。拓井は安全については譲らず躊躇なく宣言した》

 元の案に戻すよう申し入れた所「副社長の承認を得ているので、撤回するには副社長を説得しろ」と言われ、拓井の上司が諦めた。特に問題は、天井クレーンへの乗り降り。

 拓井の上司の主席と副主席は、高い位置の回廊から腹ばいになって乗り降りする案を出す。拓井は断固拒否。2か月間、拓井は必死にメーカーとの協議を重ね、何とか解決策を見出した。

 話はそれるが、このクレーンメーカーを含め、盆暮には業者などから商品が大量に届き、山のように積み上げられた。拓井は現金を含めて全部を自費で返送し、賄賂を提案した業者は不採用とした。

 拓井以外は、出張費など有り難く頂戴したと自慢した人間もいたほど。クレーン検収日のメーカーお礼会に担当の拓井は出なかったが、まるで関係ない人間も大勢参加し、2次会以降もメーカーは相当散財したと聞いた。

 歴代の電力トップが賄賂を受け取っていたこと(中部電力だけ事件化)を贈った側が伝えてくれたが、つまり、電力会社トップに上り詰める人間にとって賄賂・汚職は常識。断った事が明るみに出れば当然トップから見て嫌味以外の何物でもない。

 拓井も「灰色を白と言う」ぐらいの社内常識は身につけたが、黒を白とはしなかった。結果として、拓井は課長クラスになるのも容易ではなく(辞職覚悟の抗議で実現)、最後は早期優遇退職制度で辞めるに至った。

 拓井の昇進を常に阻み続けたのは父親が後藤田正晴の後援会会長していた藤山だった。工業高校卒、国内留学で大卒扱いになった藤山の苦労も理解できるが、粉飾提案ぐらいしかできない人間が常務まで昇進、何人もの人間を潰してきたという、電力会社の異常さを示す例である。

 「そんな馬鹿な事が有るわけない」発言で拓井が思い出すのは、拓井が出向中に新規事業を立ち上げ営業部に復帰し副社長に呼ばれた時。拓井が「課長ながら部下も予算も何の権限も無く、藤山部長に会うにも何をするにしろ次長の許可を厳命された」と伝えた時の副社長の返事だった。

 副社長は全く取り付くしまも無く、拓井を異常人間扱い。その時の新賀次長は拓井の監視役で勤務時間中は朝から夕方までパソコンゲームで遊んでいたが、情報部門部長、取締役となり、つい先頃は情報通信子会社の社長としてテレビ出演していた。

 藤山が自分の人事に対する影響力を見せつける格好の舞台を作ったのだ。藤山は上司を飛ばすぐらいは平気で出来たに違いない。人事をお願いするため、OBが藤山参りを繰り返していた。

 元々、土木屋でもない拓井が水理実験室を担当した原因は、火力発電所の当直で夜間勤務が3連続で厳しいところから、発電課長に改善を申し入れたことなどが原因だった(拓井にとって左遷人事は当たり前)。

 入社2年目だった拓井は当直の勤務アンケート調査し、当直単位で90%から100%が夜間3連続から2連続への変更を希望している事を把握。拓井は当直員の希望を伝えるべく出向いたが課長(状況は十分知っていた)は「時間が無い」と聞かなかった。

 拓井が研究所に転勤後、二人の若い当直員が死亡し、2連続夜間体制になった。しかし、拓井の申し出が通っていれば、二人の死者は出さずに済んだ。しかも、3連続夜勤は発電課長の個人的な思いに過ぎなかかった。

 先頃の五国電力のトップ人事を見ても、拓井のように安全上問題の解決に乗り出すと(そういう人間はまずいないが)早い段階で制裁され、上手に当たらず触らずで逃げた人間が上り詰める事が良く理解できる。

 今も、電力内部では原子力の安全性議論はご法度で、まともな議論が出来ない状況だろう。原子力は安全性が確認されれば、推進すべきだが、嘘作文を書いてきた事務屋の万葉社長(元原子力本部長で原子力の安全神話を社内外に刷り込ませた張本人)が君臨する現状で安全性が正確に確認されるとは思えない。

 故吉田所長の英雄行為はきちんと評価する必要が有る。それは紛れもない事実だが、もし吉田所長がまともに安全対策を講じていたら、少なくとも執行役員にはなれなかっただろう。