Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「学術書を書く」という本

2016-03-13 10:48:55 | 読書
鈴木 哲也, 高瀬 桃子 京都大学学術出版会(2015/9).

鈴木さんは京都大学学術出版会編集長.高瀬さんは京都大学理学部卒業.京都大学大学院理学研究科(霊長類学専攻)中退.出版社勤務を経て独立 (桃夭舎)とのこと.

ホームベージにあるように,
 序章 Publish or Perish からPublish and Perish の時代へ
  ― なぜ,学術書の書き方を身につけるのか,
 第 I 部 考える ― 電子化時代に学術書を書くということ,
 第 Ⅱ 部 書いてみる ―魅力的な学術書の執筆技法,
 第 Ⅲ 部 刊行する ― サーキュレーションを高める工夫と制作の作法,
 おわりに ― 学術書を「書く」ことと「読む」こと
という構成.一段下の章のタイトルにも部のタイトル同様にキャッチコピー付きだが,これは第4章第5節「見出しを工夫する」のお手本だろう.

書籍が電子化し,書いても評価されない時代に,読まれるものをどう書くか.この本では「二回り外,三回り外」が随所で強調されている.自分の研究と直接に関わるわけではないが,それに関心を持って貰いたい人,役立てて欲しい人々に向けて本を書こうという趣旨.
理工系実験系のワタクシとしては,第 II 部第 III 部に興味が集中した.

博士論文を本として刊行するために,内容の順序を前後させたり,タイトルを変えたりする.「平安貴族の宗教的心性とその変容」という博士論文は「夢とモノノケの精神史」に変身し,装丁も赤っぽくおどろおどろしくなったのだそうだ.

工業製品としての「本」を製造する工程は,Word とパソコンによる執筆とは違う,まず単純なテキストファイル形式のデータとして扱われることが強調される.
16 トンの経験では,学術書と言うよりポピュラーサイエンス本ともいうべき「音律と音階の科学」講談社ブルーバックス(2007/9)はまさに本書にあるような工程で製造された.デザイン的には講談社らしくちょっとダサい.

もっと学術書らしい「レーザーとプラズマと粒子ビーム」大阪大学出版会(2012/3)の場合は,自分が TeX で作った原稿がそのまま本になった.従来の出版会本と体裁を揃えるのが大変で,印刷会社におられたTeX のエキスパートにとてもお世話になった.しかしいったんテンプレートがしっかりできてしまえば,これで問題ないはず.
残念ながらこの本では TeX 原稿をそのまま刊行することは全く視野に入れていない.

テーマばかりでなく,大学出版会にも興味があって,大学図書館から借用.あまり読まれた形跡がないのが残念.
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