《社説①》:知床の観光船事故 惨事招いた責任は重大だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:知床の観光船事故 惨事招いた責任は重大だ
行方不明者の捜索に全力を挙げるとともに、惨事が起きた原因を究明しなければならない。
北海道の知床半島沖を航行していた観光船が消息を絶った。乗客乗員は子ども2人を含む26人で、見つかった人たちの死亡が次々と確認されている。
観光船からは、世界自然遺産の知床の自然を眺められる。約3時間かけて、半島の先端で折り返して戻るコースだ。
だが、23日は帰港の予定時刻になっても戻らず、乗員から「船首部分が浸水し、沈みかかっている」と海上保安庁に通報があった。強風や高波で捜索は難航した。
疑問が持たれているのは、荒天が予想されていたにもかかわらず、出航に踏み切った判断だ。
当時、周辺には強風注意報と波浪注意報が出ていた。コースの海域は暗礁が多く、悪天候下では座礁の危険性が高まる。この日は漁船も朝のうちに引き返していた。
旅客船は法律に基づき、運航を判断する目安となる風速や波の高さなどを国に届けている。それらが守られていたのか、詳しい調査が欠かせない。
運航会社の安全管理体制も問われる。
船は昨年にも2回、事故を起こし、今回と同じ船長が業務上過失往来危険容疑で書類送検されていた。会社は国土交通省から指導を受け、安全対策などの改善報告書を提出していた。問題は対策が乗員に浸透していたかどうかだ。
国交省は会社への特別監査を実施し、運輸安全委員会も事故原因の調査を始めた。海保は業務上過失致死容疑などでの立件を視野に入れている。
天候が不安定なこの時期、事故を起こした船だけが他社に先駆け、今年の営業を開始していた。
安全への配慮がそもそも不足していた疑いが拭えない。結果として深刻な事態を招いた責任は重大である。
新型コロナウイルス禍で、各地の観光業者は打撃を受けてきた。今年は3年ぶりに、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されていない中でゴールデンウイークを迎える。
観光地を訪れる多くの人が安心できるよう、安全対策の徹底が求められる。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月26日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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