【社説】:①外国人就労拡大 不安払拭へ政府は説明尽くせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:①外国人就労拡大 不安払拭へ政府は説明尽くせ
経済や社会の活力を維持するため、外国人労働者をどう位置付けるか。将来を見通した戦略と周到な準備が必要だ。国民の不安解消に向け、丁寧な説明が求められる。
政府は、出入国管理・難民認定法改正案を閣議決定した。新たな在留資格を創設し、人手不足が深刻な業種に限り就労を認める。来年4月の施行を目指す。
就労目的の滞在は、医師など高度な専門職種に限られてきたが、単純労働に門戸を広げる。これまでの方針の転換となる。
日本で働く外国人は急増しており、128万人に上る。今後さらに、生産年齢人口の減少が見込まれる。外国人労働者の受け入れ拡大はやむを得ない選択だろう。
新制度の狙いと、将来の青写真を明示することが重要である。
新資格は特定技能1号と2号の2種類だ。1号は就業分野の知識や一定の日本語能力が求められ、最長5年間の在留を認める。
2号の取得には、さらに難しい技能試験に合格する必要がある。家族を帯同でき、定期的な審査を条件に事実上の永住も可能だ。
学業を本務とする留学生と、途上国への技術支援が主眼の技能実習生に、単純労働を依存している現状を放置すべきではない。
1号は、3年以上の経験を積んだ技能実習生が無試験で取得できるようになる。技能実習制度とどう両立させるのか。分かりやすく説明してもらいたい。
新資格の就業は、農業や建設、介護など14業種を検討しており、さらに増える可能性がある。
受け入れ人数が野放図に増えるのではないかとの懸念が残る。業種ごとに想定している人数と全体の規模を早期に示すべきだ。
安倍首相は「即戦力となる外国人材を期限を付して受け入れる」と強調する。改正案は、人手不足が解消されたときの受け入れ停止を盛り込んだ。
こうした措置だけで、「移民政策」と異なると言えるのか。十分な議論が欠かせない。
改正案は、外国人労働者について、報酬や福利厚生などで日本人と同等の処遇を図るよう企業に義務づけた。住宅確保や転職相談などの支援も実施する。
外国人労働者が日本社会に適応できるよう、総合的な支援策を講じることが求められる。
法務省の外局として「出入国在留管理庁」を創設する方針だ。在留外国人の管理や、受け入れ企業の指導など、適切な態勢を整えることが大切である。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2018年11月03日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。