【日産自動車】:カリスマ、ゴーン容疑者逮捕 50億円過少記載
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:カリスマ、ゴーン容疑者逮捕 50億円過少記載
「コストカッター」と呼ばれたカリスマ経営者に何が-。東京地検特捜部は19日、日産自動車のカルロス・ゴーン会長(64)を、同社の有価証券報告書に自らの役員報酬を約50億円少なく記載した疑いがあるとして、金融商品取引法違反の疑いで逮捕した。日産は、内部調査で会社資金の私的流用など重大な不正行為が発覚したと発表。22日に会長解職を取締役会に提案する。内部告発を受けた「ゴーン切り」に踏み切った。日産の再建に尽力した同容疑者だが、超高額報酬への疑問の声も上がっていた。

会見に臨む日産の西川広人社長(撮影・林敏行)
逮捕容疑は、ゴーン容疑者が15年3月期までの5年間に計約99億9800万円の金銭報酬を受け取ったにもかかわらず、計約49億8700万円と、過少にうその記載をした有価証券報告書を関東財務局に提出した疑い。ゴーン容疑者と共謀したとして、同社代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)も逮捕された。
日産の有価証券報告書によると、ゴーン容疑者の報酬は16年度までは3年連続で10億円を超えたが、17年度は7億3500万円。過去最高だった16年度の10億9800万円から3割以上、初めて減少した。特捜部は2人の認否を明かしていない。19日夜、横浜市の日産本社を家宅捜索した。
カリスマ経営者の突然の逮捕劇。18年上半期の世界販売台数トップのルノー・日産・三菱自動車連合には大打撃だ。自動車業界全体への影響も必至。20日の日産の株価も関心を集める。
今回の逮捕劇は、日産による事実上の「ゴーン切り」だ。同社の西川(さいかわ)広人社長(65)は19日夜、横浜市の本社で緊急会見。ゴーン容疑者の不正に関し(1)有価証券報告書への報酬減額の記載(2)私的な目的での投資金支出(3)私的な目的での経費支出の3点が確認されたという。内部通報で発覚し、数カ月間調査。「残念をはるかに超えて強い憤り、落胆を感じている」と硬い表情で語った。
22日の取締役会で2人の解職を提案する意向で、刑事告発や損害賠償も検討する。社内クーデターとの見方は否定してみせた。
ゴーン容疑者は、日本企業経営者の中でも飛び抜けて高い報酬が議論を呼んできたが、「日産の報酬水準はグローバルでは平均以下だ」(10年6月)とし、妥当だと強調してきた。同容疑者のカリスマ性を際立たせたのが高額報酬でもあったが、逆に権力の一極集中を招いたとの指摘もある。
ブラジル出身のゴーン容疑者は、日産の経営危機に際しルノーから派遣され00年に社長に就任。「コストカッター」と呼ばれた激しいリストラで大なたをふるい、日産をV字回復させた。17年4月に社長を退いたが、代表権のある会長で影響力を残していた。
昨年以降、新車の無資格検査問題や検査データ改ざんが発覚した日産には、さらなるダメージ。ルノーと日産の経営統合をめぐる駆け引きが、突然の逮捕劇の背景との臆測も出ている。
一方、三菱自動車も同容疑者の代表取締役会長職を速やかに解くことを取締役会に提案すると発表した。
◆金融商品取引法
04年のライブドア事件などを受け、金融取引を公正なものにするため、証券取引法を全面改正し、06年に成立した。有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載をした者は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科」と刑事罰を定めている。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【事件・犯罪・疑惑】 2018年11月20日 09:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。