この夏、箕面市議選結果をみて衝撃を受けた。維新の会に対する運動が発展していると言われているなかで、しかも共産党が「大運動」を展開しているなかで、市議選に現職議員2人が落選したからだ。何があったのか、ネットだけで様子を見るのには限界があるのは承知のうえで、データを調べてみた。
まず、過去6年間の箕面市における選挙結果をみてみよう。府知事選挙は共産党を名乗っていないが、候補者自身は共産党も参加する「明るい民主大阪府政をつくる会」から弁護士として立候補している。ま、共産党系候補と言えるので、一緒に考えてみた。
平成19(2007)年 府議選 6,720
平成20(2008)年 市議選 5,645
平成20(2008)年 府知事選(梅田章二)6,742 橋下26,849
平成21(2009)年 総選挙比例 5,903
平成22(2010)年 参議院選挙比例 4,074
平成23(2011)年 府議選 4,974
平成23(2011)年 府知事選(梅田章二)3,466 松井28,788
平成24(2012)年 市議選 4,102
箕面市における共産党の得票は、6年間で着実に減っている。市議の活動、共産党の支部の活動などをチェックするための市議選であるから、ますは前回との比較でみてみることにする。参考にしたのは、以下の選管のHPである。
箕面市議会議員選挙開票速報 平成20年8月25日 最終0時25分
http://www.city.minoh.lg.jp/senkan/080824sityoosigi/kaihyou/shigi.html
平成24年8月12日執行・箕面市議会議員選挙速報開票速報最終
http://www.city.minoh.lg.jp/senkan/120812sityou-sigi/sokuhou/kaihyou25ji.html
ポイントは
1.議員定数が前回の25議席から23議席に減った事が大きい。何故ならば、最下位当選者の尾上かつのり候補(大阪維新の会箕面)と斉藤とおる(共産党候補)の差は何と2票差。これだけみると、最後の踏ん張りがどうだったか、これが問われるところだろう。だが、それだけでは、共産党の今後は出てこないだろう。候補者全員が定数削減の影響を受けているのは、平等だからだ。
2.次に共産党の獲得票は前回の獲得票からみると、5,645から4,102票へ、マイナス27.4%減らしたことだ。投票率全体が前回市議選投票率50.73から今回市長選挙投票率41.69(市議選はまだ出ていない)へと減ったので、ある意味やむを得ないかもしれないが、削減率は投票率の削減率の3倍だ。ここをどう分析するかだろう。
3.そこで、各党の削減率を調べてみた。共産党の削減率は民主党に次いで大きい。逆に維新の会の躍進ぶりは前回の民主党ブーム以上だ。有権者の「ムード(気分・感情・要求)の実態」が判る。
民主党 3人6,288から2人の2,639へ、マイナス58.7%
公明党 3人6,218から3人5,631へ、マイナス9.4%
自民党 1人3,711から2,745へ、マイナス26.0%
維新の会 2人2,983から4人7,743へ、2.60倍へ増やしている
公明党は2人が交代しているが、削減率は投票率の範囲内だったと言える。
維新の会の現職候補は2,983から3,456へ、1.16倍増やしている。新人候補のたけちひでお候補は3,261とダントツだった。
因みに前回のトップ当選は川上 加津子候補(民主党)で2,790、今回は1,472と47.2%減らしている。
4.そこで現地の共産党がどのような分析を行ったか、「総括文書」を調べてみた。ポイントは以下のとおりだ。http://sky.ap.teacup.com/natehiroki/437.html
1.たいしたことではないかもしれないが、獲得票が違っている。「現有4議席から2議席に後退しました。得票でも、前回の5,903票(得票率11.34%)から4,102票(同9.64%)に後退」とある。前回獲得票は神田たかお1,496・斉藤とおる1,408・はとう隆1,398・名手ひろき1,343だ。合計すると5,645だ。「総括文書」とは違っている。
2.箕面市の共産党の市議選敗北の分析は「炎天下で燃えるような奮闘を…を議席と得票に結びつけられなかったことは、私たちの力不足であり、おわびいたします。…論戦や組織活動などあらゆる面で、どこにただすべき問題点があるのか、前進のために何が必要かについて、党内外の方々のご意見に耳を傾け、真剣な自己検討をおこないます。(引用ここまで)
と曖昧・不十分だ。何故こういうことになるか。それは以下の文書を観ると判る。
「日本共産党第2回中央委員会総会 参議院選挙の総括と教訓について 志位委員長の幹部会報告」(2010年9月27日)と同じなのだ。以下示しておこう。
「7月12日の常任幹部会声明は、今回の選挙結果を重く受け止め、政治論戦、組織活動などあらゆる面で、どこにただすべき問題点があるか、前進のために何が必要かについて、党内外の方々のご意見・ご批判に真摯に耳を傾け、掘り下げた自己検討をおこなう決意を表明しました」(引用ここまで)
どうだろうか。共産党の思考回路は2年前も現在も全く同じということになる。2年前と現在の活動は同じで変わっていないということか?2年前の中央の「選挙総括」は何だったのか、だ。
さらに箕面市の共産党の「総括文書」をみてみよう。
「私たちは、今回の選挙結果を重く受けとめて、目前に迫った総選挙や来年の参議院選挙での巻き返しと、次回市議選で捲土重来をはかります。同時に、この選挙は、党の自力の不足を解決する途上のたたかいとなり、党員も『しんぶん赤旗』読者も前回選挙比9割台でたたかわざるをえなかったことは、現有議席確保を阻む最大の問題となったことは疑いありません。私たちは、市民のみなさんの切実な要求の実現をめざすたたかいと一体に、わが党の未来がかかったとりくみ、どんな条件のもとでも選挙で前進・勝利できる質量ともに強大な党づくりに、新たな決意で全力をつくします。(引用ここまで)
上記の「総括文書」は、実は、「第9回中央委員会総会 志位委員長の幹部会報告」(2009年10月15日)と同じだった。
「党の自力そのものはどうだったか――自力をつける途上でのたたかいだった
第二の角度は、党の自力そのものはどうだったのかという問題です。 一言でいうと、自力をつける途上でのたたかいだったというのが、今回の総選挙でした。この問題についても、5中総決定では、参議院選挙の痛苦の教訓として、『どんな難しい条件のもとでも、選挙で前進・勝利するには、わが党は自力があまりに不足』していること、ここに『わが党の活動の最大の弱点』があることを直視し、その打開のためにあらゆる知恵と力をつくすことをよびかけました。…同時に、前回総選挙時比でみますと、党員数は、前進して選挙をたたかいましたが、読者数は、日刊紙で90・3%、日曜版は90・5%という到達で選挙にのぞむ結果となりました。前回選挙を上回る党勢を築いて選挙をたたかうところにはいたりませんでした。5中総でここに『わが党の活動の最大の弱点がある』とのべた現状を、私たちはなお打開するにいたっていません」(引用ここまで)
「第2回中央委員会総会 参議院選挙の総括と教訓について 志位委員長の幹部会報告」(2010年9月27日)
「参議院選挙での後退の原因は、すでにのべた政治論戦上の弱点や選挙活動上の問題点とともに、その根本に、党の自力の不足がありました。…しかしその成果はごく端緒的なものであり、なおわが党は、党建設の面での後退・停滞傾向を脱していません。党の自力の問題にこそ、参議院選挙の結果からくみ出すべき最大の教訓があります」(印用ここまで)
どうだろうか。09年に中央委員会が分析し、総括し、方針化した文書が12年の今日までずっと市のレベルで使われているのだ。これは基本的に共産党の活動の現状が変わっていないことを意味している。これでは日本共産党の前進はおぼつかない。
しかも「力不足」「自力の不足」は「論戦や組織活動などあらゆる面」にあり、「党員や読者の数」に象徴的に表れているというのだ。これについての具体的な指摘が不十分というのでは、科学的社会主義の組織論としては、いかがなものか、だ。
「どこにただすべき問題点があるのか、前進のために何が必要か」「前進のために何が必要かについて、党内外の方々のご意見に耳を傾け、真剣な自己検討をおこないます」とあるが、これにも成功していないということだろうか。それにしても何故こういうことが起こるのだろうか?
3.共産党といえば、「政策」だ。箕面市の共産党は、選挙「政策」について、以下のように述べている。
「この選挙でわが党は、政策アピール『日本共産党4人の議員団で、安心・安全、みどり豊かな、民主主義がいきづく箕面市に』で明らかにした政治的・政策的訴えを、堅持・発展させてたたかいました。消費税増税ストップ、『原発ゼロの日本』へ、オスプレイ配備撤回などの国政の問題と一体に、暮らしと教育、みどりと景観、地方自治と民主主義を守るなど、身近な要求と政策を訴えて選挙戦をたたかいぬきました。こうした政治的姿勢と政策的訴えは有権者の共感を広げたと確信しており、これらの公約の実現のために、議会内外で広い市民と共同して全力をあげる決意です」(引用ここまで)
選挙「政策」を出して有権者の審判を受けたのだが、国政選挙の課題と市議選の課題は違うのではないか?市議選の方がもっと「どぶ板」的なはずだし、有権者は身近な暮らしに共産党が役立っているかどうか、別の言葉で言えば「現世利益」の施しを共産党がしてくれたかどうか、共産党の言葉で言えば、「その時々の『国民の苦難を軽減し安全を守る』「立党の精神」がどれだけ箕面市民に具体化できたかどうかではないだろうか?
前回より獲得票を27%も減らしておいて、「政治的・政策的訴えを、堅持・発展させてたたかい」「共感を広げたと確信」しているとあるが、果たしてそうだろうか?
今回の市議選は4,102票だから、前回より28票上回ったことを「わずかとはいえ、直近の国政選挙である2010年参院比例選挙の4,074票(同6.82%)を上回ったことは、きたるべき総選挙をたたかう手がかりとなる」と「評価」しているようだ。確かにそういう面もあるかもしれないが、そんな暢気なことを言っていられないだろう。何故か。この6年間の獲得票の推移、特に昨年の府議選や府知事選をみれば、背筋の寒くなるような状況ではないのか。
因みに各議員の獲得票はどうか、見てみてみよう。各議員の4年間の活動がどうだったか、判らないので勝手なことは言えないが、事実は以下のとおりだ。この数字の分析だろう。大事なことは・・・。
神田たかお1,496から1,049 削減数447
斉藤とおる1,408から1,024 削減数384
はとう 隆1,398から 857 削減数925
名手ひろき1,343から1,127 削減数216
「消費税増税ストップ、『原発ゼロの日本』へ、オスプレイ配備撤回などの国政の問題と一体に、暮らしと教育、みどりと景観、地方自治と民主主義を守るなど、身近な要求と政策を訴えて」選挙戦をたたかった結果、獲得票が27%も減ってしまったのは何故か、だ。
「国政の問題」の行き詰まり・政府と国民との矛盾の拡大が共産党の支持に向かわないのは何故か。逆に言えば、維新の会に票が集まったのは、前回の民主党同様、どのような「期待・気分・感情・要求」があったからか、維新の会や民主党は共産党のように党員や読者、「論戦や組織活動などあらゆる面」など「自力」があったから、躍進したのか、などの分析が必要だろう。
5.政策をみると、「4年間の実績」は以下の部分だ。
(1)日本共産党など7つの野党が会談し、消費税増税法案を廃案にするためにがんばっています。
(2)団体や政党の違いをこえて市民が声をあげ、再稼働中止、原発ゼロへ、日本を変える新しいうねりを広げています。
(3)学校の暑さ対策をすすめる請願を議会に提出し、実現を求めてきました。
(4)3年前に中学校にエアコンがつきました。こんどは、小学校にエアコンを設置させましょう。
(5)中学校給食を求める請願を17年前に提出し、粘り強く要求し、来年9月に実施されます。(6)松尾山開発計画にストップをかけ、自然と山並みの景観を守りました。
(7)山ろく保全の条例をつくり、170ヘクタールの保全地区を指定しました。
(8)箕面東公園の里山公園、大宮寺跡買取、箕面新稲の森などを実現させてきました。
(9)大規模開発の中止、みどりと自然を守ってがんばってきました。
後の部分は、「お願いします」「実現します」「がんばります」「させます」「すすめます」とある。マニフェスト(公約)のデタラメさに辟易している有権者が望んでいるのは、「ご一緒にやりました」「ご一緒にやっています」ではないだろうか?
維新の会について批判(論戦)しているのは以下の部分だ。その前に見ておかなくてはならないことがある。それは、前回共産党5,073票(5,645票)に対して維新の会2,983、今回は共産党4,102票に対して維新の会は7,743票と共産党の獲得した票の1.9倍の票を獲得した。この事実をどう「総括」するかだ。以下掲載してみる。
(1)「維新の会」の市長のところでは、住民サービスを根こそぎ切り捨てる市政がすすめられています。大阪市では「公約とちがう」「こんなはずではなかった」と、「改革プラン」に反対の世論が起こっています。
(2)箕面市に維新政治を持ち込ませず、日本共産党の前進でくらしを守る市政をつくりましょう。
(3)「維新の会」は、教育基本条例や職員基本条例を箕面市でつくるといっています。子どもたちの豊かな発達の可能性の芽をつむ教育基本条例や、市長のいわれるままに市民に命令する職員づくりの職員基本条例を、箕面市でつくるといっています。
(4)憲法と民主主義をないがしろにする政治はゴメンです。日本共産党は憲法と民主主義がいきづく箕面市をつくります。日本共産党の名手ひろきに大きなご支援をお願いします。(印用ここまで)
以上、箕面市の共産党の「敗北」を材料に、現在の共産党が置かれている状況を調べられる範囲でまとめてみた。箕面市の選挙結果は、今後の国政選挙に反映していくものとして重視するが故の「勝手な」分析だ。箕面市に表れた6年間の活動を根本的に変えていかなければ、同じような事態が共産党を待っているだろうことは想像に難くない。
「国政の問題と一体に、暮らしと教育、みどりと景観、地方自治と民主主義を守るなど、身近な要求と政策を訴え」たとあるが、実際は「一体」だったか、これまでみてきたように「政策」と「論戦」と「住民が主人公」となる実際の活動と、そして共産党の「組織活動」がどうだったか、だ。
因みに共産党は「住民が主人公」「国民が主人公」とよく言っているが、具体的にはどういうことか、有権者はイメージできるだろうか?党員や支持者もそうだ。
住民の目線は非常に厳しいものがある。これは自民党政治と民主党政治の「大いなる成果」と言える。公党としての共産党もフツーの政党(既成政党)と同じように観られているので、公約実現のために「自力が不足していた」「高齢化だ」などという「理由」は有権者には通用しないということを肝に銘じるべきだろう。
それほど有権者の生活は逼迫しているし、何とかしてほしいという期待が渦巻いているのだろう。マスコミの世論操作もあるが、維新の会のようなウソとペテンのメッセージでも期待を抱き共感していくのだろう。そのメッセージ性の分析が大事ではないかということだ。民主党の凋落は共産党にとっても反面教師なのだ。政党と有権者が相互浸透しながら質的に高まっていく動態の分析に科学的社会主義を理論的基礎とする共産党がどのように成功するか、だ。
「党内外の方々のご意見に耳を傾け、真剣な自己検討をおこないます」「議会内外で広い市民と共同して全力をあげる決意」とあるので、率直に意見を書いてみた。今後も多角的な視点からこういう作業を継続して試みることにする。