Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

木菟燈籠

2017-02-08 09:16:11 | 読書
小沼 丹,講談社文芸文庫 (2016/12).
ただしこのカバーは講談社 (1978/06) の単行本のもの.
図書館本.

*****内容紹介
そこはかとないユーモアやはにかみを湛えたかざりのない文章でどこか懐かしいような風景を描き上げて多くのファンを持つ“小沼文学の世界”。季節や時代の移ろいに先輩の作家や同僚の教員、学生時代の友人など愛すべき人々の風貌を髣髴とさせる、この著者ならではの好短篇集。*****Amazon による

歳をとると昔のことを思いだすようになった.少し前は思い出したくないことを思い出して頭を抱えたりしたが,最近はそれも仕方ないと諦めるようになった.そんな心境にぴったり...と思ったが,この本を書いた時の著者は,今の自分より15歳も若かったのだ.
小沼さんは早熟ならぬ早老か.
はたまた,(自分も含め) 当人が高齢であることを自覚する年齢が上がったのか.そういえば,75 歳から高齢者とするとのおフレが出たが...

11 編の作品のどれにも,人が死んだことが伝わってくる場面がある.
「悉皆」という言葉が頻出する,「後」と書くかわりに「后」と書く,などの特徴がある.

著者は井伏鱒二に指示したそうで,複数回登場する清水町先生が井伏らしい.冒頭の「四十雀」では井伏は実名だが,ここの「林さん」とは誰だろう.堀江敏幸の解説には,そう言うことは書いてない.

著者には「黒いハンケチ」というミステリ短編集がある.

☆☆☆★
コメント (2)
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TeX から html と docx

2017-02-07 09:14:21 | エトセト等
昨年 TeX で書いた論文を書き直して kindle で出版しようと思い立った.しかし出稿は word または html と指定されている.

いくつかの無料サイトで,pdf を word に変換してくれると言う.試みたが,数式はだめだった.
現在取り組み中は無料ソフト pandoc の使用である.a universal document converter と銘打っている.pdf からではなく,もとの LaTeX から docx あるいは html を作るのなら,数式も生成できそうだ.
OS X のインストーラーが用意されている.Getting started というページに逐一従えばいいのだが,久しぶりのターミナル操作で,コマンド1行打つにもミスタイプしきりで情けなくなった.

pandoc --self-contained -s --latexmath SMPK.tex -o SMPK.html

の1行で,SMPK.tex は SMPK.html に数式も含めあっさり変換される.上が LaTeX から作った pdf.下が Pandoc が LaTeX を変換した html.式の番号がついたのは期待以上.文中で式番と文献の番号が変換されないのはワンパスだから仕方がないのかも.図の出力が今後の課題.

pandoc --self-contained -s --latexmath SMPK.tex -o SMPK.docx

で word  もできることを期待した.一見 pdf が再現され (ただし章題が勝手なカラー化された),html のようにダサくはないのだが,数式は一切ダメだった.
「このファイルには Windows 版 Word 2007 の数式が含まれています.しかしお持ちの Word for Mac は,もはやこの数式をサポートしません,」とのことである.

じつは退職以来 Word は Pages で代行しているのだが,こちらに持って行くと,まず「Microsoft Office で作成された数式が削除されました」というお断りが出現.

この話題 近未来へ続きます.
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にょにょにょっ記

2017-02-06 09:45:17 | 読書
穂村 弘, フジモト マサル.文藝春秋 (2015/9).イラストのフジモト マサル氏は2015年11月22日,慢性骨髄性白血病のため46歳で死去.穂村氏の共著者として名前が出たのはこれが最初で最後だったのかもしれない.
ご覧のようにカバーイラストの表紙側と裏表紙側は対で「鏡の中の鏡」の変形.本文のイラストは,カットあり,ページ大あり.テキストと関係があると思えないものもある.

にょっ記とは日記のこと.毎日ではないが相当な頻度で,4月から3月まで.実態は日付・タイトルありの改行の多い散文集.日記とはいえほとんど季節感はない.

短いのを1日ぶんだけ紹介すると

*****
4月16日 単位

元気さの単位を考える.
1ハイジ= 10 クララ
*****

しかしこんなに短いのは珍しい.著者は歌人であり,「ストーリーを一行に凝縮するもの」というのが短歌に対する我が先入観だが,ここでは短いネタを引き延ばしている日も多い.
例えば 12/17 は「はらぺこあおむし」が中国で出版されると「非常飢餓的毛毛蟲」.これで1ページ.
12/18 休み.12/19 は「漢字の算数」というタイトルで「毛虫+毛虫+毛虫=毳蟲」これで二日ぶん.

12/20 は,松本城の出口の注意書き「再入城はできません」を引き延ばして1ページ.

「一冊読むと,くせになる」が CM で,「にょっ記」「にょっにょっ記」の2冊がすでに文庫入りしている.

ご覧のように図書館本.

☆☆☆
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戦場に行かない戦争文学「逸見小学校」

2017-02-05 09:33:18 | 読書
庄野潤三,新潮社(2011/7).
逸見はヘミと読む.タイトルに反し,小学生は登場しない.戦時中に小学校は海軍部隊に接収される.そこでの出来事が 27歳の海軍少尉の視点で記述される.
単行本刊行に読もうかなと思ったが,そのまま忘れていたのを,古書店で見かけて購入...このごろ読書は古書と図書館本に限られつつある.

終戦の年の春,5つの海軍部隊が,横須賀の逸見小学校に集まり,赴任までの時を過ごす.われわれが読み慣れているのは,二等兵が殴られたりしてひどい目に会う場面だが,少尉ともなればけっこうのんきである.フィリピンに赴任すれば死が待っているのだが,英気を養うためとして,球技をしたり,酒を飲んだり,部下たちを勝手に一時帰郷させたりする.
主人公はこの逸見小学校に行く朝,二日酔いで集合に遅れてしまう.行ってから三日目には結構候補の女性に会いに行く.
やや時間的に遡ると,妹に「誰か結婚する候補者はいないか」と聞き,卒業アルバムを見せられてのやりとりがある,「美人じゃないね」「目もと口もとが可愛いのよ.性質がアッサリしてて,行動的で,のびのびしてて,兄さんの好きになりそうな人よ」.主人公の家庭は現代以上に現代的だったらしい.

著者 (1921-2009) の死後発見された原稿で,「原稿1枚ヌケ」が3箇所ほど.最後はフィリピンにわたる直前,2度目に彼女と話している場面で (終) とななるが,本当にこれで終わったのだろうか.

登場する同僚の少尉たちの蛮行が描かれている.それぞれモデルがたやすく同定できるから,この小説が出版されなかったという説もあり,また戦闘そのものが派手に描かれていないためという説もある.後者について解説 (鷺 只雄) によれば,著者は「戦争というのはひと口に悲惨といってしまうのでは足りなくて,いろんなおかしみや哀愁のあることを生み出すのに都合のいい状況をつくる」と語っていたという,この作品はその実践だろう.

同じような状況を小説に書いたものに,自分の知る範囲では,島尾敏雄「魚雷艇学生」がある.主人公はやはり少尉で年齢も同じくらいだ.島尾流に言えばそのテーマは特攻の前の「奔湍の中の淀み」である.
しかし島尾作品に比べ,庄野作品はずっと楽天的.ちなみに庄野と島尾は親交があったとのこと.

☆☆☆★
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恵方巻きと鰯

2017-02-04 09:50:27 | エトセト等
この地方では節分には恵方巻きと鰯を食べるもの,だそうだ.

ふたつのミッションを一挙に達成すべく,取り出したのは鰯のサーディン缶.
手巻き用海苔で幅が狭い.巻いたとき1匹では尻尾の方が飯ばかりになってしまうと思って,2匹を尻尾を中にして図のように配置した.他にたまごやきとキュウリも入れたが,図では省略.
このままぎゅっと巻いたら,両端から鰯が飛び出してしまった.
お粗末でした.

予想された味.安ワインにマッチした.しかし巻くのが面倒なので,残った鰯はそのままいただくことに.

FB によれば,太巻きの丸かじりは,昔 花街で尺八行為を連想させた芸妓遊びに起源があるのだそうだ.真偽のほどは知りません.
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吉田博の山岳版画

2017-02-03 09:34:29 | お絵かき


1/29 朝放映 (2/5夜再放映の予定) の NHK 日曜美術館で吉田博を取り上げていたので,本棚をかきまわして,
 版画:吉田博,文・写真:白旗史朗「山の絵本」講談社 (1985/5)
を発掘した.

近・現代の版画というと,悪く言えば,棟方志功みたいに,技術不足を芸術性で補うのが主流だ.しかし吉田版画は江戸時代からの技術を発展させ,西洋画の微妙な陰影をも表現する.NHK 番組では平均30?版といわれる多色刷りを追試していた.
風景版画,とくに富士山が出てくるものは綺麗すぎる.むしろ上の「猟師の話」のような作品が好きだ.これは上記の山の絵本の裏側のカバーなので右下に定価がある. 昔の本はバーコードがないから鑑賞に耐える.

この本には油絵も数点.解説 (関根準一郎) には,吉田が画壇のボス黒田清隆をなぐった話などが紹介されている.吉田家の養子になり,義妹と結婚したそうで,出版当時 93 歳だったこの妻・ふじを からの聞き書きも面白い.漱石の「虞美人草」の彼女・藤尾の名は ふじをに由来しているのだそうだ.


もう一枚,北アルプスの五色原.吉田の山岳版画は全部写生に基づいている.制作時 1920 代にアルプスに入るのはたいへんなことだった...と,白旗があとがきで書いている.
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珍カメラ大集合

2017-02-02 09:19:44 | エトセト等
松井 弘治「あの日あの時 思い出カメラ」海鳥社 (2016/12).

表紙上段中央は「フランスの単眼巨人 シクロープ4.5」.6x9 判で2枚のミラーでボディを薄くした構造.タイトルの真下は中国のカメラ紅旗20.ライカみたいだが,文化大革命当時中国の総力を上げて作られたという幻のカメラである.お宝価格がついているが出来はあまり良くないそうだ.
これらは「珍」というほどではないが,目次には,1億円のカメラ,花魁カメラ,暗視カメラ,マシンガンカメラ, 3D ステレオ....あるいはニコン SP の衣をまとったデジカメなど,メカ好きにはとても楽しい本.

2部構成で,1部はエッセイで,紹介されたカメラには,そのカメラで撮った写真が添えられている.2部はカタログ集.カメラの寸法・重さの記載がないのはちょっとね.
リストの最後は右の MICK-A-MATIC.アメリカ製で鼻がレンズだそうだ.

著者は眼科医で,これだけのコレクションを作るのだからさぞかしお金持ちだろうと思ったら,「医者のドラ息子」というタイトルのエッセイがあった.残念ながらこの中でぼくが持っていたのはフジペットくらいのものだった.

図書館で借用.
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画家とモデル

2017-02-01 10:35:05 | お絵かき


高塚省吾の絵の話」によれば,写真モデルの報酬は絵画モデルの場合の一桁上で,それは顔がバレるからだという.たしかにピカソの絵のモデルは同定しようと言う気にならないが,写実絵画の場合はどうだろう.
ふつうの絵 (ピカソもとりあえず普通の絵) では,画家が主でモデルは画家に隠れるが,写実絵画の場合は画家の存在が見えなくなりがちである.さらに,裸体画では人体は単なるオブジェだが,着衣の人物の絵ではモデルの生活とか人格とかが生々しく感じられる.

これは,ふくやま美術館「驚きの写実絵画」に展示されていた,生島浩「5:55」.開館当時マスコミに取り上げられた人気作だそうだ.

ホキ美術館のホームページに作家のことばがあった.
*****色調も地味なこの絵が思っていたより評判が悪くないようなので、ちょっと驚いてしまいました。おそらくは、この絵に対してというよりは、この絵に登場している彼女の魅力に反応しているようにも思えます。*****
続きがあって
*****今後も彼女をモデルとした絵を描いていきたかったのですが、残念ながら拒否されてしまいました。*****
だそうだ.

画家としては
*****対象物に克明に迫るものではなく、表現手段に因る技術的構築がキャンバスの上で為されたかどうかに関心があります。確かに「5:55」の空間を自分が演出し得たのか、実に気になるところです。*****
そして,
*****自分の絵作りに夢中な私がモデルさんに振られても当然の事と納得はしています。*****
と結んでいた.

会場の解説にはまったく別なことが書いてあった.「噂では,モデルは6時までという約束.だから彼女はもうすぐ帰れると言うそわそわした気分.それが絵に出ている」というような趣旨だったと思う.それが画家の「演出」だろうか.

「生島浩 ウィーン美術史美術館にて模写」という動画がある.5:55 の光の影がフェルメール的だが,画家ご本人は,あまりそう言われたくないらしい.
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