【社説②・01.23】:米野球殿堂入り 走攻守で魅了したイチロー氏
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.23】:米野球殿堂入り 走攻守で魅了したイチロー氏
日本が生んだ希代の左打者が、新たな勲章を手に入れた。華麗なプレーと数々の偉大な記録は米野球史に刻まれ、長く語り継がれるだろう。
米大リーグのマリナーズなどで活躍したイチロー氏の米国野球殿堂入りが決まった。日本人初の快挙である。殿堂入りを決めた記者投票では、あと1票で満票という圧倒的な支持を得た。
殿堂入りは、大リーグで10年以上活躍し、傑出した成績を残した人物らを 称 える制度だ。過去に選出されたメンバーには、ベーブ・ルースら伝説的な選手が多く、米野球界最高の栄誉である。
イチロー氏も記者会見で「選手としての評価という意味ではこれが最も大きいもの」と、殿堂入りの重みをかみしめていた。
米移籍の1年目に、早くも首位打者と盗塁王を獲得し、新人王とMVPに輝いた。4年目には262安打を放ち、大リーグのシーズン記録を84年ぶりに更新した。
パワー重視で本塁打の記録が重視されやすい大リーグに、巧打と強肩、俊足で新風を吹き込んだ。「打って、守って、走る」という野球本来の面白さを本場のファンたちに見せつけた。
日本人では、投手の野茂英雄氏らがすでに活躍していたが、野手の実力は未知数だった。当初は細身のイチロー氏が活躍できるかどうか疑問視する声もあり、ファンから「『日本に帰れ』としょっちゅう言われた」という。
日本人野手の評価を高め、松井秀喜氏ら後進への道を開いた意義は大きい。今月、日本の野球殿堂入りも決まった。日米通算4367安打を破る選手は、今後出ないかもしれない。
洗練されたプレーの陰には、厳しい鍛錬があった。試合当日はいち早く球場入りし、ストレッチやトレーニングを重ねた。ケガが少なく、45歳まで現役を続けられたのも、こうした準備の 賜 だ。
イチロー氏は、「少しずつの積み重ねでしか、自分を超えていけないと思っている。地道に進むしかない」と語っている。
日本では、小学生時代から連日バッティングセンターに通い、甲子園にも出場した。オリックス時代の1995年にはリーグ優勝に貢献し、「がんばろうKOBE」のかけ声のもと、阪神大震災の被災者たちを勇気づけた。
引退後は、米国でマリナーズの選手らを指導し、日本では高校生に熱心に野球を教えている。日米の橋渡し役として、今後も野球界の発展に力を注いでほしい。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月23日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます