【社説・11.26】:会計検査院報告 膨張予算は無駄の温床だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.26】:会計検査院報告 膨張予算は無駄の温床だ
巨額の無駄遣いがまた明らかになった。一向に改まらないのは、政府と自治体が反省していないからだろう。
会計検査院が国の2023年度の決算検査報告を公表した。税金の無駄遣いを指摘したり、改善を求めたりした事業は345件、総額は648億円だった。
前年度分の580億円を大きく上回る金額に驚き、あきれるばかりだ。
最大の問題は、主に経済対策として編成された補正予算にある。
会計検査院は22年度補正予算に計上された1218事業から、追加額が100億円以上で執行管理が行われていた138事業を調べた。
このうち34事業の1兆5千億円近くは、全額が23年度に繰り越されていた。約6千億円は使う理由がない「不用」と判断した。
緊急性や必要性を欠く事業で、補正予算が水膨れしていたと言うほかない。補正予算について、特に緊要な経費を追加する場合に限ると定めた財政法に反する。
20年度以降は新型コロナウイルス禍やエネルギー価格高騰などの影響で、大型の補正予算が常態化している。適正な中身を伴っていないのは、政府の「予算規模ありき」の姿勢のせいだ。
石破茂首相も就任早々、経済対策として昨年度の規模を上回る補正予算を編成すると打ち上げた。28日に召集される臨時国会に、発言通りの予算案を提出する。
今年の経済財政運営の指針「骨太方針」に、新型コロナ禍後に膨らんだ歳出の構造を「平時に戻す」と記したことと整合性が取れない。財政健全化は遠のく。
新型コロナ対策で自治体に配った地方創生臨時交付金の使途もずさんだ。20~22年度の約18兆円のうち3兆円余りが不用だった。
不正受給などで国庫に返還すべき205億円のうち、未返還額は170億円に上る。政府はこうした状況を把握していなかった。
政府は自治体に対し、交付金事業の検証と公表を求めたが、徹底されていない。会計検査院が都道府県を調べたところ、福岡県などは一部の事業にとどめていた。
地方創生臨時交付金は使い道が幅広く、自治体にとって使い勝手の良い財源だ。地方も財政規律が緩んでいるのではないか。
このほかにも予算の過大請求が数多く指摘された。税金の無駄遣いをなくすには、予算査定を厳格化し、執行状況と効果を国民に公表することが欠かせない。
会計検査院の決算検査報告のたびに求められていることだ。これ以上放置することは許されない。まず予算至上主義と呼ばれる悪弊から改める必要がある。
国会や地方議会の決算審査機能を高め、問題点と改善点を次の予算編成に反映させる仕組みも強化すべきだ。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月25日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。