【社説・12.04】:ミバエの確認拡大 防除と根絶に協力しよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.04】:ミバエの確認拡大 防除と根絶に協力しよう
ウリ科の植物に寄生する外来種のセグロウリミバエの県内での確認が広がっている。県は不妊化した虫を使った根絶に乗り出すことを決めた。県は不妊虫によるウリミバエ根絶の実績があり、今回も期待ができる。
このまま被害が拡大すれば農業生産に与える影響は多大である。県は一般家庭に防除対策や栽培控えを呼びかけている。農産物を守るためにも拡大防止に協力したい。
今年3月に名護市で21年ぶりに確認され、伊是名村、今帰仁村、本部町と確認地域が広がった。わなにかかった個体だけでなく、果実への寄生も国内で初確認された。
10~11月には、大宜味村、東村、うるま市、恩納村、国頭村でわなから見つかった。確認地域が中北部に拡大している。セグロウリミバエはカボチャやヘチマ、ゴーヤー、トウガンなどの実に産卵し、幼虫が果肉を食い荒らす。被害はアジア全域で確認されている。
被害が農家に広がっていくことは避けなければならない。農家に向けて県は侵入対策や農薬の適切使用などを呼びかけており、今のところ出荷への影響はないという。
かつて沖縄は害虫のウリミバエの生息が県全域に広がり、セグロウリミバエと同様に幼虫による食害に悩まされた。このため、県外に農産物を出荷することは植物防疫法で規制されていた。
1972年の施政権返還後、根絶事業が開始され、不妊虫を用いた大規模な防除事業によって1993年に県全域での根絶に成功した。これによってマンゴーやゴーヤーなど農産物の県外出荷ができるようになった。
ウリミバエ対策は現在も継続中だ。再び侵入してくることに備え、不妊虫を放ち続けている。仮に再び定着することがあれば、大きな被害は免れないからだ。
2015年度の県外出荷量を基にした県の想定によると、ウリミバエの再定着で県外出荷ができなくなった場合、マンゴーで21億円、ゴーヤーで5億円などの被害が推定されていた。
セグロウリミバエは国内での確認事例が少なく、法律による植物の移動規制の対象にはなっていないが、仮に被害が広がれば、ウリ科類が移動規制の対象になる可能性がある。そうなれば県内農業は大損失を被るだろう。
確認されているセグロウリミバエの多くが家庭菜園から見つかっているとして、県は一般向けに、できるだけウリ科の栽培を控えるよう協力を求めている。外壁や窓の外につるをはわせた「緑のカーテン」にゴーヤーやヘチマを用いる家庭も多いだろう。
家庭菜園の楽しみを奪われるのは残念だが、虫害がまん延していれば来夏の収穫は見込めまい。根絶を急ぎ、協力したい。県は呼びかけを強めると同時に、侵入経路についても調べを進めてほしい。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月04日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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