昨日に続いて、今日は財界御三家に続くネコ同様の「朝日」「毎日」の社説をみてみた。ネズミを取ることをネコの本業とするならば、「ネズミを取らないネコ」同様に「朝日」毎日」が成り下がっていることを検証してみようということだ。
マスコミは、第4の権力として、3つの国家権力を、国民の立場から監視し、権力を質し、正していく役割を放棄していることは、日本の民主主義にとって最悪・最低といわなければならない。まさに日本のマスコミは、マスとのコミュニケーションを放棄し、権力にオモネリ、食わしてもらっている、ネズミを取らないネコに匹敵する。
以上の視点が、この増税法案通過にあたって、改めて見せてくれたマスコミの実態であった。「書籍・新聞などの知識課税」などというのであれば、マスに対して、どのようなメディアたるべきか、マスに対して、どのようなコミュニケーションを貫徹するか、現在の全国紙は、とてもじゃないが、国民との「コミュ」はほとんどみられないというべきだろう。
では、以下、「朝日」と「毎日」の矛盾に満ちた社説を解剖してみよう。
朝日 一体改革成立―「新しい政治」の一歩に 2012年8月11日(土)
難産の末に、一体改革関連法が成立した。 国会が消費増税を決めたのはじつに18年ぶりだ。民主、自民の2大政党が、与野党の枠を超え、難題処理にこぎつけたことをまずは評価したい。一方で、政策より政争に走る政治の弱点もあらわになった。衆院解散の時期をめぐる駆け引きのなかで、一時は関連法の成立が危ぶまれた。そうなれば国際社会や市場の信頼を損ね、国民に多大なリスクをもたらすところだった。 足を引っ張り合うばかりの政治はもう終わりにしよう。政治が答えを迫られている課題は、なにも一体改革だけではない。だが、さっそく気になる動きが出ている。 野田首相が「近いうちに国民に信を問う」と自民党の谷垣総裁に約束した。この表現について、両党の解釈がずれている。自民党が今国会での解散を要求しているのに対し、民主党では輿石幹事長が「『近いうち』にこだわる必要はない」と語るなど先送り論が大勢だ。これをきっかけに、対立の再燃が懸念される。そうなれば、角突き合わせる政治が繰り返されるだけだ。過去5年の「動かない政治」の教訓を、民主、自民両党とも改めてかみしめるべきだ。07年参院選で与党だった自民党が敗れ、衆参両院の「ねじれ」が生まれた。それをテコに民主党は徹底的に自民党政権を揺さぶった。10年参院選で今度は民主党政権が負け、その逆になった。
やられたら、やりかえす。そんな子どものケンカのような政治は、もう願い下げだ。いまの参院の議席配分からみて、総選挙後も単独で両院の過半数を握る政党はない。「ねじれ」国会は今後も続く。国民に負担を求める政策の実行がいかに困難か。一体改革をめぐる協議で、両党は身をもって学んだだろう。ここはチャンスである。政党同士、建設的な批判は大いにしあうのは当然だ。ただし、不毛な政争はやめ、協力すべきは協力する。一体改革関連法の成立を、そんな新しい政治文化をつくる一歩ととらえたい。懸案は山積している。解散までの間、各党は協力してその処理を急がねばならない。とりわけ、最高裁に違憲状態と指弾された衆院の「一票の格差」の是正は急務である。一票の価値の平等は、代議制への信任の根幹だ。政治はそのことにあまりに鈍感すぎる。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
ポイント
1.政権交代可能な二大政党制を煽ってきた朝日は「民主、自民の2大政党が、与野党の枠を超え、難題処理にこぎつけたことをまずは評価したい」と、その路線が破綻したにもかかわらずゴマカシを取り繕っている。
2.「関連法の成立が危ぶまれ…れば国際社会や市場の信頼を損ね、国民に多大なリスクをもたらすところだった」と、米倉経団連などと同じスタンスに立っている。
3.増税賛成の朝日の目から見れば、増税反対の動きは「足を引っ張り合う」ことになるのだろうか。だから「与野党の枠を超え」た政治礼賛になるのだろう。
4.「国民に負担を求める政策の実行」には、「与野党の枠を超えて」「不毛な政争はやめ、協力すべきは協力する」と述べ、「一体改革だけではな」く「政治文化をつくる一歩ととらえたい」と、談合政治・国民無視の政治を奨励している。
5.「一票の価値の平等」を言うのであれば、小選挙区制は廃止すべきで、世界的には多数派である比例制度を導入すべきだ。これこそ「国際社会の信頼を得る」ことになるだろう。
6.最後に
原発ムラの利益のために安全神話を振りまいてきた「朝日」は、反省し「脱原発」に切り替えたにもかかわらず、フクシマを引き起こし、その責任すら果たしていない勢力の延長線上の「国際社会の信頼」論を述べ、増税反対派を脅すなど、全く判っていない。
毎日:増税法成立 「決める政治」を続けよう8月11日 02時30分
紆余曲折の末ではあるが、税と社会保障の一体改革法が10日、参院で可決、成立した。
まずは、二つの意味で政治史上画期的なことだと評価したい。第一に、その中身が国民に負担を求める純粋増税法だからである。過去の増税は、消費税3%の導入時(1989年)、消費税率5%への引き上げ時(97年)いずれも減税とセットで行われた。経済全体のパイが伸び悩み、従来のバラマキではない負の配分能力が政治に求められる時代、その第一歩を刻んだ、といえる。
なお国民への説明不足だ。 第二に、その不人気政策を与野党で合意したという政治方式の新しさである。2大政党制の下、ともすれば相手をたたくことに走りがちだった政治が、この重要政策の一点では国益に立ち、党分裂や一部議員の造反というコストを払いながら妥協することができた。山積する困難な政治課題を解決するための貴重な前例を作ったととらえたい。
もちろん、すべてを是とするわけではない。何よりも国民の理解を得る努力がまだ不足している。7月末の毎日新聞世論調査では61%が依然として「今国会での消費増税法案成立を望まない」と答えている。何のために増税するのか。社会保障がどう変わるのか。増税分が社会保障以外にあてられるような解釈はとても容認できない。法を成立させた民主、自民、公明3党は、根気よく丁寧に説明し続ける責任もまた共有すべきだ。手をこまねくと次の選挙で反発を受け元も子もなくなる可能性があることを胸に刻んでほしい。
財政と社会保障制度もこれで持続可能になったとはいえない。どんな課題にせよそれぞれの政党が歩み寄ることによって「決める政治」をしたたかに継続させることが必要だ。
特に、財政改革の道はなお険しい。政府の目標は、20年度までに基礎的財政収支を黒字化する、つまり、国債の元利払いを除いた歳出を税収の範囲内に収めるようにすることだが、内閣府推計によると、法通り消費税率が10%になってもその時点でなお約17兆円の赤字が出ることになっている。これは経済の名目成長率が毎年平均1.5%程度で推移することを前提としており、実際の赤字額はもっと膨らむ可能性がある。
これまで借金財政を許容してきた環境が急変していることも指摘したい。労働人口の減少や経常黒字の縮小などである。日本に猶予の時間は乏しいということだ。
欧州で起きた債務危機の教訓を忘れてはならない。何年もドイツと変わらぬ低金利で市場から借金できていたスペインやイタリアがあっという間に信用を失い、危機的状況に陥った。日本の財政状況は両国よりはるかに深刻だ。市場が反応してからでは手遅れになりかねない。
増税のみに頼るわけにはいかないのは当然だ。これを機に歳出構造の抜本的見直しに取り組むべきだ。その進捗度をにらんだ上で、消費税率のさらなる引き上げも課題になろう。このように財政はなお火の車である。にもかかわらず、早くも「国土強靱化」や「防災・減災」を口実にバラマキ財政に転じる動きがあるのは看過できない。国民に増税を強いながら、同時にかつてのような公共事業や特定業界の支援など借金を増やす政策を導入するのは筋が通らない。
消費税の制度設計は、業者がいかに円滑に価格転嫁できるか、が重要だ。食料品など基本的生活物資や書籍・新聞などの知識課税では軽減税率導入議論を本格化させてほしい。
今回の一体改革には年間7000億円の新たな子育て支援策が盛り込まれた。高齢者向け中心だった社会保障関連経費が現役世代に振り向けられる一歩と評価したい。ただ、社会保障制度の改革はまさにこれからが勝負となる。
「秋解散」、民主は覚悟を
今後、政治の焦点は衆院解散の時期や、来月の民主、自民両党首選びの動向に移る。
民自公3党首が「近いうちに解散」で合意したことから与野党には今秋にも衆院解散、総選挙が行われるのではないか、との見方が広がっている。必ずしも時期を特定できる表現ではなく、民主党内には依然として早期衆院選に慎重論が強いが、いたずらに民意の審判を引き延ばすべきではない。民主党は今秋の解散も辞さないとの覚悟を固めるべきだ。
そのうえで、今国会の残り会期で違憲状態にある衆院の1票の格差是正措置と、予算執行に必要な赤字国債を発行するための特例公債法案の成立を期すことが不可欠である。原子力規制委員会の人事案も是非も含めて与野党が早急に調整し、9月の発足に向け決着を図るべきである。
今国会中の解散がない限り2大政党の党首選びは次期衆院選に向けた重点政策が試される場となる。増税法成立後の消費税の制度設計や社会保障政策の全体像が問われる。
民主、自民両党は原発再稼働を中心とするエネルギー政策、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などで党内に幅広い意見を抱える。2030年の原発比率などエネルギーに関しては有権者の判断に資する明確な方針を示すことが求められる。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120811k0000m070129000c.html
ポイント
1.「その第一歩を刻んだ」増税だが、まだ「なお国民への説明不足」「もちろん、すべてを是とするわけではない」と言わざるを得ない矛盾に満ちたものだ。
2.「不人気政策を与野党で合意したという政治方式の新しさ」を「貴重な前例を作った」と太鼓判を押しながら、「どんな課題にせよそれぞれの政党が歩み寄ることによって「決める政治」をしたたかに継続させることが必要」で、「衆院の1票の格差是正措置」「赤字国債を発行するための特例公債法案の成立」「原子力規制委員会の人事案」なども、「与野党が早急に調整し、9月の発足に向け決着を図るべき」と、ここでも国民不在の談合大連立を奨励しているのだ。呆れる!
3.「手をこまねくと次の選挙で反発を受け元も子もなくなる可能性があることを胸に刻んでほしい」「民主は覚悟を」とお願いと励ましを送っている。これは増税派の「毎日」が民自公の側に立っていることをいみじくも示している。この立場で選挙報道を行うのだろう。だが、国民を舐めてイカン!
4.「今国会での消費増税法案成立を望まない」と「7月末の毎日新聞世論調査では61%が依然として答えている」にもかかわらず、「政治史上画期的なことだと評価した」のだ。「毎日」が誰の立場に立っているか、明瞭だ。だが、ここに国民との間において最大の矛盾がある。
5.「毎日」も「欧州で起きた債務危機の教訓を忘れてはならない」と米倉経団連と同じ立場に立っている。
6.「国民に負担を求める純粋増税法」の成立を煽り続け、その成立を「政治史上画期的なことだと評価」しておいて、「食料品など基本的生活物資や書籍・新聞などの知識課税では軽減税率導入議論を本格化させてほしい」と「知識課税」では「軽減税率導入」を求めているのだから身勝手にもほどがある。であるならば、増税に頼らない道を模索すべきだ。
7.「法通り消費税率が10%になってもその時点でなお約17兆円の赤字が出る」「財政改革の道はなお険しい」「経済の名目成長率が毎年平均1.5%程度で推移することを前提としており、実際の赤字額はもっと膨らむ可能性がある」「その進捗度をにらんだ上で、消費税率のさらなる引き上げも課題になろう。」などと、「毎日」の無責任ぶりは明らかだ。
8.「増税のみに頼るわけにはいかないのは当然」「これを機に歳出構造の抜本的見直しに取り組むべき」とするならば、何故今「抜本的見直し」をしないのか、「抜本的見直し」とは何か、など全く理解に苦しむ。
9.「国民に増税を強いながら、同時にかつてのような公共事業や特定業界の支援など借金を増やす政策を導入するのは筋が通らない」と、増税分を「国土強靱化」や「防災・減災」を「口実にバラマキ財政に転じる動きがあるのは看過できない」と述べて、自らが増税を煽ってきた経過を免罪している。
10.最後に
そもそも、非正規労働などによって大儲けをしている米倉経団連に「身を切れ」と要求しないこと、そうしておいて庶民増税を求める「毎日」の支離滅裂の根源がある。このことは全国紙に共通することだ。
米倉経団連も、マスコミも、民自公も悪法を通した後で、「国民の信を問う」という点では一致しておいて、政権奪取のためを優先させた野田内閣への揺さぶりは大義がない。そればかりか、そうした動きを「党利党略」と非難するのも大義はなし。「増税の前に信を問え」が正常な見方だろう。
民主党野田政権はマニフェスト違反だから、増税に対してどちらが国民のための増税か、「国民に信を問え」と、自公がいうのであれば、まだ民主主義を尊重したと言える。
しかも、争点は、「増税の前にやることあるだろう」「公務員や政治家の身を切れ」ばかりを強調するのではなく、庶民増税と米倉経団連減税か、大儲けをしている米倉経団連への増税か、富裕層への課税か、なども視野に入れて議論することが大事だろう。
米倉経団連のポチであるマスコミは米倉経団連の土俵の枠内から脱却した方策を考えろ!というのが、各紙の社説を読んで、一番思うところだ。
こういうことを言うと必ず出てくるのは、「身を切る」論だ。米倉経団連のいう国会議員定数の半減などは、具の骨頂だ。「党利党略」に走る米倉経団連のポチ議員を落とすことを優先させるべきだ。もちろん、国会議員の「特権」や公務員の天下りと定年制度など、見直さなければならないことがあるのは、事実だろう。
しかし、だからと言って喧伝されているように公務員賃金や定数削減は、住民サービスや民間賃金や労働条件に大きな影響を与えるものであるから、更なる国民的議論が必要だろう。しかも公務員と言ってもさまざまな公務員がいるので、十把一絡げで「公務員憎し」として論ずることは、民間にとってみても危険だろうし、公務員の労働基本権はどうするのか、このことも議論すべきだろう。
曖昧な言葉の裏の意味合いを複眼で見る目こそ賢く