フランス、ギリシャの選挙結果に対する各社の社説が出た。読んでみて思うこと、そのポイントは、以下のとおり。
1.この選挙の政策的争点を、現在増税と社会保障の一体改悪と結びつけるものは、極めて少ないこと。これは日本への波及を恐れていることを自ら暴露してしまったのだと思う。
2.フランスの選挙の争点の一つに原発推進か、減原発か、その争点を指摘する社説も少なかった。これも日本との関連を低める意図的なものだ。フクシマがあったにもかかわらず、泊原発停止の際の社説があるにもかかわらず、このことは残念なことだ。何故こういうことになるか。
3.国民が選択した新政権に対して、危機を強調を強調するものが多いことだ。EUの対立は世界経済、日本に波及するなどの脅しに終始していることだ。これでは政権交代がない方が良かったということになってしまっているのだ。
4.社説の大半はフランスが中心なのはやむを得ないが、ギリシャの選挙戦の内容はあまり見えてこない。特にマスコミや財界がどのように動いたか、それに対して国民はどのように運動した結果、今回の結果をつくりだしたのか、全く見えてこない。ま、これは今後の課題だ。
5.最後にまとめると、この選挙が、いわゆる「新自由主義政策」の破綻であることを指摘する社説が少なかったのは、各社のスタンスがハッキリしていて意図的なものを感じる。何故そのような反応になるか、それは財界の応援団である野田政権が進めようとしているのは、まさにその「新自由主義政策」だからだ。特に全国紙に、その傾向が強いことが特徴だ。
以上、気付いたことをまとめてみたが、これらの社説は全国民、各地方の国民への各社の「メッセージ」ということを忘れてはならない。国民意識をつくる「装置」なのだということだ。そのことを踏まえておくことが必要だ。
そこで、今日は国会が始まった。まさに国民的視点にたつならば、欧州の「失敗」から学ぶべきことを軸に議論すべきだが、こういう視点での論戦は、ニュースを見る限りではほとんど見られなかった。社説も、国会も、他山の石となっていない。他人事なのだ。欧州の失敗路線を反省もなく、緊縮財政・小さな政府=新自由主義路線を突き進んでいくことを前提にした議論をしているのだ。「小沢政局」報道に偏しているのだ。
自公政権、特に「備えあれば憂いなし」「改革には痛みを伴う」「自民党をぶっ壊す」などと叫び、国民的支持を得た小泉構造改革の新自由主義政策=規制緩和政策の破綻が国民の自覚するところになってきた。このことを反映して「国民の生活が第一」を掲げて政権交代を実現した。だが、元々は先祖が自民党から社会党までを含む雑多な野合所帯である民主党だ。この民主党の内外の、特にアメリカなどの新自由主義政策推進派の反撃にあって、野田政権ができた訳だ。
そもそも、橋本内閣から始まった構造改革路線を、小渕・森内閣が推進したが、その矛盾が森首相の誕生時や神の国発言など、そのキャラクターもあり、国民的批判を浴び、新自由主義政策の手直しの旗手として小泉変人内閣を、マスコミを使って誕生させた。それは90年代末に起こった820万もの国民の支持を獲得した共産党の躍進を何としても防ぐことだった訳だが、こうした流れが10年も続いてきた。
この流れのなかで、今回の欧州の動きをみると、今回の社説がどのような位置にあるか、判る。だから、今回の選挙戦の具体的な中身の検討が必要だ。来るべき参院・総選挙で、欧州のような一票一揆を起こすためにも、だ。
そこで、全国紙がどのように選挙の結果をみているか、みてみよう。まさに日本の語kと国だ。これが、いわゆる新自由主義勢力からの「イデオロギー攻撃」というものだろうな。日本においても、これらの「視点」をどう打破するか、課題だろう。
「朝日」 首脳間の対話を進め、財政規律への道筋と決意を金融市場に示す。雇用創出策を進めつつ、必要な痛みを分かち合うよう人々を粘り強く説得する。オランド新大統領やギリシャの新指導者にはそうした努力が求められる。そして、これが欧州に限った話でないことは言うまでもない。
「毎日」 オランド氏が掲げた政策には、公務員の増加や年金支給開始年齢の引き下げなど、財政悪化につながる人気取り的なものが多い。欧州中央銀行に積極緩和の政治圧力をかける同氏の姿勢もドイツは容認すべきでない。だが、景気低迷時にもかかわらず財政緊縮に過度に軸足を置いたこれまでの独仏の戦術を転換するにはよい機会となり得る。
「読売」 高額所得者への課税強化を打ち出す一方で、年金受給開始年齢の引き上げ撤回や教員数大幅増など財政に負担となる公約を並べた。こうした大衆迎合的な政策は、市場の信認を一層低下させる可能性がある。同じ日に行われたギリシャの総選挙で、財政緊縮策に反対する小政党が勢力を伸ばしたことも懸念材料だ。大連立政権で財政再建を進めてきた中道左派、中道右派の2政党の議席は、合わせても過半数に達しなかった。
「日経」確かにオランド氏は富裕層や大企業への課税強化、財政規律徹底を目指すEU新条約の見直しなど、経済面で有権者に口当たりのいい公約を掲げた。それが支持された部分もあろうが、5年間のサルコジ政権への不満が国民に強かったことが最大の勝因だ。フランスは6月に国民議会(下院)選挙が控えており、新政権は当面、人気を意識した政策を唱え続けることが考えられる。しかし、財政再建が喫緊の課題であることは疑いえない。そのことはオランド氏も承知のはずである。
「産経」 氏が唱える年金受給年齢引き下げや公務員増、財政規律強化を義務づける欧州連合(EU)の新財政協定見直しなどは懸念材料だ。せっかくの仏独協力にひびが入りかねないとする声があるのもこのためだ。ギリシャの財政再建は緒についたばかりで、国際社会の信頼を得るに至っていない。日本をはじめ、危機再燃に備えて国際通貨基金(IMF)などに資金を拠出した欧州以外の国から不満が噴き出す可能性もある。ギリシャはこうした厳しい目にさらされていることを認識すべきだ。
オランド政権の動向も含め、欧州が危機対応で後戻りすることは決して許されない。
「東京」ギリシャでも二大政党が惨敗した。緊縮を迫り続けるドイツ型の経済財政運営に対する鬱憤(うっぷん)の表れだろう。経済成長を望まない政党はない。問題はその方法だ。オランド氏が掲げるのは富裕者への増税、年金支給年齢の再引き下げ、公務員採用枠の拡大などいわば「大きな政府」型の政策だ。公営企業が大きなウエートを占めるフランス経済特有の事情がある。選挙結果はユーロ救済策への異議申し立てではあっても、僅差の結果を見れば全面的なノーとまでは言えまい。オランド氏は、ユーロ共同債導入には積極的な意向も示している。ギリシャで第二党の座を占めた急進左派連合も、ユーロの離脱までは主張していない。ともに欧州統合の大枠維持では一致している。
次に地方紙をみてみるが、全国紙と同じ視点と別の視点がある。そこに注目してみたい。
「北海道」 ギリシャやイタリア、スペインに続き欧州の政権交代ドミノがフランスでも起こった形だ。これまでの財政再建路線が放棄されれば、欧米によるギリシャ支援の足並みが乱れる恐れもある。
「河北」 日本は4月、IMFの危機対応能力強化に向けた追加拠出への合意を積極的に推進した。ユーロの安定が、世界経済の安定に不可欠だとの認識からだ。われわれがギリシャ国民やフランス国民の選択に異を唱えることは、もちろんできない。だが、二つの選挙結果によって岐路に立つのは、両国の進路ばかりではない。各国の主権を制約し、統合した「欧州の意思」を形成する。そんな理想の半面で、各国議会の承認を必要とするEUの意思決定は迅速さを欠き、もろい。
「信濃毎日」 欧州の危機対策の見直しが迫られた格好だ。が、欧州各国の足並みが乱れると、世界経済が再び深刻な影響を受ける恐れがある。すでにギリシャ、イタリア、スペインで政権崩壊を招いているだけに、政治的混乱の広がりも懸念される。ギリシャなど疲弊した国はことさらで、市場重視の緊縮策で景気悪化と税収減少を招き、さらなる緊縮という出口の見えない悪循環に陥っている。こうした中、オランド氏が強調した「平等」「公正」という理念が支持されるのは当然といえる。「市場が不安を抱いても譲歩しない」とまで語っている。これまでの原発推進策を見直し、「減原発」も打ち出した。
「新潟」選択の結果は重大である。その影響は欧州にとどまらない。世界経済に波及しかねない。政策転換を実行するにしても、混乱を招くことは許されない。大きな視点から功罪を十分に見据えるのは当然のことだ。積極的な歳出に踏みだして、財政規律が維持できなければ危機の再燃につながる。円高や世界経済の冷え込みという荒波となって日本にも押し寄せる。
「岐阜」 欧州債務危機対策と経済政策への不信、失望が突き動かした政権や指導者交代はイタリア、スペインなどに続き、フランスにも波及した。オランド氏には、欧州危機の再燃を阻止するため、説明責任を果たすよう強く求めたい。フランスの有権者はオランド氏に、緊縮路線に伴う「痛み」を和らげる役割を期待したといえる。不人気政策に挑む政権の運営という意味では、欧州各国の取り組みは普遍的なテーマでもある。政策の利益も不利益も国民が被る。説明を尽くし、理解を求める努力が足りなければ、支持を失うと銘記すべきだろう。
「京都」 市場ばかり優先は御免、という市民の叫びが聞こえるようだ。リーマン・ショックや欧州債務危機が突き付けたのは、世界規模のマネーゲームが一部富裕層に巨利をもたらす一方、市民生活の基盤を脅かし、国家財政さえ破綻の危機に追い込む非情な現実だ。両国の有権者はそれに「ノー」を表明したと言えよう。欧州ではギリシャやイタリア、ポルトガル、スペインなどの債務が膨らみ、信用不安の連鎖が統一通貨ユーロの危機を招いている。沈静化に向け、ユーロ圏各国に財政均衡を義務づけた新財政協定が締結されたが、体力の弱い国々は景気後退と税の減収という悪循環に陥ってしまった。ドイツと並んで欧州経済をリードするフランスでも失業率は10%に達し、賃金格差や貧困が広がっている。ギリシャでは若者の失業率が5割を超え、年金給付の切り下げを苦にした高齢者の自殺も相次いでいる。「元凶」の新財政協定と決別し、政治変革を求める声が高まったのも不思議はない。一方のギリシャは新政権の枠組みがまだ見通せない。とはいえ、躍進した一部野党が主張するように、EUなどからの金融支援を白紙に戻すのは非現実的だ。ユーロ圏にとどまり、国民生活に配慮しつつ、根気強く債務返済と財政状況の改善にあたってほしい。
「神戸」 それにしても欧州の政権ドミノ倒しは加速する一方だ。昨年はアイルランドで与党政権が14年ぶりに惨敗し、ポルトガルとスペインでも政権交代した。ギリシャとイタリアでは学者らに政権を明け渡した。その波にユーロ圏第2の経済大国フランスものみ込まれた。オランド氏は一部の富裕層だけが富を独占する市場原理主義を挙げ、「平等」と「公正」の復権を訴えた。米国で広がる反格差デモと同様、「金持ち優遇策」への批判である。就職難や所得格差で政治不信を募らせる国民がサルコジ政策に「ノー」を突きつけ、「変革」をもたらしたと言えないか。もう一つは原子力政策である。サルコジ氏が福島原発事故後も原発の安全と重要性を訴え、国策として進めるのに対し、オランド氏は原発を2025年までに3分の1減らす方針を掲げた。「原発大国」での「減原発」公約が支持を集めた。そんな側面にも目を向けたい。
「山陽」 最大の争点は欧州債務危機への対策だった。サルコジ氏は危機を引き金とする経済悪化が強い逆風となり、政権交代に追い込まれた。逆にオランド氏は欧州連合(EU)各国の財政規律強化を定めた「新財政協定」の再交渉を訴え、成長と雇用を重視する姿勢に支持が集まった。国策として進めてきた原発重視政策の「減原発」への転換も公約に掲げた。サルコジ氏の富裕層優遇策を非難し、「富の再分配」を求める声が若者を中心に強まっているという。ただ、オランド氏が公約通り多大な歳出を伴う社会保障や雇用改革を進められるかどうかは不透明である。今年1月には仏国債が格下げに見舞われるなど財政赤字削減も急務だ。富裕層への税制強化が経済競争力をそぐとの懸念もある。ギリシャ支援の枠組みが崩壊すれば、ひとまず沈静化している欧州危機の再燃は必至となろう。緊縮路線を批判するオランド氏の政策が危機の新たな火種となる可能性もある。欧州は結束して世界経済への悪影響を食い止めてもらいたい。
「中国」選挙結果を受け、連休明けの東京市場は株価が大幅反落し、円高ユーロ安が進んだ。欧州債務問題の先行きはより不透明になり、日本を含むアジア経済への波及も否めないが、これがフランス国民の選択なのだ。サルコジ氏は内相時代の強硬な治安対策で支持を集め、2007年の大統領選で初当選した。「もっと働き、もっと稼ごう」を掲げ、英米型の新自由主義路線を提唱した。外交政策も親米に傾いた。しかし、一連の国内政策は国民の不満を招き、今年に入ってユーロ圏9カ国の国債一斉格下げが起きた。「『格落ち』を招いた」と野党の批判を浴びたのは記憶に新しい。大きな痛手を受けたままの選挙戦だった。緊縮路線を見直して成長戦略に軸足を移すべきだという議論が、EU全体で高まりそうだという。そうなればフランスだけでなく、EU各国の国民の閉塞(へいそく)感を打ち破る新たな道が開けないか。「富の再配分」という争点の前にかすんだ感はあるが、仏大統領選史上、初めて原発が争点になった。オランド氏は国策である原発重視政策を「減原発」に転換するという。総発電電力量の8割を原発が占める「原発大国」だ。公約通り進めば、日本のエネルギー政策見直しにも影響を与えるだろう。その意味は小さくない。
フランスは1960年から96年まで、サハラ砂漠と仏領ポリネシアで210回の核実験を行った核保有国でもある。被爆国日本としては政権が代わっても、被曝(ひばく)者の救済と核兵器廃絶を求めなければならない。
「愛媛」5年前に市場原理重視の新自由主義的な政策を望んだフランス国民は、リーマン・ショックや欧州債務危機を経て社会格差の是正を訴える平等の理念を選択した。富裕層の優遇と批判されるサルコジ流の政治スタイルに反発し、社会格差の拡大で不平等感を増幅させた国民の不満の表れを見て取ることができよう。欧州連合(EU)では、財政規律優先主義から成長重視の現実的な路線への転換を求める声が強まっている。ギリシャ総選挙でも、反緊縮派が躍進した。市場の意向に沿った財政緊縮路線に異を唱え、経済成長や雇用創出を訴えたオランド氏の当選は、その流れを反映しているとも言える。対日関係への影響は不透明だが、オランド氏は東京電力福島第1原発事故を受け「減原発」を掲げている。「脱原発依存」を進める日本としては、この辺りを接点に協力関係を探りたい。
「徳島」「フランスをより豊かにする」と訴えて登場したサルコジ氏は、財政緊縮策に追われ、公約とした景気浮揚を果たせず失速した。危機対策とはいえ、緊縮策一辺倒では低迷する経済を立て直すのは難しい。先行きに明るい展望が見いだせない中、ギリシャ、イタリア、スペインで政権崩壊の連鎖を招いた荒波がフランスにも押し寄せた格好だ。緊縮策を緩めれば財政赤字のコントロールが難しくなり、市場の標的になる恐れもある。オランド氏の政策には、財源が明確になっていないものが少なくない。ましてやフランスは、今年1月に国債の格下げを受けたばかりである。野田佳彦首相も繰り返し唱えている「財政再建と経済成長の両立」を成し遂げた国は過去にない。そうした中、オランド氏が欧州の政治で最大の焦点になっている「財政出動の是非」にどのような解決策をもたらすのか、注視したい。
「高知」 ギリシャやイタリア、スペインなどと同じ、欧州債務危機による「政権交代ドミノ」がフランスにも及んだ。確かに、ギリシャやスペインは財政緊縮策が景気後退と税収減を招き、さらなる緊縮策を迫られる悪循環に陥った。フランスの失業率も最悪の10%となっている。同氏の言うように、緊縮一辺倒では雇用の改善などが難しくなっているのは事実だろう。だからといって、財政規律を緩めるわけにはいかない。実際、ギリシャ総選挙でも反緊縮派が躍進していることと合わせ、市場ではユーロが主要通貨に対し下落した。投資家のリスク回避の動きが再び強まり、EUの債務危機対策が水泡に帰すような事態は避ける必要がある。欧州経済を回復軌道に戻すことは、各国一致した目標のはずだ。そのためにもオランド氏には、財政規律と成長戦略の歯車をうまくかみ合わせる手腕が求められる。
「西日本」 フランス、ギリシャ両国とも、この協定に沿って緊縮財政路線を採る現政権に、厳しい審判が下された。有権者が「緊縮策より経済成長や雇用対策を優先せよ」と求めたのだ。フランスの場合、前回大統領選でサルコジ氏が新自由主義的な経済政策を掲げて当選したものの、貧富の格差が拡大し、失業率も約10%と高止まりしていることに、国民の不満が募っていた。これに対しオランド氏は「平等と公正」の価値観を重視、格差是正に向け富裕層への課税強化を公約して支持を広げた。さらに「経済成長が必要」として緊縮策を批判し、EUの新財政協定についても再交渉すると訴えている。ギリシャでは、債務危機を乗り切るためにライバルの二大政党が連立を組み、EUの金融支援を受ける引き換えに、厳しい緊縮策を進めていた。しかし国民は緊縮に伴う福祉縮小に強く反発、「EUの支援合意を白紙に戻す」と訴えた左派政党などが躍進した。今後は連立組み替えが焦点となるが、反緊縮派の影響力増大は避けられない。民主主義のルールに従った選挙で、国民が固有の価値観や国内事情に基づいて下した判断について、他国が口を挟むものではなかろう。ただ、昨今のグローバル社会においては、一国の政策転換の影響はその国内にとどまらない。欧州諸国は今、成長戦略を採りつつ財政規律を強めるという難題に直面している。日本も含めた先進国共通の課題でもある。政権の模索が各国で続きそうだ。
「佐賀」サルコジ氏の敗因が、07年の大統領選で掲げた市場原理を重視する「新自由主義」的な政策にあったことは皮肉な結果だ。自由競争による経済活性化は具体的な成果に結びつかず、一方で財政緊縮策による社会保障費削減などのため、市民生活に痛みをもたらした。派手な暮らしぶりも根強い不信感を生む結果となったという。オランド氏は、東京電力福島第1原発事故を契機に、「減原発」への転換も訴えてきた。また、アフガニスタン駐留フランス軍の撤退も掲げており、政権交代による影響は経済政策にとどまらず幅広い分野で広がる可能性もある。周囲には知日派が多いという見方もあり、日仏関係の発展を期待したい。
「熊本日日」 サルコジ氏は前回2007年の大統領選で、「もっと働きもっと稼ごう」のスローガンとともに、新自由主義的な競争原理の導入を掲げ支持を得た。しかし、08年のリーマン・ショックやその後の欧州債務危機が国内経済を直撃。公約で「5%以下にする」としていた失業率は、逆に1999年以降最悪の10%に達し、貧富の格差も拡大した。これに対しオランド氏は、市場の意向に縛られた緊縮一辺倒の政策を「不公正」と批判。「われわれは経済成長を必要としている。たとえ市場が不安を抱いても譲歩しない」と述べ、EUが合意した新財政協定は「成長策が欠如している」と再交渉を要求。貧困や雇用対策重視の姿勢が有権者の共感を呼んだ。欧州債務危機の拡大防止策で、日本は国際通貨基金(IMF)にユーロ圏以外では最大の約600億ドルの資金を拠出することを表明している。債務危機の再燃で円高ユーロ安を招けば、日本経済への打撃も大きい。オランド氏には、日本政府からもEU内の協調体制維持を働き掛けていくべきだ。
「南日本」欧州ではギリシャに端を発した債務危機を受け、昨年から各国で政権交代が相次いでいる。欧州債務危機と経済政策への不信、失望が突き動かした政権や指導者交代はイタリア、スペインなどに続き、フランスにも波及した。オランド氏は東京電力福島第1原発事故を契機に、フランスが国策として進めてきた原発重視政策を「減原発」に転換する方針も掲げている。世界第2の原発大国のフランスが政策を見直すようなことになれば、日本の原発政策にも影響を及ぼすことが考えられる。新政権の原発政策を注意深く見守りたい。
「琉球」 危機打開を目指す欧州連合(EU)の規律強化策「新財政協定」に、失業や格差などで苦しむ両国の有権者が「ノー」の審判を下した。その政治的・歴史的意味は重い。EU各国は民意をしっかり受け止め、財政再建と格差是正を両立するため知恵を絞ってもらいたい。オランド氏はこの状況を「不公正」と断じ、改善策として経済成長の必要性を強調してきた。「たとえ市場が不安を抱いても譲歩しない」と述べ、EUの緊縮策の再交渉を求めていた。新政権誕生で緊縮策見直しは避けられない。オランド氏は選挙戦で「平等」「公正」の価値を繰り返し強調し、賃金や住宅、医療などで広がる格差の是正を訴え続けた。フランスの動向は、消費増税により財政再建を目指す日本の論議にも影響を及ぼすだろう。フランスは世界有数の原発大国だが、オランド氏は福島第1原発事故を踏まえ、原発重視の国策の「減原発」への転換を主張。新政権のエネルギー政策も目が離せない。国際社会は、フランス新政権の誕生を非生産的なイデオロギー論争の発火点にするのではなく、人間の尊厳を大切にする政治・経済再生の契機にしてほしい。
サルコジ政権が一期で交代せざるを得なかったのは何故か。国民の要求と運動があったことは確実だが、そうした視点は、社説にはみられなかった。日本のマスコミこそ「非生産的なイデオロギー論争」を仕掛けているのではないだろうか?
こうしたマスコミが作り出す「世論」をどうやって打ち破るか、それが課題だろう。さもなければ、「瑞穂の国の春」は遠いということになる。ということは被害を受けるのは誰か、だ。
フランスやギリシャで起こっている国民の生活実態は、日本国民の実態でもあることを、マスコミも見ていないわけではないだろう。だが、これらの社説を見る限り、問題アリといわなければならない。
選択を混乱とよび脅迫す民のこころと見へぬ運動
<全国紙>
朝日 欧州の転機―指導者が担う重い責務
毎日 欧州の選挙 緊縮一辺倒の修正迫る
読売 仏大統領選 オランド氏は欧州危機回避を
日経 仏新大統領に現実的な路線を期待する
産経 仏新大統領 通貨危機の阻止優先せよ
東京 仏政権交代 対独関係の構築急げ
<地方紙>
北海道 仏政権交代 ユーロ安定を最優先で
河北新報 財政危機と欧州/確たる意思決定の仕組みを
信濃毎日 仏新大統領 荒波越える手腕いかに
新潟日報 仏新大統領誕生 欧州危機を再燃させるな
岐阜 仏大統領選 財政健全化への意思示せ
京都 仏大統領選 危機対応歩み止めるな
神戸 仏大統領選/EUをどう立て直すのか
山陽 仏大統領選 欧州危機再燃への懸念も
中国 仏大統領にオランド氏 EU緊縮路線に潮目か
愛媛 仏新大統領 「成長」「財政」どう両立させる
徳島オランド仏大統領 危機克服へ指導力を示せ
高知 【仏政権交代】反緊縮の中身が問われる
西日本 欧州の選挙 危機再燃回避を最優先に
佐賀 仏大統領選 問われる成長戦略の中身
熊本日日 仏新大統領 債務危機対策でEU協調を
南日本 [仏大統領選] 欧州危機への対応注視
琉球新報 仏大統領選出 人間本位の政治再生を
1.この選挙の政策的争点を、現在増税と社会保障の一体改悪と結びつけるものは、極めて少ないこと。これは日本への波及を恐れていることを自ら暴露してしまったのだと思う。
2.フランスの選挙の争点の一つに原発推進か、減原発か、その争点を指摘する社説も少なかった。これも日本との関連を低める意図的なものだ。フクシマがあったにもかかわらず、泊原発停止の際の社説があるにもかかわらず、このことは残念なことだ。何故こういうことになるか。
3.国民が選択した新政権に対して、危機を強調を強調するものが多いことだ。EUの対立は世界経済、日本に波及するなどの脅しに終始していることだ。これでは政権交代がない方が良かったということになってしまっているのだ。
4.社説の大半はフランスが中心なのはやむを得ないが、ギリシャの選挙戦の内容はあまり見えてこない。特にマスコミや財界がどのように動いたか、それに対して国民はどのように運動した結果、今回の結果をつくりだしたのか、全く見えてこない。ま、これは今後の課題だ。
5.最後にまとめると、この選挙が、いわゆる「新自由主義政策」の破綻であることを指摘する社説が少なかったのは、各社のスタンスがハッキリしていて意図的なものを感じる。何故そのような反応になるか、それは財界の応援団である野田政権が進めようとしているのは、まさにその「新自由主義政策」だからだ。特に全国紙に、その傾向が強いことが特徴だ。
以上、気付いたことをまとめてみたが、これらの社説は全国民、各地方の国民への各社の「メッセージ」ということを忘れてはならない。国民意識をつくる「装置」なのだということだ。そのことを踏まえておくことが必要だ。
そこで、今日は国会が始まった。まさに国民的視点にたつならば、欧州の「失敗」から学ぶべきことを軸に議論すべきだが、こういう視点での論戦は、ニュースを見る限りではほとんど見られなかった。社説も、国会も、他山の石となっていない。他人事なのだ。欧州の失敗路線を反省もなく、緊縮財政・小さな政府=新自由主義路線を突き進んでいくことを前提にした議論をしているのだ。「小沢政局」報道に偏しているのだ。
自公政権、特に「備えあれば憂いなし」「改革には痛みを伴う」「自民党をぶっ壊す」などと叫び、国民的支持を得た小泉構造改革の新自由主義政策=規制緩和政策の破綻が国民の自覚するところになってきた。このことを反映して「国民の生活が第一」を掲げて政権交代を実現した。だが、元々は先祖が自民党から社会党までを含む雑多な野合所帯である民主党だ。この民主党の内外の、特にアメリカなどの新自由主義政策推進派の反撃にあって、野田政権ができた訳だ。
そもそも、橋本内閣から始まった構造改革路線を、小渕・森内閣が推進したが、その矛盾が森首相の誕生時や神の国発言など、そのキャラクターもあり、国民的批判を浴び、新自由主義政策の手直しの旗手として小泉変人内閣を、マスコミを使って誕生させた。それは90年代末に起こった820万もの国民の支持を獲得した共産党の躍進を何としても防ぐことだった訳だが、こうした流れが10年も続いてきた。
この流れのなかで、今回の欧州の動きをみると、今回の社説がどのような位置にあるか、判る。だから、今回の選挙戦の具体的な中身の検討が必要だ。来るべき参院・総選挙で、欧州のような一票一揆を起こすためにも、だ。
そこで、全国紙がどのように選挙の結果をみているか、みてみよう。まさに日本の語kと国だ。これが、いわゆる新自由主義勢力からの「イデオロギー攻撃」というものだろうな。日本においても、これらの「視点」をどう打破するか、課題だろう。
「朝日」 首脳間の対話を進め、財政規律への道筋と決意を金融市場に示す。雇用創出策を進めつつ、必要な痛みを分かち合うよう人々を粘り強く説得する。オランド新大統領やギリシャの新指導者にはそうした努力が求められる。そして、これが欧州に限った話でないことは言うまでもない。
「毎日」 オランド氏が掲げた政策には、公務員の増加や年金支給開始年齢の引き下げなど、財政悪化につながる人気取り的なものが多い。欧州中央銀行に積極緩和の政治圧力をかける同氏の姿勢もドイツは容認すべきでない。だが、景気低迷時にもかかわらず財政緊縮に過度に軸足を置いたこれまでの独仏の戦術を転換するにはよい機会となり得る。
「読売」 高額所得者への課税強化を打ち出す一方で、年金受給開始年齢の引き上げ撤回や教員数大幅増など財政に負担となる公約を並べた。こうした大衆迎合的な政策は、市場の信認を一層低下させる可能性がある。同じ日に行われたギリシャの総選挙で、財政緊縮策に反対する小政党が勢力を伸ばしたことも懸念材料だ。大連立政権で財政再建を進めてきた中道左派、中道右派の2政党の議席は、合わせても過半数に達しなかった。
「日経」確かにオランド氏は富裕層や大企業への課税強化、財政規律徹底を目指すEU新条約の見直しなど、経済面で有権者に口当たりのいい公約を掲げた。それが支持された部分もあろうが、5年間のサルコジ政権への不満が国民に強かったことが最大の勝因だ。フランスは6月に国民議会(下院)選挙が控えており、新政権は当面、人気を意識した政策を唱え続けることが考えられる。しかし、財政再建が喫緊の課題であることは疑いえない。そのことはオランド氏も承知のはずである。
「産経」 氏が唱える年金受給年齢引き下げや公務員増、財政規律強化を義務づける欧州連合(EU)の新財政協定見直しなどは懸念材料だ。せっかくの仏独協力にひびが入りかねないとする声があるのもこのためだ。ギリシャの財政再建は緒についたばかりで、国際社会の信頼を得るに至っていない。日本をはじめ、危機再燃に備えて国際通貨基金(IMF)などに資金を拠出した欧州以外の国から不満が噴き出す可能性もある。ギリシャはこうした厳しい目にさらされていることを認識すべきだ。
オランド政権の動向も含め、欧州が危機対応で後戻りすることは決して許されない。
「東京」ギリシャでも二大政党が惨敗した。緊縮を迫り続けるドイツ型の経済財政運営に対する鬱憤(うっぷん)の表れだろう。経済成長を望まない政党はない。問題はその方法だ。オランド氏が掲げるのは富裕者への増税、年金支給年齢の再引き下げ、公務員採用枠の拡大などいわば「大きな政府」型の政策だ。公営企業が大きなウエートを占めるフランス経済特有の事情がある。選挙結果はユーロ救済策への異議申し立てではあっても、僅差の結果を見れば全面的なノーとまでは言えまい。オランド氏は、ユーロ共同債導入には積極的な意向も示している。ギリシャで第二党の座を占めた急進左派連合も、ユーロの離脱までは主張していない。ともに欧州統合の大枠維持では一致している。
次に地方紙をみてみるが、全国紙と同じ視点と別の視点がある。そこに注目してみたい。
「北海道」 ギリシャやイタリア、スペインに続き欧州の政権交代ドミノがフランスでも起こった形だ。これまでの財政再建路線が放棄されれば、欧米によるギリシャ支援の足並みが乱れる恐れもある。
「河北」 日本は4月、IMFの危機対応能力強化に向けた追加拠出への合意を積極的に推進した。ユーロの安定が、世界経済の安定に不可欠だとの認識からだ。われわれがギリシャ国民やフランス国民の選択に異を唱えることは、もちろんできない。だが、二つの選挙結果によって岐路に立つのは、両国の進路ばかりではない。各国の主権を制約し、統合した「欧州の意思」を形成する。そんな理想の半面で、各国議会の承認を必要とするEUの意思決定は迅速さを欠き、もろい。
「信濃毎日」 欧州の危機対策の見直しが迫られた格好だ。が、欧州各国の足並みが乱れると、世界経済が再び深刻な影響を受ける恐れがある。すでにギリシャ、イタリア、スペインで政権崩壊を招いているだけに、政治的混乱の広がりも懸念される。ギリシャなど疲弊した国はことさらで、市場重視の緊縮策で景気悪化と税収減少を招き、さらなる緊縮という出口の見えない悪循環に陥っている。こうした中、オランド氏が強調した「平等」「公正」という理念が支持されるのは当然といえる。「市場が不安を抱いても譲歩しない」とまで語っている。これまでの原発推進策を見直し、「減原発」も打ち出した。
「新潟」選択の結果は重大である。その影響は欧州にとどまらない。世界経済に波及しかねない。政策転換を実行するにしても、混乱を招くことは許されない。大きな視点から功罪を十分に見据えるのは当然のことだ。積極的な歳出に踏みだして、財政規律が維持できなければ危機の再燃につながる。円高や世界経済の冷え込みという荒波となって日本にも押し寄せる。
「岐阜」 欧州債務危機対策と経済政策への不信、失望が突き動かした政権や指導者交代はイタリア、スペインなどに続き、フランスにも波及した。オランド氏には、欧州危機の再燃を阻止するため、説明責任を果たすよう強く求めたい。フランスの有権者はオランド氏に、緊縮路線に伴う「痛み」を和らげる役割を期待したといえる。不人気政策に挑む政権の運営という意味では、欧州各国の取り組みは普遍的なテーマでもある。政策の利益も不利益も国民が被る。説明を尽くし、理解を求める努力が足りなければ、支持を失うと銘記すべきだろう。
「京都」 市場ばかり優先は御免、という市民の叫びが聞こえるようだ。リーマン・ショックや欧州債務危機が突き付けたのは、世界規模のマネーゲームが一部富裕層に巨利をもたらす一方、市民生活の基盤を脅かし、国家財政さえ破綻の危機に追い込む非情な現実だ。両国の有権者はそれに「ノー」を表明したと言えよう。欧州ではギリシャやイタリア、ポルトガル、スペインなどの債務が膨らみ、信用不安の連鎖が統一通貨ユーロの危機を招いている。沈静化に向け、ユーロ圏各国に財政均衡を義務づけた新財政協定が締結されたが、体力の弱い国々は景気後退と税の減収という悪循環に陥ってしまった。ドイツと並んで欧州経済をリードするフランスでも失業率は10%に達し、賃金格差や貧困が広がっている。ギリシャでは若者の失業率が5割を超え、年金給付の切り下げを苦にした高齢者の自殺も相次いでいる。「元凶」の新財政協定と決別し、政治変革を求める声が高まったのも不思議はない。一方のギリシャは新政権の枠組みがまだ見通せない。とはいえ、躍進した一部野党が主張するように、EUなどからの金融支援を白紙に戻すのは非現実的だ。ユーロ圏にとどまり、国民生活に配慮しつつ、根気強く債務返済と財政状況の改善にあたってほしい。
「神戸」 それにしても欧州の政権ドミノ倒しは加速する一方だ。昨年はアイルランドで与党政権が14年ぶりに惨敗し、ポルトガルとスペインでも政権交代した。ギリシャとイタリアでは学者らに政権を明け渡した。その波にユーロ圏第2の経済大国フランスものみ込まれた。オランド氏は一部の富裕層だけが富を独占する市場原理主義を挙げ、「平等」と「公正」の復権を訴えた。米国で広がる反格差デモと同様、「金持ち優遇策」への批判である。就職難や所得格差で政治不信を募らせる国民がサルコジ政策に「ノー」を突きつけ、「変革」をもたらしたと言えないか。もう一つは原子力政策である。サルコジ氏が福島原発事故後も原発の安全と重要性を訴え、国策として進めるのに対し、オランド氏は原発を2025年までに3分の1減らす方針を掲げた。「原発大国」での「減原発」公約が支持を集めた。そんな側面にも目を向けたい。
「山陽」 最大の争点は欧州債務危機への対策だった。サルコジ氏は危機を引き金とする経済悪化が強い逆風となり、政権交代に追い込まれた。逆にオランド氏は欧州連合(EU)各国の財政規律強化を定めた「新財政協定」の再交渉を訴え、成長と雇用を重視する姿勢に支持が集まった。国策として進めてきた原発重視政策の「減原発」への転換も公約に掲げた。サルコジ氏の富裕層優遇策を非難し、「富の再分配」を求める声が若者を中心に強まっているという。ただ、オランド氏が公約通り多大な歳出を伴う社会保障や雇用改革を進められるかどうかは不透明である。今年1月には仏国債が格下げに見舞われるなど財政赤字削減も急務だ。富裕層への税制強化が経済競争力をそぐとの懸念もある。ギリシャ支援の枠組みが崩壊すれば、ひとまず沈静化している欧州危機の再燃は必至となろう。緊縮路線を批判するオランド氏の政策が危機の新たな火種となる可能性もある。欧州は結束して世界経済への悪影響を食い止めてもらいたい。
「中国」選挙結果を受け、連休明けの東京市場は株価が大幅反落し、円高ユーロ安が進んだ。欧州債務問題の先行きはより不透明になり、日本を含むアジア経済への波及も否めないが、これがフランス国民の選択なのだ。サルコジ氏は内相時代の強硬な治安対策で支持を集め、2007年の大統領選で初当選した。「もっと働き、もっと稼ごう」を掲げ、英米型の新自由主義路線を提唱した。外交政策も親米に傾いた。しかし、一連の国内政策は国民の不満を招き、今年に入ってユーロ圏9カ国の国債一斉格下げが起きた。「『格落ち』を招いた」と野党の批判を浴びたのは記憶に新しい。大きな痛手を受けたままの選挙戦だった。緊縮路線を見直して成長戦略に軸足を移すべきだという議論が、EU全体で高まりそうだという。そうなればフランスだけでなく、EU各国の国民の閉塞(へいそく)感を打ち破る新たな道が開けないか。「富の再配分」という争点の前にかすんだ感はあるが、仏大統領選史上、初めて原発が争点になった。オランド氏は国策である原発重視政策を「減原発」に転換するという。総発電電力量の8割を原発が占める「原発大国」だ。公約通り進めば、日本のエネルギー政策見直しにも影響を与えるだろう。その意味は小さくない。
フランスは1960年から96年まで、サハラ砂漠と仏領ポリネシアで210回の核実験を行った核保有国でもある。被爆国日本としては政権が代わっても、被曝(ひばく)者の救済と核兵器廃絶を求めなければならない。
「愛媛」5年前に市場原理重視の新自由主義的な政策を望んだフランス国民は、リーマン・ショックや欧州債務危機を経て社会格差の是正を訴える平等の理念を選択した。富裕層の優遇と批判されるサルコジ流の政治スタイルに反発し、社会格差の拡大で不平等感を増幅させた国民の不満の表れを見て取ることができよう。欧州連合(EU)では、財政規律優先主義から成長重視の現実的な路線への転換を求める声が強まっている。ギリシャ総選挙でも、反緊縮派が躍進した。市場の意向に沿った財政緊縮路線に異を唱え、経済成長や雇用創出を訴えたオランド氏の当選は、その流れを反映しているとも言える。対日関係への影響は不透明だが、オランド氏は東京電力福島第1原発事故を受け「減原発」を掲げている。「脱原発依存」を進める日本としては、この辺りを接点に協力関係を探りたい。
「徳島」「フランスをより豊かにする」と訴えて登場したサルコジ氏は、財政緊縮策に追われ、公約とした景気浮揚を果たせず失速した。危機対策とはいえ、緊縮策一辺倒では低迷する経済を立て直すのは難しい。先行きに明るい展望が見いだせない中、ギリシャ、イタリア、スペインで政権崩壊の連鎖を招いた荒波がフランスにも押し寄せた格好だ。緊縮策を緩めれば財政赤字のコントロールが難しくなり、市場の標的になる恐れもある。オランド氏の政策には、財源が明確になっていないものが少なくない。ましてやフランスは、今年1月に国債の格下げを受けたばかりである。野田佳彦首相も繰り返し唱えている「財政再建と経済成長の両立」を成し遂げた国は過去にない。そうした中、オランド氏が欧州の政治で最大の焦点になっている「財政出動の是非」にどのような解決策をもたらすのか、注視したい。
「高知」 ギリシャやイタリア、スペインなどと同じ、欧州債務危機による「政権交代ドミノ」がフランスにも及んだ。確かに、ギリシャやスペインは財政緊縮策が景気後退と税収減を招き、さらなる緊縮策を迫られる悪循環に陥った。フランスの失業率も最悪の10%となっている。同氏の言うように、緊縮一辺倒では雇用の改善などが難しくなっているのは事実だろう。だからといって、財政規律を緩めるわけにはいかない。実際、ギリシャ総選挙でも反緊縮派が躍進していることと合わせ、市場ではユーロが主要通貨に対し下落した。投資家のリスク回避の動きが再び強まり、EUの債務危機対策が水泡に帰すような事態は避ける必要がある。欧州経済を回復軌道に戻すことは、各国一致した目標のはずだ。そのためにもオランド氏には、財政規律と成長戦略の歯車をうまくかみ合わせる手腕が求められる。
「西日本」 フランス、ギリシャ両国とも、この協定に沿って緊縮財政路線を採る現政権に、厳しい審判が下された。有権者が「緊縮策より経済成長や雇用対策を優先せよ」と求めたのだ。フランスの場合、前回大統領選でサルコジ氏が新自由主義的な経済政策を掲げて当選したものの、貧富の格差が拡大し、失業率も約10%と高止まりしていることに、国民の不満が募っていた。これに対しオランド氏は「平等と公正」の価値観を重視、格差是正に向け富裕層への課税強化を公約して支持を広げた。さらに「経済成長が必要」として緊縮策を批判し、EUの新財政協定についても再交渉すると訴えている。ギリシャでは、債務危機を乗り切るためにライバルの二大政党が連立を組み、EUの金融支援を受ける引き換えに、厳しい緊縮策を進めていた。しかし国民は緊縮に伴う福祉縮小に強く反発、「EUの支援合意を白紙に戻す」と訴えた左派政党などが躍進した。今後は連立組み替えが焦点となるが、反緊縮派の影響力増大は避けられない。民主主義のルールに従った選挙で、国民が固有の価値観や国内事情に基づいて下した判断について、他国が口を挟むものではなかろう。ただ、昨今のグローバル社会においては、一国の政策転換の影響はその国内にとどまらない。欧州諸国は今、成長戦略を採りつつ財政規律を強めるという難題に直面している。日本も含めた先進国共通の課題でもある。政権の模索が各国で続きそうだ。
「佐賀」サルコジ氏の敗因が、07年の大統領選で掲げた市場原理を重視する「新自由主義」的な政策にあったことは皮肉な結果だ。自由競争による経済活性化は具体的な成果に結びつかず、一方で財政緊縮策による社会保障費削減などのため、市民生活に痛みをもたらした。派手な暮らしぶりも根強い不信感を生む結果となったという。オランド氏は、東京電力福島第1原発事故を契機に、「減原発」への転換も訴えてきた。また、アフガニスタン駐留フランス軍の撤退も掲げており、政権交代による影響は経済政策にとどまらず幅広い分野で広がる可能性もある。周囲には知日派が多いという見方もあり、日仏関係の発展を期待したい。
「熊本日日」 サルコジ氏は前回2007年の大統領選で、「もっと働きもっと稼ごう」のスローガンとともに、新自由主義的な競争原理の導入を掲げ支持を得た。しかし、08年のリーマン・ショックやその後の欧州債務危機が国内経済を直撃。公約で「5%以下にする」としていた失業率は、逆に1999年以降最悪の10%に達し、貧富の格差も拡大した。これに対しオランド氏は、市場の意向に縛られた緊縮一辺倒の政策を「不公正」と批判。「われわれは経済成長を必要としている。たとえ市場が不安を抱いても譲歩しない」と述べ、EUが合意した新財政協定は「成長策が欠如している」と再交渉を要求。貧困や雇用対策重視の姿勢が有権者の共感を呼んだ。欧州債務危機の拡大防止策で、日本は国際通貨基金(IMF)にユーロ圏以外では最大の約600億ドルの資金を拠出することを表明している。債務危機の再燃で円高ユーロ安を招けば、日本経済への打撃も大きい。オランド氏には、日本政府からもEU内の協調体制維持を働き掛けていくべきだ。
「南日本」欧州ではギリシャに端を発した債務危機を受け、昨年から各国で政権交代が相次いでいる。欧州債務危機と経済政策への不信、失望が突き動かした政権や指導者交代はイタリア、スペインなどに続き、フランスにも波及した。オランド氏は東京電力福島第1原発事故を契機に、フランスが国策として進めてきた原発重視政策を「減原発」に転換する方針も掲げている。世界第2の原発大国のフランスが政策を見直すようなことになれば、日本の原発政策にも影響を及ぼすことが考えられる。新政権の原発政策を注意深く見守りたい。
「琉球」 危機打開を目指す欧州連合(EU)の規律強化策「新財政協定」に、失業や格差などで苦しむ両国の有権者が「ノー」の審判を下した。その政治的・歴史的意味は重い。EU各国は民意をしっかり受け止め、財政再建と格差是正を両立するため知恵を絞ってもらいたい。オランド氏はこの状況を「不公正」と断じ、改善策として経済成長の必要性を強調してきた。「たとえ市場が不安を抱いても譲歩しない」と述べ、EUの緊縮策の再交渉を求めていた。新政権誕生で緊縮策見直しは避けられない。オランド氏は選挙戦で「平等」「公正」の価値を繰り返し強調し、賃金や住宅、医療などで広がる格差の是正を訴え続けた。フランスの動向は、消費増税により財政再建を目指す日本の論議にも影響を及ぼすだろう。フランスは世界有数の原発大国だが、オランド氏は福島第1原発事故を踏まえ、原発重視の国策の「減原発」への転換を主張。新政権のエネルギー政策も目が離せない。国際社会は、フランス新政権の誕生を非生産的なイデオロギー論争の発火点にするのではなく、人間の尊厳を大切にする政治・経済再生の契機にしてほしい。
サルコジ政権が一期で交代せざるを得なかったのは何故か。国民の要求と運動があったことは確実だが、そうした視点は、社説にはみられなかった。日本のマスコミこそ「非生産的なイデオロギー論争」を仕掛けているのではないだろうか?
こうしたマスコミが作り出す「世論」をどうやって打ち破るか、それが課題だろう。さもなければ、「瑞穂の国の春」は遠いということになる。ということは被害を受けるのは誰か、だ。
フランスやギリシャで起こっている国民の生活実態は、日本国民の実態でもあることを、マスコミも見ていないわけではないだろう。だが、これらの社説を見る限り、問題アリといわなければならない。
選択を混乱とよび脅迫す民のこころと見へぬ運動
<全国紙>
朝日 欧州の転機―指導者が担う重い責務
毎日 欧州の選挙 緊縮一辺倒の修正迫る
読売 仏大統領選 オランド氏は欧州危機回避を
日経 仏新大統領に現実的な路線を期待する
産経 仏新大統領 通貨危機の阻止優先せよ
東京 仏政権交代 対独関係の構築急げ
<地方紙>
北海道 仏政権交代 ユーロ安定を最優先で
河北新報 財政危機と欧州/確たる意思決定の仕組みを
信濃毎日 仏新大統領 荒波越える手腕いかに
新潟日報 仏新大統領誕生 欧州危機を再燃させるな
岐阜 仏大統領選 財政健全化への意思示せ
京都 仏大統領選 危機対応歩み止めるな
神戸 仏大統領選/EUをどう立て直すのか
山陽 仏大統領選 欧州危機再燃への懸念も
中国 仏大統領にオランド氏 EU緊縮路線に潮目か
愛媛 仏新大統領 「成長」「財政」どう両立させる
徳島オランド仏大統領 危機克服へ指導力を示せ
高知 【仏政権交代】反緊縮の中身が問われる
西日本 欧州の選挙 危機再燃回避を最優先に
佐賀 仏大統領選 問われる成長戦略の中身
熊本日日 仏新大統領 債務危機対策でEU協調を
南日本 [仏大統領選] 欧州危機への対応注視
琉球新報 仏大統領選出 人間本位の政治再生を