【社説・12.13】:韓国大統領/混乱と分断あおる行為だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.13】:韓国大統領/混乱と分断あおる行為だ
強権発動で国民の信頼を失った為政者が自らを正当化し、地位にとどまり続ける。混乱を極める韓国政治への懸念は募るばかりだ。
尹錫悦(ユンソンニョル)大統領による非常戒厳の宣言は憲法違反だとして、最大野党「共に民主党」などがきのう、尹氏に対する2度目の弾劾訴追案を、国会に提出した。14日に採決する。1度目は与党「国民の力」の多数の議員が採決を拒否し、廃案となった。
ここ数日で尹氏は態度を硬化させた。7日に戒厳令は大統領としての切迫感によるもので国民に「心からおわびする」と謝罪した。任期は2027年5月までだが、自身の処遇については「党(国民の力)に一任する」と述べた。
ところが、12日には「最後の瞬間まで国民と共に闘う」と辞任を明確に拒否した。戒厳令については「憲法秩序を守り回復するためだった」と改めて正当化し、野党が国政をまひさせていると非難した。
尹氏に戒厳令を進言したとされる前国防相は、内乱の疑いで逮捕された。自身への弾劾圧力が高まり、身柄拘束の可能性が出てくる中、保守派の岩盤支持層へ向けた「共闘宣言」で、政治的な延命を図る狙いがあるのだろう。
尹氏は軍隊を動員して異論を封じようとした。民主主義を破壊する愚挙である。にもかかわらず、「弾劾にも捜査にも立ち向かう」と主張するのは、法の支配を軽視し、国民の分断をあおる行為といえる。尹氏は混乱の責任を取って大統領を辞任するべきではないか。
軍は国会議事堂のみならず、選挙管理委員会にも突入した。与党が大敗した4月の総選挙を、不正を理由に無効化しようとした可能性がある。インターネット上で選挙の不正を主張する者はいるが、一般的には「陰謀論」と受け止められている。
しかし、尹氏の談話は、そうした極論を大統領自身が今も信じているのではないかと思わせる内容だ。民主主義国家として極めて深刻な事態と言わざるを得ない。
弾劾を避けて「党の論理」に走る与党の責任も大きい。17年に同じ保守系の朴槿恵(パククネ)大統領が弾劾を経て罷免された後に、革新派の政権が誕生した。その苦い経験から、次期大統領選を見据えて、時間稼ぎとも見られる動きをしてきた。
一方、数の力で押し切ろうとする野党側にも、韓国内の分断と政治的混乱の原因の一端がある。
石破茂首相の来年1月の訪韓が延期されるなど外交上の影響も出ている。韓国政界は、戒厳解除要求の決議で見せた団結力を再び発揮し、民主的な手続きで事態打開に努めてもらいたい。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月13日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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