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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【浜矩子のコラム】:経済学の権威2人から「不合格」をもらったトランプ大統領

2018-11-25 07:15:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【浜矩子のコラム】:経済学の権威2人から「不合格」をもらったトランプ大統領

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【浜矩子のコラム】:経済学の権威2人から「不合格」をもらったトランプ大統領

 米国の中間選挙はおおむね予想された通りの結果でした。下院で民主党が勝利したことは、それなりのインパクトがあるものの、「すばらしい成功」とか言っているトランプオヤジは今までの強硬路線を続けるのでしょう。上下院ねじれ状態で余裕がないため、中国に対しても激しさを増し、「絶対に人より損をしない」という独自の原則で突っ張る方向感がより過激になるのではないか。

独自の原則(C)UPI=共同

            独自の原則(C)UPI=共同

 強く思うのは、トランプオヤジが「国益にかなう大原則」として追求するのは次の2つだということ。

 ①米国が貿易赤字になるのは人のせいであり、貿易赤字は許されない。

 ②すべての物事は2国間のディールで決着することがすばらしい。

 しかし、①は経済学の生みの親、アダム・スミスの主張に真っ向から反しているし、②は経済学の歴史で最も大きな存在であるジョン・メイナード・ケインズの主張に反している。経済学の権威であるこの2人から鉄槌が下されるような酷いことをズバリやっているのがトランプオヤジなのです。

 アダム・スミスが「国富論」を書いたのは、「重商主義」と戦うためという側面がありました。重商主義では、貿易とは、自国に金・銀・財宝をガッポリ貯め込むために行うものという考え方。輸出を伸ばして、その代金としてのカネを貯め込む。国家権力を強めるために経済基盤を強化するという考え方にもつながります。

 アダム・スミスはこうした考えに異を唱えました。貿易とは、自分より安く何かを作れる人から安くモノを買って、豊かな生活を送るためにあるんだ、と。仕立屋が農業や鍛冶屋まがいのことをするのはバカらしい。餅は餅屋に任せ、いいものを安く買うのが貿易の醍醐味だという考え方です。

アダム・スミス(左)とケインズがトランプに鉄槌(C)ゲッティ/共同通信イメージズ

 アダム・スミス(左)とケインズがトランプに鉄槌(C)ゲッティ/共同通信イメージズ

 一方ケインズは、2国間の貿易収支にこだわらず、みんなで多角的に解決すべきであると主張しました。すべての国が2国間で物事を決着しようとし、2国間の貿易収支で「赤字だ」「黒字だ」と争った結果、世界経済発展の足を引っ張り、ひいては第2次世界大戦に至ったという反省です。戦後のブレトン・ウッズ体制(IMF体制)がつくられる過程で、そうした主張がなされました。

 「対中国で赤字だから悔しい」「対日本の赤字はたまらない」という考え方から脱却しないとダメだというのがケインズの主張です。つまり、トランプオヤジは、2人の経済学の大先生から2つの「F(fail)=不合格」をもらってしまっているのです。

 トランプオヤジはこの絶対的な「F」の2つの道を今後もとことん追求し、邁進していくでしょう。そんなことでいいのか。世界はその問題性を声高に指摘していかなければなりません。

 最近、アンドロイドで昔の人を現世に蘇らせる企画がはやっています。この際、アダム・スミスとケインズの2人に蘇ってもらい、トランプオヤジを叱ってもらいたい――。そんなことを考えています。

 ◆浜 矩子 同志社大学教授

浜矩子

 1952年、東京生まれ。一橋大経済学部卒業後、三菱総研に入社し英国駐在員事務所長、主席研究員を経て、2002年から現職。「2015年日本経済景気大失速の年になる!」(東洋経済新報社、共著)、「国民なき経済成長」(角川新書)など著書多数。 

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】  2018年11月24日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【外交】:領土確保が国益とは限らない…縮小で成長した日本と西独

2018-11-25 07:15:20 | 【ロシア・北方領土・シベリア開発・サハリン石油天然ガス・ウクライナ侵攻犯罪】

【外交】:領土確保が国益とは限らない…縮小で成長した日本と西独

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【外交】:領土確保が国益とは限らない…縮小で成長した日本と西独

 11月14日シンガポールで安倍首相とロシアのプーチン大統領が会談、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約を締結する方針で合意した。だが、この共同声明はロシアが歯舞、色丹両島を平和条約締結後に日本に引き渡す――という内容だから、従来、政府が唱えてきた国後島、択捉島を含む「4島返還」とは大差がある。「まず2島を還してもらい、他の2島はその後に交渉」との論もあるが、ロシアにとっては、それでは日本との対立が今後も続く状態になるからのみそうにない。

  日本政府は1960年頃までは、北海道の一部である歯舞、色丹の返還を求め、国会は2島返還で合意した日ソ共同宣言を批准した。だが、60年代に沖縄で本土復帰運動が高まると、日米両政府は、それが日本全土での反米感情につながるのを警戒、「4島一括返還」を要求する「北方領土問題」に国民の目を向けさせて沖縄問題とのバランスを取ろうとした。


   会談前にロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍首相(C)共同通信社

 1950年の対日講和条約で日本は当時、すでにソ連が支配していた「千島列島」と南樺太の放棄を宣言していたから、ソ連が国後、択捉を返還する可能性はなかった。それだけに日本国民の反ソ感情を永続させる効果を狙ったのだろう。

 これが今日、裏目に出て、安倍首相が2島返還だけで終止符を打てば、自民党内や支持層から相当激しい非難を受けそうな形勢となった。

 猿でも蟻でも動物はテリトリー争いをするから、領土問題になると、大衆は本能的にナショナリズムに傾きがちだが、いまや領土は国力の主たる源泉ではない。第2次世界大戦後、台湾、朝鮮、南樺太などを失った日本の領土は戦前の約54%に縮小、事実上、日本の支配下にあった満州を含むと面積は約20%になった。だが日本は1968年には戦前には思ってもよらなかった世界第2の経済大国に躍進した。ドイツも同様で、東ドイツ、オーストリアと分離した西ドイツの面積は戦前のドイツの42%になったが1961年に戦勝国の英、仏をしのぎ欧州1位、世界第2の経済大国になった。商工業、サービス業が主体の今日の経済では資本(外資導入を含む)や技術、労働力(質と量)、国外市場(友好関係)などが国力を決める主な要素だ。

 米国は戦後の欧州の復興のために「マーシャルプラン」で資金を供与し、英、仏はそれぞれ西独の約2倍の額を得たが、英、仏が植民地放棄の後始末や、保持のために資金を使い果たす一方、西独は産業復興に集中できたから急速に興隆した。 特にフランスはベトナムで負け、アルジェリアでも反徒制圧に歳出の4割を使う愚行を続け破綻寸前になった。第2次大戦の英雄ドゴール将軍が再び登場、何度もの右翼の暗殺計画をものともせず、アラブ人と交渉を続け、植民地ではなくフランスの3省だったアルジェリアを独立させ、フランスを立ち直らせた。放棄した領土はフランス本土の4倍以上、領土を守り抜いたのではなく、切り離しに成功して再び「救国の英雄」となったのだ。

 イギリスでは19世紀から「植民地経営は全体として赤字、放棄すべきだ」との小英国主義を一部の学者、経済人が唱えた。当時の英国は帝国主義の最盛期で、多くの植民地から利得を得ているように思われていたが、実は経費倒れだった。英国の繁栄は最先端の工業国、最大の金融、海運国だったからで、その利益を植民地のインフラ整備や防衛、行政費に浪費していたのだ。儲けた人もいたが、それは税金を間接的に横領していた形だ。 日本でも東洋経済新報の社長で、戦後1956年に自民党総裁、首相となりながら病気のため2カ月で辞任した石橋湛山が戦前から属領の赤字を指摘し、「すべて捨てよ」と公言し、加工貿易、科学立国を重視する「小日本主義」を唱えていた。その正しさは戦後、証明された。

 現在、政府は領土問題教育を推進しているが、政府には他国と妥協する必要がある場合もある。日本の主張の正当性だけを教えたり、領土を神聖視するのは自縄自縛になりかねない。内政問題で他国の介入を受けない「政治的主権」と「領域主権」は同一ではない。領土はかつて米国がフランスからルイジアナ、ロシアからアラスカを購入したように売買されたり、譲渡や王家の分割相続の対象となったこともあって、領域主権は不動産の所有権に近い。

 むしろ、日本が領土の約半分を失っても経済大国となった事実は諸国に対し誇るべき模範であることを示し、その成功の原因を生徒に考えさせる方が長期の国益に資すると考える。 

 ◆田岡俊次 軍事評論家、ジャーナリスト

田岡俊次

 1941年生まれ。早大卒業後、朝日新聞社。米ジョージタウン大戦略国際問題研究所(CSIS)主任研究員兼同大学外交学部講師、朝日新聞編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)客員研究員、「AERA」副編集長兼シニアスタッフライターなどを歴任。著書に「戦略の条件」など。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】  2018年11月24日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【安倍政権】:ゴーンだけではない 外国の餌食と化しているオメデタイ国 

2018-11-25 07:15:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【安倍政権】:ゴーンだけではない 外国の餌食と化しているオメデタイ国

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【安倍政権】:ゴーンだけではない 外国の餌食と化しているオメデタイ国

 世間は日産を食い物にして逮捕されたゴーン・ショック一色だ。3年連続10億円超と、日本一の高額報酬に飽き足らず、容疑だけで計50億円ものヤミ報酬をちょろまかした“カリスマ”の貪欲さにはア然だが、日本企業の富を奪う盗っ人はゴーンひとりだけではない。

  東京市場の売買は6割以上が外国勢で、上場企業の株主の約3割を占める。強欲外資から日本企業は四半期ごとに成果を求められ、「実」を挙げるより「表面的な取り繕い」がはびこるようになってしまった。行き着いた先が一流メーカーの相次ぐ不正で、「経済一流」などとふんぞり返っていたのも、すっかり遠い過去の話だ。


 平均株価を一時3倍近く跳ね上げた約6年に及ぶアベノミクスの官製相場で、ボロ儲けしたのも外国勢だ。何しろ、日銀のETF爆買いや年金基金の株式割合拡大により、時価総額ベースで60兆円超の公的資金を市場にぶち込んでくれたのだから、外国勢にすれば絶好の草刈り場だ。日本株を保有すれば、“巨大なクジラ”が株価つり上げのため、大きな口をバクバクと開けて勝手に買ってくれるのだから、放っておいても利益が出る。

 さらに、トランプが勝利した米大統領選直後の2016年12月には、株価の買いシグナルを表す「ゴールデンクロス」が発生。平均株価の中期の値動きを示す「26週移動平均線」が長期の値動きを示す「52週移動平均線」を下から上に突き抜ける現象で、以降102週連続で26週線が52週線を上回ってきた。バブルが崩壊した1990年5月までの104週連続に次ぐ過熱相場で、外国勢は散々、荒稼ぎしてきたのだ。


          「売っちゃえ、ニッポン」(C)日刊ゲンダイ

 しかし、官製バブルもいずれはじける。アベノミクス相場の終焉を示唆するサインもちらつく。先月からの株価下落で、26週線が52週線を逆に上から下に突き抜ける「デッドクロス」が現実味を帯びる。これは株の売りシグナルで、機を見るに敏な外国勢は今年に入って日本株を1兆7000億円も売り越し。年末にかけて株価暴落のトリガーを引きかねない。

 「日本経済は不安材料が満載です。含み益が残っているうち、外国人勢が猛烈に売り浴びせるリスクは高い。横綱級の不安材料は来年、本格化する日米通商交渉です。ターゲットは年間7兆円の対米貿易黒字のうち、4兆円を占める自動車輸出。既に阿達雅志・国交政務官は、174万台の対米自動車輸出のうち最大100万台もの輸出削減を望む声があると明かしています。公的資金でカサ上げしたお手盛り相場で海外勢の勝ち逃げを許した揚げ句、トランプ政権の富の強奪で官製バブルに終止符を打たれてしまう。ゴーンが奪った50億円がチンケに思えるほどの収奪ぶりです」(経済評論家・斎藤満氏)


          田畑も持ってけ!(C)共同通信社

 ◆インチキ保守が日本の貴重な資源を叩き売り

 外国勢に奪われているのはカネだけではない。安倍政権は、日本を守る大事な法律を次々と変え、水や米、漁場や農地など、この国が誇る貴重な資源に値札をつけ、見境なく売りに出しているのだ。

 「コメ・麦・大豆」という3大主要農産物の安定供給を国費で担保してきた種子法が今年4月に廃止。

 外資参入の扉を開け、今後は遺伝子組み換え作物が氾濫し、日本安全保障脅かされていく

 今国会では、麻生財務相が国際公約した水道事業を民営化する水道法改正案の成立も確実視されている。世界の事例を見ても、民営化後は外資の魔の手が伸び、水道料金の高騰は必至だ。水はタダ同然という概念が消え去り、コーラより高くなるという冗談のような話まで出てきている。

 さらに今国会で約70年ぶりに漁業を抜本的に見直す水産改革法案(漁業法等改正案)も、日本の豊かな漁場を売り渡すものだ。地元の漁協組合に「漁業権」を優先的に与えるルールを潰し、大企業の新規参入を認め、外国資本が入っていても構わない。いずれ、外資が漁師を蹴散らし、全国の漁業権を買い占め、資本の論理で食い散らかしていくことになる。

 安倍政権が売り渡したのは、漁場だけではない。農地だってバーゲンセールだ。2年前の農地法改正で、その地で農業を営む農家だけに認められていた農地売買のルールを大幅に緩和。農業とは無関係の外国人投資家でもグッと買いやすくなり、日本のコメと野菜を求めてハゲタカどもが手ぐすね引いているのだ。

 ◆ついには労働力まで売り渡す

 「売れるモノは何でも売っちゃえ」という単細胞政権が後先を考えずに、国の礎ともいえる貴重な資源を叩き売り。外国人の餌食と化した政権を、今なお40%を超える人々が支持しているのだから、つくづくオメデタイ国である。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。

 「普段は“保守”を標榜する安倍政権が積極的に国富を切り売りするのは、摩訶不思議です。恐らく保守はポーズで、一皮むけば“守銭奴のとりこ”。日本を守る規制を壊して外資の参入障壁を取り除き、新たな利権を生み出し、そのおこぼれにあずかりたいだけなのでしょう。そんな売国奴同然政治家民間議員が、この政権には跋扈しています。今国会の焦点である“移民法案”も外資の参入を呼び込むため、安価な労働力を差し出すのが狙い。無軌道な外国人労働者の受け入れ拡大で賃金レベルを押し下げ、『世界一ビジネスしやすい国』と称し、日本の労働者まで外資に売り渡すとは、売国そのものです」

 あらゆるものが食い物にされている喜劇惨状と今後を思うと、「勤労感謝」の言葉が空々しく感じてくる。 

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】  2018年11月23日  17:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:日仏経済戦争報道が煽る勧善懲悪、経営陣の正義を検証 

2018-11-25 07:14:50 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:日仏経済戦争報道が煽る勧善懲悪、経営陣の正義を検証

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:日仏経済戦争報道が煽る勧善懲悪、経営陣の正義を検証

 事件発覚からわずか3日。あっと言う間の“超スピード解任劇”だ。

 日産自動車は22日、臨時取締役会を開き、金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された会長のカルロス・ゴーン容疑者の会長職と代表取締役、同会長と共謀したとされるグレッグ・ケリー容疑者の代表取締役の解任をそれぞれ全会一致で決めた。約4時間に及んだ取締役会では、内部調査報告書を見た別の取締役から「あまりに酷い」との声が上がったといい、会議後、西川広人社長は「かなり長かったですけど、いい議論ができました。1歩少し進んだかなというのが、実感ですね」なんて感想を漏らしていたが、ちょっと待て。

  西川社長はゴーンらが逮捕された19日夜の会見で、すでに内部調査を終えていた、と明かしていた。つまり、ゴーン、ケリーの指示や行動が「あまりに酷い」のはとっくに把握していたのだ。そうであれば、わざわざ特捜部の逮捕を待つ必要はない。とっとと臨時取締役会を開いて2人を解任し、特別背任や横領などで刑事告発する手もあっただろう。その方が会社としてガバナンスが効いていることを世間にアピールすることができたし、カリスマ経営者逮捕という世界中を駆け巡った衝撃ニュースによる日産の株価の大幅下落も免れたかもしれないのだ。


       
本当に知らなかったのか(西川社長)(C)日刊ゲンダイ

 大体、ゴーンとケリーがいくら絶大な権力を握っていたとしても、有価証券報告書は簡単に作れるものじゃない。経理、営業など複数の担当部門が関わり、取締役会、監査法人など何重ものチェックを経て公表されるのだ。その有価証券報告書の報酬が過少に記載されていたのであれば、会社組織の問題であり、ゴーン、ケリー以外の経営陣の責任も大きいだろう。「ワル2人のクビを切ってシャンシャン」で済む話じゃないのだ。

 ■側近でありながら不正を見逃した責任はどうなるのか

 「ルノーのトップが日産のトップを兼任するのは、ガバナンス上問題があった」「ゴーン会長に権限が集中していた」

 西川社長は会見で、ゴーン体制を「負の遺産」と表現し、バッサリ切り捨てていたが、これにも違和感を覚えてしまう。

 一部報道によると、西川社長は「ゴーン・チルドレンの代表格」とも呼ばれ、ゴーンも「日産の全ての改革を経験し、全幅の信頼を置いている」と絶賛した人物だったという。

 これが事実であれば、ゴーンの側近中の側近でありながら不正を見抜けなかったこと、見逃してきた自身の責任や無能を恥じて反省、謝罪し、潔く取締役から身を引くのは当然だ。それが「鬼の首を取った」かのごとく積極的に発言し、メディアでは「ゴーン後のかじ取り役」「次期会長最有力」などと持ち上げられているのだからマトモじゃない。仮にゴーンやケリーが「有価証券報告書は取締役会で承認されていたのに個人に責任を押し付けるのはおかしい」「虚偽記載は西川社長以下、全取締役が知っていた」「虚偽記載に関わった取締役が自分の解任決議に加わるのは違法ではないか」などと反論し、解任決議の無効を訴えたら今の日産の経営陣はどう切り返すのか。コーポレートガバナンスに詳しい元検事で弁護士の郷原信郎氏はこう言う。

 「有価証券報告書の作成は複数の部門が関わり、いろいろな取締役も状況を把握していたでしょう。その責任の所在を明らかにしないまま2人の解任を急いだのは問題だと思います」


      
 落ちたカリスマ…(C)日刊ゲンダイ

 ◆ゴーンを狙い撃ちするために特捜部の力を借りた権力闘争が実相

 「我々は法治国家であり、推定無罪が原則。ゴーン氏に対する容疑は現段階では何も立証されていない」

 ルノーの株主である仏政府のルメール経済・財務相がいら立ちをあらわにしている通り、日産と特捜部が「司法取引」した、とささやかれるこの事件はいまだに分からないことが多い。にもかかわらず、新聞・テレビは、ゴーンが海外の子会社や孫会社のカネでブラジル・リオデジャネイロやレバノン・ベイルートなどに高級住宅を購入し、利用していた――などと、特捜部や日産内部からと思われる洪水のようなリーク情報を連日、報じている。

 もちろん、ゴーンが会社を私物化し、犯罪を犯していたとしたら許されないことだ。

 しかし、世界中に点在する複数の企業を束ね、自動車の販売台数で世界2位を誇る大企業の経営トップであれば、自宅に各国の政府要人や企業経営者をパーティーに招いたり、商談したりする場面も出てくるだろう。田舎の中小企業の社長じゃないのだ。4畳半一間のアパートでOK、というワケにはいかないのは言うまでもない。それなのにメディアは「落ちたカリスマ」「会社を私物化」などケチョンケチョン。水に落ちた犬は打てと言わんばかりだ。推定無罪なんてどこへやら。完全にクロ扱いで、過去に「V字回復を成し遂げた敏腕経営者」と散々、持ち上げていた報道がウソのような手のひら返しだ。

 新聞・テレビが一斉に右向け右で同じ報道を始めた時は怪しい。「小沢事件」のように権力側がウラで世論誘導を狙っている可能性があるからだ。実際、日産の川口均専務執行役員と面談した菅官房長官は「政府として、できることがあれば対応する旨を申し上げた」と言っていたが、なぜ一企業の幹部がわざわざ官邸に報告に出向き、官房長官が「対応する」と応じているのか。日本政府がシャシャリ出てくる必要はないだろう。

■ゴーンは2002年から報酬ごまかし

〈フランス政府による日産乗っ取りに対して、日本側がクーデターを仕掛けたのが真相だ〉

 そうしたら案の定というのか、ネットやワイドショーではこんな陰謀説が拡散し始めた。ゴーン主導によるルノーの買収を嫌がった日産が「国益」のために勧善懲悪クーデターを仕掛けたという見立てで、さながら“日仏戦争”のよう。だが、仮にそうであれば今回の事件はなおさらスジが悪くなる。

 「日産社内のガバナンスに基づいてゴーン氏を解任することができないため、特捜部による逮捕という司法の力を借りてクーデターを起こした。つまり、ゴーン氏、ケリー氏だけを狙い撃つために司法取引や何らかの合意があったとすれば、本来の日本版司法取引とは全く異なるものであり、許容範囲を超えていると言うべきでしょう」(前出の郷原信郎氏)

 日本政府をバックに特捜部と司法取引し、ゴーン、ケリー追い出しの権力闘争を仕掛けた――。

 なるほど、他の経営陣には累が及ばないと分かっているからこそ、西川社長が、自信タップリで会見に応じているわけだ。

 だが、こんなデタラメな司法取引がまかり通れば、日産経営陣のような「正義漢ヅラ」した連中がのさばることになる。権力闘争のたびに誰かをスケープゴートにしてハイ、オシマイなんてとんでもない話だ。共同通信やテレビ朝日で6年間にわたり国税当局、SESCを取材したフリージャーナリストの田中周紀氏はこう言う。

 「私が過去に日産のメインバンク筋を取材していて分かったことですが、ゴーン容疑者は2002年の夏のボーナスで既に公表額をはるかに上回る金額をもらっていました。会社は被害者ヅラしていますが、メインバンクでさえ把握していたのですから、当然、当時から会社も知っていたでしょう。ゴーン容疑者は資金運用の専門家を周囲に置き、工場などの資産を売却した資金を運用させていたようです。そして彼らに重要なポストも与えていた。メディアは『会社の私物化』といった点ばかりを追うのではなく、運用された資金がゴーン容疑者らにどう流れたのかを報じるべきでしょう」

 「ゴーン・ショック」に振り回されず、冷静に見ることが重要だ。
 

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業】  2018年11月24日  17:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:ゴーン容疑者の“隠蔽スキーム”判明 50億円は退任後の報酬

2018-11-25 07:14:40 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:ゴーン容疑者の“隠蔽スキーム”判明 50億円は退任後の報酬

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:ゴーン容疑者の“隠蔽スキーム”判明 50億円は退任後の報酬

 カルロス・ゴーン容疑者の逮捕容疑となった有価証券報告書に記載しなかった約50億円。その隠蔽スキームの詳細が明らかになった。

 24日の朝日新聞によると、ゴーンは側近で前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)と共謀し、役員報酬を年約10億円に抑え、別に毎年約10億円、2010~14年の5年間で約50億円を積み立てて、ゴーンが会長退任後に受け取る、という内容の契約書を日産と交わしていた。

 


         積み立てを日産と契約していた(C)日刊ゲンダイ

 東京地検特捜部はこの契約書を既に押収しており、将来の支払いが確定した報酬は開示する義務があることから、事実上の隠蔽工作と判断したようだ。

 隠蔽のきっかけとなったのは、09年度の決算からスタートした1億円以上の役員報酬の開示制度。ゴーンは自分が受け取るべき報酬は20億円と考えていたが、10億円以上だと「高額すぎる」と批判を受けることを懸念し、開示する約10億円以外に、別名目で約10億円を受け取る仕組みを考え出したとみられる。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業】  2018年11月24日  14:50:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:ゴーン氏にさらなる疑惑 株価連動報酬も120億円隠したか

2018-11-25 07:14:30 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:ゴーン氏にさらなる疑惑 株価連動報酬も120億円隠したか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:ゴーン氏にさらなる疑惑 株価連動報酬も120億円隠したか

 巨額の役員報酬を少なく見せ掛けたとして逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が、日産の株価が一定価格より上昇した場合に取締役に与えられる「株価連動型」の権利報酬も有価証券報告書に記載しなかった疑いがあることが、関係者への取材で分かった。記載されていない報酬は約40億円分とみられる。


        2013年日産自動車決算発表でのゴーン容疑者(C)日刊ゲンダイ

 報酬隠しは、既に判明している分と合わせ、総額約120億円に上る疑いがあり、東京地検特捜部が詳しい経緯を調べている。

 関係者や有価証券報告書によると、株価連動型の役員報酬は、日産株価が一定の価格を上回っている場合、差額を受け取ることができる権利。

 日産の2011年3月期~15年3月期の有価証券報告書では、複数の取締役が株価連動型報酬を受け取っていたが、ゴーン容疑者への付与は記載がなく、直近3年分の報告書でも受領していないことになっていた。実際には計約40億円分の連動型報酬を受け取っていたとみられるという。

 ゴーン容疑者は10~14年度の役員報酬を実際より50億円以上少なく見せ掛けた有価証券報告書を関東財務局に提出したなどとして逮捕され、さらに15~17年度の報酬も約30億円過少に記載した疑いが浮上している。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業】  2018年11月24日  14:50:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:ゴーンを“追放”した西川社長の誤算 日産立件で総退陣浮上

2018-11-25 07:14:20 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:ゴーンを“追放”した西川社長の誤算 日産立件で総退陣浮上

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:ゴーンを“追放”した西川社長の誤算 日産立件で総退陣浮上

 「ゴーン・ショック」は当分、収束しそうにない。日産自動車のカルロス・ゴーン容疑者が逮捕された19日の会見で、「執行部体制に影響はない」と断言した西川広人社長。今後、第三者委員会を立ち上げ、日産の新体制を発足させると口にしていたが、新たな問題が浮上。東京地検特捜部が法人としての日産を立件するというのだ。

 
 ゴーンは、金融商品取引法違反(有価証券報告書への虚偽記載)容疑でパクられた。当初、「司法取引」が行われ、日産本体は「お咎めなし」とみられたが、特捜部は、虚偽記載が長年にわたって行われてきた背景として、法人の責任を重視。法人も罰する「両罰規定」を適用する方針だ。元特捜部検事の若狭勝弁護士がこう言う。

 「金融商品取引法の両罰規定によって、法人は7億円以下の罰金が科されます。社員が不正を犯した場合、法人も処罰されるのは自然なことなので、別に驚く話ではありません。ただ、日産側は、特捜部の捜査に協力してきたため、罰金額はある程度、減額されると考えられます」

 日産本体が立件されれば、当然、現執行部も無傷では済まない。ゴーンの“独裁”を許してきた西川社長の進退が問われるのは間違いない。

詰め腹を切らされるか(西川社長)/(C)日刊ゲンダイ

  詰め腹を切らされるか(西川社長)/(C)日刊ゲンダイ

 西川社長は会見で、「1人に権限が集中しすぎた」「長年における(ゴーンの)統治の負の側面と言わざるを得ない」などと、全責任をゴーンにおっかぶせるような発言を連発。社長としての責任については「私がどういう立ち位置で何ができたか考えないといけない」とお茶を濁した。

「西川社長は、会見でゴーン氏の逮捕について『クーデターではない』と言っていましたが、果たしてどうでしょうか。特捜部は社内の状況や資金について、西川社長から任意で聴取していたといいます。西川社長は、法人として捜査に全面的に協力していた。恐らく本人は、独裁者のゴーンを追放し、自分たちは『司法取引』によって『お咎めなし』になると計算していたはず。それが、法人も立件となりそうで、慌てているはずです」(経済担当記者)

 ルノー本社があるフランスでは、西川社長らによる“クーデター説”がもっぱらだ。実際、仏ルモンド紙(電子版)は、<ルノー経営陣から日本側の「クーデター」だという声が出ている>と解説。地元経済紙「レゼコー」は、西川社長が<目をかけてくれたゴーン氏を公共の場で引きずり降ろした>として、古代ローマのカエサルを殺害した「ブルータス」になぞらえて報じた。

 西川社長からすれば、法人が立件されるのは大誤算だろう。

 「証券取引等監視委員会は数年前から、ゴーン氏の不正な投資について、日産側に是正するよう伝えていた。日産はゴーン氏に何度も是正を促したが突っぱねられたといいます。いずれにしろ、日産が不正の事実を前々から知っていたということには変わりありません。ある意味、長年にわたってゴーン氏の不正を“見過ごし”てきたことになるわけです。それに加え、法人も立件されるとなると、西川社長ら現執行部は責任を取らざるを得なくなるでしょう」(経済ジャーナリストの松崎隆司氏)

 日産は、ゴーンらを取締役から外すため、来年6月の株主総会を前倒しし、臨時招集することを検討しているという。今度は、西川社長が“カエサル”になるかもしれない。
 

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業・ビジネス・業界】  2018年11月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【安倍政権】:見殺し ルノーにしゃぶり尽くされる日産の末路

2018-11-25 07:14:10 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【安倍政権】:見殺し  ルノーにしゃぶり尽くされる日産の末路

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【安倍政権】:見殺し ルノーにしゃぶり尽くされる日産の末路

 ゴーン逮捕の衝撃で大揺れの日産自動車が、仏ルノーとバックにいる仏政府に神経をとがらせている。仏政府はルノー株15%を保有する筆頭株主で、日産の意向を無視してルノーとの経営統合を推し進めているからだ。日産は同社株43.4%を持つルノーの出資比率引き下げを検討し、川口均専務執行役員が20日に官邸を訪問。防戦に動き回っているが、雲行きは怪しい。

  ゴーン逮捕から間もなく、ルメール経済・財務相は「仏政府がルノー株主として最初に懸念するのはルノーと(日産、三菱自との)連合の安定だ」とし、日産の離反にクギを刺した。

 一方、官邸で菅官房長官との面会を終えた川口専務は、「日本とフランスの関係もあり、両国の関係が保たれるよう政府としても見ていただければと思う」とコメント。日産が本社を構える横浜は、菅長官のお膝元だ。日産をのみ込もうとする仏政府に対抗するため、官邸に助け舟を求めたのか。

マクロン大統領と“密約”か(C)ロイター共同

       マクロン大統領と“密約”か(C)ロイター共同

 経済ジャーナリストの井上学氏は言う。

 「仏政府への牽制という面があったようですが、それもあくまでポーズに過ぎず、日本政府の具体的な支援には期待していないようです。ゴーン体制以降の日産は政治との付き合いに消極的で、選挙支援にも力を入れてこなかった。菅長官が義理を感じるような関係ではありません」

 日本市場での日産の立場も微妙だ。日産・ルノー連合の世界販売台数は2位だが、日産単体の国内シェアは5位に過ぎない。どうやら、安倍官邸は日産をフランスから守るつもりはないらしい。

 「日産は生産台数の7割、販売台数の9割を海外で稼いでいて、もはや外資メーカーのようなものです。日本メーカーはトヨタ自動車だけが生き残ればいいというのが官邸の考え方です。所管する世耕経産相が他人事のような発言を繰り返していますが、あれはまさに官邸の本音。安倍首相は切れ者のマクロン大統領とコトを構える気はありません」(自動車業界関係者)

 英紙フィナンシャル・タイムズによると、数カ月以内に日産とルノーの経営統合が行われる見通しだったという。フランスにとって日産は打ち出の小槌で、日産の資本で現地工場新設や雇用拡大が計画されている。

 「ルノーによる日産統合のシナリオは出来上がっている。ヘタに時間をかければ日産に徹底抗戦の猶予を与えることになりかねません。ルノーは日産のガタガタに乗じて計画を前倒し、年内の統合発表もあり得る」(井上学氏)

 クーデターは哀れな末路で締めくくられるのか。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業・ビジネス・業界】  2018年11月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:衝撃はまだ序章 これから二幕三幕もあるゴーン逮捕劇 

2018-11-25 07:14:00 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:衝撃はまだ序章 これから二幕三幕もあるゴーン逮捕劇

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:衝撃はまだ序章 これから二幕三幕もあるゴーン逮捕劇

 この逮捕劇は序章に過ぎない。自らの報酬を過少申告した金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)の疑いで日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者が東京地検特捜部に逮捕された事件は、世界中が今後の展開に注目している。

  とりわけ関心を集めているのは、3社の会長を兼務してきたゴーンという「扇の要」を失ったルノー、日産、三菱自動車のアライアンス(連合)の行方だ。日産の未来はどうなるのか。自動車業界のみならず、その背後には各国政府の思惑も蠢き、予断を許さない。


 19日にゴーンが逮捕されたことを受け、フランスのルメール経済・財務相と世耕経産相が20日に電話会談。「日産・ルノーアライアンスに対しても、協力関係を維持していくという彼らの共通の意志に対しても、強力にサポートすることを確認した」という共同声明を発表した。だが、日仏政府がいくら「協力の維持」をうたっても、市場はまったく信じていない。株価下落がその証拠だ。


          このままでは終われない(C)日刊ゲンダイ

 実際、早くもアライアンスの足並みは乱れ始めている。日産は22日、取締役会を開き、ゴーンの会長解任を決める。三菱自もゴーン解任を発表。一方のルノーは21日未明の臨時取締役会でゴーンのCEO解任を見送った。これはルノーの筆頭株主である仏政府の意向だ。

 ルメール経済・財務相は仏メディアの取材に対し、「仏政府が解任を求めない理由は単純だ。(不正の)証拠がないからだ」と言い切った。

 ■仏政府は異例の対応でバックアップ

「ルメール氏は『事件発覚後に調べさせたが、不正は出てこなかった』ともコメントしていて、まるでゴーンの不正を確認したという日産の社内調査を信じていないような口ぶりです。逮捕直後にはマクロン大統領が『ルノー、日産のグループの安定性を注視していく』とコメントを出し、20日にはフランスの駐日大使が東京拘置所に出向いてゴーンと面会していますが、どれも異例のことで、フランス政府のゴーンを守るという強いメッセージに見える。マクロン大統領はかねてルノーと日産の経営統合を求めていました。ルノーとしても、利益の半分を稼ぎ出す日産を絶対に手放したくない。そのために、まだゴーンの存在が必要なのです」(経済ジャーナリスト・有森隆氏)

 仏ルモンド紙の電子版は20日、ゴーン逮捕は「日本側のクーデター」というルノー経営陣の声を報じた。自国産業強化のためルノーと日産の経営統合を志向する仏政府に、日本側が反発していたと解説している。

 英フィナンシャル・タイムズ紙も、ゴーン逮捕劇の背景には経営を巡るる内部抗争があったと分析。仏政府の意を受けてルノーとの経営統合を進めようとするゴーンに日産経営陣が抵抗し、これが逮捕の引き金になったとしている。日産側は仏政府による経営介入を警戒し、独立したままの資本関係の維持を望んでいたが、社内のガバナンスではゴーンを引きずり降ろせないため、東京地検の“外圧”を利用して追い落としにかかったという見立てだ。


         このままでは終われない(C)日刊ゲンダイ

 ◆クーデター劇の背後で跋扈した魑魅魍魎の主導権争い

 「今回のゴーン逮捕劇の背後にあるのは、単に日産内部だけの抗争ではありません。日産の子会社化を推進するマクロン大統領のバックにいる国際資本と、米国に協力的でないゴーンを快く思っていなかったトランプ大統領とその周りにいる金融グループの綱引きという側面もある。勢力争いに東京地検まで巻き込み、クーデターまがいの反乱を起こしたものの、これで反ゴーン派がすんなり主導権を握ることにはならないでしょう。ゴーンが日産を私物化していたことは許されませんが、潰れかかっていた日産を短期間で立ち直らせたことも事実です。ゴーンがいなくなれば経営が不安定になるのは避けられないし、ルノーとの提携解消も現実的ではない。アライアンスのおかげで販売台数が世界2位に上り詰めたわけで、提携を解消すれば、二流メーカーに転落しかねません」(経済評論家・斎藤満氏) 

 日産はゴーン逮捕を機に、ルノーとの持ち株比率の不均衡など、提携関係のあり方について見直す方針だ。22日の取締役会では、企業ガバナンスや経営体制の刷新も議論される。また、ゴーンを早く取締役から外すため、来年6月を待たずに臨時株主総会を開催する案も浮上しているという。

 勾留されて不在の間、一気に外堀を埋めてゴーンを追放してしまうというシナリオだろうが、果たして思惑通りいくかどうか。

 まず、ゴーンの長期勾留は難しいだろう。国際的に問題視されている日本の「人質司法」が批判の的になりかねない。それに保釈後、ゴーンが国籍を有するフランスやレバノンに逃げ込んだら、東京地検は手を出せるのか。仮に裁判に持ち込めても、有罪にできる保証はない。世界中の政財界に顔が利くゴーンの反撃は必至だ。

 仏経済紙レゼコーは、ゴーンを追い落とした日産の西川広人社長を「ブルータス」に例え、「目をかけてくれたゴーン氏を公共の場で引きずり降ろした」と断罪した。

 有名な「ブルータス、おまえもか」はシェークスピアの戯曲のセリフだが、暗殺されたカエサルは劇中でこう言う。

 「Ettu,Brute?Thenfall,Caesar!(ブルトゥス、おまえもか? もはやカエサルもここまでか!)」――。

 ■カリスマを失ったイエスマン集団に何ができるのか

 第一幕では失脚したかに見えるゴーンだが、このまま黙って引き下がるとは思えない。日産との徹底抗戦が始まるのではないか。

 「ゴーンは日産と三菱自動車の会長を解任されても、ルノー・日産・三菱自動車アライアンスのCEOとして実質的な支配力を維持しています。今回の事件で、かえってルノーと日産の経営統合を強引に進める方向に行くかもしれない。それに、言われているような不正が、わずか数人の側近だけで実行できたのかも疑問です。不正行為が何年も続いていたのなら、見抜けなかった現経営陣は無能のそしりを免れない。そもそも現経営陣はゴーンに気に入られて引き上げられたイエスマンばかりです。集団指導体制で難局を乗り切ると言っているが、この陣営では不可能でしょう。日仏政府の思惑もある中で、カリスマを失ったイエスマン集団が独自の舵取りなんてできるのか。有価証券報告書の虚偽記載はゴーン個人の問題ではなく、法人としての責任も問われる。会社に多大な損害を与える不正行為を黙認してきたとすれば、株主代表訴訟に発展する可能性もある。実に前途多難です」(有森隆氏=前出)

 ただでさえ、激動の自動車業界である。日本車メーカーは米国が突きつけてくる関税引き上げや数量規制に翻弄されている。さらには米中貿易戦争の影響。ガソリン車を諦め、EVでの覇権を狙う中国は、海外メーカーの技術に触手を伸ばしている。もちろん、仏政府も虎視眈々だ。欧州メーカーもしのぎを削る中、無能経営陣が迷走を続ければ、日産が誇るEV技術は草刈り場になりかねない。

 事件の行方は、国の経済政策と雇用に関わる問題だ。仏政府は新たな独裁者をCEOとして送り込んでくるのか。はたまた日産を守るために日本政府が動くのか。ゴーンはどんな反撃に出てくるか。

 あまりに衝撃的だったカリスマ経営者の突然の逮捕は、国際社会も巻き込んで、まだまだ二幕も三幕もありそうだ。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業・ビジネス・業界】  2018年11月22日  17:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:ゴーンの“隠された取り分”か…役員報酬総額の不可解な変化

2018-11-25 07:13:50 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:ゴーンの“隠された取り分”か…役員報酬総額の不可解な変化

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:ゴーンの“隠された取り分”か…役員報酬総額の不可解な変化

 有価証券報告書(有報)には、取締役全員に支払った役員報酬総額が記載されている。

 「ゴーン容疑者の報酬額を見ただけでは分かりませんが、役員報酬総額に目を向けると、不可解な部分も浮かび上がってきます。ある時期に総額がガタッと下がっているのです。つまり、下がった分はゴーン容疑者の“隠された取り分”に回ったという疑いです」(金融関係者)

  実際、09年度に役員報酬総額はガタ減りしている。前年度より9億円近く減少し、16億8900万円となった(別表参照)。実はこの年から、1億円以上の役員報酬の開示制度がスタートしている。


 09年度はリーマン・ショックの翌年だけに、報酬額が減るのは当然ともいえそうだが、トヨタ自動車は15億8900万円から14億2600万円(マイナス10.3%)、ホンダは7億2400万円から6億7700万円(マイナス6.5%)に過ぎない。日産はマイナス34.6%だ。


     1億円以上の役員報酬開示制度がスタートした時期から…(C)日刊ゲンダイ

 「会社の業績(最終利益)が順調に伸びているのに、役員報酬総額は10年前の方が多いというのも不思議」(株式評論家の倉多慎之助氏)という声もある。

 闇は深そうだ。 

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業・ビジネス・業界】  2018年11月22日  15:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:ゴーン自らメールで指示…姉に年間10万ドルの“給与”支出

2018-11-25 07:13:40 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:ゴーン自らメールで指示…姉に年間10万ドルの“給与”支出

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:ゴーン自らメールで指示…姉に年間10万ドルの“給与”支出

 日産自動車のカルロス・ゴーン会長(64)が報酬を過少申告していた金融商品取引法違反(虚偽記載)事件で、ゴーン自らが同容疑で逮捕された側近の代表取締役グレッグ・ケリー(62)に、メールで虚偽記載や海外での住宅購入を直接指示していたことが分かった。

 
 こうしたメールは、司法取引に応じた外国人執行役員らから東京地検特捜部に提供され、特捜部では重要な物証とみて詳しく調べている。

 また、日産は2002年以降、ゴーンの姉と「アドバイザー業務」契約を結び、給与と賞与合わせて年間10万ドル(約1120万円)前後を支出していた。姉は日産のオランダの子会社が購入したブラジル・リオデジャネイロの高級マンションに住んでおり、業務実態はなかったという。


          ゴーン氏自らメールで指示(C)日刊ゲンダイ

 ゴーンが報酬を過少申告した動機について、実行役のケリーは「実際の高額報酬が公になれば、ゴーン会長はルノーから解雇されていたかもしれない」と周囲に漏らし、ゴーンが解雇を恐れて過少申告していたことをほのめかしていた。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業】  2018年11月22日  15:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:特捜部を待つゴーンの徹底抗戦 “人質司法”には絶対屈しない

2018-11-25 07:13:30 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:特捜部を待つゴーンの徹底抗戦 “人質司法”には絶対屈しない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:特捜部を待つゴーンの徹底抗戦 “人質司法”には絶対屈しない

 日産のゴーン容疑者の役員報酬を巡る有価証券報告書の虚偽記載事件。会見した西川広人社長は「強い憤りと落胆を覚えている」と釈明していたが、被害者顔に違和感を覚えた人は多かったはず。特捜部とタッグを組んで司法取引し、すべてをゴーン容疑者に押し付けて会社は無罪放免――。そんな調子のいいシナリオも透けて見えるからだ。だが、世界中の政財界に顔が利くゴーン容疑者が特捜部に黙って屈服するわけがない。

  そもそも、有価証券報告書の虚偽記載は、逮捕されたゴーン容疑者と代表取締役のケリー容疑者の2人でできるわけはない。有価証券報告書は上場会社にとって「最高レベル」の書類だからだ。

 「日産クラスで間違いがあれば、市場を大きくミスリードすることになります。経理部門が作成しますが、報酬委員会や取締役会、外部の公認会計士がチェックします。絶対に間違いがないように細心の注意を払う。ゴーン、ケリーの両容疑者で、虚偽記載を何年も繰り返せるわけがありません」(金融ジャーナリストの小林佳樹氏)




 ■司法取引で社員を“売った”日産

 仮にゴーン容疑者やケリーがワルだとしても会社も同罪。それなのに日産は司法取引“特典”で法人責任を免れるか、立件されてもチョボチョボで済まされる可能性があるのだ。

 6月に日本に導入された司法取引制度は、他人の犯罪を捜査当局にチクれば、見返りが得られる「密告型」だ。司法取引に詳しい中川亮弁護士がこう言う。

 「検察にとっては、犯罪行為につながる生々しい情報を得られ、強力なツールですが、危険性をはらんでいます。情報提供者は、自らの罪を逃れたいわけですから、全面的に検察に協力します。場合によっては、誇張やウソの供述もしかねません。司法取引が冤罪の温床と言われるゆえんです。問題は、社員らに罪を押し付けて、本来なら罪を問われるはずの会社が無罪放免になってしまうことです」

 実際、日本で司法取引が初めて適用された7月のタイの発電所を巡る贈賄事件で、東京地検特捜部は「三菱日立パワーシステムズ」の元幹部3人を起訴する一方、司法取引に応じた会社は起訴しなかった。このため、「会社が社員を売った」と批判の声が続出。今回、特捜部はゴーン容疑者という超大物を逮捕し、司法取引制度を再びアピールするための“仕切り直し”と喜んでいるようだが、そう簡単な話じゃない。

 「司法先進国のフランスは、容疑者の人権が手厚く保護されていて、例えば、取り調べの全過程は録画・録音され、弁護人の立ち会いも必須です。森友事件で逮捕・起訴され、10カ月間も接見禁止で長期勾留された籠池容疑者夫妻のように、自白するまで帰さない日本の“人質司法”なんて論外でしょう。そんな事態になれば、フランス政府、マクロン大統領だって黙っていません」(全国紙司法担当記者)

 ゴーン容疑者の徹底抗戦が始まる。 
 

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業】  2018年11月22日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:ゴーン報酬99億円の生贄に…日産8000人非正規労働者の叫び

2018-11-25 07:13:20 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:ゴーン報酬99億円の生贄に…日産8000人非正規労働者の叫び

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:ゴーン報酬99億円の生贄に…日産8000人非正規労働者の叫び

 日産のカルロス・ゴーン容疑者がメディアに「カリスマ経営者」と持ち上げられた理由は、言うまでもなく“コストカッター”。要するにクビ切りだ。ゴーン容疑者は日産の社長だった2009年2月から、国内工場などで働く約8000人に上る非正規労働者の大量のクビ切り策を強行。働き盛りの20~40代の労働者も生活の基盤を失った。

  
 同年5月、クビを切られた男女5人が全日本金属情報機器労組(JMIU)に加入。原告となって日産と日産車体を相手に地位確認と損害賠償を求める裁判を起こした。原告側の意見陳述書には、ゴーン容疑者に対する怒りと苦悩が読み取れる。日産のデザイン本部で働いていた女性の叫びだ。

 〈解雇によって大きく私の生活は変わりました。解雇通告のあった2009(平成21)年2月16日以降、精神的ショックから鬱病・睡眠障害を発症しました。(略)電車に乗るだけで目まいがして動悸で胸が苦しくなる、パニック障害という病まで患いました〉〈ストレスから摂食障害にも悩まされました。(略)自律神経失調症を併発して汗が突然噴き出て頭がぼーっとする(略)今までには体験したことのない体の不調に苦しみました〉

 〈切り捨てられた期間工・派遣社員の賃金は大体年収で300万円程度です。他方で、ゴーンCEOの役員報酬は日本で一番高い9億8千8百万円、それにルノーからの報酬やその他の利益を合わせると12億円を下りません。年収が低くても私たちにもそれぞれ家族があり、家族を養っていかなければなりません。私たちもゴーンCEOも同じ人間で、家族を養っていく責任も同じはずです〉


          労働者たちの怒りはおさまらない(C)共同通信社」

 いやはや、一体どこが敏腕経営者なのか。労働者から搾り取ったカネで自分だけが私腹を肥やす。かつての欧米の奴隷制度と変わりない。

 裁判は最高裁で上告棄却となったが、原告は団体交渉を要求。日産は交渉要求を拒否し、日産車体は話を聞くだけで一言も返答しないという不誠実な対応だ。

 このため、日本金属製造情報通信労組(JMITU)は中央労働委に申し立てをおこない、交渉は現在も係争中。

 来週の26日にも公判が開かれる。

 「日産を解雇された方々は、300万円以下の低賃金でなんとかやってきた。病気で精神的にも肉体的にもボロボロになり、今でも働くことができずに生活保護に頼っている人もいます。今回、約50億円の報酬を隠していたと聞いて、原告たちは言葉で言い表せないほど怒っていますよ」(原告を支援しているJMITU神奈川地方本部)

 犠牲になった労働者たちの恨みは底知れない。 

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業】  2018年11月22日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日産自動車】:この経営陣で再建できるのか「日産」目を覆うズサン経営 

2018-11-25 07:13:10 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【日産自動車】:この経営陣で再建できるのか「日産」目を覆うズサン経営

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日産自動車】:この経営陣で再建できるのか「日産」目を覆うズサン経営

 カリスマ逮捕のニュースは衝撃的だったが、その後、次々露呈するやりたい放題の数々には、さらにア然とするしかない。

 役員報酬を過少申告したとして金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で、19日、東京地検特捜部に逮捕された日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)。同社の西川広人社長が同日の会見で言及していた「会社の資金や経費の私的流用」の中身が明らかになってきた。発覚した新事実は、どれもこれも、田舎のオーナー企業でさえあり得ないほどの杜撰の極みだ。

 

 ゴーンは海外子会社の資金を使って、ブラジル、レバノン、オランダ、フランスの4カ国で高級住宅を購入させ、無償で自宅として利用していた疑いが出ている。

 ブラジルとレバノンの2カ国の物件については、ベンチャー投資名目でオランダに設立した子会社が使われていたが、この子会社には目立った投資実績は確認されていないという。つまり、ゴーンの自宅購入のための偽りの投資会社だった可能性もあるということだ。購入費だけでなく、改装費や維持費も日産側が出していて、負担額は数十億円になるという。

 加えて、役員報酬の分配にあたって、ゴーンの独裁が横行していた疑惑まで出てきた。

 NHKなどの報道によれば、株主総会で承認された日産の役員報酬総額は30億円だったものの、実際に取締役に支払われた報酬はそれより毎年10億円程度少なく、分配権限があったゴーンに、一部が流れた疑いがあるという。


     これが日本を代表する企業だったとは驚きだ(C)日刊ゲンダイ

 ■“忖度”日本人茶坊主は見て見ぬふり

 あまりのデタラメ経営で、これが日本を代表する企業なのかと愕然とするしかないのだが、ゴーンと一緒に逮捕された代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)は、執行役員らに「報酬を隠せ」「分からないようにやれ」と虚偽記載を命じていたともいうから、経営幹部は不正を知りながら、ゴーンを野放しにし、唯々諾々と従っていた可能性が高い。

 今回の不正を内部告発し、特捜部と司法取引したのは法務部門の幹部を務めていた外国人執行役員だという。容疑者も告発者も、登場人物は外国人ばかり。日本人の経営幹部は一体、何をやっていたのか、と言いたくなる。

 経済ジャーナリストの大山功男氏がこう言う。

「日産の株式の44%を仏ルノーが保有しているうえ、人事権をゴーン会長が握っていますから、事実上は外国人が経営する会社です。日本人の経営幹部はゴーン会長に引き立ててもらった茶坊主ですから、ゴーン会長に忖度して何も言えず、見て見ぬふりだったのでしょう。ゴーン会長による抜擢人事が横行したため、課長↓部長↓役員というような日本的な出世のステップを踏まないで幹部に登用され、マネジメントの訓練ができていない人が少なくないのが実情でした」

 会見でゴーンの悪行を語った西川社長はその筆頭だったのだろう。「優秀な人材を雇うのに高額報酬は当然というゴーンの主張は正当だったのか」という質問を否定することなく、「日本の企業だから低い、欧米の企業だから高いというのは、是正されていくべき」と曖昧に答えていた。

 西川社長の昨年度の報酬は4億9900万円だ。ゴーンによって社長に引き立てられ、同じように高額報酬をもらっていたわけで、被害者ヅラして「膿を出し切る」などとエラソーに言える立場なのだろうか。


 マクロン仏大統領はルノー・日産合併に前のめり(ルノー工場を視察するマクロン仏大統領)(C)ロイター共同

 ◆シタタカ仏政府に日産がかっさらわれる恐れ

 1999年、日産は一度死んだ。販売不振により、2兆円余りの有利子負債を抱えて倒産寸前に陥り、仏ルノーの傘下に入ることで再建を図った。送り込まれたのがコストカッターのゴーンだった。大規模な工場閉鎖やリストラで日産は蘇り、ゴーンはメディアに持ち上げられ、“神様”のように崇められた。

 今度の事件の背景として西川社長は、「あまりにも一人に権力が集中しすぎた」と言ったが、ゴーンがワンマン化したのは、カリスマにおんぶに抱っこのイエスマンたちに責任の一端があるのではないのか。

 ゴーンが逮捕されたことで、日産の今後に暗雲が垂れ込めたのは間違いないが、残されたイエスマン経営陣にリーダーシップがあるわけもなく、マトモな再建など期待できるわけがない。

 経済ジャーナリストの井上学氏がこう言う。

 「本来、経営トップの私的流用なら、社内で調査の上、処分を決めて解任した後で、検察に告発するものです。ところが日産は、経営陣がゴーン会長に逆らえないから、調査段階で検察の捜査を求め、検察の力を借りて解任へと持っていった。プライベートセクターである民間企業の経営に国家権力の介入を安易に許すのはいかがなものか。企業の自治という観点でもマズいし、これぞ日産にガバナンスがきいていない証明です」

 ■経営統合が早まる可能性

 今後の焦点は、日産、ルノー、三菱自動車のアライアンスの行方だ。市場は日産の先行きを不安視し、20日、株価は2年3カ月ぶりの安値を付けた。

 もともと国営企業だったルノーの株式を現在も15%保有する仏政府は、ルノーと日産の経営統合を望んでいるとされ、今年の春先、「両社が合併交渉」という海外メディアの報道が相次いだ。

 ルノーにのみ込まれることを意味する合併を日産側は望まず、今回の内部告発も仏政府の意向に沿って動くであろうゴーンを葬り去るためのクーデターという見方もある。

 そんな中で、20日、世耕経産相はアライアンスについて、「安定的な関係を維持していくことが重要」「関係者が納得のいく形で議論が建設的に進むことを期待している」とマヌケなコメントを出していた。

 夜には仏のルメール経済・財政相と電話会談して、企業連合維持に強力な支援を行っていくことを確認したというが、そんなノンキなことでは、株式市場の日産株投げ売りを招きかねないし、シタタカな仏政府に日産をかっさらわれてしまいかねない。

「マクロン大統領は経済大臣だった2014年にルノーに日産株を買い増しさせて、強制的に子会社化することを画策したほどの人物です。大統領就任後も、ゴーン氏に、氏の任期中の経営統合を求めていた。そういう意味では、ゴーン氏の存在が経営統合の歯止めになっていたと言えるが、今回、ゴーン氏が逮捕されたことで、経営統合が早まる可能性があります。ゴーン氏の影響力がなくなった日産が、対ルノーで徹底抗戦を始める前に仏政府が動くのではないか」(井上学氏=前出)

 日産は22日、取締役会を開き、ゴーンとケリーを解任する。上場企業を私物化したゴーンはそれに見合った罰を受けざるを得ないが、日産にゴーンに代わるリーダーは不在で、迷走必至。早晩、ルノーから新たな会長が送り込まれることになるのではないか。

 日産はもう一度、死ぬのか。国際的な問題に発展したゴーン逮捕劇は、日産の終わりの始まりを予感させる。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業】  2018年11月21日  17:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:①大阪万博決定 歴史的祭典の再来はなるか

2018-11-25 06:06:00 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【社説】:①大阪万博決定 歴史的祭典の再来はなるか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:①大阪万博決定 歴史的祭典の再来はなるか 

 2度目の大阪万博である。実りの多い祭典にするには、準備に万全を期さなければならない。 

 博覧会国際事務局の総会がパリで開かれ、2025年の国際博覧会(万博)の開催地が大阪に決まった。

 加盟国による投票の結果、いずれも初開催を目指したロシア・エカテリンブルクとアゼルバイジャン・バクーに競り勝った。日本では、05年の愛・地球博(愛知万博)以来、20年ぶりの万博となる。

 安倍首相は「地域経済が活性化する起爆剤になる。全力で取り組む」とのコメントを発表した。

 招致を進めてきた日本政府は、2800万人の来場者と2兆円の経済波及効果を見込む。想定通りなら、20年東京五輪後の景気浮揚策として、万博は効果的なイベントになるだろう。

 有力とみられたフランスが2月に撤退して以降、三つどもえの招致レースは厳しさを増した。

 日本は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げた。会場となる大阪湾岸の人工島・夢洲ゆめしまを「未来社会の実験場」と位置付け、人工知能などを随所に駆使する開催計画をアピールした。

 過去5回にわたる万博開催の実績を訴えたのも、招致成功の一因となったのではないか。

 1970年大阪万博では、国中が沸き返り、6400万人もが来場した。高度成長時代を象徴する歴史的イベントとなった。

 今回の招致は、万博で再び活性化を、という関西の政財界の意向に端を発する。前回も64年東京五輪後の開催だった点では共通するが、時代背景は全く異なる。

 大阪府民を対象にした読売新聞の世論調査では、万博開催に「関心がある」と回答した人は6割だ。国民全体で見れば、関心を寄せる人はさらに少ないだろう。

 開催の意義を明確に示し、機運を盛り上げることが大切だ。

 1250億円を見込む会場整備費は、国と自治体、経済界が3等分して負担する。民間分の工面の仕方については、議論が深まっていない。トヨタ自動車が旗振り役を担った愛知万博と比べると、立ち上がりの遅さが目に付く。

 企業の投資意欲をどう喚起するか、が知恵の絞りどころだ。費用膨張を防ぐ工夫も欠かせない。

 大阪府と大阪市は会場の隣接地で、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を計画する。事業者には、地下鉄の延伸など周辺整備費の一部負担を求める構えだ。

 万博とギャンブルを一体的に捉える姿勢は大いに疑問である。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2018年11月25日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

 

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