《社説②・12.25》:ラピダスへの巨額支援 国頼み脱却の道筋明確に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.25》:ラピダスへの巨額支援 国頼み脱却の道筋明確に
いつまで政府頼みの経営が続くのか。民間主導で成長する道筋を描く必要がある。
政府が半導体産業への支援を加速させている。次世代のデジタル技術に対し、2030年度までに総額約10兆円を充てる方針を打ち出した。
念頭に置くのが、先端半導体メーカーのラピダスだ。トヨタ自動車やNTTなどが出資して22年に発足した。27年の量産開始に向け、政府が決めた補助金などの総額は1兆円に迫る。出資も視野に入れている。
自動運転やロボットなどに必要な半導体は、需要拡大が予想される。輸入に依存したままでは供給不足に陥る懸念がある。米欧や中国も産業政策の柱に位置付けており、支援の必要性は理解できる。
国内で生産・開発の拠点が整備されることで、地域経済の活性化も期待される。台湾積体電路製造(TSMC)が進出した熊本県には製造装置などの関連産業が集まり、雇用環境が改善した。
政府が継続的に関与すれば、金融機関や企業も融資や投資をしやすくなる。
とはいえ、資金を集める呼び水の役割は既に果たしたはずだ。頓挫すれば国民にツケが回る。次は民間がけん引する番だ。
ただ、企業の腰が定まっているとはいえない。量産には5兆円以上の投資が必要とされる。現在の資本金は73億円で、資金不足は否めない。トヨタなどが追加出資を計画しているが、総額1000億円規模にとどまる。
金融機関や企業にとって、投融資の判断が難しいという事情はある。国内で先端半導体の技術は育っておらず、製品もない。来年春に稼働予定の試作ラインで、品質の高さを示せるかが問われる。
信頼を得る上で重要なのは、説得力のある戦略を示すことだ。
先行するTSMCや韓国サムスン電子とは異なるビジネスモデルが求められる。開発期間を短縮し、顧客の需要に即した製品を迅速に供給するというが、優秀な人材と安定した販路の確保が先決だ。
日本の半導体産業は政府主導で再編を進めた結果、国際競争から脱落した経験がある。リスクを取って新たな領域に挑戦する姿勢がなければ、成功はおぼつかない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月25日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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