山本議員は記者会見で辞職をしないことを表明しました。ポイントは、以下のとおりです。
1.山本議員にしてみれば、「天皇の政治利用には当たらない」ということのようですが、この天皇の「政治利用」については、
(1)天皇を「政治」的に「利用」し続けてきた戦後の自民党政権の歴史を踏まえていたかどうか、国会議員である山本議員が自覚していたかどうか、鋭く問われています。
(2)また象徴である天皇自身も、その地位を政治的に利用してきたことを、国会議員である山本議員が自覚していたかどうか、鋭く問われています。
2.山本議員は、「猛省しなければならないのは手紙をお渡ししたことで、陛下の『ごしんきん』を悩ませたことだ。園遊会という場に対して思慮が足りなかった」「陛下に心労をお掛けした。猛省しなければならない」と述べましたが、
(1)天皇の地位、すなわち「象徴天皇制」は主権在民の総意に基づくという憲法第1条に対する認識が、極めて弱いことが判ります。
(2)謝罪すべきは、天皇の「ごしんきん」ではなく、国民に対して、です。
(3)そもそも天皇の「国事行為」ではない「園遊会」そのものが、極めて政治的色彩の濃いイベントであることを自覚すべきでした。このイベントが既成事実化されたことで、日本国民の思考回路は、疑問を投げかける余地すらありませんでした。前例は東京都教育委員であった三浦朱門氏でした。
(4)「ごしんきん」という言葉を使う国会議員である山本議員の天皇に対する思いが吐露されました。ここに、政治利用はしていないが、申し訳なかったという山本議員のホンネが透けて見えてきます。そういう視点でみると、思慮が足らなかったということのようです。
(5)しかし、これは、繰り返しますが、主権在民主義への認識の軽さも透けて見えてきたというべきです。ま、多くの日本国民は、山本議員と同じかもしれませんが、愛国者の邪論とは違うな、です。
3.主権在民に対する認識不足の山本議員と判断しますが、「私に投票してくれた67万人近くの有権者と約束したことを達成できていない」と述べているのです。この視点と天皇の地位をどのように関連させるか、です。
4.「「山本氏の行動は出処進退に関わる重大な過ちだ。本人のコメントを聞いていると、どうも事の重大性を理解できていないようだが、どのように責任をとるのか真剣に考えてもらいたい」(脇参議院幹事長)ということのようですが、そうであるならば、「僕が政治利用で裁かれるなら、他のことも協議される必要がある」(「朝日」2日)と述べたことに、下村・世耕議員は、そして自民党などは、どのように応えていくのでしょうか。このことをマスコミ各社は問い質すべきです。
山本太郎議員の手紙問題·現政権に「天皇の政治利用」を批判する資格 ...
5.この山本議員の朝日のコメントをみると、ある意味、自分の行動を意味づけていたのではないか、ということです。4.29における「万歳」や五輪招致にあたって皇室を利用したことなどを踏まえて、今回の行動が計画されたのではないかということです。
6.ところが、山本議員に対する「バッシング」は、天皇と憲法の関係を批判するというよりも、むしろ、山本議員も述べた「ごしんきん」「心労」など、天皇に対する「感情」が、根拠となっていることです。ここに自民党やマスコミのトリック、スリカエがあるように思います。報道されている内容を見れば、憲法との関係を深めた発言はありません。これは発言している議員自身の問題か、マスコミの報道の仕方の問題か、どちらかです。
7.それは憲法の「国事行為」以外の行動規範についての曖昧さを利用して「公的行為」「私的行為」などという言葉を造語して既成事実化して戦争責任のある天皇を曖昧にしてきた自民党政権の天皇の政治利用の歴史経過を踏まえて、今回の行動が具体化されたのではないか、という愛国者の邪論なりの考え方です。
以下の記事をご覧ください。
山本議員「職を辞することはない」 11月5日 18時22分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131105/k10015818211000.html
K10058182111_1311052105_1311052117.mp4
参議院の岩城議院運営委員長は、山本太郎参議院議員と会談し、秋の園遊会で天皇陛下に文書を手渡したことについて責任の取り方を聞きました。山本氏は、記者会見で「思慮が足りなかった」としながらも、議員を辞職する考えはないことを明らかにしました。山本太郎参議院議員が、先月31日に開かれた秋の園遊会の会場で、天皇陛下に文書を手渡したことを巡って、5日開かれた参議院議院運営委員会の理事会で「山本氏みずから出処進退を明らかにすべきだ」などといった意見が出され、岩城議院運営委員長は、5日夕方、山本氏と会談し、責任の取り方について考えを聞きました。このあと山本氏は記者会見し「猛省しなければならないのは手紙をお渡ししたことで、陛下の『ごしんきん』を悩ませたことだ。園遊会という場に対して思慮が足りなかった」と述べました。その一方で、山本氏は「自分自身で職を辞することはない。私に投票してくれた67万人近くの有権者と約束したことを達成できていない。今、職を辞するわけにはいかない」と述べ、議員を辞職する考えはないことを明らかにしました。また山本氏は、文書を手渡したのは、原発事故の現場の声を伝えたかったためだと改めて説明しました。自民党の脇参議院幹事長は、記者会見で「山本氏の行動は出処進退に関わる重大な過ちだ。本人のコメントを聞いていると、どうも事の重大性を理解できていないようだが、どのように責任をとるのか真剣に考えてもらいたい」と述べ、みずから出処進退を判断すべきだという考えを示しました。…(引用ここまで)
山本太郎氏、議員辞職の考えはないと改めて表明 (2013年11月5日17時43分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131105-OYT1T00898.htm
厳しい表情で記者会見に臨む山本太郎参院議員(5日午後、参院議員会館で)=吉岡毅撮影
参院議院運営委員会は5日、秋の園遊会で天皇陛下に手紙を渡した山本太郎参院議員(無所属、当選1回)について、改めて岩城光英委員長らが、山本氏から今後の対応を聴取した。山本氏は、自らの行動について「天皇の政治利用には当たらない」との認識を示し、議員辞職する考えのないことを改めて表明した。これに先立ち、同日行われた議運委理事会では、山本氏に対し出処進退を含めて見解をただすべきだとの意見が出ていた。議運委は今後、改めて理事会を開き、対応を協議する。(引用ここまで)
【山本太郎手紙】辞職否定の山本議員が陳謝、釈明「陛下に心労お掛けした」「議員になって変化をもたらせない歯がゆさの行動」2013.11.5 20:33 [諸政党]
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131105/stt13110520410006-n1.htm
参院議院運営委員長室を出る山本太郎参院議員=5日午後、国会内(酒巻俊介撮影)
天皇陛下に園遊会で手紙を手渡した無所属の山本太郎参院議員は5日、議院運営委員会の岩城光英委員長と国会内で会い、自らの行為を陳謝した上で議員辞職の考えがないことを伝えた。天皇の政治利用に当たるとして議員辞職すべきだとの指摘があることを踏まえ、岩城氏が意向を聴いた。岩城氏によると、山本氏は「陛下に心労をお掛けした。猛省しなければならない」と謝罪の意向を示し「国権の最高機関の一員である自覚を深く持たなければいけないことを再認識した」と語ったという。その後、記者会見した山本氏は「(参院選で投票してくれた)67万人近くの方と約束したことがある。職を辞するわけにはいかない」と強調。「国会議員になって3カ月、変化をもたらせない歯がゆさが自分自身を動かした」と釈明した。議運委としては山本氏に議員辞職の考えがないことが明らかになったのを踏まえ、8日までに処分を含めた対応を決める方針だ。(引用ここまで)
山本議員辞職否定 自民·脇氏、自ら出処進退判断すべきとの考え - FNN
山本太郎議員 手渡し行為「猛省」も辞職はしません ― スポニチ Sponichi ...
山本太郎氏、議員辞職を否定 手紙手渡し行為は陳謝 - 47News
【沖縄タイムス】 「遊会で天皇陛下に手紙を手渡した山本太郎参院議員の ...
それでは、山本議員の責任の取り方とは、一体全体なんでしょうか。それは、「国権の最高機関の一員である自覚を深く持たなければいけないことを再認識した」とあるように、国民主権主義の軽視、憲法と天皇の政治利用の歴史に対する無知・軽視などという言葉が浴びせられるのは当然でしょう。では、どうやって責任を取るか、です。
方法は、一つには潔く辞職する。しかし、これは議員自身が否定しています。これをどのように判断するか、国民が決めることです。二つ目は、議員自身が述べているように「公約」実現に向けて全力を尽くす。第三には、この「天皇の政治利用」問題について、解明し、憲法的原則を確認する。第四には、「天皇の政治利用」については、先輩である自民党とその亜流勢力の「天皇の政治利用」を徹底して排除していく。(つづく)