全国紙の米倉経団連のポチと朝毎のネコぶりをみてきた。今度は地方紙の社説を見てみた。そこで、第一弾として、北海道新聞・東京新聞・琉球新報を掲載することで、全国紙が、如何にポチとネコなのか、検証してみることにした。
ただ、これらの社説にも、限界がある。
それは消費税に代わる財源確保のために法人税減税や内部留保などの財源化について、批判と提案が欠落していること、各政党の政策を公平に紐解く作業の欠落だ。これらについては、後日解剖することとする。
以下みてみよう。
北海道新聞 内閣不信任案 行き詰まった増税路線(8月8日)
「国民の生活が第一」やみんなの党など中小野党がきのう、衆院に野田佳彦内閣不信任決議案、参院に首相問責決議案を提出した。 社会保障と税の一体改革関連法案の柱である消費税増税が2009年衆院選の民主党マニフェスト(政権公約)に違反すると批判した。主張は理解できよう。 自民党も独自の不信任案提出を検討している。首相が「政治生命を懸ける」とした一体改革関連法案成立の見通しは不透明になった。 こうした事態を招いた原因は野田首相にある。自民、公明両党と手を組み、民主党分裂を招いてまで消費税増税に直進した。「一体改革」の3党合意をてこに政権延命を模索し、自公両党の不信も買った。 自民党の姿勢も疑問だ。法案採決前に衆院解散・総選挙を確約するよう求め、首相を揺さぶってきた。「一体改革」を政争の具にしていると言うほかない。 「増税先行・社会保障棚上げ」という問題点は放置されたままだ。不信任案の成否にかかわらず、一体改革を仕切り直し、国民生活の将来像を示してもらいたい。 首相は一体改革関連法案を成立させて「決める政治」の姿を示せば国民の支持を得られると考えたようだ。だが自公両党への妥協を繰り返し、改革の一体性がさらに崩れ、政権への支持は広がっていない。 そう仕向けたマスコミがある。 特例公債法案の成立や来年度予算編成にも意欲を示した。最高裁が違憲状態とした「1票の格差」を是正する衆院選挙制度改革はたなざらしにした。早期に国民に信を問おうとする謙虚な姿勢は見えない。 消費税増税を「どの政権でも避けて通れない」の一点張りで通そうとした。硬直的な政治手法が行き詰まったと首相は受け止めるべきだ。 自民党は「一体改革」では首相に協力する姿勢を見せながら、内閣不信任案の提出を模索している。
国民に不人気な消費税増税は民主党政権にやらせたい。一方で今国会中に野田政権を衆院解散・総選挙に追い込めなければ谷垣禎一総裁の続投が危うい。そんな思惑がある。 解散と増税の両方を同時に追求するのは虫のいい話だ。首相に不信任案を突きつけるなら、まず3党合意を破棄してからやるべきだ。 公明党は3党合意の直前まで「社会保障の将来像が見えない」と政府・与党を批判していた。将来像がいまなお見えないまま関連法案の成立を目指してきたが、与党へのすりよりと見られても仕方ないだろう。 理念が異なるにもかかわらず、数合わせで手を握った3党の協力体制にはもともと無理があった。政策の本質論議をやり直すことが肝要だ。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/394513.html
北海道新聞 解散と引き換えの野合だ 「消費増税」成立合意(8月9日)
民主、自民、公明3党による談合政治が姿を現した。 野田佳彦首相はきのう、自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表と会談し、社会保障と税の一体改革関連法案の成立後「近いうちに国民に信を問う」として衆院解散・総選挙実施の意向を示した。谷垣、山口両氏は協力を約束した。 中小野党が衆院に提出した内閣不信任決議案、参院に提出した首相問責決議案に反対することでも一致した。関連法案は10日にも参院で成立する見通しだ。法案成立と衆院解散を取引したものだ。 内容が不十分で、国民の多くが今国会での成立に反対している法案を3党がそれぞれの党利党略を優先して成立させる。民意とかけ離れていると言わざるを得ない。 圧倒的な数の力で政策を押し通す政治は認められない。衆院解散は本来なら法案採決前にすべきである。首相は消費税増税のみならず、3党協力の正当性について可能な限り早く信を問うべきだ。
*「変節」の説明が必要
3党の国会での議席を合わせると、衆参両院ともに8割を占める。消費税増税をてこに「巨大与党」体制ができあがった。 主導したのは「一体改革関連法案の今国会成立に政治生命を懸ける」と宣言した首相である。 首相は日本新党から出馬した1993年の衆院選初当選以来、「非自民」を政治姿勢の中心に置いてきた。首相となり、それを実行しようという時になぜ自民党にすり寄るのか。理解に苦しむ。 民主党が政権交代を果たした2009年の衆院選で訴えたのも長年続いた自民党政治の否定だった。マニフェスト(政権公約)では「霞が関を解体・再編する」と官僚主導政治の打破を掲げていた。 消費税増税法案の審議を通して見えてきたのは野田政権の官僚依存体質だ。社会保障を棚上げしてまで増税先行に走ったのは、財務省の意向に沿ったものだ。 首相と民主党の変節に、裏切られた思いの有権者は多いだろう。 首相は消費税増税を「先送りできない課題」とし、「今国会での成立に政治生命を懸ける」と言ってきた。これでは不十分だ。自民党との連携に走った理由を丁寧に説明しなければならない。 自民党の行動は到底理解できない。中小野党の内閣不信任案、首相問責決議案の提出に揺さぶられ、衆院解散の時期明示を一体改革関連法案成立の条件に唐突に掲げた。結局は「近いうちに」解散という首相のあいまいな表現を受け入れた。 あれほど批判していた野田政権の擁護に回った理由は何なのか。谷垣氏は明確に語るべきだ。 以前は一体改革を批判していた公明党の動きも不可解だ。3党協議の中で公明党が増税推進に変化した経緯についての理由を聞きたい。
*民意の受け皿不十分
いまのところ3党協力は一体改革関連法案に限ったものになっている。この枠組みが他の政策課題に広がる可能性はないのか。 首相は衆院解散の前に特例公債法案などの重要法案も成立させたい意向だ。参院で与党が過半数割れしている「ねじれ国会」の状況では野党の協力が必要になる。 自公両党が衆院解散を早期に実現させるために、こうした法案の成立に協力することは十分考えられる。法案の内容の是非よりも早期成立を優先する政治になることが心配だ。 そもそも民主党と自民党は基本政策で開きがある。 民主党は「コンクリートから人へ」と公共事業削減、「社会全体での子育て」など「共助」の福祉を基本とする。公共事業重視、「自助」優先の自民党とは反対だった。だが最近は歩み寄りが目立っている。 民主党内には消費税増税に反発する議員が「離党予備軍」として残っている。自公両党との連携がさらなる民主党分裂を招く可能性もある。首相は党内をどのようにまとめていくつもりなのか。 3党連携によって国民の政策選択の幅が狭まることも懸念される。「国民の生活が第一」やみんなの党などは地方組織が未熟で、批判の受け皿としては不十分だ。一方で地域政党による第三極形成の動きもある。
*まず違憲状態解消を
3党体制に信を問う衆院解散・総選挙を急がなければならない。 首相は解散の時期について明示することを拒否した。来年度予算案の編成にも意欲を見せた経緯もあるが、このまま政権を長期にわたって担当し続けることは許されない。 問題は最高裁が違憲状態とした「1票の格差」是正のための衆院選挙制度改革である。自民党は「0増5減」による格差是正を優先の姿勢だが、公明党など中小政党には抜本改革を求める声が強い。 早期解散のためには0増5減案で小選挙区の区割りを定め、最低でも違憲状態を脱して選挙ができる状況をつくることが急務だ。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/394763.html
北海道新聞 消費増税法が成立 国民欺く理念なき改革(8月11日)
政治主導で行政の無駄を削る。そう訴えた民主党に託した有権者の期待は「官僚主導の増税」という正反対の形で返ってきた。 2015年10月までに消費税率を10%に引き上げる法案が、きのうの参院本会議で民主、自民、公明などの賛成で可決、成立した。 最終盤で自民党が内閣不信任決議案に同調する動きを見せ3党合意は揺らいだが、野田佳彦首相の「近いうちに衆院を解散する」という口約束一つで収まった。増税を政争の具とする茶番劇にあきれる。 与野党が入れ替わったこの3年間、政党と政治家の地金を嫌というほど見せつけられた。 民主党は選挙時の約束を破り、自民党は与党をけん制する野党の役割を忘れ党利党略で増税に協力した。 社会保障改革を棚上げしたままの増税先行に多くの国民が納得していない。信を問わずに与野党が談合した責任は重い。 衆院選は「近いうちに」ある。増税の是非は、有権者一人一人の判断に委ねられる。
*消え去った政治主導
政府は関連法を含め「社会保障と税の一体改革」と呼んでいる。 だが、民主党内の議論に始まり政府による法案化、そして3党合意を経て「一体改革」は次々と崩れた。 政府や財務省の本音が、社会保障改革ではなく、年々厳しくなる歳入の手当てにあったからだ。 消費税率を上げたいが、国民の理解を得づらい。そこで財政を圧迫する社会保障を財源と共に見直すという「一体改革」を唱えた。 しかし、止まらない少子高齢化に対応する社会保障の将来像を示すことはなく、年金改革も高齢者医療のあり方の見直しも棚上げされた。 増税する5%分のうち、子ども・子育て新システムなど新制度に充てるのは1%分にすぎない。4%分は従来政策の赤字を埋める増税だ。 民主党は、無駄削減で年間16兆円の財源を生み出すとしていた公約を早々と投げ捨て、財務省が描いた名ばかりの一体改革の図式に乗った。 政治主導の姿はどこにもない。 3党合意では、増税で生じる財政の余裕を公共事業に振り向けることまで盛り込まれた。民主党は「コンクリートから人へ」をうたっていたが、自民党の要求をすんなり受け入れた。変節にあきれるほかない。 社会保障改革は国民会議で1年間かけて考え直すことにし、さらに先送りした。3党が一致しているのは増税だけで、社会保障の理念は全く異なるのだから当然の成り行きだ。 国民を欺く「一体改革」だと言わざるを得ない。
*経済悪化させる恐れ
消費税率引き上げそのものの問題点も少なくない。 国と地方合わせ1千兆円の借金を抱える財政再建は喫緊の課題だ。だが消費税率を10%に引き上げても、20年度までに基礎的財政収支を黒字化するという政府目標の達成はめどが立たないのが実情だ。 長引くデフレ、東日本大震災の影響、歴史的な円高傾向、くすぶる欧州債務危機がのしかかり、経済情勢は不透明さを増している。 そんな四重苦の下での増税は景気をさらに落ち込ませる懸念が強い。 今回は所得税などの減税を伴わない純粋な増税で、国民に大きな負担となる。中小企業も増税分の価格転嫁が難しく事態は深刻だ。 とりわけ零細企業が多い北海道経済へのダメージは大きい。個人消費や観光関連に緩やかながら回復傾向が見え始めた中、政府がどれだけ地域の実情に目配りしているか不信感は拭えない。 消費が低迷して税収が伸びず、財政を立て直すどころか悪化させる可能性もある。 消費税率を3%から5%に上げた1997度以降、所得税などを合わせた一般会計税収が同年度の53兆9千億円を上回ったことはない。
*逆進性緩和は不透明
成立した消費増税法には経済好転が確認できなければ増税を見送る「景気条項」が盛り込まれたが、あくまで努力目標との位置付けだ。増税に踏み切るかどうか、政府には慎重な判断が求められる。 サラリーマンの平均給与は97年の約467万円から2010年は412万円に目減りしている。この間、非正規労働者も急増した。 低所得者ほど負担が重い消費税を引き上げられる環境とはとても言えない。そうした逆進性を緩和する手だても明確に示されていない。 国会審議でこれらの疑問点を指摘されても、野田首相は「どの党が政権を担っても一体改革は必要だ」と財政悪化を強調するばかりで、議論は深まらなかった。 国民の期待をないがしろにした民主党と、これに相乗りした自民、公明両党の責任は重大だ。 各党は次の衆院選で増税についての立場を明確に説明し、しっかりした社会保障政策を示す必要がある。
その場しのぎの公約はもういらない。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/395450.html
東京新聞 内閣不信任否決 政策を競い合わぬ茶番2012年8月10日
野田内閣不信任決議案が否決され、消費税増税のための「一体」改革法案はきょう成立する。政策を競い合うのならともかく、衆院解散時期をめぐる民自両党の対立は国民不在の茶番劇だった。 あの会談は一体何のためだったのか。八日夜行われた野田佳彦首相(民主党代表)と谷垣禎一自民党総裁との党首会談のことだ。 両党首が夜になって急きょ会談するというから、よほどの大事かと思いきや、「一体」改革法案を早期に成立させ、「近いうち」に解散することを口頭で確認しただけだという。 国民生活に大きな影響を与え、かつ民主党マニフェストを逸脱する消費税増税は議決前に衆院を解散して信を問うのが筋ではある。 しかし、民主、自民、公明三党はすでに「一体」改革法案の今国会成立で合意していたはずだし、「近いうち」といっても解散時期を特定したわけではない。 時期の明示を求めて自民党が振り上げた拳を下ろさせるために、党首会談という舞台をわざわざ用意し、曖昧な文言でお茶を濁したというのが実態ではないか。仰々しく見えて何も成果のない会談を褒めそやす必要はない。 党首同士が会談するのなら、政策決定を官僚から国民代表の政治家にどう取り戻すか、国と地方の役割をどう定義し直すか、政治や行政の無駄をどうなくすか、給付と負担の関係をどうするかなど、「国のかたち」とも言える統治機構や社会保障の在り方こそ胸襟を開いて話し合うべきだった。 違憲・違法状態にある衆院「一票の格差」是正や、予算執行に不可欠な赤字国債を発行する特例公債法案の扱いなど喫緊の課題にすら触れないのはどうしたことか。 マニフェスト違反の消費税増税という「決めてはいけないこと」ではなく、「決めなければならない」ことを決めるのが、本当の「決められる政治」ではないのか。 自公両党は内閣不信任決議案の採決を欠席した。何と強弁しようとも、決議案に賛成すべき野党議員の棄権は内閣を信任したに等しい。 激しく対立しているように見える政党同士が実は水面下で手を結び、国民の望まない政策を次々と強行する。この局面を変えるのは政権選択の衆院選しかあるまい。 マニフェスト破りで政権の正統性を失った首相は「近いうち」と言わず、速やかに衆院を解散すべきだ。消費税増税に対する国民の意思も、その際に示したい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012081002000131.html
東京新聞 消費税増税法が成立 「代議」機能せぬ危機 2012年8月11日
消費税増税のための「一体」改革法が成立した。民主党マニフェストを逸脱し、半数を超える国民が依然、反対だ。代議制は果たして機能したのか。 「民主党政権は、マニフェスト違反の消費税率引き上げを行う権限を主権者からは与えられていないんです。議会制民主主義の歴史への冒涜(ぼうとく)であり、国権の最高機関の成り立ちを否定するものです」 今年一月、野田佳彦首相の施政方針演説に対する各党代表質問で、こう指摘した議員がいた。自民党総裁、谷垣禎一氏である。
◆マニフェスト違反
政権選択選挙とされる衆院選で多数の議席を得た政権与党が内閣を組織し、選挙公約に基づいて法律をつくり、政策を実行する。 それは谷垣氏が指摘するまでもなく、議会制民主主義(代議制)の「大義」であり、衆院議員が国民の代表として議論する「代議士」と呼ばれる所以(ゆえん)だ。 もちろん、激しく変化する現代社会では、政治的、経済的、社会的な情勢変化に応じ、柔軟に政策変更をすることは必要である。 東京電力福島第一原子力発電所の事故後に、それまでの原発推進路線から脱原発路線に転換するのは当然であり、代議制の大義を損なうものではない。 しかし、消費税増税はどうだろう。民主党は二〇〇九年衆院選マニフェストに消費税増税ではなく行政の無駄削減による財源捻出を盛り込み、当時の鳩山由紀夫代表ら各候補が「消費税は増税しない」と公約して政権に就いた。 野田氏は選挙戦で「書いてあることは命懸けで実行する。書いていないことはやらない。それがマニフェストのルール」とまで言い切っていたではないか。 それが一転、消費税増税に政治生命を懸ける姿勢に変節した。これを、民主党の「マニフェスト違反」と呼ばずして何と呼ぼう。
◆政治を国民の手に
本格的な少子高齢化を迎え、社会保障を持続可能な制度に抜本改革する必要はある。国の借金が一千兆円に上る財政事情への危機感は国民も共有しているだろう。いずれ増税が避けられないとの覚悟も多くの国民にあるに違いない。 とはいえ、誰がどうやって税金を負担するのかというルールづくりは、議会制度の成り立ちをひもとくまでもなく、民主主義の存立にかかわる重大な問題だ。公約違反の一方的な課税は国民の納税者意識を蝕(むしば)みかねない。 国民は選択していない消費税増税を、民主党政権が政府や国会の無駄を削ることなく、社会保障改革の全体像を示すことなく強行したことに怒りを感じているのだ。 当初は公約違反を批判しながら公共事業費増額との引き換えなのか、消費税増税に加担した自民、公明両党も同じ穴の狢(むじな)である。 自分たちの思いが政府や国会に届いていない、代議制が機能していない危うさを感じているからこそ、消費税増税に国民の多くが反対し、脱原発、原発再稼働反対を訴える人たちが週末ごとに国会周辺を埋めているのだろう。 政府も国会も、マニフェスト違反の消費税増税や首相の再稼働容認を機に代議制が危機的状況に陥りつつあると気付くべきである。 この状況を、国民が政治の「劣化」と切り捨てるのは簡単だが、それだけで政治は変わらない。街角で声を上げることは重要でも、その声が為政者や議員に届かなければ政治を動かせない。 代議制を鍛え直し、政治を国民の手に取り戻すには、選挙で意思を示し、議員や政権を厳選するしかない。 消費税は一四年四月に8%、一五年十月には10%に引き上げられる。それ以前、現衆院議員の任期満了の一三年八月までに必ず衆院選は行われる。消費税増税の是非を国民が選択する最後の機会だ。 消費税増税に納得できれば、賛成の政党、候補を、できなければ反対の政党、候補を選べばいい。 もちろん、選択すべき政策は消費税だけではない。政府や行政の無駄にどこまで切り込むのか、どんな社会をつくるのか、社会保障制度改革の具体的な設計図や、安全保障・外交政策も判断基準だ。 マニフェストに嘘(うそ)はないか、官僚の言いなりになりそうか否か、政党や候補の力量も見極めたい。
投票先を決めるのは有権者だが判断材料を提供するのはわれわれ新聞の仕事だと肝に銘じたい。
◆速やかに解散せよ
首相は衆院解散の時期を「近いうち」と述べたが、消費税増税の是非を国民に問うためには速やかに解散する必要がある。 そのためにも、違憲状態にありながら各党間の意見の違いから進んでいない衆院「一票の格差」の早期是正に、首相は指導力を発揮すべきだ。民主党に有利な時期を探ろうと是正を怠り、解散を先送りすることがあってはならない。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012081102000123.html
琉球新報 消費増税政局 法案成立より解散が先だ2012年8月9日
消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の成立を阻止するため、中小野党が7日、内閣不信任決議案を衆院に、首相問責決議案を参院に提出した。 これを受け自民党は野田佳彦首相に早期衆院解散の確約を求めた。8日夜に民主、自民、公明の党首会談を行い、3党は消費増税関連法案の早期成立の後「近いうちに信を問う」ことで合意した。 国民がこのような合意に納得するとは到底思えない。各種世論調査では消費増税そのものや、増税関連法案の今国会成立に過半数の国民が反対しているからだ。消費増税で可能な限り速やかに国民に信を問え、というのが民意であろう。増税法案成立より、解散・総選挙を優先するのが筋だ。 野田政権は2009年衆院選マニフェスト(政権公約)に反して消費増税を進める一方で、看板政策の最低保障年金創設を柱とする新年金制度関連法案提出や後期高齢者医療制度廃止を見送るなど、社会保障改革を大幅に後退させた。
一体改革は有名無実だ。増税関連法が成立しても、この政権が責任を持って社会保障改革を進める保障はない。財政当局の意向や野党との妥協を優先し、国民との約束は次々とかなぐり捨てる。国民は政権の内実を見抜いている。 「決められない政治」の常態化と同様に、「公約をことごとく破る政治」も大問題だ。野田政権は民意に背き「理念なき政治」に陥った、自らの不明を恥ずべきだ。 増税が将来不可避だとしても、その前に社会保障の将来像と改革の具体化、「ばらまき型公共事業」見直しや官僚の天下り禁止を含む徹底的な行財政改革などが必要だ。 増税方法は消費税が唯一の選択肢ではない。逆進性の強い消費税ではなく、高所得者の所得税と相続税の増税が格差社会のゆがみを正す上で有効だという指摘もある。 主権者の意思をないがしろにし、財政危機への不安をあおり立てながら増税を強行することは政党政治の自殺行為だ。その結末が経済の失速、失業者や非正規労働者の増加、若者の就職難、生活保護世帯の増加といった形で、格差社会の深刻化につながるのなら本末転倒だ。その処方箋はあるのか。 国民に信を問う前の増税強行は文字通り国民への背信行為だ。一日も早い解散・総選挙で国民が安心できる「真の一体改革」について、各党が論戦を展開すべきだ。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-195386-storytopic-11.html
琉球新報 消費増税関連法成立 偽りの一体改革を憂う2012年8月11日
消費税増税を柱とした社会保障と税の一体改革関連法が、国論を二分する中、10日の参院本会議で民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。 社会保障改革の多くを棚上げ、先送りした「偽りの一体改革」だ。増税の是非以前の問題として、国民意思に背き、この国の民主政治に泥を塗る暴挙と言うほかない。 国民の多くが増税関連法の今国会成立に反対し、解散・総選挙による審判を求めていた。にもかかわらず、3党は財政危機克服を大義名分とした「決められる政治」を優先し、消費増税に反対もしくは一体改革に懐疑的な、広範な民意を踏みにじった。その責任は重大だ。一日も早い衆院解散・総選挙で、国民に信を問うべきだ。 増税関連法が施行されると、現行5%の消費税率は、2014年4月に8%、15年10月には10%へと2段階で引き上げられる。 デフレ不況や国民生活の疲弊ぶりを見ると、この国が増税に耐えられるのか危惧する。国民が消費を手控え、増税効果以上に、急激な景気悪化の逆効果を招かないか。 この国の借金が名目国内総生産(GDP)の2倍超の1千兆円に上ることや、3・11東日本大震災からの復興、福島原発事故の収束、放射能除染という国難に直面し、その克服に多額の財源を要することは国民も理解している。 だからこそ無駄な歳出をカットし少ない財源を効果的に使い、財源確保のための成長戦略を打ち出してほしい、と期待を寄せてきた。しかし国民は今、期待に応え切れない政権や既成政党にしびれを切らし、失望の色を濃くしている。 国民は「失われた20年」の間に深刻化した国内の産業空洞化に歯止めを掛け、雇用環境の再生を待ち望んでいる。国はなぜそれを打ち出さないのか。立ち遅れが指摘される再生可能エネルギー分野などへの投資や支援の拡大によって、なぜ新しい産業を積極的に創出しようとしないのか。 将来世代に膨大な借金も、ゆがみ切った格差社会も、「負の遺産」として引き継いではならない。 だからと言って「危機」を背景として国民を脅迫するかのように、増税を強要する政治手法は間違っている。社会保障の将来像や、成長戦略、歳出改革も含めた骨太な国家像を明確に描いてこそ、「真の一体改革」というべきだ。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-195501-storytopic-11.html