【安倍政権】:5年半を忘れたか 支持率増加“1億総健忘症”の国
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【安倍政権】:5年半を忘れたか 支持率増加“1億総健忘症”の国
「大衆の多くは無知で愚かである」。ナチス・ドイツの指導者ヒトラーの言葉だが、この国の国民も極めて危うい方向に進んでいると言わざるを得ない。自民党総裁選が7日に告示されたのを受け、朝日新聞が翌8、9両日に世論調査を実施したのだが、その結果が驚きだ。安倍首相と石破元幹事長の両候補のうち、どちらが次期総裁にふさわしいかを尋ねたところ、安倍が前回調査(8月)から7ポイントもアップして39%、石破が同1ポイントアップの27%だったのだ。
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別に石破の肩を持つ気は毛頭ないが、前回と今回の調査の間に安倍が国家・国民のために特別に汗をかいたなんて話はひとつもない。総裁選への立候補を先に表明した石破の公開討論の呼びかけをひたすら無視して逃げ回っていただけだ。
さらに仰天だったのが、安倍内閣の支持率(41%)が7カ月ぶりに不支持率(38%)を上回ったことだ。繰り返すが、安倍がこの間に内政や外交で強いリーダーシップを発揮した場面は一度もないのだ。むしろ、その逆で、モリカケ問題の説明責任を果たさなかったばかりか、南スーダンPKOの日報隠蔽や厚労省の裁量労働制データの捏造が発覚してもノラリクラリ。西日本豪雨で気象庁が異例の会見を開いて警告を発する中、議員宿舎で開かれた酒席宴会「赤坂自民亭」に出席して猛批判を浴びたのも記憶に新しい。つまり、支持率が下がる要因はあっても、上がる理由はこれっぽっちもないのだ。
ついでに言うと、安倍を支持する理由のうち、「人柄や言動が信頼できる」との回答はわずか13%。総裁選で争点として一番議論してほしいことで、最も高かったのは「社会保障のあり方」(26%)で、安倍が「秋の臨時国会の提出を目指す」と意欲マンマンの「憲法改正」(8%)は最も低かった。
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ウソとゴマカシばかり(C)日刊ゲンダイ
■「ウソつき・不公正」の男に盲従する自民党
人柄や言動が信用されていない上、国民にとっては関心の低い改憲に前のめりになっている男がなぜ、総裁=総理大臣にふさわしいのか。まさか国民も「勝ち馬に乗れ」と考えているワケじゃないだろうが、摩訶不思議としか言いようがない。
マトモな政策論争が行われていないにもかかわらず、そんな安倍に盲従している多くの自民党議員、党員もまた、イカれている。モリカケ問題で「私の不徳の致すところからさまざまな批判があり、皆さんにかぶっていただき、大変だったと思う」なんて他人事のように言い放ち、「でも自民党はそういう時にこそ一致結束する」と、自身の責任を党に押し付けるペテン師に従う神経が分からない。
「正直・公正」という、政治家として極めて当たり前のスローガンに対して「個人攻撃」と憤る「ウソつき・不公正」の男から、総裁選支持の誓約書を求められ、歯向かえば人事で干すゾと恫喝されている国会議員は情けないと思わないのか。冷や飯を食わせられるから、などと考えているのであれば、あまりに不見識で卑しい。従うべきは主権者である国民なのだ。政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう言う。
「『冷や飯を食わせるぞ』と脅されただけで震え上がっている自民党議員は何とも情けなく、ヒツジの群れのようですが、世論調査で安倍首相の支持が高いのは、『他にいないから』という理由に加え、台風、地震といった災害に乗じて必要以上にメディアの露出を増やしている“戦略”が奏功しているのでしょう。それに何と言っても、メディアの『安倍圧勝』報道に引っ張られている部分が大きいと思います」
総裁3選のためなら災害も利用する。安倍の狡猾な正体見たりではないか。
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これがまっとうな声だ(C)日刊ゲンダイ
◆国民を痛め続ける「DV男」の首相続投を許してはならない
北海道胆振東部地震や安倍の訪ロもあって、てんで盛り上がっていない総裁選だが、言うまでもなく争点は5年9カ月のアベ政治の総括だ。
安倍は「不徳の致すところ」と政権運営を振り返っていたが、そんな簡単な謝罪の言葉で許されるものじゃない。アベ政治は議会制民主主義の破壊だ。いったんヤルと決めたら、野党の声は一切無視し、何があろうが結論ありきで審議を進め、ウソと論理のすり替えで時間を稼ぎ、最後は数の力で強行採決する独裁政治なのだ。政策も人事も、お友達やイエスマンだけを優遇し、公文書の廃棄、改ざんもお構いなし。そんなアベ政治がさらに3年も続くなんて冗談じゃない。
それなのに、安倍内閣の支持率が微増なのだから、国民はアベ政治を忘れてしまったかのよう。まるで1億総健忘症だ。騙されても騙されても詐欺師の言いなりなんて、ペテン政権には笑いが止まらないに違いない。
まさにペテン師天国だが、おぞましさを警鐘乱打するべき役割を担っているはずの大メディアがどこか腰が引けているから、どうしようもない。
〈問われているのは、5年9カ月におよぶ長期政権の功罪と、この国の次の3年のありようである〉(朝日新聞)、〈国民にのしかかる将来不安をいかに解消するのか。(中略)3年後の日本の姿を示す具体的なメッセージがあってしかるべきだろう〉(毎日新聞)、〈日本の生産性や潜在成長率をいかに高め、財政健全化とどう両立させていくかは、総裁選の最大の争点であるべきだ〉(日経新聞)――。
安倍陣営に「公平・公正な報道」と詰め寄られてビビっているのか分からないが、トランプ政権を猛批判している米メディアを見習ったらどうなのか。
■5年9カ月で安倍がついたウソはキリがない
何度でも言うが、安倍は平気でウソをつく、希代のペテン師だ。
総裁選の共同会見で「まっとうな経済を取り戻すことができた」と自画自賛したアベノミクスだって失敗は明らか。全ての地域で有効求人倍率が1倍を超えた、と威張っているが、増えた求人は賃金の安い非正規ばかり。そもそも、第2次安倍政権が発足した2012年から16年の4年間を見ると、団塊世代の大量リタイアで労働人口は400万人も減った。分母の求職者数が急減したのだから、分子の求人数が変わらなくても求人倍率が上がるのは当然。アベノミクスの成果でも何でもない。
資本金10億円以上の大企業の内部留保は過去最高の425兆円(17年度)を超える一方、2人以上世帯の家計の実質可処分所得は12年平均の44万5497円から17年は43万2253円にダウン。野党が指摘している通り、大企業がボロ儲けしただけで庶民には何ら恩恵がないのだ。アベノミクスは結局、日銀の尻を叩いて市場にジャブジャブとカネを流し、通貨量を増やして金利や為替を操作しただけ。肝心要の成長戦略が何もないのだから、使い道のないカネが内部留保に回るのは当たり前なのだ。
〈2年で2%インフレにしてデフレ脱却〉〈日本人を乗せた米艦を防護するために安保法制が必要〉〈集団的自衛権の行使が可能と言ってる憲法学者はたくさんいる〉〈裁量労働の方が労働時間が短いというデータもある〉……。アベノミクスに限らず、この5年9カ月を振り返れば、安倍がついたウソは枚挙にいとまがない。
大メディアの記者は総裁選の共同会見で、こうしたウソを一つ一つ取り上げ、安倍に問いただすべきなのに、何をトチ狂ったのか、総裁選で勝ったら安倍を入閣させるか、なんて石破に質問していたからアングリだ。何ら厳しい質問をしない大メディアの記者に安倍もシメシメとほくそ笑んだに違いない。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。
「アベノミクスも外交もほぼ失敗しているのに、今のメディア、特にテレビは安倍政権の実相を正しく伝えていません。だから国民もよく分からない。さらに言えば、自分の国がまさか中国や北朝鮮のように政治が私物化されているとは思いたくないのでしょう。実際は相当酷い政治状況になっているのに、その現実を見たくないという思いが『それでも安倍さんかな』という心理につながっているのではないか。極論すれば、配偶者などから繰り返し暴力を受けているDV被害者と同じで、メディアの責任は極めて重大だと思います」
国民を痛め続ける“DV男”の首相続投だけは絶対ダメだ。
元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】 2018年09月12日 15:25:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。