2日間にわたって「読売」「朝日」「毎日」「産経」が増税に向けて民自公を叱咤激励するし社説が掲載された。逆に言えば、増税反対派を恫喝する社説だ。
経団連など、財界の要求である増税に対して、国民の要求を代弁する勢力とのがっぷり四つの闘いが、国会内外で展開されている。
こうした時に、メディアをとおして全国紙がどのような立場で新聞を書くか、注目した。全国紙の社説は、その立ち居を浮き彫りにさせた。そこで再度確認しておこう。社会の変革にあたっては、世論、イデオロギーは重要な要素であると同時に、決定的だ。
このことはエンゲルスが、「ドイツ農民戦争」の「序文」中で以下のように述べていることが、こんにちの日本の政治のなかで検証されているということだ。
ドイツの労働者は、自分の地位の有利さをたぐいまれな理解力をもって利用したものといわずるをえない。労働運動がはじまってこのかたはじめて、闘争が三つの方面、―理論的方面、政治的方面、実際的・経済的方面(すなわち資本家にたいする反抗)-にわたって、調和と連関をたもちながら計画的に遂行されている。このいわば集中された攻撃にこそ、ドイツの運動の強さと不敗の力とが存するのである。(引用ここまで)
同時にマルクスの「経済学批判序言」のなかで、日本の現局面を予言している。
社会の物質的生産諸力は、その発展のある段階で、それらがそれまでその内部で運動してきた既存の生産諸関係と、あるいはそれの法律的表現にすぎないが、所有諸関係と矛盾するようになる。これらの諸関係は、生産諸力の発展諸形態からその桎梏に一変する。そのときに社会革命の時期が始まる。経済的基礎の変化とともに、巨大な上部構造全体が、あるいは徐々に、あるいは急激に変革される。…一つの社会構成は、それが十分包容しうる生産諸力がすべて発展しきるまでは、けっして没落するものではなく、新しい、さらに高度の生産諸関係は、その物質的存在条件が古い社会自体の胎内で孵化されおわるまでは、けっして古いものにとって代わることはない。それだから、人間はつねに、自分が解決しうる課題だけを自分に提起する。(引用ここまで)
もう一つ紹介しておこう。「朝日」という新聞社を代表する「社説」と異なる見解を一般の記事で述べることはあると表明された昨日の記事の一つの元になった「教えて!消費税」の今日の以下の記事に注目した。
政府の税収(一般会計)は、消費増税した97年度の53・9兆円から伸び悩む。その後はデフレや低成長が続き、給与などにかかる「所得税」や企業のもうけにかかる「法人税」の税収が増えないからだ。「デフレ下で増税すれば、景気が悪くなって失業対策などの費用がかさむ。財政再建という目的は達成できない」。駒沢大の飯田泰之准教授(経済学)は消費増税の効果を疑問視する。(大日向寛文)(引用ここまで)
この記事をみると、以下の述べる「社説」とは異なる視点から増税に「反対」「疑問」を呈しているかのような記事だ。しかし、落とし穴がある。
それは「法人税」に対する視点だ。消費税3%導入前の89年には42%だった法人税は、その後40%、37.5%へ、そうして消費税5%増税後には、34.5%から30%に引下げられている。こうした経過の中で、非正規雇用が増やされ、賃金が低下され、所得税収入減となり、同時に内部留保が142兆円(97年)から266兆円(10年)へと増やされていったことを意図に隠している。「朝日」の視点は、誰の立場に立って記事が書かれているか、明瞭だ。
以上のように国民生活優先か、大企業の儲け優先か、真っ向から対立する政治がまかり通ってきたのだが、これが政権交代によって実現できるかのように思われたのだが、マスコミを使った財界の反撃によって、もともと雑多集団である民主党と野田政権の自民党化というシナリオの具体化である3党合意としてスリカエラレた。だが、社会保障と財政再建のための消費税増税が、実はデタラメであることが国会質疑などで明らかにされてきた。「財政危機」を作り出してきた旧自公政権時代の大型公共事業復活のためであることが浮き彫りになり、そのゴマカシから逃れられないところまで追い詰められ、原発再稼動、オスプレイ配備問題、TRR参加問題も加わり、今崖っぷちに立たされているのだ。
今まさに、旧来の政治の枠組み、悪弊、陋習では、政治や外交、経済、そして暮らしが成り立ち得ないところまで来たということだ。金属疲労から金属破壊にまで、現在の日本がきたということだ。
だが、これが一挙に変革にまで行き着くかといえば、そうはならないだろう。「徐々に」、ある時には「急激に」変革されるだろう。徳川政権から薩長政権へ、ソ連東欧の変革などを見れば明瞭だ。確実に日本は、これまでとは違った変革期に差し掛かったといえる。
だからこそ、エンゲルスのいう変革を作り出す「理論」と運動(政治的・経済的)が求められているのだ。まさに職場と地域で具体的に目に見える形で運動が展開されなければならない。
以下、全国紙の社説を見てみよう。「政権交代可能」と二大政党政治を煽ってきたマスコミ、全国紙が、二大政党政治の違いが判らず、一致してきているなか、政権奪取と政権保守の争いをしている民自公に対して、脅しているのだ!この脅しこそ、イデオロギー攻撃といえる。議員各位を脅しているのだ。だが、議員が寄って立つべきスタンスは何か。国民の意向だ。地元の有権者、国民世論から遊離下議員は、確実に落選、議席を得ることはできない。
国民に対して「痛み」を強制する増税、大型公共事業の復活など、その増税の根拠が崩れてきたにもかかわらず、増税の「根拠」を振りかざしているのだ。三党合意は国民の要望に反しているのに、公明党の支持者の意向を、国民の要求であるかのようにウソをふりまいているのだ。
さらには欧州危機を持ち出し、情の違う欧州と日本を単純に比較し、脅すなど、実に情けない限りだ!
などなど、様々な「脅し」が繰り広げられている。最大のポイント・手法は、増税に対する国民の意向だ。その意向をどちらが掴むか、そこにかかっている。脅しに屈するか、跳ね除けるか、それだ!
今民自公三党首が会談したというニュースが入った。「増税を決めてから、近いうちに国民の信を問う」というものだ。
呆れる!決める前に信を問え!あの酷い小泉元首相より後退している!酷い小泉首相の手法以下ということは、最悪最低、末期ということだ。
恐らく民自公(民主党の分裂が分裂しても国会で多数派を握れと、彼らは判断したのだろう)が消費税を決めて、選挙をしても、国会で多数派になると情勢分析をしたからこそ、「増税を決めて近いうちに国民の信を問う」と「合意」したのだろう!
国民を見くびった判断だ!
さぁ!マスコミがどう報道するか、楽しみだ!!
政権を誰が握るかと目の前に迫りつつあるとなりにけるかも
以下、各社の社説を掲載しておこう。国民目線など、どこ吹く風か!よく判る!
一体改革法案 党首会談で事態を打開せよ(8月7日付・読売社説)(2012年8月7日01時52分 読売新聞)
社会保障・税一体改革関連法案の成立が危ぶまれる状況である。
自民党が、野田首相から衆院解散の確約を得られなければ法案の成立を認めない、という強硬路線へ強引に舵(かじ)を切ったからだ。
民主、自民、公明3党が財政再建の重要性を確認し、修正合意の末に衆院を通過させた法案だ。今になって蔑(ないがし)ろにすることは到底許されない。参院で速やかに採決し、成立させるのが筋である。
自民党の谷垣総裁は「一体改革を成し遂げるには国民に信を問い、態勢を立て直すことが必要だ」と述べた。解散要求が通らない場合、内閣不信任決議案や首相問責決議案を7日にも提出する。
法案成立と引き換えに早期の衆院選に持ち込もうとするのは、一体改革という国益を“人質”に取るような手法ではないか。
問責決議案や内閣不信任案が出されれば、国会は混乱し、法案は廃案になりかねない。
その場合、3党合意の瓦解どころか、日本の政治そのものが内外の信用を失うだろう。
自民党の強硬姿勢について、公明党の山口代表が「どういう結果を招くか、慎重に考えるべきだ」と指摘したのはもっともだ。多くの国民の理解は得られまい。
自民党は内閣不信任案の提出を再考すべきだ。法的拘束力のない問責決議案を倒閣に使うのも悪(あ)しき前例を残すことになる。
野田首相は、「3党合意は大変重たい。法案を成立させることに全力を尽くす」と語った。それなら、谷垣氏との会談で事態の打開を図るしかないだろう。
そもそも、こうした状況を招いた一因は、首相と民主党執行部の不誠実さにある。
首相は、連合の古賀伸明会長との会談で来年度予算編成に意欲を示し、法案成立後の解散を求める自民党の神経を逆なでした。
民主党執行部は、離党者がさらに出ることを恐れ、法案の早期採決には及び腰だった。当初、赤字国債発行を可能とする特例公債法案の成立や衆院選挙制度の「1票の格差」是正との同時決着を主張し、20日の採決を唱えていた。
これらが大事なのは言うまでもないが、一体改革関連法案の参院採決を先送りする口実ではないか、と疑われても仕方がない。
ようやく民主党は自民党に8日の委員会採決を提案したが、対応が後手に回ったのは確かだ。
民主、自民両党の駆け引きの揚げ句に、法案を葬り去ることだけは回避しなければならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120806-OYT1T01656.htm
内閣不信任案 一体改革を党利党略で弄ぶな(8月8日付・読売社説)
社会保障と税の一体改革は、日本の将来を左右する重要案件だ。与野党が党利党略で弄ぶことがあってはならない。
国民の生活が第一、共産、社民などの中小野党が、衆院に野田内閣不信任決議案を、参院に野田首相問責決議案を、それぞれ共同提出した。
消費税率引き上げに反対する立場から、「消費増税は民主党の政権公約違反であり、野田内閣は信任できない」と主張している。
一体改革関連法案に修正合意した民主、自民、公明の3党は、不信任案と問責決議案を粛々と否決すべきである。
問題なのは、自民党が、野田首相から衆院解散の確約が得られない限り、内閣不信任案や問責決議案を独自に提出する、という強硬姿勢を再確認したことだ。自民党が提出に踏み切れば、3党合意は崩壊の危機に直面する。
衆院で不信任案は否決される見通しだが、参院では問責決議案が可決される公算が大きい。法的拘束力はないが、野党が参院審議を拒否すれば、一体改革法案の成立が極めて困難になる。
実現目前の一体改革を白紙に戻すのは、愚の骨頂である。さらに、9月に発足する予定の原子力規制委員会の人事も宙に浮くなど、多大な悪影響が出るだろう。
衆参ねじれ国会で政治が停滞する中、一体改革の3党合意は「決められる政治」に立ち返る一歩となるはずだった。合意が崩れ、法案が成立しなければ、既成政党への国民の評価は失墜しよう。
一体改革を犠牲にすることも辞さずに、早期解散を求める自民党の姿勢は、身勝手すぎる。
谷垣総裁が今国会での解散に固執していることにも、それが実現できなければ、9月の総裁選で自らの再選が困難になるためではないか、との見方が出ている。
自民党が参院特別委員会での8日採決の日程に同意しながら、問責決議案の提出の用意をしているのは、筋が通らない。
3党合意は、一体改革法案について「今国会で成立を図る」と明記している。民主党の国会運営に問題があったにせよ、自民党が一方的に反故(ほご)にするなら、政党間の合意や信頼は成り立たない。
仮に自民党が政権に復帰した場合、消費増税について野党の協力を一体どう得るつもりなのか。
公明党が「一体改革を政局の道具にすべきでない」として自民党と一線を画し、法案成立を優先しているのは、妥当な姿勢だ。今の方針を堅持してもらいたい。
(2012年8月8日01時41分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120808-OYT1T00130.htm
民主と自民―改革潰しは許されない2012年8月7日(火)付
社会保障と税の一体改革の行方に、暗雲が垂れこめてきた。
自民党の谷垣総裁が野田首相に対し、関連法案成立後の衆院解散を、参院での採決前に確約するよう迫っている。
応じなければ、7日にも衆院に内閣不信任決議案、参院に首相の問責決議案を出すという。
不信任案はいまのところ可決の可能性は低いが、問責決議案が提出されれば可決される公算が大きい。そうなれば民主、自民、公明の3党合意は空中分解し、法案成立は難しくなる。
だが、ここで改革を頓挫させることは許されない。将来世代に負担をつけ回しする政治を続けるわけにはいかないからだ。
民主、自民両党は互いに譲るべきは譲りあい、法案成立を最優先にすべきである。
まず理不尽なのは自民党の姿勢だ。
「民主党が公約にない消費増税をやれば、国民に信を問うのが筋だ」。谷垣氏ら自民党執行部の指摘には、一定の理があると私たちも思う。
だとしても、いま解散を約束しなければ法案が潰れてもいいということにはなるまい。
衆院議員の任期満了まであと1年。いずれにせよ総選挙はそんなに先の話ではない。
自民党は2年前の参院選で10%への消費増税を公約した。3党合意は、それに基づいての決断だったはずだ。
これを実らせてからの解散・総選挙ではなぜだめなのか。
野田内閣の支持率が低迷している間に総選挙をやれば、自民党に有利だ。9月の党総裁選前に解散を勝ち取らなければ谷垣総裁の続投は難しい。
自民党内ではそんな声が聞こえる。
もしそれで解散を迫っているのなら、まさに党利党略、私利私略ではないか。
公明党が自民党の姿勢に「説得力がない」と自制を求めているのは当然のことだ。
民主党の言動も不可解だ。
党執行部は、一体改革法案の参院採決より前に、赤字国債発行法案や衆院の「一票の格差」是正法案を衆院通過させるべきだと主張してきた。
きのうになってやっと一体改革法案の先行処理を受け入れたが、参院採決でさらなる離党者が出るのを恐れて先送りを図っていたとしたら、これもまた党利党略というほかない。
私たちは、一体改革をめぐる3党合意を「決められる政治」への第一歩に、と期待した。
首相と谷垣氏は党首会談も含めあらゆる手立てを尽くし、すみやかに事態を打開すべきだ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20120807.html#Edit1
民・自対立―3党合意に立ちかえれ2012年8月8日(水)付
社会保障と税の一体改革関連法案の参院採決を目前に、与野党の対立が続いている。
国民の生活が第一やみんなの党などがきのう、衆院に内閣不信任決議案を、参院に野田首相に対する問責決議案を出した。
これとは別に、自民党も首相に衆院解散の確約を求め、両決議案の提出を検討している。
自民党の姿勢によっては、関連法案の成立が危うくなりかねない。
首相と谷垣自民党総裁にあらためて求める。
ここは一体改革の実行が最優先だ。両党首が先頭にたって事態を打開し、関連法案の成立を確実にすべきだ。
両党首に聞いておきたい。
一体改革に合意したのはなぜなのか。1千兆円を超す借金を放置しては、社会保障などが立ちゆかない。そう信じたからこそ決断したのではなかったか。
両党対立の背景には解散時期をめぐる思惑の違いがある。
だが、一体改革を潰してしまったら、両党は次の総選挙で国民に何を訴えるのか。葬ったばかりの「10%への消費増税」を再び掲げるのか。それでは何のための、誰のための選挙なのかわからないではないか。
そもそも、最高裁から違憲状態と指弾された衆院の「一票の格差」が1年以上放置されている。このまま総選挙をすれば無効の選挙区が相次ぐことになる。憲法違反を恐れる感覚が麻痺(まひ)しているのではないか。
それだけではない。法案が不成立なら「改革できない日本」という危険なメッセージを世界の市場に送ることになる。
日本が市場から不信任を突き付けられたらどう対処するのか。両党首にはっきりした方針があるようには見えない。
経済のグローバル化、巨額の財政赤字、少子高齢化のなか、どの政党が政権をになうにせよ政策の選択の幅は狭い。
衆参の「ねじれ」を超え、政党の枠を超えて政治を前に進める。そうした知恵と力、度量こそが必要な時代だ。
政権交代から3年、やっと実るかに見えた民主、自民、公明の3党合意を反故(ほご)にしてしまったらどうなるか。
かりに自民党が次の総選挙で第1党に返り咲いても、参院では公明党と合わせても半数に満たない。「ねじれ」は続き、2大政党の不毛な足の引っ張り合いがまた繰り返される。
首相と谷垣氏に念を押しておこう。
政治の仕事は問題を解決することである。問題をつくることではない。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1
社説:消費増税法案緊迫 合意の破棄は許されぬ毎日新聞 2012年08月07日 02時30分
国会の状況がにわかに緊迫している。税と社会保障の一体改革関連法案が参院で採決される前に消費増税反対派の野党7党が野田内閣に対する不信任決議案を提出する方針を固め、自民党にも強硬論が台頭しているためだ。
増税決着後に野田内閣を衆院解散に追い込もうとしていた自民の目算は狂い、7野党と別の名目で内閣不信任決議案や参院で野田佳彦首相への問責決議案を独自に提出する動きが出ている。一体改革に関する民自公3党合意の重みを忘れてはいないか。合意の破棄は政党の責任放棄に等しく、断じて許されない。
2大政党の動揺ぶりに、不信任案提出に踏み切る7野党の方が驚いているのではないか。
自民は責任放棄するな
自民党は内閣不信任決議案を、野田内閣を衆院解散に追い込むカードのひとつとして増税法案の成立後まで温存しようとしてきた。決議案は他のすべての案件に先立ち採決され、同じ国会での再議は行われないのが原則だ。
ところが7野党の不信任案提出方針で自民党は増税法案の採決前に野田内閣と全面対決するか、当面は信任するかの判断を迫られる。これを境に自民党には首相が衆院解散を確約しない限り3党合意を破棄し、独自の不信任決議案などで対決すべきだとする強硬論が強まり、谷垣禎一総裁もこうした方針に言及した。
衆院では民主党議員15人程度が造反しない限り不信任案は否決される。だが、自公が不信任案を提出すれば政権との対決色は一気に強まり、参院で問責決議案が提出されれば採決を目前に審議は相当期間、停止する公算が大きい。3党合意がほごになりかねないという危うい状況である。
衆院で合計51議席を超す増税反対派の会派が協力して不信任案を提出する展開はある程度、予想されたはずだ。にもかかわらず、この動きに影響され合意破棄をちらつかせる自民党内の議論は党利党略と言わざるを得ない。
合意したはずの重要法案の審議のさなか、最初は採決を早期に行うよう求め、今度は「衆院解散を約束しないなら不信任」と言いだすようではあまりに無原則だ。秋の総裁選に向けた谷垣総裁の露骨な生き残り戦術とのそしりを免れまい。
民主党政権の運営が低迷し、ねじれ国会の下で今国会での一体改革関連法案成立に3党が歩み寄った原点に立ち返る必要がある。国の歳入の半分以上を借金でまかない、費用が増大する社会保障の底割れを防ぐ緊急かつ不可欠の措置として危機感を共有しての合意だったはずだ。
欧州金融危機にみられるように、財政再建への歩みが頓挫しかねないというシグナルを世界に送る危険をどこまで認識しているのか。自民党には今日の危機的な財政状況を招いた主な責任が自党にあるという自覚がなお、足りないのではないか。
今国会での増税実現に政治生命を懸ける首相にとっても正念場だ。3党合意が崩れれば、ゴール寸前まで来ていた法整備が水泡に帰す。
自民党の今回の一連の対応について、首相や民主党も責めを負うべきだ。もともと3党合意は衆院解散を優先する自民と法成立後の「話し合い解散」の余地を持たせつつ成立したガラス細工だった。
ばらまき論議は猛省を
ところが民主党は参院での審議について引き延ばしが主眼ととられかねない日程を示したり、首相にも衆院解散の先送りを探るような言動が目立ったりしている。衆院議員の任期満了はいずれにせよ、来年訪れる。衆院の「1票の格差」是正に向け法的措置を講じたうえで、消費増税法案の成立後はすみやかに民意を問う覚悟を示すべきだ。党内の解散慎重論にばかり配慮しているようでは自民の不信を募らせる。
一方で、増税関連法案が衆院を通過して以来の緊張感のゆるみについても指摘しなければならない。
3党合意に伴い財政にゆとりができた分を公共事業に回すことへの容認ととられかねない表現が付則で加えられた。自民党は防災対策などで10年間に200兆円規模を集中投資する国土強靱(きょうじん)化基本法案を国会に提出しており、次期衆院選に向け旧態依然たるばらまきの再現を求めるような動きが出ている。あぜんとしてしまう。
軽減税率の導入など低所得者対策も積み残されたままだ。毎日新聞の最近の世論調査では消費増税法案の今国会成立を望まない人は61%で、望む人の33%を大きく上回っている。軽減税率は81%もが「導入すべきだ」と答えている。国民に一層の理解を得るため、できる限りの方策を具体化することこそ3党に本来、今、課せられた役割ではないか。
7野党による決議案提出という今回の第三極的な行動は、増税実施を織り込み政局の駆け引きや財源の分捕り合戦に関心が移りがちだった2大政党のゆるみも突いた。
なぜ、3党合意が必要と決断したのかを民主、自民両党は冷静に考え直すべきだ。そして野田首相、谷垣総裁両党首が先頭に立って、事態の収拾に努めなければならない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120807k0000m070087000c.html
社説:混迷する国会 政争の愚を党首は悟れ毎日新聞 2012年08月08日 02時31分
税と社会保障の一体改革関連法案は参院審議の大詰め段階で民主、自民両党の駆け引きが続いている。増税反対派の中小の野党は法案成立の阻止に向け、野田内閣に対する不信任決議案を提出した。
自民党は野田佳彦首相に今国会での衆院解散を確約するよう求めており、独自に不信任案や問責決議案を提出する構えをなお崩していない。民主、自民両党は政策不在の政争を演じる愚を悟るべきだ。首相と谷垣禎一自民党総裁の党首会談で民自公3党合意の崩壊を阻止しなければならない。
ふたつの光景が何とも対照的に映ってしまう。ロンドン五輪は6日、日本女子サッカーがついに決勝進出を決めた。メダル数ですでに前回北京五輪を上回るなど選手団の健闘は東日本大震災の被災地をはじめ多くの人を元気づけているはずだ。
それに引き換えここ数日、演じられる政争は何としたことか。消費増税の是非とは別に「とにかく解散をさせたい」自民党の党利と、「とにかく解散がこわい」民主党の党略ばかりが先立つ。これではほとんどの人は「またか」と幻滅し、うんざりするばかりではないか。政治の劣化こそ、今回の騒動の本質であろう。
とりわけ、国民の目を意識してほしいのは自民党だ。
民主党に度重なる譲歩を強い、合意に至りながら「衆院解散を確約しなければ合意破棄」とエスカレートした対応はあまりに唐突だった。7日の自民党独自の不信任案、問責決議案提出を見送ったのは世論の反応がさすがに気になったためではないか。公明党が強硬路線への同調に難色を示しているのも無理はない。
そもそも3党合意が崩壊すれば首相が衆院解散ではなく、退陣に追い込まれる可能性も否定できまい。要求した衆院解散も実現せず、一体改革も頓挫した場合、谷垣総裁はどう責任を取るのか。理屈に合わないうえ、極めて危ういカケに出ていると言わざるを得ない。
首相にも改めて言いたい。政治生命を懸ける消費増税法案の行方が政権の命運に直結することは自明だ。にもかかわらず、谷垣総裁との党首会談で局面を打開しようとする執念があまり伝わってこない。
衆院解散の先送り論が党内で支配的なことから身動きが取れなくなっているのではないか。だとすれば、自民党の理不尽な強硬姿勢を決して批判などできまい。
不信任案提出で今後の国会はこの議案の処理が優先される。採決を待たずに自民が不信任案や問責決議案を独自に提出すれば、混乱の収拾は難しくなる公算が大きい。日本の政治を左右する判断が問われる。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120808k0000m070149000c.html
最優先すべきは消費増税法案の成立だ 2012/8/7付
消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の先行きが不透明になってきた。
野党第1党の自民党が野田佳彦首相に衆院解散の確約を求め、それを法案成立の条件にする姿勢を鮮明にしたためだ。
しかし一体改革関連法案は民主、自民、公明3党による修正合意で、衆院を通過した経緯がある。自民党も法案成立に重い責任を負っているはずだ。衆院解散時期をめぐる駆け引きよりも、3党は一体改革関連法案の成立を最優先すべきである。
関連法案を審議している参院の特別委員会は7日に中央公聴会を終えると、採決する環境が整う。8日の法案成立を求めていた自民党は、解散の言質がない限り、採決に応じない方針に転じた。
一方、採決の際の造反などを危惧する輿石東幹事長ら民主党執行部は当初、月遅れ盆明けの採決を探っていた。採決を引き延ばす姿勢が自民党に不信感を与えたのは確かであり、いたずらに対立を深めることになった。解散問題が障害になり、採決日程を決められない状況に陥っている。
消費増税法案に反対している国民の生活が第一などの中小野党7党は採決前に内閣不信任決議案を提出する方針だ。首相が解散を約束しなければ、自民党は独自に内閣不信任案を提出する構えをみせ、参院での首相問責決議案提出も視野に入れている。
たとえ不信任案が否決されても、自民党が提出した段階で、3党合意は白紙になりかねない。参院では問責決議案が可決され、国会審議が空転する恐れがある。
増税に反対する生活の小沢一郎代表らと、自民党が結果的に手を組む形になる。有権者の理解は得られず、自民党の評判を落とすだけだろう。公明党の山口那津男代表は「民主も自民も責任を自覚してほしい」と訴え、法案採決前の不信任案提出などに慎重論を唱えている。これが正論である。
首相と自民党の谷垣禎一総裁は党首会談で、率直に意見交換し、関連法案の成立に万全を期してもらいたい。ここで頓挫することになれば、衆院選後にどのような枠組みの政権ができても、容易に消費増税法案を成立させることはできないだろう。
法案が不成立の場合、市場の混乱なども懸念される。「決められない政治」に戻ってしまえば、民自公3党はみな敗者である。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO44643600X00C12A8EA1000/
3党合意と自民党 法案成立の責任どうした2012.8.7 03:27 (1/2ページ)[主張]
自民党は、社会保障と税の一体改革に関する民主、自民、公明による3党合意を破棄してまで衆院解散を求めて、総選挙でいったい何を主張するのか。
消費税率のアップが民主党の公約違反だと指弾するのか。そして「消費税増税はやはり必要だ」と唱えるのか。いずれにしても説得力は持つまい。
「決められない政治」を打破するため、3党で合意した責任をどう考えるのか。
消費税増税関連法案に対する参院審議は、採決の前提となる中央公聴会の段階に入っており、3党の賛成で法案は成立する。
自民党が最優先すべきは、この法案成立だろう。
対応を一任された谷垣禎一総裁には、9月の総裁任期中までに解散・総選挙に持ち込みたいとの思惑が見え隠れしているが、責任ある判断を求めたい。
衆院では、「国民の生活が第一」やみんなの党などが、7日に内閣不信任案を共同提出する方針だ。自民党はこれに同調するのではなく、単独で内閣不信任案を出すことを検討している。
民主党の造反がなければ、内閣不信任案は否決される見通しだが、自民党による不信任案の提出によって民主、自民両党の対立は決定的なものになる。
また、自民党は解散の確約を求め、7日にも首相問責決議案を参院に出す構えだ。
首相問責決議案は、内閣不信任決議案が可決された場合に、解散か内閣総辞職を首相に迫るような法的効力はない。だが、可決されれば参院審議は困難となり、法案成立が厳しくなる。
問題は野田佳彦首相の対応である。民主党は自民党の要求に応じ、採決日程を20日から8日に前倒ししたが、これまでの執行部の対応をみると、法案を早期に成立させたくないようにみえる。
民主党は、政権交代時に無駄の削減などによって16・8兆円の財源を生み出せると訴えたマニフェスト(政権公約)が破綻したことなど、改めて国民の審判を仰ぐべき立場にある。
消費税増税をめぐり、政権与党内を一本化できないことが党分裂も招いた。
政権を担う正当性が問われ続けてきたのである。首相は法案の成立後、できるだけ早く解散すべきである。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120807/plc12080703270005-n1.htm
野田首相 政治生命かけ解散決めよ 問責前に党首会談で打開を2012.8.8 03:29 [主張]
政局が重大な局面を迎えている。野田佳彦首相は政治生命をかけて事態を打開すべきだ。
自民、公明両党を除く野党各党は7日夕、衆院に内閣不信任決議案、参院に首相問責決議案を提出した。自民党も両決議案を提出する構えだ。
参院では問責決議が可決されるとみられ、その場合には消費税増税法案は採決されない公算が大きい。今国会での成立はきわめて難しくなる。
≪増税法案成立が最優先≫
野田首相は、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革の実現を最優先すべきだ。
そのためには、問責決議案が採決される前に自民党の谷垣禎一総裁との党首会談を開き、解散・総選挙を決めて自民党の理解を求めるしか方策はない。
民主党執行部は、解散・総選挙により議席を大幅に失うことを恐れるためか、解散を先送りする動きをみせてきた。
だが、衆院議員の任期は来年8月までだ。民主党は政権公約(マニフェスト)に盛り込まなかった消費税増税を実行しようとする以上、いま一度、民意を問わなければならない。政権の正当性は既に失われている。
自民党が参院審議の大詰めの段階で、民主、自民、公明の3党合意の破棄も辞さない強硬姿勢に転じた背景には、早期解散要求に応じない首相の姿勢が顕著になったことがある。
首相は1日の古賀伸明連合会長との会談で、「来年度予算編成を政治主導でやり抜く」などと発言して、自民党の強い反発を招いている。
野田首相は「誤解しない方がいい」と述べて早期解散を否定したものではないとの見解を示し、法案採決の日程も、当初提案していた20日から10日、さらに8日に前倒しして自民党の理解を得ようとした。
だが、民主党はこれまで最重要法案である増税法案の採決も先延ばしする姿勢をとり続けた。
3党合意で棚上げされた民主党マニフェストの最低保障年金、後期高齢者医療制度廃止についても「撤回したわけではない」などと主張してきた。
こうした対応が「民主党は3党合意を順守していない」という反発や、民主党政権を手助けしているだけだという危機感を自民党内で広げてしまったといえる。
解散時期の判断は首相の専権事項とされる。本来なら確約すべきものではない。しかし、一体改革に関しては、党派を超えた課題として与野党協力の枠組みが生まれ、その実現に3党が責任を負っている特別な事情がある。
≪3党合意は今後も必要≫
自民党が8日の法案採決に応じる姿勢に転じたのも、3党合意の破棄に強い批判があったからだといえる。ましてや首相は、この課題に政治生命をかけている。実現のためには解散の決断を含め、あらゆる方策をとるのは当然だ。
今国会で関連法案を成立させなければならないのは、3党合意をまとめた民自公の枠組みが、国政の重要な問題を解決する上で不可欠と考えられるからだ。
その他の政党が消費税増税に反対している状況で、社会保障制度改革や安定財源の確保などの実現には、総選挙後もこの枠組みは有効なものとなりえる。
社会保障と税の一体改革だけでなく、行政改革や安全保障など幅広い分野で国益と国民の利益を実現する「決められる政治」の足がかりを失ってはなるまい。
また、今国会で一体改革を実現する機会を逃せば、財政健全化の取り組みを国内外に示せないことになる。仕切り直して、次に法案を成立させられる保証はない。日本が自らの危機を克服できない姿を、さらけ出すことにほかならないのだ。
改めて国民の審判を受けるにあたり、首相に問いたいのは、「原発ゼロ」を求める意見などに影響され、原発再稼働を決めた政策がぶれ始めていることだ。現実的なエネルギー政策への取り組みを弱めてはなるまい。
谷垣氏との党首会談では、9月に発足する原子力規制委員会の人事案、今年度予算の執行に欠かせない特例公債法案を成立させることなどについても、しっかり確認してもらいたい。解散・総選挙によって生じる混乱を最小限に抑えなくてはならない。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120808/stt12080803290002-n1.htm