【卓上四季・05.05】:こどもの日に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・05.05】:こどもの日に
春耕のときを迎えた。札幌から車で北東へ向かい、石狩、当別、新篠津の田園地帯をひと回りした。あちこちでトラクターが行ったり来たりする。湿りを帯びた土が顔をのぞかせ、陽光を浴びていた。あと少しで田んぼに水が満たされる
▼気持ちのよい青空が広がる。はるか先に、こいのぼりを飾る民家があった。大きなマゴイと小さなヒゴイが仲よく風に泳いでいる。かつて習った唱歌の情景そのものだ。近くで見上げると、心が晴れやかになる
▼このお宅の子はきっと、ゆったりとそよぐ姿に大きな夢を重ねることだろう。まわりの大人たちは強く願っているに違いない。子どもが健やかに成長しますように―と
▼詩人の竹内てるよ(1904~2001年)は札幌に生まれ、厚岸で育った。病苦と闘った生涯であったが、親子の情愛や子どもの姿を描いた佳品を数多く残している
▼<われら北国の子供らにとつて/春の来るほど うれしいものはない>。「若芽」という作品はいまの季節にぴったりだ。作中の子どもたちは<丘のアカシアにみどりの芽が出る>と枝にまたがって海を眺める
▼彼らの胸に希望のきざしが生まれる。<人生の不思議なゆめとまどはしが/空から胸にとび込んでくるやうな気がして/思はず小さい襟許(えりもと)をかき合せるのだ>。きょう、こどもの日。生まれた場所や境遇にかかわらず、どの子にも幸いあれ。心から願う。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2024年05月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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