【社説・11.24】:経済対策 バラマキ排す国会論議を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.24】:経済対策 バラマキ排す国会論議を
物価高対応を柱に、政府は地方自治体や民間企業の支出分を含め計39兆円規模に及ぶ新たな経済対策を閣議決定した。
このうち本年度一般会計補正予算案には昨年度補正を上回る13兆9千億円を計上する。家計支援や能登半島の地震・豪雨復興など喫緊の課題に絞った内容なのか精査が必要であろう。
これまでも巨額の補正予算の多くが未消化で繰り越されたことは会計検査院が指摘している。アベノミクス以降のバラマキ踏襲を排するべきである。
経済対策を巡り少数与党である自民、公明は国民民主の「年収103万円の壁」引き上げ要求を受け入れた。国民民主は補正予算案に賛成意向という。
事前に丸のみする姿勢には問題がある。衆院選で有権者は与野党伯仲での審議活性化を求めたことを忘れてはならない。
経済対策には「手取りを増やす」という国民民主の訴えに沿い、所得税控除を現行の103万円から引き上げることやガソリン減税検討を明記した。
だがいずれも来月の税制改正大綱に盛り込む内容で、補正予算案には直接関係なく違和感が残る。予算案通過と引き換えに税制論議の主導権を握る思惑が先行し不透明さは拭えない。
物価高対応では低所得世帯への給付金や、現在中断している電気・ガス料金支援の来年1~3月再開のほか、3年近く続くガソリン代補助も継続する。
困窮する家計への支援は欠かせないが、バラマキがインフレを促す逆効果もある。そもそも急速な円安という原因を解消しなければ効果は薄れるだけだ。
立憲民主が独自にまとめた補正予算案は7兆4千億円と政府案の約半分だ。与党の事前審査を通れば可決していた従来と違い、国会の場で修正も含めた実質的な審議が求められる。
一方で人工知能(AI)や半導体産業には一般会計とは別に特別会計を通じ2030年度までに10兆円以上財政支援する。
千歳で次世代半導体の製造を目指すラピダス(東京)も対象で、デジタル化や経済安全保障の観点から投資は必要という。
重要な産業戦略の枠組みは年度途中の経済対策でなく、本予算案で腰を据えて審議するのが筋だ。米IBMから技術支援を受けるラピダスだが、米国はトランプ次期政権で半導体産業の自国回帰を進める恐れもある。
財政制度等審議会では有識者委員から「一時の勢いで推し進める」ことに懸念が出た。特別会計で目の行き届かぬことがないよう、国会は投資効果を厳しくチェックしてほしv。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月24日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます