【社説②】:水道管の老朽化 安心安全の水守るため
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:水道管の老朽化 安心安全の水守るため
和歌山市の紀の川に架かる水道橋(送水管)が十月上旬に崩落=写真=し、十三万八千人が断水の影響を受けた。橋は法定耐用年数が迫っており、鳥のふん害などでつり材の腐食が進んだ可能性が指摘される。
水道管の老朽化は全国的な懸案事項だ。各地に敷設された水道管は高度経済成長期以降に整備が進み、今後、集中更新期を迎える。
厚生労働省によると、法定耐用年数四十年超えの水道管は全体の17・6%で、年1〜2ポイントずつ上昇している。水道事業を担う市町村などの財政難が響き、更新が追いつかない現実がある。老朽化による漏水や水の濁り、さびなどは年二万件以上、報告される。
水道管の更新は一キロあたり一、二億円を要するという。厚労省の試算では、今後の更新費は過去十年平均の五割増と見込まれ、水道事業者の負担は一段と増す。
災害対策も待ったなしだ。東日本大震災では二百五十万戸が断水し、昨年の豪雨でも長期間の断水が相次いだ。厚労省によると、震度6強程度の地震に耐えられる水道管は全体の40%強にとどまる。重要・優先度を勘案して更新を急がねばならない。
こうした現状を背景に二〇一八年に成立した改正水道法は、水道事業者の責務を明確化し、広域・官民連携の必要性を盛り込んだ。
法的には可能となった水道事業の民営化だが、宮城県が二二年度から実施する一例にとどまる。導入を検討した浜松市は「市民の懸念が多い」として見送った。海外では、料金高騰や水質の悪化などで再び公営に戻す事例もあるように、民間の参入により問題が簡単に解決するわけではない。
各事業者は、水の需要減に合わせた管口径の縮小、ドローンなど最新技術を駆使した点検、管理など多方面から経費削減や長寿命化策を検討してほしい。人口減少社会にあって「安心安全な水」を守り続けるためには、水道料金の値上げや一般会計からの繰り入れを議論する必要性も出てこよう。百年先をも見据えた更新計画など、分かりやすく、見える形で、市民に現状を伝えることも大切だ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年11月05日 07:39:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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