【社説・05.05】:こどもの日 その声に耳傾け尊重を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.05】:こどもの日 その声に耳傾け尊重を
子ども政策を担う「こども家庭庁」が設立され、1年余りが経過した。当初から「何よりもこどもの意見が大切」と強調し、施策に生かす姿勢を示してきた。
その声が届かず、厳しい境遇に置かれる子どもは後を絶たない。
離婚後も父母双方が親権を持つ共同親権の導入に関して、衆院の法案審議では子の意思を尊重する規定が見送られた。当事者の子どもの視点は必須なのに、反映させる努力は足りていない。
子どもは保護されるだけの存在ではない。さまざまな権利を持つ市民の一員であり未来の担い手である。誰もがいつまでも幸せに暮らせる社会をつくるため、子どもの意見は尊重されねばならない。
きょうはこどもの日だ。子どもの声に耳を傾けることの重要性を改めてかみしめたい。
小中高校生の自殺者は昨年、513人だった。前年同様に500人を超え、高止まりが続く。
札幌市立中の女子生徒がいじめを受け自殺したことも判明した。いじめは小学校時代に始まり、生徒は被害を何度も訴えたが教員や学校は向き合わなかった。
市教委も当初、訴えの大半を黒塗りにして発表した。放置、隠蔽(いんぺい)したと言われても仕方がない。
同様のことは全国で相次ぐ。学校という閉じられた空間で発生した事態を、関係者が保身のために矮小(わいしょう)化する事なかれ主義が根強いことが背景にあろう。
近年、大人に代わり家族の介護などをするヤングケアラーへの支援が求められている。こうした声を受け今年、民間の全道組織「北海道ケアラーズ」が発足した。
元教員などから協力の申し出があった。今後、各地に当事者の交流の場を設ける計画だ。見守りの輪が地域に広がると期待したい。
中心メンバーの加藤高一郎さんは介護職の傍ら、介護に追われる子どもたちと交流してきた。道のヤングケアラー相談窓口の運営も委託され24時間体制で対応する。
子どもたちは「かわいそう」と見られることを嫌がる。加藤さんは助けてあげるという姿勢ではなく、聞き役に徹している。
子どもは話をするうちに自身を客観視できるようになる。その気づきを大事にしたいという。
友達が介護で疲れていると知り「僕はどうしたらいいですか」と聞いてきた小学生もいたそうだ。
そんな子どもの力も借り、問題解決を図ることもできるはずだ。共に社会で暮らすパートナーだという関係性を大切にしたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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