【社説・12.24】:再審制度見直し 冤罪防止へ早急に取り組め
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.24】:再審制度見直し 冤罪防止へ早急に取り組め
確定した刑事裁判をやり直す再審制度の在り方を法務省が見直す検討を始めた。来春にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する方向で調整しているという。
死刑が確定し、その後再審で無罪となった袴田巌さんの例に象徴されるように、検察の証拠開示の在り方や審理の長期化などの問題はかねて指摘されてきた。国民感覚からも改めるのが当然だ。
超党派の国会議員連盟が設立され、議員立法での法改正も検討されている。慎重に見えた法務・検察も世論を意識しているはずだ。冤罪(えんざい)を防ぎ被害救済のために早急な見直しを実現してもらいたい。
再審に関する規定は1948年に刑事訴訟法が制定されて以降、一度も見直されていない。ただ、刑事司法制度の転換とはいえ、ためらう理由はなかろう。とりわけ以下の3点は見直しが必要だ。
まずは再審手続きの迅速化である。袴田さんは、最初の申し立てから再審開始確定まで42年もの月日を要した。袴田さんを含め、死刑確定後に再審無罪となった人は戦後5人いるが、いずれも申し立てから再審開始決定までに20年以上がかかっている。
とてつもない年月が経過するのは、裁判所が再審決定しても、検察の不服申し立てにより再審を始める前段階での審理が長期化するためだ。
再審請求のほとんどは、有罪判決を受けた者に無罪等を言い渡し、原判決より軽い刑を認めるべき「明らかな証拠」を「新たに発見した」ことが根拠である。
刑訴法に基づく、再審の必要性を裁判所が認めたのだから、審理は不服申し立てではなく再審で尽くせばいいはずだ。ドイツなどのように検察の不服申し立てを認めないことも検討すべきではないか。
次に証拠開示の在り方の明文化も欠かせない。袴田さんの再審開始につながる重大証拠となったのは衣類の鮮明なカラー写真だった。検察は過去の裁判で提出せず、当初は存在も否定していた。再審を求めてから開示されるまでに30年もかかったことを見ても、被告人に有利な証拠がもみ消される懸念が拭えない。
86年に中3女子が福井市の自宅で殺害された事件で懲役7年の判決を受けた前川彰司さんの再審決定も10月に認められた。その決め手も検察が裁判官に促されて開示した287点の新証拠だった。
弁護側の求めに応じ、検察が保管する証拠を速やかに開示する仕組みが要る。そのための明確なルールを法務省は示してもらいたい。
三つ目は再審請求審の手続きに規定がないことだ。拙速な審理は避けねばならないが裁判所によって進行に差が出ていることも事実だろう。審理を進める規定を明確化し、迅速化につなげてほしい。
国家が無実の人を刑に処するのは許されない。にもかかわらず、過去の冤罪事件を見れば、強引な捜査やそれに基づく誤った判決が現実に起きている。その過ちを反省する意識があれば、冤罪を防ぎ、被害を救済する再審制度に一刻も早く改めるべきだ。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月24日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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