基地県である神奈川の地元紙が報じた原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)の艦載機部隊の夜間離着陸訓練(NLP)。米軍基地に苦しめられている沖縄県民と神奈川県民に「共通している課題」は、記事から見えてくるだろうか?
日本国憲法の上位にある日米地位協定、その大元にある日米安保条約はどのように報道されているか、そこが最大のポイントだ。だが、実際は、記事には見えてこない。
米軍の蛮行が本土のマスコミによって系統的に意味づけられ、報道されていたら、日本国民が日米安保条約を廃棄し、対等平等の日米平和友好条約の調印へと、その「世論」の舵を大きくきることは明らかだ。
この訓練を含めて、米軍の蛮行が事故を誘発したら、その被害を受けるのは、「本土の人々」だ。沖縄の問題をとおしてそういうことが想像できないような思考回路を作り出しているのは、他ならぬ「本土のマスコミ」だ。そのスタンスは日米安保条約推進派の応援団といわれても仕方のないものだ。
では、その記事を掲載しておこう。
米海軍が厚木で5年ぶり夜間離着陸訓練、地元通告は当日/神奈川2012年5月22日http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1205220034/
日没後、タッチ・アンド・ゴーを繰り返す艦載機の光跡(多重露光)=22日午後7時すぎ、大和市上草柳
米海軍は22日夜、厚木基地(大和、綾瀬市)で原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)の艦載機部隊の夜間離着陸訓練(NLP)を開始した。24日までの予定。南関東防衛局によると、同基地でのNLPは2007年5月以来5年ぶり。県や両市など地元自治体は米側に「容認できない」と訓練の即時中止を求めた。 県によると、地元自治体への通告が訓練当日になったのは、事前通告が始まった1983年5月以来、初めてという。
在日米海軍司令部(横須賀市)によると、NLPは午前9時から午後10時まで行われる離着陸訓練の一環。夜間に大きな騒音を繰り返し発生させるNLPは地元の反発もあり、通常は硫黄島(東京都)で行われている。 今回は直前の21日朝、GWの横須賀出港が中止されたため、急きょ厚木基地で実施されることになったという。同司令部は「硫黄島よりも機数を少なくするなどし、近隣住民への衝撃を小さくしたい」とコメントした。 22日は日没後の午後6時45分以降も、エンジン音が特に大きいFA18タイプの軍用機が滑走路を空母の飛行甲板に見立て、着陸直後に離陸する「タッチ・アンド・ゴー」を数分おきに繰り返した。大和市には午後8時50分ごろ、座間防衛事務所からこの日の訓練終了が伝えられた。 周辺では昼夜を問わず巨大なエンジン音が鳴り響いた。大和市内では一時、乗用車の警笛に形容される110デシベルに近い109・9デシベルの騒音を計測。横浜、藤沢市などを含む周辺市には少なくとも計130件の苦情が寄せられた。 大木哲大和市長と笠間城治郎綾瀬市長はスティーブン・ウィーマン基地司令官に「周辺の市民に激甚な騒音被害をもたらし、到底容認できない」などと強く抗議した。
厚木基地・夜間離着陸訓練が終了、中止要請に応じず、3日間で苦情2100件超/神奈川
2012年5月25日http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1205250006/
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車輪を出したまま低空飛行する戦闘攻撃機FA18スーパーホーネット=24日午後3時20分ごろ、厚木基地近く
米海軍が厚木基地(大和、綾瀬市)で5年ぶりに実施した空母艦載機部隊の夜間離着陸訓練(NLP)が24日夜、終わった。通告された日程の3日間で、住民から近隣自治体などに寄せられた苦情は計2100件超。綾瀬市の笠間城治郎市長は「市民は我慢の限界を超えた」と米軍と国に強く抗議した。 24日もNLPを含む連続離着陸訓練は午前9時39分から午後7時45分まで行われた。エンジン音が大きいジェット戦闘攻撃機FA18スーパーホーネットや、早期警戒機E2Cホークアイなどが市街地上空を低空で旋回。滑走路を空母の甲板に見立て、着陸直後に離陸するタッチ・アンド・ゴーを繰り返した。 大和市内では一時、自動車の警笛に相当する110デシベルを上回る113・2デシベルの騒音を測定。大和市には178件、綾瀬市には164件の苦情が寄せられた。大木哲大和市長は「NLPの強行は極めて遺憾。今後はいかなる事情があっても硫黄島(東京都)で実施すべき」とコメントした。 県によると、在日米海軍司令部(横須賀市)は24日朝、黒岩祐治知事が23日夜に行った訓練中止要請に対し、「(23日と)同様に飛行せざるを得ない。訓練は予定通り(24日で)終了させる」と回答したという。南関東防衛局は24日夜、「米軍側から延長の通告はなく、今回の訓練は日程通り終了した」と説明した。 国を被告に基地周辺の住民7千人が騒音被害の損害賠償などを求める第4次厚木基地爆音訴訟団は24日、防衛省に「110デシベル超の爆音をまき散らすのは住民の人権を無視した悪質な加害行為」などとする抗議声明を出した。
どうだったか、日米地位協定、日米安保条約の問題点は一つも書かれていないことが判ったのではないだろうか?
「地元自治体への通告が訓練当日」になっても何故問題がないのか。
「NLPは午前9時から午後10時まで行われる離着陸訓練の一環」というが、午後10時までという時間まで騒音を撒き散ラスことが何故まかり通るのか。
「通常は硫黄島(東京都)で行われている」などと、それらに係る費用がどのようになっているか。
地元自治体首長の要請はどのような国内法に基づいてなされているか。
これらの問題に対して、米軍の訓練の説明に終始しているマスコミの姿勢、これでは問題の本質は見えてこない。「仕方ない」ということになる。しかも、「国を被告に基地周辺の住民7千人が騒音被害の損害賠償などを求める第4次厚木基地爆音訴訟団」の「抗議声明」を申し訳程度に紹介するだけだ。
そこで「日米地位協定の問題点」まとめた資料を掲載しておこう。これらの視点にたって日常的に米軍の蛮行、日本政府の屈辱ぶりが報道されなければ日本の真の独立、戦後は終わったことにはならないだろう。尚今回の訓練に関係する日米地位協定についても掲載しておこう。
http://d-navi.org/node/1008
米軍に何でもありの地位与ふ戦争惨禍遺産も未だ
第2条(施設・区域の提供と返還)
1(a)合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。
(b)合衆国が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。2 日本国政府及び合衆国政府は、いずれか一方の要請があるときは、前記の取極を再検討しなければならず、また、前記の施設及び区域を日本国に返還すべきこと又は新たに施設及び区域を提供することを合意することができる。
3 合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。
4(a)合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本国政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使用させることができる。ただし、この使用が、合衆国軍隊による当該施設及び区域の正規の使用の目的にとつて有害でないことが合同委員会を通じて両政府間に合意された場合に限る。
(b)合衆国軍隊が一定の期間を限つて使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない。
第3条(施設・区域に関する合衆国の権利)
1 合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があったときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。
2 合衆国は、1に定める措置を、日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によっては執らないことに同意する。合衆国が使用する電波放射の装置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題は、両政府の当局間の取極により解決しなければならない。日本国政府は、合衆国軍隊が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする。
3 合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。
第16条(日本法令の尊重義務)
日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。
第24条(経費の負担)
1 日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。
2 日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。
3 この協定に基づいて生ずる資金上の取引に適用すべき経理のため、日本国政府と合衆国政府との間に取極を行なうことが合意される。
第25条(合同委員会)
1 この協定の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項に関する日本国政府と合衆国政府との間の協議機関として、合同委員会を設置する。合同委員会は、特に、合衆国が相互協力及び安全保障条約の目的の遂行に当たって使用するため必要とされる日本国内の施設及び区域を決定する協議機関として、任務を行なう。
2 合同委員会は、日本国政府の代表者一人及び合衆国政府の代表者一人で組織し、各代表者は、一人又は二人以上の代理及び職員団を有するものとする。合同委員会は、その手続規則を定め、並びに必要な補助機関及び事務機関を設ける。合同委員会は、日本国政府又は合衆国政府のいずれか一方の代表者の要請があるときはいつでも直ちに会合することができるように組織する。
3 合同委員会は、問題を解決することができないときは、適当な経路を通じて、その問題をそれぞれの政府にさらに考慮されるように移すものとする。
第26条(国内法上の措置・効力発生)
1 この協定は、日本国及び合衆国によりそれぞれの国内法上の手続に従って承認されなければならず、その承認を通知する公文が交換されるものとする。
2 この協定は、1に定める手続が完了した後、相互協力及び安全保障条約の効力発生の日に効力を生じ、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)は、その時に終了する。
3 この協定の各当事国の政府は、この協定の規定中その実施のため予算上及び立法上の措置を必要とするものについて、必要なその措置を立法機関に求めることを約束する。
第27条(改正)
いずれの政府も、この協定のいずれの条についてもその改正をいつでも要請することができる。その場合には、両政府は、適当な経路を通じて交渉するものとする。
公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律
(昭和四十二年八月一日法律第百十号)
特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法 (昭和五十三年法律第二十六号
第二条 国土交通大臣は、当分の間、基本方針において、第三条第二項各号に掲げるもののほか、共用空港(自衛隊の設置する飛行場及び日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条第四項(a)の規定に基づき日本国政府又は日本国民が使用する飛行場であつて公共の用に供するものとして政令で定めるものをいう。以下同じ。)を利用する一般公衆の便益の増進に関する事項を定めるものとする
騒防法とは?
正式名称は『公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律』といい、昭和42年に成立した。
http://www.page.sannet.ne.jp/km_iwata/soubouhou.html
環境用語集 ~環境について調べる~
航空機騒音規制措置(Agreements on aircraft noise abatement countermeasures) 詳細解説
http://eco.goo.ne.jp/word/issue/S00388_kaisetsu.html