「原発安全神話」を振りまいてきた構図と同じことが起こった。悲惨なバスツアー事故報道の社説だ。以下各社の「規制緩和」の部分に関して、どのように評価しているか、一覧してみた。読んできて思うこと、そのポイントは以下のとおりだ。
1.どの社説も、今回の事故の原因が2000年の「規制緩和」によって起こされたとそれなりに書いているが、その表現は他人事だ。この「規制緩和」策を提案したのは森政権、実行したのは小泉政権、自公政権だ。それを引き継いだ民主政権だが、これを明らかにしないのは、マスコミの免罪姿勢があるというべきだ。
「今回の事故を『起こるべくして起きた』と本紙に語った運転手もいる」(北海道)、「今回の事故について『危惧していたことが現実になってしまった』と指摘する業界関係者は少なくない」(秋田さきがけ)と書いているように、規制緩和のリスクは予想されていたのだ。
2.だが、この時の法案(道路運送法)はどのようなもので、どのような議論が国会でなされ、どの政党の賛成多数で法案が通過したのか、全く書かれていない。まるで自然現象のようにして通過したかのような表現になっている。実際は自公と民主党の賛成多数によって改悪された。
3.しかも、この時の国会の議論をマスコミはどのように報道したのか、いっさい書いていない。反対した政党があったのだから、これらの政党の主張がどうだったか、検証すべきだろう。以下にアクセスしてみれば、明瞭だ。吉井議員は、原発の時にも、事前に、かつ的確に事件を未然に防ぐための質疑を行っていた。だが・・・
関越道バス事故 1人運転 利益優先 規制緩和→業者倍 過当競争→利益かつかつ
2012年5月1日(火)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-05-01/2012050101_02_1.html
背景に過酷な労働実態 バス規制緩和 07年に吉井議員が追及2012年5月3日(木)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-05-03/2012050301_03_1.html
4.このことは「規制緩和」が行われた場合、どのようなリスクがあるか、想像しなかったということを自ら暴露しているようなものだ。だから、今回の事故に対する評価も極めて第三者的だ。「安全対策を置き去りにしたままでの市場の自由化は無謀だった」(東京)などと述べているが、こうしたことは当事者たちは警告を発していた。
「規制強化と減車の実現 規制緩和失敗の証明と自交総連のたたかい」をみれば明瞭だ。
http://www.jikosoren.jp/check/kisei-kyouka/kiseikyouka.html
5.「規制緩和」によるリスク・マイナス面は当然議論されていたはずだが、この事実を国民に報せる責任があったはずだ。だが、今回の事故に対しても、その視点で書かれていない。業者や国土交通省への「批判」が中心になっている。その第三者的評価は、マスコミの無責任ぶりを示したといえる。むしろ「乗客は事故前から生きた心地がしなかっただろう。なぜこうした悪質な運転手に乗客の生命を託すことになったのか、徹底した捜査を望みたい」(産経)などと国民の味方・正義の味方を装っている。
6.「産経」に象徴されるように、マスコミは「規制緩和」を推進する側、自公政権・財界の応援団になっていたのではないのか。また「規制緩和」の検証、見直し論は結構なことだ。だが、これまでの「反省」「責任」をこそ検証してはじめて「規制緩和」政策が変更できるのだ。
7.同時に以下の問題点も指摘しないわけにはいかない。それは利用者の「自己責任」論の誤りだ。確かに一面では利用者の責任は認める。だが、
(1)交通政策は国家や地方自治体の交通政策として行われている。私企業であっても公共交通機関としての責任があることを忘れてはならない。
(2)「自己責任」論は憲法に基づいて国民の交通権を保障するという視点をまず確認することが重要だ。現在「交通基本法」の策定の動きがある。
交通権学会編『交通基本法を考える―人と環境にやさしい交通体系をめざして―』(かもがわ出版)
交通権学会『21世紀の豊かな交通への提言 交通権憲章』(日本経済評論社)
土居靖範「[交通権]地域公共交通の役割 ひとと環境にやさしい交通へ」『経済』11年4月号)
(3)「運賃」は「商品」だ。「商品」は「廉価」であることと「顧客サービス」が命なのだ。これについては、「消費者基本法」が参考になる。
8.一見すると「規制」を「緩和」する=「自由化」するという言葉のみに捉われて、「規制緩和」政策は、まるで問題がないかのように錯覚してしまうが、これは自由競争・優勝劣敗・弱肉強食の渦の中に国民を巻き込むものだった。特に「備えあれば憂いなし」「改革には痛みが伴う」として人気を博した小泉構造改革の被害者は、まさに国民であったことが、今回の事件でも証明された。
9.「規制緩和」策によって引き起こされた今回の事故は、以下のことを教えてくれる。すなわち国家は、国民を拘束するものではなく、国民の人権・自由を、社会の民主主義を守るための装置であるということ、そして憲法は、国民に対する国家の責任・義務を履行させる装置であることだった。したがって憲法に基づくのであれば、国家への「規制」を「緩和」することなど、いっさいできないということだ。
予め想定されしことどもを見逃す責めを逃るるなかれ
<全国紙>
朝日 高速バス事故 乗客守れるルール急げ
バスやタクシーは10年ほど前に規制緩和が行われた。新規参入を促し、競争でサービスを高め、価格を下げる。それが改革の狙いだった。確かに便利にはなった。ただ、競争のしわ寄せで運転手が過重な労働を強いられ、安全に影響するのではないか。初めからそう心配されていた。それを象徴するのが高速ツアーバスだ。安さ、便利さで急成長する一方で、事故や法令違反の多さが指摘されてきた。
毎日 ツアーバス事故 安全対策後手に回った
高速ツアーバスは、バス業界が規制緩和された00年以降、登場した。広告費などをかけず鉄道や航空機に比べて割安で、ネットで予約できる利便性もあり近年、利用者が急増中だ。10年には600万人を超えた。運行計画を事前に国交省に届け出るなどの規制が少なく、過当競争のため安全性が置き去りにされているとの批判は強かった。
読売 高速バス事故 再発防止に安全運行の徹底を
格安競争が激化し、安全が置き去りにされていたのではないか。2000年以降の規制緩和で、新規参入が容易になったこともあり、バス事業者数は急増し、10年度で約4500に上る。一方で、競争激化による運転手の過重労働など、安全面の課題が問題視されていた。懸念が現実になったと言える。
産経 高速バス大事故 安全監視の強化が急務だ
乗客は事故前から生きた心地がしなかっただろう。なぜこうした悪質な運転手に乗客の生命を託すことになったのか、徹底した捜査を望みたい。一方で、国土交通省など監督官庁の責任も大きい。安全監視・監督体制の強化を急がなくてはならない。ツアーバスは、12年の規制緩和により一気に普及した。規制緩和による競争原理の導入そのものに誤りはないが、安全性を置き去りにすることは論外だ。 規制緩和はあくまで事後チェックの強化と両輪で進めることが原則だ。
東京 高速バス事故 安全点検を徹底せよ
二〇〇〇年に貸し切りバス事業の規制が緩められ、バス会社が急増した。それに伴い価格競争は熾烈(しれつ)を極めるようになった。安全対策を置き去りにしたままでの市場の自由化は無謀だった。手だてを検討してきた国土交通省は四月に入り、旅行会社やバス会社のチェックの強化へとかじを切ったばかりだ。いかにも腰が重い。改善を急ぐべきだ。
<地方紙>
北海道 高速バス事故 安全運転へ徹底検証を
業界の過当競争が背景にある。 規制緩和でツアーバスへの新規参入が急増。自社バスを持たない旅行会社が企画した格安ツアーを、赤字覚悟で引き受ける。そのしわ寄せが人件費の抑制や過重労働などで運転手に及んできているという。
秋田さきがけ社説:関越道バス事故 再発防止へ徹底検証を
今回の事故について「危惧していたことが現実になってしまった」と指摘する業界関係者は少なくない。高速ツアーバスの運行に関し、さまざまな問題が顕在化していたからだ。バス事業への新規参入を促す国の規制緩和によって、・・・規制緩和という流れの中で、安全対策が後手に回った感は否めない。業界だけでなく国も今回の事故を厳しく受け止め、現行制度や指導体制の点検を急ぐべきだ。
岩手日報 ツアーバス事故 「法令」の妥当性を疑う
2000年代の規制緩和の流れの中で、ツアーバスも資格審査や法令順守の事後チェックを前提として新規参入が促進された。これが高速バス事業全体の賃金体系やサービス改善に貢献した面はあるだろう。一方で、低価格競争が常態化し、安全性が後方に追いやられた感は否めない。
福島民友 高速バス事故/再発防止策の早急な検討を
貸し切りバス事業が2000年に免許制から許可制に規制緩和されて以降、高速ツアーバスの利用客は急増、10年には600万人を超え、旅行手段などには欠かせない存在になっている。こうした価格競争を支えるのが業界内の低コスト経営で、人件費を減らす手段として運転手に過酷な労働を押し付けることにもつながる。乗客の安全をないがしろにしない体制を構築することこそ、亡くなった人たちへの手向けになるはずだ。
岐阜 高速バス事故運行の問題点を洗い出せ
山陰中央 高速バス事故/指針見直し再発防止策を
貸し切りバス事業が2000年に免許制から許可制に規制緩和されて以降、高速ツアーバスの利用客は急増し10年には600万人を超え、日常の移動や旅行手段に欠かせない存在になっている。こうした価格競争を支えるのが、業界内の低コスト経営で、人件費を減らす手段として運転手へ過酷な労働条件を押しつけることにもつながる。高速バスでも乗り合いバスは道路運送法の指導を受けるのに対し、旅行会社はその対象とならないため、停留所確保や運行計画の届け出なども義務づけられていない。事故発生時の責任があいまいになるなどの問題点が以前から指摘されていた。
京都 高速バス事故 過労運転はなかったか
近年、増えているのが国の規制緩和で参入した「ツアーバス」という夜間長距離バスだ。事業者が経費削減を急ぐ余り、運転手の勤務条件や健康管理、車体整備など安全確保策にしわ寄せがないのか。国交省は、ツアーバス事業者に安全管理を厳格に求めるために、高速道路を定期運行する「高速乗り合いバス」と制度の一本化を検討している。道路運送法の改正など早急な実行を求めたい。
神戸 高速バス事故/無理な運行を放置するな
路線や価格を自由に設定できるため、2005年に21万人だった利用者が10年には600万人にまで増えた。きっかけは、00年からの規制緩和だ。バス事業への新規参入は免許制から許可制となった。貸し切りバス会社は倍増し、価格競争は激しくなる一方だ。総務省は「旅行会社がバス事業者に無理な運行を強要するケースもある」と国土交通省に指導の徹底を勧告していた。
山陽 高速バス事故 幅広く問題点を洗い出せ
高速ツアーバスをめぐっては、安い料金が人気を集める一方で、安全面への懸念が指摘されてきた。新規参入を促す規制緩和が価格競争に拍車を掛けた。その結果、旅行会社がバス会社に無理な運行を強要し、運転手が長時間労働を強いられるケースがあるとされる。問題の一つに法律上、安全確保の責任が旅行会社にないことが挙げられる。国交省が制度の見直しを図ろうとした矢先に事故が起きた。・・・規制緩和の在り方を含め、厳格な検証が必要だ。
愛媛 高速ツアーバス事故 運行制度の点検と見直しを
高速ツアーバス業界は、規制緩和で生じた激しい競争にさらされていた。格安料金で人気を集める一方、乗客の安全や運転手の労働環境を軽んじていた可能性が指摘されている。国土交通省は、運転手の最大走行距離などを規定した指針を見直すよう2010年に総務省から勧告を受けたが、改善を見送っていた。今回の惨事を、規制緩和路線を反省し、命や安全を重んじる契機としなければならない。利用者としては料金の向こう側に想像力を働かせたい。その安さは、生命や安全を軽視していないか。バスツアーだけでなく、食べ物やエネルギーしかりだ。安全と安心、それを生む労働を適正価格で買い支える社会にしたい。
徳島 ツアーバス事故 安全運行を徹底せよ
運転手が疲れをため込む背景にはツアーバスの過当競争がある。ツアーバスは高速路線バスと違い、自前のバスを持たない旅行会社が貸し切りバス会社からバスをチャーターして運行するため、費用がかからず格安にできる。これが受けて利用者が急増し、業者も増えて料金競争が激しくなっているという。このため、さらにコストを下げようと無理な運行をバス会社に強いる旅行会社が出てきた。
高知 【高速バス事故】安全強化は国の責務だ
近年、高速バスによる重大事故が絶えないのも事実だ。背景にツアーバスの急増が指摘されている。貸し切りバス事業は国の規制緩和で参入事業者が増え、競争が激化した。その結果、旅行会社がバス会社に無理な運行計画を強要するケースもあるとされる。
格安で便利なツアーバスは利用者のニーズに応えたものだ。だからといって、一番大事な安全がおろそかになっては元も子もない。規制緩和の弊害を是正するのは国の役目だ。対策を急いでほしい。
西日本 高速道バス事故 安全輸送の原点忘れるな
国の規制緩和を機に近年、増加した。航空機や鉄道に比べて料金も格安で、利用客は2005年の約21万人から10年には約600万人に増えた。ただ、バス会社も急増し、過当競争による運転手の過重労働も問題となっている。旅行会社も法的にバスの安全運行に責任を持つ必要がある。国交省は、早急に安全確保の対策を講じるべきだ。乗客を安全に目的地へ運ぶことが、公共輸送機関の使命である。鉄道や航空会社も、今回の事故を他山の石として安全対策を再点検してもらいたい。
佐賀 ツアーバス事故 「安全」こそが信頼の柱
日あたりの走行距離の上限を見直すのは当然だが、10年に総務省が距離の短縮を勧告していた事実からも、対応が甘かったと言わざるを得ない。2000年に免許制から許可制に規制緩和されて以降、貸し切りバス事業者数は右肩上がりで増え続け、10年には4492になった。ツアーバスは客のニーズに合わせて路線と料金を設定できたが、目的地に決まった停留所を持たないなどの課題があった。価格ばかりではなく、安全性についても利用者が見極め、ツアーを選択できる仕組みづくりを求めたい。
熊本日日 ツアーバス事故 安全運行のコストを削るな
ツアーバス普及の背景に、国による規制緩和があったことを指摘しておきたい。2000年、国は貸し切りバス事業への参入を免許制から許可制に緩和。事業者が倍増し、価格競争も激しくなった。実際、今回の金沢発の高速ツアーバス料金は3500円で、正規の高速路線バス運賃の半額という安さだった。価格競争を支えたのは低コスト経営だ。規制緩和は、新規参入で競争原理を促し市場を活性化させると期待されてきた。しかし、それは参入後に厳しくチェックすることとセットで進めるのが原則だ。規制緩和の名の下に安全を置き去りにしてはいないか。トラックやタクシーも含めて、総検証してほしい。
南日本 [ツアーバス事故] 安全面の懸念が現実に
高速バスツアーは格安料金を売りに近年利用者が拡大しているが、厳しい競争にさらされて安全面への懸念が指摘されてきた。悲惨な事故の再発を防ぐには、徹底的な原因解明が必要だ。国が2000~02年にかけてバス事業を免許制から登録制に緩和したことが後押しとなって、新規参入が相次いだ。
沖縄 [交通死亡事故]安全が脅かされている
高速ツアーバスは規制緩和による安さを売り物に急成長している。安さ競争と引き換えに、運転手の安全管理がおろそかになっていなかったかどうか。
琉球 高速ツアーバス事故 命はコストに換えられない
規制緩和で中小の業者が急増する中、国は無理な運行など現状にきちんと目配りをしていたのか。ここまで過当競争をエスカレートさせた事業形態を見直すなど、まず安全の確保に本腰を入れるべきだ。もちろん、行程表や労務管理に無理がなかったか、旅行会社やバス会社自体の責任も厳しく問われなければならない。貸し切りバス事業者が低料金の過当競争にしのぎを削る状況下、運転手は過酷な労働を強いられている。乗客は運転手に命を預けている。乗客の命と、コスト削減を引き換えにしてはならない。
1.どの社説も、今回の事故の原因が2000年の「規制緩和」によって起こされたとそれなりに書いているが、その表現は他人事だ。この「規制緩和」策を提案したのは森政権、実行したのは小泉政権、自公政権だ。それを引き継いだ民主政権だが、これを明らかにしないのは、マスコミの免罪姿勢があるというべきだ。
「今回の事故を『起こるべくして起きた』と本紙に語った運転手もいる」(北海道)、「今回の事故について『危惧していたことが現実になってしまった』と指摘する業界関係者は少なくない」(秋田さきがけ)と書いているように、規制緩和のリスクは予想されていたのだ。
2.だが、この時の法案(道路運送法)はどのようなもので、どのような議論が国会でなされ、どの政党の賛成多数で法案が通過したのか、全く書かれていない。まるで自然現象のようにして通過したかのような表現になっている。実際は自公と民主党の賛成多数によって改悪された。
3.しかも、この時の国会の議論をマスコミはどのように報道したのか、いっさい書いていない。反対した政党があったのだから、これらの政党の主張がどうだったか、検証すべきだろう。以下にアクセスしてみれば、明瞭だ。吉井議員は、原発の時にも、事前に、かつ的確に事件を未然に防ぐための質疑を行っていた。だが・・・
関越道バス事故 1人運転 利益優先 規制緩和→業者倍 過当競争→利益かつかつ
2012年5月1日(火)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-05-01/2012050101_02_1.html
背景に過酷な労働実態 バス規制緩和 07年に吉井議員が追及2012年5月3日(木)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-05-03/2012050301_03_1.html
4.このことは「規制緩和」が行われた場合、どのようなリスクがあるか、想像しなかったということを自ら暴露しているようなものだ。だから、今回の事故に対する評価も極めて第三者的だ。「安全対策を置き去りにしたままでの市場の自由化は無謀だった」(東京)などと述べているが、こうしたことは当事者たちは警告を発していた。
「規制強化と減車の実現 規制緩和失敗の証明と自交総連のたたかい」をみれば明瞭だ。
http://www.jikosoren.jp/check/kisei-kyouka/kiseikyouka.html
5.「規制緩和」によるリスク・マイナス面は当然議論されていたはずだが、この事実を国民に報せる責任があったはずだ。だが、今回の事故に対しても、その視点で書かれていない。業者や国土交通省への「批判」が中心になっている。その第三者的評価は、マスコミの無責任ぶりを示したといえる。むしろ「乗客は事故前から生きた心地がしなかっただろう。なぜこうした悪質な運転手に乗客の生命を託すことになったのか、徹底した捜査を望みたい」(産経)などと国民の味方・正義の味方を装っている。
6.「産経」に象徴されるように、マスコミは「規制緩和」を推進する側、自公政権・財界の応援団になっていたのではないのか。また「規制緩和」の検証、見直し論は結構なことだ。だが、これまでの「反省」「責任」をこそ検証してはじめて「規制緩和」政策が変更できるのだ。
7.同時に以下の問題点も指摘しないわけにはいかない。それは利用者の「自己責任」論の誤りだ。確かに一面では利用者の責任は認める。だが、
(1)交通政策は国家や地方自治体の交通政策として行われている。私企業であっても公共交通機関としての責任があることを忘れてはならない。
(2)「自己責任」論は憲法に基づいて国民の交通権を保障するという視点をまず確認することが重要だ。現在「交通基本法」の策定の動きがある。
交通権学会編『交通基本法を考える―人と環境にやさしい交通体系をめざして―』(かもがわ出版)
交通権学会『21世紀の豊かな交通への提言 交通権憲章』(日本経済評論社)
土居靖範「[交通権]地域公共交通の役割 ひとと環境にやさしい交通へ」『経済』11年4月号)
(3)「運賃」は「商品」だ。「商品」は「廉価」であることと「顧客サービス」が命なのだ。これについては、「消費者基本法」が参考になる。
8.一見すると「規制」を「緩和」する=「自由化」するという言葉のみに捉われて、「規制緩和」政策は、まるで問題がないかのように錯覚してしまうが、これは自由競争・優勝劣敗・弱肉強食の渦の中に国民を巻き込むものだった。特に「備えあれば憂いなし」「改革には痛みが伴う」として人気を博した小泉構造改革の被害者は、まさに国民であったことが、今回の事件でも証明された。
9.「規制緩和」策によって引き起こされた今回の事故は、以下のことを教えてくれる。すなわち国家は、国民を拘束するものではなく、国民の人権・自由を、社会の民主主義を守るための装置であるということ、そして憲法は、国民に対する国家の責任・義務を履行させる装置であることだった。したがって憲法に基づくのであれば、国家への「規制」を「緩和」することなど、いっさいできないということだ。
予め想定されしことどもを見逃す責めを逃るるなかれ
<全国紙>
朝日 高速バス事故 乗客守れるルール急げ
バスやタクシーは10年ほど前に規制緩和が行われた。新規参入を促し、競争でサービスを高め、価格を下げる。それが改革の狙いだった。確かに便利にはなった。ただ、競争のしわ寄せで運転手が過重な労働を強いられ、安全に影響するのではないか。初めからそう心配されていた。それを象徴するのが高速ツアーバスだ。安さ、便利さで急成長する一方で、事故や法令違反の多さが指摘されてきた。
毎日 ツアーバス事故 安全対策後手に回った
高速ツアーバスは、バス業界が規制緩和された00年以降、登場した。広告費などをかけず鉄道や航空機に比べて割安で、ネットで予約できる利便性もあり近年、利用者が急増中だ。10年には600万人を超えた。運行計画を事前に国交省に届け出るなどの規制が少なく、過当競争のため安全性が置き去りにされているとの批判は強かった。
読売 高速バス事故 再発防止に安全運行の徹底を
格安競争が激化し、安全が置き去りにされていたのではないか。2000年以降の規制緩和で、新規参入が容易になったこともあり、バス事業者数は急増し、10年度で約4500に上る。一方で、競争激化による運転手の過重労働など、安全面の課題が問題視されていた。懸念が現実になったと言える。
産経 高速バス大事故 安全監視の強化が急務だ
乗客は事故前から生きた心地がしなかっただろう。なぜこうした悪質な運転手に乗客の生命を託すことになったのか、徹底した捜査を望みたい。一方で、国土交通省など監督官庁の責任も大きい。安全監視・監督体制の強化を急がなくてはならない。ツアーバスは、12年の規制緩和により一気に普及した。規制緩和による競争原理の導入そのものに誤りはないが、安全性を置き去りにすることは論外だ。 規制緩和はあくまで事後チェックの強化と両輪で進めることが原則だ。
東京 高速バス事故 安全点検を徹底せよ
二〇〇〇年に貸し切りバス事業の規制が緩められ、バス会社が急増した。それに伴い価格競争は熾烈(しれつ)を極めるようになった。安全対策を置き去りにしたままでの市場の自由化は無謀だった。手だてを検討してきた国土交通省は四月に入り、旅行会社やバス会社のチェックの強化へとかじを切ったばかりだ。いかにも腰が重い。改善を急ぐべきだ。
<地方紙>
北海道 高速バス事故 安全運転へ徹底検証を
業界の過当競争が背景にある。 規制緩和でツアーバスへの新規参入が急増。自社バスを持たない旅行会社が企画した格安ツアーを、赤字覚悟で引き受ける。そのしわ寄せが人件費の抑制や過重労働などで運転手に及んできているという。
秋田さきがけ社説:関越道バス事故 再発防止へ徹底検証を
今回の事故について「危惧していたことが現実になってしまった」と指摘する業界関係者は少なくない。高速ツアーバスの運行に関し、さまざまな問題が顕在化していたからだ。バス事業への新規参入を促す国の規制緩和によって、・・・規制緩和という流れの中で、安全対策が後手に回った感は否めない。業界だけでなく国も今回の事故を厳しく受け止め、現行制度や指導体制の点検を急ぐべきだ。
岩手日報 ツアーバス事故 「法令」の妥当性を疑う
2000年代の規制緩和の流れの中で、ツアーバスも資格審査や法令順守の事後チェックを前提として新規参入が促進された。これが高速バス事業全体の賃金体系やサービス改善に貢献した面はあるだろう。一方で、低価格競争が常態化し、安全性が後方に追いやられた感は否めない。
福島民友 高速バス事故/再発防止策の早急な検討を
貸し切りバス事業が2000年に免許制から許可制に規制緩和されて以降、高速ツアーバスの利用客は急増、10年には600万人を超え、旅行手段などには欠かせない存在になっている。こうした価格競争を支えるのが業界内の低コスト経営で、人件費を減らす手段として運転手に過酷な労働を押し付けることにもつながる。乗客の安全をないがしろにしない体制を構築することこそ、亡くなった人たちへの手向けになるはずだ。
岐阜 高速バス事故運行の問題点を洗い出せ
山陰中央 高速バス事故/指針見直し再発防止策を
貸し切りバス事業が2000年に免許制から許可制に規制緩和されて以降、高速ツアーバスの利用客は急増し10年には600万人を超え、日常の移動や旅行手段に欠かせない存在になっている。こうした価格競争を支えるのが、業界内の低コスト経営で、人件費を減らす手段として運転手へ過酷な労働条件を押しつけることにもつながる。高速バスでも乗り合いバスは道路運送法の指導を受けるのに対し、旅行会社はその対象とならないため、停留所確保や運行計画の届け出なども義務づけられていない。事故発生時の責任があいまいになるなどの問題点が以前から指摘されていた。
京都 高速バス事故 過労運転はなかったか
近年、増えているのが国の規制緩和で参入した「ツアーバス」という夜間長距離バスだ。事業者が経費削減を急ぐ余り、運転手の勤務条件や健康管理、車体整備など安全確保策にしわ寄せがないのか。国交省は、ツアーバス事業者に安全管理を厳格に求めるために、高速道路を定期運行する「高速乗り合いバス」と制度の一本化を検討している。道路運送法の改正など早急な実行を求めたい。
神戸 高速バス事故/無理な運行を放置するな
路線や価格を自由に設定できるため、2005年に21万人だった利用者が10年には600万人にまで増えた。きっかけは、00年からの規制緩和だ。バス事業への新規参入は免許制から許可制となった。貸し切りバス会社は倍増し、価格競争は激しくなる一方だ。総務省は「旅行会社がバス事業者に無理な運行を強要するケースもある」と国土交通省に指導の徹底を勧告していた。
山陽 高速バス事故 幅広く問題点を洗い出せ
高速ツアーバスをめぐっては、安い料金が人気を集める一方で、安全面への懸念が指摘されてきた。新規参入を促す規制緩和が価格競争に拍車を掛けた。その結果、旅行会社がバス会社に無理な運行を強要し、運転手が長時間労働を強いられるケースがあるとされる。問題の一つに法律上、安全確保の責任が旅行会社にないことが挙げられる。国交省が制度の見直しを図ろうとした矢先に事故が起きた。・・・規制緩和の在り方を含め、厳格な検証が必要だ。
愛媛 高速ツアーバス事故 運行制度の点検と見直しを
高速ツアーバス業界は、規制緩和で生じた激しい競争にさらされていた。格安料金で人気を集める一方、乗客の安全や運転手の労働環境を軽んじていた可能性が指摘されている。国土交通省は、運転手の最大走行距離などを規定した指針を見直すよう2010年に総務省から勧告を受けたが、改善を見送っていた。今回の惨事を、規制緩和路線を反省し、命や安全を重んじる契機としなければならない。利用者としては料金の向こう側に想像力を働かせたい。その安さは、生命や安全を軽視していないか。バスツアーだけでなく、食べ物やエネルギーしかりだ。安全と安心、それを生む労働を適正価格で買い支える社会にしたい。
徳島 ツアーバス事故 安全運行を徹底せよ
運転手が疲れをため込む背景にはツアーバスの過当競争がある。ツアーバスは高速路線バスと違い、自前のバスを持たない旅行会社が貸し切りバス会社からバスをチャーターして運行するため、費用がかからず格安にできる。これが受けて利用者が急増し、業者も増えて料金競争が激しくなっているという。このため、さらにコストを下げようと無理な運行をバス会社に強いる旅行会社が出てきた。
高知 【高速バス事故】安全強化は国の責務だ
近年、高速バスによる重大事故が絶えないのも事実だ。背景にツアーバスの急増が指摘されている。貸し切りバス事業は国の規制緩和で参入事業者が増え、競争が激化した。その結果、旅行会社がバス会社に無理な運行計画を強要するケースもあるとされる。
格安で便利なツアーバスは利用者のニーズに応えたものだ。だからといって、一番大事な安全がおろそかになっては元も子もない。規制緩和の弊害を是正するのは国の役目だ。対策を急いでほしい。
西日本 高速道バス事故 安全輸送の原点忘れるな
国の規制緩和を機に近年、増加した。航空機や鉄道に比べて料金も格安で、利用客は2005年の約21万人から10年には約600万人に増えた。ただ、バス会社も急増し、過当競争による運転手の過重労働も問題となっている。旅行会社も法的にバスの安全運行に責任を持つ必要がある。国交省は、早急に安全確保の対策を講じるべきだ。乗客を安全に目的地へ運ぶことが、公共輸送機関の使命である。鉄道や航空会社も、今回の事故を他山の石として安全対策を再点検してもらいたい。
佐賀 ツアーバス事故 「安全」こそが信頼の柱
日あたりの走行距離の上限を見直すのは当然だが、10年に総務省が距離の短縮を勧告していた事実からも、対応が甘かったと言わざるを得ない。2000年に免許制から許可制に規制緩和されて以降、貸し切りバス事業者数は右肩上がりで増え続け、10年には4492になった。ツアーバスは客のニーズに合わせて路線と料金を設定できたが、目的地に決まった停留所を持たないなどの課題があった。価格ばかりではなく、安全性についても利用者が見極め、ツアーを選択できる仕組みづくりを求めたい。
熊本日日 ツアーバス事故 安全運行のコストを削るな
ツアーバス普及の背景に、国による規制緩和があったことを指摘しておきたい。2000年、国は貸し切りバス事業への参入を免許制から許可制に緩和。事業者が倍増し、価格競争も激しくなった。実際、今回の金沢発の高速ツアーバス料金は3500円で、正規の高速路線バス運賃の半額という安さだった。価格競争を支えたのは低コスト経営だ。規制緩和は、新規参入で競争原理を促し市場を活性化させると期待されてきた。しかし、それは参入後に厳しくチェックすることとセットで進めるのが原則だ。規制緩和の名の下に安全を置き去りにしてはいないか。トラックやタクシーも含めて、総検証してほしい。
南日本 [ツアーバス事故] 安全面の懸念が現実に
高速バスツアーは格安料金を売りに近年利用者が拡大しているが、厳しい競争にさらされて安全面への懸念が指摘されてきた。悲惨な事故の再発を防ぐには、徹底的な原因解明が必要だ。国が2000~02年にかけてバス事業を免許制から登録制に緩和したことが後押しとなって、新規参入が相次いだ。
沖縄 [交通死亡事故]安全が脅かされている
高速ツアーバスは規制緩和による安さを売り物に急成長している。安さ競争と引き換えに、運転手の安全管理がおろそかになっていなかったかどうか。
琉球 高速ツアーバス事故 命はコストに換えられない
規制緩和で中小の業者が急増する中、国は無理な運行など現状にきちんと目配りをしていたのか。ここまで過当競争をエスカレートさせた事業形態を見直すなど、まず安全の確保に本腰を入れるべきだ。もちろん、行程表や労務管理に無理がなかったか、旅行会社やバス会社自体の責任も厳しく問われなければならない。貸し切りバス事業者が低料金の過当競争にしのぎを削る状況下、運転手は過酷な労働を強いられている。乗客は運転手に命を預けている。乗客の命と、コスト削減を引き換えにしてはならない。