路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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《社説①・12.02》:兵庫県知事選の混迷 ネットの功罪見つめる時

2024-12-02 09:30:30 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

《社説①・12.02》:兵庫県知事選の混迷 ネットの功罪見つめる時

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.02》:兵庫県知事選の混迷 ネットの功罪見つめる時 

 ネット時代の選挙の可能性と危うさを明確に示した選挙だった。

 11月17日に斎藤元彦氏が再選された兵庫県知事選である。

 最初から異例だった。斎藤氏のパワハラ疑惑などを告発した文書への対応などを巡り、県議会が不信任案を可決。斎藤氏は失職を選び、再選を目指して出馬した。

 政党などの支援がなかった斎藤氏の陣営は、交流サイト(SNS)を駆使。元尼崎市長の稲村和美氏を終盤に逆転した。政党などの応援がなくても、SNSを戦略的に活用すれば支持を短期間に広げられることを改めて示した。

 ■真偽不明の情報

 検証するべき課題は多い。まず、SNSで真偽不明の情報が繰り返し流されたことだ。多くは斎藤氏の支持につながる内容だ。

 県議会百条委員会の調査では、140人の職員がパワハラを経験・目撃し、斎藤氏も百条委で「厳しい叱責(しっせき)をした」と認めていた。それなのに「パワハラはなかった」との言説が広まった。

 「稲村氏が当選すれば、外国人参政権を進める」などとの虚偽情報も拡散。次第に斎藤氏が「既得権益と闘っている」との投稿が増え、再選につながった。

 稲村氏の陣営は選挙後、SNSアカウントが何者かの一斉の虚偽通報で2回凍結されたとして、兵庫県警に告訴する事態になった。

 「斎藤氏を応援する」として出馬した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏の選挙運動も「原動力」になった。

 立花氏は斎藤氏の演説後に同じ場所でマイクを握り、パワハラや物品の受領を根拠が不明確なまま否定した。斎藤氏擁護の言説をポスターで掲示し、ネットには100本以上の動画を投稿した。

 SNS調査会社のリポートだと、総再生回数は1500万回弱になり、斎藤氏の動画の約12倍。動画は他の複数のチャンネルなどにも転載され、数百万回再生されたケースも多い。

 ■公平は保たれたか

 これらは公選法が規定する公平性をゆがめた疑念が拭えない。

 公選法は候補者1人当たりのポスターの枚数、選挙カーの台数などを制限する。当選を目指さない候補がポスターや選挙カーで他の候補を応援すれば形骸化する。

 公選法に詳しい一橋大の只野雅人教授は「立候補を規制することはできない」とした上で、ポスターや選挙カーで他候補を応援すれば、「(選挙運動の各種の制限を規定する)公選法243条に反する可能性がある」とする。

 ただ、立件されても両陣営の共謀が立証されなければ、応援された候補に違法性は問えない。他候補を応援する目的で立候補する手段は、民主主義の基盤を大きく揺るがす。対策が必要だ。

 SNSの本質的な問題も改めて検証するべきだ。閲覧履歴を解析し、好みの情報を表示する「フィルターバブル」と、再生数が増えれば投稿者の収入になる「アテンション・エコノミー」である。

 応援する陣営の投稿や動画を閲覧すると、同様の投稿ばかりが表示され、対論は見えにくくなる。特定の情報が注目されれば、チャンネルの運営者らが再生数を増やす目的で次々に転載していく―。悪循環である。

 双方の支持者は相手の主張を客観的に判断できなくなり、対立が激しくなる。大統領選を巡って社会の分断が深刻化した米国と同様の状況に陥りかねない。

 まず、選挙で収益を得ることができる広告の仕組みを改善できないか。選挙中の関連動画には広告を付けられないようにすることを検討するべきだ。

 ■誰に「収穫」された?

 情報の真偽を客観的に判断する手段の確立も急務だ。

 今回の知事選では、ネット情報の真偽を検証する非営利組織の日本ファクトチェックセンターが、いくつかの情報について選挙期間中に「不正確」や「根拠不明」「誤り」などと判断し、SNSに投稿した。ただ、膨大な情報が流通する中では限界もみえた。

 既存メディアの役割も問われる。紙面や放送という従来の枠組みだけでなく、選挙期間中にSNSの場でファクトチェックに積極的に取り組む必要がある。

 選挙後には、斎藤氏を支援したPR会社の経営者が、SNS戦略の詳細を記した記事をネットに公開した。内容が事実なら公選法違反の疑いがあるとされる。当選の正当性にも疑念が出る。警察や検察は詳細に捜査するべきだ。

 注視する必要があるのは、この記事にネットで支持を広げる手法が詳細に書かれていたことだ。「種まき」「育成」「収穫」として戦略的に展開したとする手法に、SNSには「心情をもてあそばされた」などの批判も出た。

 あふれる情報の背後には提供側のさまざまな思惑があることを示したといえる。一人一人が情報にどう向き合い、判断するのか。公選法の改正を含め、有権者が多様な情報に接し、客観的に判断できる仕組みづくりが問われている。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月02日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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