【社説・11.19】:陸自オスプレイ調査 事故はこれからも起こる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.19】:陸自オスプレイ調査 事故はこれからも起こる
日米共同統合演習「キーン・ソード25」で与那国駐屯地に初めて飛来した陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイが10月27日、離陸時に機体を損壊した事故について、人的要因で起きたとする調査結果が発表された。押すべきボタンを押していなかったとは、お粗末と言うほかないが、機体の構造的な問題に起因した事故であり、事故はこれからも起こる。欠陥機が頭上を飛び交う状況は耐え難い。玉城デニー知事が求めている通り、オスプレイの配備撤回と飛来自粛を求める。
発表によると、事故の経緯は次の通りだ。一時的にエンジン出力を上げるスイッチをオンにすることを失念していたため、離陸の途中、高度が低下した。いったん接地したが、出力がそのままだったため再び上昇、機体が傾いた。その修正操作が過大で逆に傾き、左側のナセル(エンジンなどを収納する翼の先端の円筒部)が地面に接触、損壊した。陸自は、ボタン押し忘れ防止のマーキングを施すとともに、教育・訓練を強化して、飛行を再開するとした。
(写真)左翼下部が地面と接触し、与那国駐屯地内に着陸したV22オスプレイ=27日午後0時15分ごろ、沖縄県与那国町(基地いらないチーム石垣提供)
オスプレイは機体重量に対して回転翼が短いため、離陸時に一時的に出力を上げることが必要になる。そのためのスイッチである。また、巡航時は水平なナセルは、離着陸時は下向きで地面に近く接触しやすい。これらの構造的弱点があるため、人為ミスがなくても事故は起こり得る。
今回のキーン・ソードでは、島しょ部で自衛官や米兵が負傷したことを想定し、オスプレイなどの輸送機で主要な自衛隊病院に搬送する「患者後送」訓練も行われた。一連の動作を日米合同で訓練するのは初めてで、与那国の訓練もその一つだった。訓練の激化で操縦者が対応すべき事項が増えている。米軍と合同ということがプレッシャーになったとの指摘もある。
事故前日の26日に与那国町の糸数健一町長や一部の町議をこのオスプレイに搭乗させる計画があったが、天候を理由に中止になった。実施していれば事故に巻き込まれたかもしれない。
今回、幸い死傷者はいなかったが、昨年11月に乗員8人全員が死亡した鹿児島県屋久島沖での米空軍のCV22墜落事故も、構造的欠陥と人為ミスが重なった。公表された報告書によると、変速機(ギアボックス)の歯車が破断し、その破片で別の歯車がすり減り、回転翼に動力が伝わらない状態になった。変速機の不具合を示す警報が出ていたのに飛行を続けるという判断ミスもあった。
今回訓練を実施した患者後送が現実になるのは、島々が戦場になる時だ。南西諸島が戦場になるということは、人々が島での生きる基盤を失うということである。そんな想定などしたくない。しかも演習は事故と隣り合わせで、住民の生活と安全を脅かしている。軍事によらない安全保障に比重を移すべきである。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月19日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。