《社説①・01.25》:首相の施政方針演説 肝心なことを避けている
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.25》:首相の施政方針演説 肝心なことを避けている
内外の懸案にどのように対処するのか。国民への説明を避けて通るようでは、理解と納得は得られない。
通常国会が召集され、石破茂首相が施政方針演説を行った。今年1年間に取り組む政策の見取り図を示す場である。
しかし、演説は具体性に乏しく、説得力を欠く内容だった。
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衆院本会議で施政方針演説をする石破茂首相=国会内で2025年1月24日午後2時6分、平田明浩撮影
国づくりのキャッチフレーズは示した。人口減少下で、国家や企業よりも国民一人一人が主役となる「楽しい日本」の実現を目指すという。
そのための政策の柱に据えたのが、地方創生による一極集中の是正だ。地方で若者や女性の居住を促す方策などを列挙したが、多くが従来の焼き直しである。
経済政策も曖昧だ。「物価上昇に負けない賃上げ」を後押しするなどと述べるにとどまった。財政健全化に真摯(しんし)に取り組む姿勢もうかがえなかった。
いずれも今国会で焦点となるテーマのはずである。
「政治とカネ」の問題も踏み込み不足だ。幕引きを急ぐのではなく、政策をゆがめかねない企業・団体献金の禁止を決断すべきだ。
「米国第一」を掲げるトランプ大統領とどう向き合うのか。最大の外交課題であるにもかかわらず、戦略は明示されていない。
少数与党の政権にとって、今国会はまさに正念場だ。衆院で多数派を占める野党の協力を得なければ、国民生活を左右する来年度予算案などを可決できない。
減税や歳出拡大を求める野党に対し、首相は「責任ある立場での熟議」を呼びかけた。財源の問題などを念頭に置いた発言だ。
だが、そうであるなら、まずは政権が方針を明確化し、開かれた国会の場で議論するのが筋だ。一部野党との協議で「数合わせ」を優先するようでは、熟議の実現はおぼつかない。
政権のビジョンを正面から語り、幅広い意見を踏まえて合意形成する。それこそが「熟議の国会」で求められる首相の姿勢である。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月25日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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