《社説①・01.11》:福島原発事故の除染土 処分のシナリオを早期に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.11》:福島原発事故の除染土 処分のシナリオを早期に
東京電力福島第1原発事故で生じた「除染土」の処分が実現しない限り、福島の復興は完了しない。
事故では大量の放射性物質が広範囲に放出された。福島県内の住宅地や農地などの除染で集められた土は約1400万立方メートルに及び、東京ドーム約11杯分に相当する。原発の立地する双葉、大熊両町に設けられた中間貯蔵施設に搬入された。
地元は最終的に県外で処分することを条件に施設の建設を容認した。保管開始から30年に当たる2045年3月までに処分を終えることが法律で定められている。
その実現に向けて、政府は昨年末、すべての閣僚が参加する会議を設置した。今夏までに処分の具体的な工程表を策定する方針だ。
国は放射性物質濃度が一定の水準を下回った除染土を再利用する方針を打ち出している。道路の盛り土や農地の造成など全国の公共事業で使うことが想定される。
県内では、こうした用途での安全性を確認するための実証事業が進められている。国際原子力機関(IAEA)は昨年9月、政府の計画について「安全基準に合致している」との判断を示した。
ただ、科学的に安全とされても、それだけで再利用の受け入れが進むわけではない。不安や風評被害への懸念が払拭(ふっしょく)されていないからだ。
除染土の4分の1は汚染のレベルが高く、再利用しないことになっている。これらは県外で最終処分されるが、スケジュールや場所は決まっていない。
こうした状況について、国民の理解は進んでいない。環境省が23年12月に実施した調査によると、除染土の再利用や最終処分を知らない人の割合は福島県外では7割以上に達した。
福島原発から供給された電力は首都圏を中心に使われてきた。消費地こそ重く受け止めなければならない問題だ。
廃炉作業も予定より遅れ、古里を奪われた人々の焦燥感は強まっている。事故の後始末の道筋を早急に示すのが政府の責務だ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月11日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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