それにしても、北朝鮮不信論調は舌好調だ。確かに北朝鮮のやっていることをみれば、自業自得と言える。北朝鮮を弁護することはいっさいあり得ない。
だが、同時にマスコミは北朝鮮を批判できるだろうか。「衛星」についての評価は論理的だろうか?
だが、もし「衛星」だったら、どうするのだろうか?
以下各社の社説の関係部分を抜き出して一覧してみよう。
ロケット打ち上げの技術は、大量破壊兵器を運ぶミサイルと基本的に同じである。つまり、長距離弾道ミサイルの発射実験と変わらないわけだ。これまでも北朝鮮は「衛星打ち上げ」だとして、ミサイル実験を繰り返してもきた。 外の目をかいくぐって核開発を続ける。そういう北朝鮮に認めるわけにはいかない。打ち上げの中止を求める。(朝日)
北朝鮮は、発射するのはロケットと称している。ミサイルではない、と言いたいのだろうが、原理は同じだ。発射にはミサイルの性能向上を図る狙いがあろう。衛星打ち上げであっても、弾道ミサイル技術を使っての発射を禁じた国連決議に違反する。北朝鮮は3年前に「衛星」打ち上げを予告した時も、日本や米国、韓国などの警告を無視して発射を強行した。「読売」
ロケット発射は長距離弾道ミサイル発射と技術的に違いはない。北は1998年に中距離弾道ミサイルのテポドン1号を発射、日本列島を越えた三陸沖に落下して日本の安全を脅かした。この時も「衛星打ち上げ」と称した。2006年にテポドン2号を発射、空中分解して失敗に終わったが、09年4月、「衛星」を名目にその改良型とされるミサイルを日本の領土越しに発射した。「産経」
この件に関する北朝鮮の一連の動向を見ると、実際に衛星を地球周回軌道に乗せようとしている可能性を決して排除できない。これは深刻な危険の存在を意味する。人工衛星を打ち上げる技術は原理的に、核兵器を搭載する大陸間弾道ミサイル(ICBM)と同種だ。 北朝鮮がたとえ貧弱なものであれ衛星を飛ばす技術を手にすれば、ことは重大である。既に確保済みのプルトニウムや、推進中と見られるウラン濃縮の技術を利用しつつ、核兵器の小型化を図り、時間はかかるにしてもICBMへの搭載を目指す道筋が見える。このような事態はとうてい容認できない。北朝鮮の核実験を受けた国連安全保障理事会の決議は「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動」の停止を求めている。北朝鮮の従来の弾道ミサイル発射実験以上に軍事的な脅威となりうる「衛星打ち上げ」もミサイル技術を用いるものであり、当然に禁止対象と言える。「毎日」
実質的な長距離弾道ミサイルの発射であり、「すべての弾道ミサイル活動の停止」を求めた国連安全保障理事会決議に違反する。北朝鮮は発射を中止すべきだ。北朝鮮は今回、朝鮮半島の黄海側の基地から南方に発射するとしている。日本列島の上空を通過するかどうかにかかわらず、日本政府は発射の阻止に向け、積極的な外交努力を果たす立場にある。「日経」
だが過去の経緯から、各国は弾道ミサイルの発射実験だろうと警戒する。だが、事実上は長距離弾道ミサイル「テポドン2号」改良型の発射との見方が有力だ。ロケットは人工衛星、ミサイルは弾頭を運搬するが、発射原理はほぼ同じだ。北朝鮮は過去三回の実験でも「人工衛星」と主張したが、衛星軌道には乗らなかった。国連安全保障理事会は二〇〇九年の制裁決議で、弾道ミサイルとみなして実験停止を求めた。「東京」
北朝鮮はこれまで「人工衛星」の名目でミサイルを発射してきた。今回も実態は長距離弾道ミサイルの発射実験とみられる。「琉球新報」
北朝鮮の発表にもかかわらず、国際社会は事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験とみている。ロケットと長距離弾道ミサイルは技術的に同じで、何を搭載するかの違いだけだからである。国連安保理は北朝鮮に対し2009年6月、弾道ミサイル技術を使ったどんな発射も禁じる決議をしており、これに違反する。「沖縄タイムス」
人工衛星ロケットと弾道ミサイルの発射技術はほぼ同じで、事実上は長距離弾道ミサイル「テポドン2号」か、その改良型の発射実験とみられるからだ。「西日本」
事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験で、同ミサイル発射を禁じた国連安保理決議に違反するばかりか、2月の米朝合意にも抵触する。「山陽」
ロケットとはいうものの、ミサイルと基本的な技術は同じだ。事実上、長距離弾道ミサイルの発射実験だと考えられる。打ち上げは、長距離弾道ミサイル技術の向上に直結する。北朝鮮が開発を進めているとみられる核兵器と結びつけば重大な脅威だ。「京都」
平和利用のためであることを強調しているけれど、北朝鮮が核にこだわり続けている状況を考えると、事実上、長距離弾道ミサイルの発射実験とみられる。「信濃毎日」
衛星を乗せる「運搬ロケット」は、長距離弾道ミサイルと同型とみられる。日本、米国、韓国が強く反発しているのは当然だ。ロシア、中国も懸念を表明し、自制を促した。北朝鮮の真意がどこにあるにせよ、軍事的挑発に当たるのは明らかだ。約束しては一方的にこれをほごにし、新たな条件を提示して交渉を有利に進める。北朝鮮はいつものやり方を踏襲するのだろうか。「新潟」
事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験にほかならず、「全ての弾道ミサイル活動の停止」を求めた国連安全保障理事会の決議に明白に違反している。しかし、思い出してほしい。北朝鮮が「衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、それを外交カードに使ってきた過去の事実を。1998年に三陸沖に落下したテポドン1号の「標的」は米軍三沢基地だったことが、当時の官房長官だった野中広務氏の証言で明らかになっている。この時も北朝鮮は「衛星打ち上げ」を名目にしていた。核開発も同様である。「原子力の平和利用」をうたいながら、現れたのは保有数が5個以上と推測される核兵器にほかならない。そんな勝手し放題の国が、いまさら国際ルールを持ち出してきても説得力を持たないのは自明。落下水域はフィリピン東方沖の公海。過去3回のミサイル発射と違って本土上空は飛ばないが、南西諸島の上空をかすめ通る。「沖縄の米軍嘉手納基地に対する威嚇という側面を持っているのではないか」とは軍事専門家の分析だ。三沢、嘉手納基地は有事の際、北朝鮮に対する米軍の攻撃拠点となるからだ。「東奥」
衛星名目でも打ち上げロケットは長距離弾道ミサイルと同等の性能がある。「北海道」
以上、「衛星」=「長距離弾道弾ミサイル」論が大手を振っている。では日本やアメリカ、中国、ロシアの「衛星」は「長距離弾道弾ミサイル」ではないのだろうか?
北朝鮮の周辺、韓国・日本・太平洋には米軍が配備されている。「東奥」の社説が、このことを雄弁に語っている。北朝鮮を攻めるための「脅威」=「抑止力」として存在する米軍、この「脅威」は「正当」で、「北朝鮮の脅威」は「不当」だというのは、どうみてもアンフェアーだ。
次に北朝鮮の言い分について、各社はどのように「批判」しているだろうか。以下一覧してみる。
もちろん、宇宙の平和利用の権利は、どこの国にもある。だが、それを今の北朝鮮に当てはめていいだろうか。発射予告のなかで、北朝鮮は「国際的な規定や慣例を守り、透明性を保証する」と述べた。国際社会の批判を和らげようとする姿勢がありありと見える。「朝日」
北は1998年に中距離弾道ミサイルのテポドン1号を発射、日本列島を越えた三陸沖に落下して日本の安全を脅かした。この時も「衛星打ち上げ」と称した。2006年にテポドン2号を発射、空中分解して失敗に終わったが、09年4月、「衛星」を名目にその改良型とされるミサイルを日本の領土越しに発射した。いずれも地域の平和と安全を危険にさらす暴挙といえる。同年5月の核再実験と合わせて安保理制裁決議が採択されたのもそのためだ。「産経」
その現場に「外国の権威ある専門家や記者」を招いて打ち上げを見せるとも公言した。この件に関する北朝鮮の一連の動向を見ると、実際に衛星を地球周回軌道に乗せようとしている可能性を決して排除できない。これは深刻な危険の存在を意味する。「宇宙の平和利用」を隠れみのにした作戦とともに驚くのは、2月に北京で行われた米朝協議に関する背信行為だ。「毎日」
北朝鮮は「国際的な規定を守り、飛行軌道も安全に設定した」と主張するが、周辺国がそろって反発している中で、打ち上げを強行すべきではない。「東京」
国際社会における信頼醸成に自ら背を向けながら、「宇宙の平和利用」を持ち出しても、説得力がない。「沖縄タイムス」
北朝鮮はあくまで「ミサイルではなく、衛星だ」と言い張る姿勢のようだ。「西日本」
北朝鮮は、「国際的な規定を守る」「残骸が周辺国に影響を及ぼさないよう、飛行軌道を安全に設定した」として、あくまで宇宙の平和的利用と主張する。合意違反ではないということだろう。しかし、北朝鮮はこれまでも国際社会の警告に耳を貸さず、金正日体制で3回にわたり、発射実験を強行した。2006年、09年の実験は弾道ミサイル技術を用いた発射を禁じた国連決議に違反することは明白だ。「京都」
朝鮮中央通信は日米韓などの批判を「平和的な宇宙利用を否定し、主権を侵害するもの」と一蹴した。衛星打ち上げの権利がどこの国にもあるのはもちろんだが、平和利用がどう担保されるかが問題だ。北朝鮮にこれを言う資格があるだろうか。国際機関に発射情報を事前通報した。打ち上げに外国の専門家と記者を招待するともいう。だが、本当に求められているのは形式やセレモニーではなく、完全な情報公開だ。「新潟日報」
今回の発射について北朝鮮は「宇宙空間の平和的開発と利用は主権国家の合法的権利」と主張する。確かに、どこの国にも人工衛星を打ち上げる権利はある。しかし、思い出してほしい。北朝鮮が「衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、それを外交カードに使ってきた過去の事実を。核開発も同様である。「原子力の平和利用」をうたいながら、現れたのは保有数が5個以上と推測される核兵器にほかならない。そんな勝手し放題の国が、いまさら国際ルールを持ち出してきても説得力を持たないのは自明の理だ。「東奥」
宇宙の平和利用は各国に認められた権利だが、北朝鮮は国際社会が衛星名目でも打ち上げを認めていないことを再認識すべきだ。発射を強行すれば包囲網は一段と厳しくなり、孤立化をいっそう深めるだけだ。「北海道」
一般論としての「宇宙の平和利用の権利」「どこの国にも人工衛星を打ち上げる権利」「原子力の平和利用」は認めている。だが、これらの「軍事利用」については、アメリカは先進国だ。ではアメリカを宇宙から監視する権利は北朝鮮にはないのだろうか?
北朝鮮の言い分を一般論として否定はできない、認めながら、北朝鮮に対して、この「一般論」を当てはめない唯一根拠は、北朝鮮の「資格」「説得力」「暴挙」「背信行為」だ。
さらには「2006年、09年の実験は弾道ミサイル技術を用いた発射を禁じた国連決議に違反」だ。
これは北朝鮮の自業自得だ。だが日本のマスコミは以下のことについて、どのように説明するのだろうか?
国際法に違反してイラク・アフガン戦争を強行したアメリカの「暴挙」は「配信行為」ではないのだろうか?
アメリカに北朝鮮を批判する「資格」「説得力」はあるのだろうか?
アメリカの北朝鮮に対する「脅威」は問題ないのだろうか?
「北朝鮮が開発を進めているとみられる核兵器と結びつけば重大な脅威だ」という「京都」はアメリカの核兵器は「脅威」ではないというのだろうか?
各社で打ち上げの「狙い」が言われているが、こういうことは、かつてのソ連とアメリカの宇宙競争を上げれば、北朝鮮のことは言えないだろう。日本では「国威発揚」に使わなかったのだろうか?
これに関して言えば、ほぼ同時期に「宇宙は平和のために JAXA法改悪で署名呼び掛け 秋山元飛行士ら」という記事があった。北朝鮮のことを言えるようなニッポンではないことは明らかだ。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-03-08/2012030801_04_1.html
米朝協議の「合意」そのものは、核兵器を「抑止力」としての「カード」として利用し、駆け引きに使い合っている米朝の立場が浮き彫りになったのではないだろうか?以下の指摘をみてみよう。
「米政府の交渉団はこの協議の過程で北朝鮮に『いかなる衛星打ち上げも合意破棄と見なす』と警告したという。ところが北朝鮮は平然と警告を無視し、米国に恥をかかせた」(毎日)「その舌の根も乾かぬうちの衛星発射予告である。米朝合意の詰めの甘さを突いた、と言える」(読売)「米国が「極めて挑発的」と非難」(京都)「新体制になっても、核とミサイルの「脅威」をカードに米国と駆け引きする姿勢に変わりがないことが鮮明になったといえる」(山陽)とあるが、この立場は、まさに日米韓も同じだ。
ではどうするか。
まず第一に、北朝鮮の「言い分」を認めたとして、それを履行させるための具体的な保障を認めさせることだ。すなわち「情報の公開」だ。打ち上げ前に、「衛星」かどうかを確認する作業を認めさせることができるかどうか、だ。
さらに第二には、「国連決議」の水準を北朝鮮に求めながらも、北朝鮮への「脅威」を取り除く作業をすることが、最大の課題だろう。北朝鮮の「先軍政治」路線の「口実」をどのように取り払っていくかだ。朝鮮半島は「休戦」状態なのだ。「脅威」論の枠内で、北朝鮮と同じレベルで対応し続けていることが、今日の事態を招いているのだ。この点で言えば、日本には最良の道徳心がある。「敵に塩を送る」論だ。
さらに、このことに関して言えば、軍事費を「聖域」にして消費税増税を煽るマスコミは、北朝鮮の「先軍政治」と国民の「疲弊」を、日本の教訓としなければならない。
「けれど、国民の暮らしよりも軍事を優先してきたため、国内経済は疲弊し、多くの人々が飢えや病気に苦しむ結果となった」(信濃毎日)「食糧難に苦しむ自国民のため」(西日本)「食糧難に苦しんでいる国民の生活を顧みず、いつまで瀬戸際外交を続けるつもりなのか」(山陽)「国内の経済窮乏、食料不足は厳しさを増している」(信濃毎日)などの指摘は、まさに現在の日本に当てはまる。以下の記事も参考になる。
情報収集衛星 これこそ「廃止」すべき事業だ
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-12-10/2009121002_01_1.html
第三には、2005年の6カ国協議の共同声明の立場に北朝鮮が立つのかどうかを詰めていくことだ。その際に、北朝鮮も参加している東南アジア友好協力条約の理念を使った交渉を基本にすることだ。
第四には、2002年の日朝平壌宣言の「合意」を実行するための会議を中国で開催することだ。
「北朝鮮が望むものを手に入れるのは簡単である。脅しや虚勢、不毛な駆け引きをやめ、核を放棄し、拉致問題を完全解決することだ」(新潟)という指摘は、そのまま日本にも当てはまることを自覚しなければならない。
これは、ある意味、蛇足だが、「国際機関に発射情報を事前通報した。打ち上げに外国の専門家と記者を招待するともいう。だが、本当に求められているのは形式やセレモニーではなく、完全な情報公開だ」(新潟)は、原発再稼動に揺れる現在の日本に、そのまま当てはまるだろう。かの国のことを言っている場合ではないことを自覚すべきだ。
その点で言えば、原発再稼動を推進する輩の論理は、北朝鮮の言い分に似ているのだということに、日本国民は、そろそろ気付く必要があるだろう。
かの国を蔑む前に吾を見るあのこと活かす道にこそ眼を
だが、同時にマスコミは北朝鮮を批判できるだろうか。「衛星」についての評価は論理的だろうか?
だが、もし「衛星」だったら、どうするのだろうか?
以下各社の社説の関係部分を抜き出して一覧してみよう。
ロケット打ち上げの技術は、大量破壊兵器を運ぶミサイルと基本的に同じである。つまり、長距離弾道ミサイルの発射実験と変わらないわけだ。これまでも北朝鮮は「衛星打ち上げ」だとして、ミサイル実験を繰り返してもきた。 外の目をかいくぐって核開発を続ける。そういう北朝鮮に認めるわけにはいかない。打ち上げの中止を求める。(朝日)
北朝鮮は、発射するのはロケットと称している。ミサイルではない、と言いたいのだろうが、原理は同じだ。発射にはミサイルの性能向上を図る狙いがあろう。衛星打ち上げであっても、弾道ミサイル技術を使っての発射を禁じた国連決議に違反する。北朝鮮は3年前に「衛星」打ち上げを予告した時も、日本や米国、韓国などの警告を無視して発射を強行した。「読売」
ロケット発射は長距離弾道ミサイル発射と技術的に違いはない。北は1998年に中距離弾道ミサイルのテポドン1号を発射、日本列島を越えた三陸沖に落下して日本の安全を脅かした。この時も「衛星打ち上げ」と称した。2006年にテポドン2号を発射、空中分解して失敗に終わったが、09年4月、「衛星」を名目にその改良型とされるミサイルを日本の領土越しに発射した。「産経」
この件に関する北朝鮮の一連の動向を見ると、実際に衛星を地球周回軌道に乗せようとしている可能性を決して排除できない。これは深刻な危険の存在を意味する。人工衛星を打ち上げる技術は原理的に、核兵器を搭載する大陸間弾道ミサイル(ICBM)と同種だ。 北朝鮮がたとえ貧弱なものであれ衛星を飛ばす技術を手にすれば、ことは重大である。既に確保済みのプルトニウムや、推進中と見られるウラン濃縮の技術を利用しつつ、核兵器の小型化を図り、時間はかかるにしてもICBMへの搭載を目指す道筋が見える。このような事態はとうてい容認できない。北朝鮮の核実験を受けた国連安全保障理事会の決議は「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動」の停止を求めている。北朝鮮の従来の弾道ミサイル発射実験以上に軍事的な脅威となりうる「衛星打ち上げ」もミサイル技術を用いるものであり、当然に禁止対象と言える。「毎日」
実質的な長距離弾道ミサイルの発射であり、「すべての弾道ミサイル活動の停止」を求めた国連安全保障理事会決議に違反する。北朝鮮は発射を中止すべきだ。北朝鮮は今回、朝鮮半島の黄海側の基地から南方に発射するとしている。日本列島の上空を通過するかどうかにかかわらず、日本政府は発射の阻止に向け、積極的な外交努力を果たす立場にある。「日経」
だが過去の経緯から、各国は弾道ミサイルの発射実験だろうと警戒する。だが、事実上は長距離弾道ミサイル「テポドン2号」改良型の発射との見方が有力だ。ロケットは人工衛星、ミサイルは弾頭を運搬するが、発射原理はほぼ同じだ。北朝鮮は過去三回の実験でも「人工衛星」と主張したが、衛星軌道には乗らなかった。国連安全保障理事会は二〇〇九年の制裁決議で、弾道ミサイルとみなして実験停止を求めた。「東京」
北朝鮮はこれまで「人工衛星」の名目でミサイルを発射してきた。今回も実態は長距離弾道ミサイルの発射実験とみられる。「琉球新報」
北朝鮮の発表にもかかわらず、国際社会は事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験とみている。ロケットと長距離弾道ミサイルは技術的に同じで、何を搭載するかの違いだけだからである。国連安保理は北朝鮮に対し2009年6月、弾道ミサイル技術を使ったどんな発射も禁じる決議をしており、これに違反する。「沖縄タイムス」
人工衛星ロケットと弾道ミサイルの発射技術はほぼ同じで、事実上は長距離弾道ミサイル「テポドン2号」か、その改良型の発射実験とみられるからだ。「西日本」
事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験で、同ミサイル発射を禁じた国連安保理決議に違反するばかりか、2月の米朝合意にも抵触する。「山陽」
ロケットとはいうものの、ミサイルと基本的な技術は同じだ。事実上、長距離弾道ミサイルの発射実験だと考えられる。打ち上げは、長距離弾道ミサイル技術の向上に直結する。北朝鮮が開発を進めているとみられる核兵器と結びつけば重大な脅威だ。「京都」
平和利用のためであることを強調しているけれど、北朝鮮が核にこだわり続けている状況を考えると、事実上、長距離弾道ミサイルの発射実験とみられる。「信濃毎日」
衛星を乗せる「運搬ロケット」は、長距離弾道ミサイルと同型とみられる。日本、米国、韓国が強く反発しているのは当然だ。ロシア、中国も懸念を表明し、自制を促した。北朝鮮の真意がどこにあるにせよ、軍事的挑発に当たるのは明らかだ。約束しては一方的にこれをほごにし、新たな条件を提示して交渉を有利に進める。北朝鮮はいつものやり方を踏襲するのだろうか。「新潟」
事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験にほかならず、「全ての弾道ミサイル活動の停止」を求めた国連安全保障理事会の決議に明白に違反している。しかし、思い出してほしい。北朝鮮が「衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、それを外交カードに使ってきた過去の事実を。1998年に三陸沖に落下したテポドン1号の「標的」は米軍三沢基地だったことが、当時の官房長官だった野中広務氏の証言で明らかになっている。この時も北朝鮮は「衛星打ち上げ」を名目にしていた。核開発も同様である。「原子力の平和利用」をうたいながら、現れたのは保有数が5個以上と推測される核兵器にほかならない。そんな勝手し放題の国が、いまさら国際ルールを持ち出してきても説得力を持たないのは自明。落下水域はフィリピン東方沖の公海。過去3回のミサイル発射と違って本土上空は飛ばないが、南西諸島の上空をかすめ通る。「沖縄の米軍嘉手納基地に対する威嚇という側面を持っているのではないか」とは軍事専門家の分析だ。三沢、嘉手納基地は有事の際、北朝鮮に対する米軍の攻撃拠点となるからだ。「東奥」
衛星名目でも打ち上げロケットは長距離弾道ミサイルと同等の性能がある。「北海道」
以上、「衛星」=「長距離弾道弾ミサイル」論が大手を振っている。では日本やアメリカ、中国、ロシアの「衛星」は「長距離弾道弾ミサイル」ではないのだろうか?
北朝鮮の周辺、韓国・日本・太平洋には米軍が配備されている。「東奥」の社説が、このことを雄弁に語っている。北朝鮮を攻めるための「脅威」=「抑止力」として存在する米軍、この「脅威」は「正当」で、「北朝鮮の脅威」は「不当」だというのは、どうみてもアンフェアーだ。
次に北朝鮮の言い分について、各社はどのように「批判」しているだろうか。以下一覧してみる。
もちろん、宇宙の平和利用の権利は、どこの国にもある。だが、それを今の北朝鮮に当てはめていいだろうか。発射予告のなかで、北朝鮮は「国際的な規定や慣例を守り、透明性を保証する」と述べた。国際社会の批判を和らげようとする姿勢がありありと見える。「朝日」
北は1998年に中距離弾道ミサイルのテポドン1号を発射、日本列島を越えた三陸沖に落下して日本の安全を脅かした。この時も「衛星打ち上げ」と称した。2006年にテポドン2号を発射、空中分解して失敗に終わったが、09年4月、「衛星」を名目にその改良型とされるミサイルを日本の領土越しに発射した。いずれも地域の平和と安全を危険にさらす暴挙といえる。同年5月の核再実験と合わせて安保理制裁決議が採択されたのもそのためだ。「産経」
その現場に「外国の権威ある専門家や記者」を招いて打ち上げを見せるとも公言した。この件に関する北朝鮮の一連の動向を見ると、実際に衛星を地球周回軌道に乗せようとしている可能性を決して排除できない。これは深刻な危険の存在を意味する。「宇宙の平和利用」を隠れみのにした作戦とともに驚くのは、2月に北京で行われた米朝協議に関する背信行為だ。「毎日」
北朝鮮は「国際的な規定を守り、飛行軌道も安全に設定した」と主張するが、周辺国がそろって反発している中で、打ち上げを強行すべきではない。「東京」
国際社会における信頼醸成に自ら背を向けながら、「宇宙の平和利用」を持ち出しても、説得力がない。「沖縄タイムス」
北朝鮮はあくまで「ミサイルではなく、衛星だ」と言い張る姿勢のようだ。「西日本」
北朝鮮は、「国際的な規定を守る」「残骸が周辺国に影響を及ぼさないよう、飛行軌道を安全に設定した」として、あくまで宇宙の平和的利用と主張する。合意違反ではないということだろう。しかし、北朝鮮はこれまでも国際社会の警告に耳を貸さず、金正日体制で3回にわたり、発射実験を強行した。2006年、09年の実験は弾道ミサイル技術を用いた発射を禁じた国連決議に違反することは明白だ。「京都」
朝鮮中央通信は日米韓などの批判を「平和的な宇宙利用を否定し、主権を侵害するもの」と一蹴した。衛星打ち上げの権利がどこの国にもあるのはもちろんだが、平和利用がどう担保されるかが問題だ。北朝鮮にこれを言う資格があるだろうか。国際機関に発射情報を事前通報した。打ち上げに外国の専門家と記者を招待するともいう。だが、本当に求められているのは形式やセレモニーではなく、完全な情報公開だ。「新潟日報」
今回の発射について北朝鮮は「宇宙空間の平和的開発と利用は主権国家の合法的権利」と主張する。確かに、どこの国にも人工衛星を打ち上げる権利はある。しかし、思い出してほしい。北朝鮮が「衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、それを外交カードに使ってきた過去の事実を。核開発も同様である。「原子力の平和利用」をうたいながら、現れたのは保有数が5個以上と推測される核兵器にほかならない。そんな勝手し放題の国が、いまさら国際ルールを持ち出してきても説得力を持たないのは自明の理だ。「東奥」
宇宙の平和利用は各国に認められた権利だが、北朝鮮は国際社会が衛星名目でも打ち上げを認めていないことを再認識すべきだ。発射を強行すれば包囲網は一段と厳しくなり、孤立化をいっそう深めるだけだ。「北海道」
一般論としての「宇宙の平和利用の権利」「どこの国にも人工衛星を打ち上げる権利」「原子力の平和利用」は認めている。だが、これらの「軍事利用」については、アメリカは先進国だ。ではアメリカを宇宙から監視する権利は北朝鮮にはないのだろうか?
北朝鮮の言い分を一般論として否定はできない、認めながら、北朝鮮に対して、この「一般論」を当てはめない唯一根拠は、北朝鮮の「資格」「説得力」「暴挙」「背信行為」だ。
さらには「2006年、09年の実験は弾道ミサイル技術を用いた発射を禁じた国連決議に違反」だ。
これは北朝鮮の自業自得だ。だが日本のマスコミは以下のことについて、どのように説明するのだろうか?
国際法に違反してイラク・アフガン戦争を強行したアメリカの「暴挙」は「配信行為」ではないのだろうか?
アメリカに北朝鮮を批判する「資格」「説得力」はあるのだろうか?
アメリカの北朝鮮に対する「脅威」は問題ないのだろうか?
「北朝鮮が開発を進めているとみられる核兵器と結びつけば重大な脅威だ」という「京都」はアメリカの核兵器は「脅威」ではないというのだろうか?
各社で打ち上げの「狙い」が言われているが、こういうことは、かつてのソ連とアメリカの宇宙競争を上げれば、北朝鮮のことは言えないだろう。日本では「国威発揚」に使わなかったのだろうか?
これに関して言えば、ほぼ同時期に「宇宙は平和のために JAXA法改悪で署名呼び掛け 秋山元飛行士ら」という記事があった。北朝鮮のことを言えるようなニッポンではないことは明らかだ。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-03-08/2012030801_04_1.html
米朝協議の「合意」そのものは、核兵器を「抑止力」としての「カード」として利用し、駆け引きに使い合っている米朝の立場が浮き彫りになったのではないだろうか?以下の指摘をみてみよう。
「米政府の交渉団はこの協議の過程で北朝鮮に『いかなる衛星打ち上げも合意破棄と見なす』と警告したという。ところが北朝鮮は平然と警告を無視し、米国に恥をかかせた」(毎日)「その舌の根も乾かぬうちの衛星発射予告である。米朝合意の詰めの甘さを突いた、と言える」(読売)「米国が「極めて挑発的」と非難」(京都)「新体制になっても、核とミサイルの「脅威」をカードに米国と駆け引きする姿勢に変わりがないことが鮮明になったといえる」(山陽)とあるが、この立場は、まさに日米韓も同じだ。
ではどうするか。
まず第一に、北朝鮮の「言い分」を認めたとして、それを履行させるための具体的な保障を認めさせることだ。すなわち「情報の公開」だ。打ち上げ前に、「衛星」かどうかを確認する作業を認めさせることができるかどうか、だ。
さらに第二には、「国連決議」の水準を北朝鮮に求めながらも、北朝鮮への「脅威」を取り除く作業をすることが、最大の課題だろう。北朝鮮の「先軍政治」路線の「口実」をどのように取り払っていくかだ。朝鮮半島は「休戦」状態なのだ。「脅威」論の枠内で、北朝鮮と同じレベルで対応し続けていることが、今日の事態を招いているのだ。この点で言えば、日本には最良の道徳心がある。「敵に塩を送る」論だ。
さらに、このことに関して言えば、軍事費を「聖域」にして消費税増税を煽るマスコミは、北朝鮮の「先軍政治」と国民の「疲弊」を、日本の教訓としなければならない。
「けれど、国民の暮らしよりも軍事を優先してきたため、国内経済は疲弊し、多くの人々が飢えや病気に苦しむ結果となった」(信濃毎日)「食糧難に苦しむ自国民のため」(西日本)「食糧難に苦しんでいる国民の生活を顧みず、いつまで瀬戸際外交を続けるつもりなのか」(山陽)「国内の経済窮乏、食料不足は厳しさを増している」(信濃毎日)などの指摘は、まさに現在の日本に当てはまる。以下の記事も参考になる。
情報収集衛星 これこそ「廃止」すべき事業だ
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-12-10/2009121002_01_1.html
第三には、2005年の6カ国協議の共同声明の立場に北朝鮮が立つのかどうかを詰めていくことだ。その際に、北朝鮮も参加している東南アジア友好協力条約の理念を使った交渉を基本にすることだ。
第四には、2002年の日朝平壌宣言の「合意」を実行するための会議を中国で開催することだ。
「北朝鮮が望むものを手に入れるのは簡単である。脅しや虚勢、不毛な駆け引きをやめ、核を放棄し、拉致問題を完全解決することだ」(新潟)という指摘は、そのまま日本にも当てはまることを自覚しなければならない。
これは、ある意味、蛇足だが、「国際機関に発射情報を事前通報した。打ち上げに外国の専門家と記者を招待するともいう。だが、本当に求められているのは形式やセレモニーではなく、完全な情報公開だ」(新潟)は、原発再稼動に揺れる現在の日本に、そのまま当てはまるだろう。かの国のことを言っている場合ではないことを自覚すべきだ。
その点で言えば、原発再稼動を推進する輩の論理は、北朝鮮の言い分に似ているのだということに、日本国民は、そろそろ気付く必要があるだろう。
かの国を蔑む前に吾を見るあのこと活かす道にこそ眼を