【社説・12.22】:裏金事件の政倫審 証人喚問で解明尽くせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.22】:裏金事件の政倫審 証人喚問で解明尽くせ
もはや政治不信を深めるだけの場になっていないか。
自民党の派閥裏金事件を巡り、旧安倍派や旧二階派に所属した19人が衆参両院の政治倫理審査会に出席した。多くの議員が「秘書らに任せていた」などと臆面もなく語った。当事者意識や政治責任の欠如にあぜんとする。
パーティー券のノルマ超過分の収入を政治資金収支報告書に記載せず、議員に還流して裏金化していた。総額は5億8千万円に及ぶ。こんな手口がいつ、誰の指示で始まったのか。そして何に使ったのか。発覚から1年過ぎても、真相解明は一向に進まない。
しかも、還流をいったん中止しながら、再開した経緯も不明なままだ。こんな調子では、人ごとのような弁明が繰り返されるだけだろう。政倫審の限界は明らかである。
象徴的なのは萩生田光一氏だ。旧安倍派の「5人衆」に数えられた有力者で、収支報告書の不記載額も2728万円と巨額だった。19議員の中で、最も真相を知る可能性が高いとみられていた。
だが明らかにしたのは約20年前に還流があった事実のみ。違法性の認識や不適切支出はなかったとし、再開の経緯も「知りうる立場になかった」と主張した。肩透かしと感じた有権者は多いだろう。
弁護士でもある柴山昌彦・元文部科学相は、派閥事務局の不記載の指示に「不審に思った」と何度も問い合わせながら、従ったという。政治家、法律の専門家として対応に首をかしげざるを得ない。
政倫審では偽証しても罪に問われない。3月に出席した西村康稔氏、世耕弘成氏、松野博一氏、塩谷立氏ら旧安倍派幹部の口からも、核心部分に触れる説明はなかった。
そもそも先の衆院選前には、衆参70人以上の議員が政倫審での弁明を拒んでいた。衆院選当選を「免罪符」と考え、党幹部に促されて形だけの出席に臨んだ議員が多いのではないか。反省すべきことを明らかにせず、みそぎや幕引きになるはずはない。
衆院選後の共同通信社の世論調査では、9割超が自民党の議席減に「裏金事件の影響があったと思う」と回答。当選した裏金議員の要職起用には8割近くが反対した。国民の怒りと不信をもっと深刻に受け止めた方がいい。
次の通常国会では、うそをつけば偽証罪に問われる証人喚問を行うべきだ。有罪が確定した旧安倍派、旧二階派の会計責任者の証言と、元幹部議員らの言い分を突き合わせる必要がある。旧安倍派の会長だった森喜朗氏らにも事情を聞き、徹底的に解明を図ってもらいたい。
自民党は東京都連や山口県連などでも不記載問題が明らかになっている。地方組織を含め、カネを巡る実態調査と透明化は欠かせない。
にもかかわらず党総裁の石破茂首相の態度は煮え切らない。野党が求める裏金事件の再調査に消極的な答弁を繰り返す。証人喚問も敬遠するなら、国民の心は離れるばかりだろう。その場合、来夏の参院選で再び厳しい審判が下されると肝に銘じるべきだ。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月22日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます