【社説・11.26】:COP29閉幕 先進国は排出責任自覚せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.26】:COP29閉幕 先進国は排出責任自覚せよ
アゼルバイジャンで開かれていた国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)は、発展途上国に向けた先進国の支援について、2035年までに官民合わせて少なくとも年3千億ドル(約46兆円)とする目標で合意した。
現行の3倍に上るが、途上国側には年1兆ドル超を求める声もあった。国連のグテレス事務総長は「より野心的な成果を期待していた」と不満をにじませた。
脱化石燃料の取り組みも昨年のCOP28の成果文書の確認にとどまった。産業革命以来の気温上昇を1・5度に抑えるという目標達成が絶望的になった危機感を反映した成果とはいえず、残念だ。
途上国への支援金はクリーンエネルギーへの転換や異常気象による被害対応に使われる。背景には、先進国が大量に出した温室効果ガスによって、ほとんど排出しない途上国の貧困層が最初に大きな影響を受けるという不公正さがある。支援の規模が小さいとする途上国の反発は理解できる。大排出国の一つである日本も責任を自覚すべきだ。
ただ支援金は、先進国にも簡単に出せる額ではない。どこにどんな対策が要るのかをはっきりさせることも重要だろう。支援の総額だけを突き付けられては困る面もある。
「気候変動はうそだ」と唱え、対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明している米国のトランプ次期大統領の存在が、議論の停滞を招いた点は否めない。
米国が支援金を出さず、日本や欧州の負担が膨れる可能性もある。トランプ氏にこの問題の重要さを分からせる努力を国際社会は惜しんではならない。支援を確実にするため、中国や中東の産油国にも資金を出させるよう仕組みを見直す必要もある。
このままでは地球は人が住めない場所になる。既に多くの国で夏の暑さは過酷で、大規模な風水害や干ばつが頻発する。世界の気温が1・5度上がると豪雨は1・5倍、干ばつは2倍になるという。対策は待ったなしだ。それなのに各国の足並みはそろわず、強力なリーダーもいない。将来への不安が高まる。
日本の存在感は薄かった。議論をリードできないばかりか、今年も環境団体から不名誉な「化石賞」を先進7カ国(G7)の一員として贈られた。温暖化対策に後ろ向きな国だと改めて非難された。
蓄積のある防災技術や、エネルギー効率化、蓄電池などの分野で日本は貢献できるのではないか。最先端技術の開発で、各国が協力する仕組みづくりを主導してほしい。
もはや経済成長か環境保全かという二者択一ではない。猛暑や災害で経済活動が制限されることによる損失は計り知れぬ。気候変動対策が長期的には経済対策になるという認識を世界で共有すべきだ。
気になるのは、迫る危機から目をそらし、都合の良い情報だけを信じて楽観する風潮が一部に見られる点だ。われわれには、安心して暮らせる環境を後世に残す責務がある。難問に正面から向き合う姿勢を持ち続けたい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月26日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます