今日と昨日の社説をみると、悪法は修正どころの話ではないことが判ります。NHKのすっとこどっこいぶりが浮き彫りになりますが、それにしてもマスコミは「知る権利が侵される」と言いながら、国民の運動を紹介しているでしょうか、国民の運動は国民の知る権利には属さないというのでしょうか。特にテレビが、どのように取り上げたか、です。しかし、検索した結果、ありませんでした。どうなっているのでしょうか。以下検索してみました。この点も大いに問題アリです。
朝日は、38面に写真入りの小さい記事でした。9条の会の声明、「解釈改憲反対」九条の会が声明 集団的自衛権行使巡り(10/7)は伝えていました。
九条の会、秘密保護法案を批判「9条改正にもつながる」:朝日新聞デジタル
朝日以外の新聞は共同通信のものでした。
共同通信 九条の会「秘密保護法案廃案に 「憲法が形骸化」と反対する声 2013年11月16日 18時52分 (2013年11月16日 18時55分 更新)http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20131116/Kyodo_BR_MN2013111601001978.html
【政治】ノーベル賞作家大江が呼び掛け人の護憲団体「九条の会」 秘密 ...
九条の会「秘密保護法案廃案に 「憲法が形骸化」と反対する声 2013年11月16日(最終更新 2013年11月16日 18時57分)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/culture/article/52787
それ以外のものを取り上げたブログがありましたので、掲載しておきます。ご覧ください。
「国家安全保障会議設置法案」および「特定秘密保護法案」 廃案を求める ...
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/b70712bf25966daae2c9c05cec9bfd39
さて、それでは新聞の社説について、愛国者の邪論の見解を掲載しておきます。ご覧ください。
毎日を読むと暗黒裁判になることは必至です。裁判所すら人権を擁護する期間になれないのです。しかし、「秘密が秘密のままに裁判が進むことは極めて危うい。将来に禍根を残すと危惧せざるを得ない」という程度でいいのでしょうか。第三者的中立的スタンスでしょうか。問題アリです。
東京のように、「情報統制色を帯びる法案を成立させてはならない」というスタンスをとるべきではないでしょうか。
沖縄タイムスも、「国民の「知る権利」などを侵害する重要法案を、わずかな期間で成立させようというのは、あまりにも乱暴だ…国民の懸念は膨らむばかりである。政府は世論を受け止め廃案にし、一から出直すべきだ」としています。当然でしょう。
京都にあたっては、「日本維新とみんなの党は、法案の危険な本質に立ち返り、与党との協議の場からいったん降りるべきだ。民主も、態度が煮え切らない。この程度の微修正に応じず、野党は協力して法案成立を阻止してほしい」という要望を発してNHKとは真逆の立場です。しかし、登場する政党の事例を考えてみてください。驚くべき事態といえます。
熊本日日は「与党は、日本維新の会、みんなの党との修正協議で、第三者機関設置は「付帯決議で検討」などとする見直し案を提示したが、法案の根幹に関わる問題を成立後に先送りするなど論外だ。現段階で協議に応じていない民主党なども含め、野党側は安易な妥協をするべきでない。10月末の共同通信による世論調査でも法案反対は半数を超えていた。にもかかわらず与党は、国民の理解を十分に得ないまま今国会中の成立をにらみ、今週中に衆院を通過させる構えを崩していない。拙速な審議でこのような粗雑な法案を成立させれば、禍根を残すことは必至だ」と述べるなど、NHKとは違って、厳しい指摘です。
岩手日報は、「評価項目を調べ上げようとすれば政治思想や宗教など、個人のプライバシーに深く入り込む可能性が高い。憲法が保障する思想・信条の自由を侵す恐れがある」としながら、安倍首相の本質について、「もっとも『自主憲法制定』を党是とする自民党、わけても先の衆参両院選挙の圧勝と高支持率を背景に改憲に前のめり気味の安倍晋三首相にとって、憲法に背くことは『恐れ』でも何でもないのかもしれない」とズバリ書いています。
さらに「それでも政府が成立を急ぐ理由は一つ。日本版国家安全保障会議(NSC)の設置と合わせ、米国との同盟関係強化だろう。そのためなら違憲の疑いにも目をつぶれというのは無理な相談だ」という視点をあらゆる側面から検証することが、現在の日本にあって、もっとも重要であると思います。諸悪の根源は日米軍事同盟です。これを正当化する「脅威」論と「抑止力」論の枠内で議論していると、このような悪法に目をつぶることになると確信するものです。
福井は、安倍首相の「言葉のイメージと裏腹に、強力な官邸主導で国家主義、国権強化に走る危うさを感じる国民も多いのではないか」と述べていますが、この美辞麗句的大ウソにレッドカードを突きつけるべきです。「三権分立が機能せず、憲法精神を束縛する法とは何なのか。機密保全が暴走することは歴史に学べば分かることだ」というように、情報独占・隠匿の歴史を具体的に検証することこそが、堂々巡りから脱却していく唯一の道です。
しかし、「法制の背後に同盟国・米国の強い要請がある。その米国は情報自由法や機密解除に強い権限を持つ国立公文書館が機能するなど、政府の恣意的運用に歯止めを掛けている」とあるように、ここに現代日本の、現代日本のマスコミの最大の弱点の典型があります。それは、アメリカの情報操作による違法なイラク戦争、アメリカの同盟国などに対する盗聴問題についての謝罪と教訓化と挨拶を抜きに、この「特定」「秘密」「保護」法と日本版NSCを論ずることはできないでしょう。
最後に、この問題の本質的側面というか、国家の機密作成権の承認と国民の知る権利の保障をどのように両立させるか、問いかけていることは重要です。このことについて、「国家の安全保障と国民の情報アクセス権。それを調和させた国際ガイドライン『ツワネ原則』がある。…国家の暴走を食い止める仕組みを熟議し、国民の知る権利や後世の検証をも保障する成案を得ない限り廃案にするべきではないか」と主張しています。
これも何度も強調していますが、国民の知る権利は、30年後とか、10年後などという問題ではないことを、まず確認すべきです。国民が知る権利を求めるのは、「今」、どうやって生きるかということの具体的な保障の権利なのです。「30年後」、これはスリカエなのです。
それでは、全国紙と地方紙で、社説に書かれたものを掲載しておきます。ご覧ください。
毎日 秘密保護法案を問う/刑事裁判 2013/11/18 4:00
http://mainichi.jp/opinion/news/20131118k0000m070118000c.html
◇「秘密」のまま処罰とは
何が秘密なのかも秘密、というのが特定秘密保護法案の最大の特徴である。安全保障に関する情報が行政機関の判断だけで特定秘密に指定され、秘密は国民にその内容を知られることなく、半永久的に秘密のままであり続けることができる。こうした制度設計のもとで、特定秘密を知ろうと情報入手を試みた人が罪に問われ、刑事裁判の被告になったらどうなるのか。特定秘密は法廷でも公開されず、秘密の中身が明らかにされないまま有罪とされる可能性がある。憲法が保障する刑事裁判の適正手続きや裁判の公開に反する疑いがあり、被告の人権が守られない懸念は大きい。法案によれば、刑罰に問われるのは、特定秘密を漏えいした公務員や脅迫・不正アクセスなどによって特定秘密を取得した人だけではない。未遂も処罰されるほか、漏えいや取得をめぐって共謀したり、そそのかしたり、あおったりした人は、実際に情報が漏れなくても懲役5年以下の罰則が適用される。それは記者に限らず、知る権利に基づき情報を得ようとする市民も対象になる。法案は、特定秘密を行政側が捜査・公判のために検察側に提供したり、公判が始まる前の整理手続きで裁判所に提示したりするケースは認めているが、被告・弁護側への提示は認めていない。とりわけ問題になるのは、被告がそそのかしなどに問われ、特定秘密を入手していないケースで起訴された場合だ。被告・弁護側は秘密の内容を知らないまま争うことになり、大きな不利益を被る。立証のあり方も課題だ。国会審議で政府側は、特定秘密の中身を公開の法廷で明らかにすることはできず、代わりに「外形立証」という方法で立証可能と強調している。外形立証は秘密の内容をそのまま明らかにしなくても、秘密に指定された手続きやその種類、指定の理由などを立証して「外堀」を埋める方法。それによって、単に指定されたから秘密だというだけでなく、実質的にも秘匿するに値する内容だと推認できるとするものだ。1967年に摘発された外務省職員によるスパイ事件の判決などで外形立証が認められた例はある。だが、推認のレベルで有罪にできるのかとの疑問は法学者の間にも根強い。そもそも特定秘密の範囲があいまいなうえ、行政が恣意的に指定できる余地がある仕組みだ。そうした中で、秘密が秘密のままに裁判が進むことは極めて危うい。将来に禍根を残すと危惧せざるを得ない。(引用ここまで)
中日/中京 特定秘密保護法案(1)/自由に壁が築かれる 2013/11/18 8:00
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013111802000144.html
特定秘密保護法案は「戦争をしない国」から「戦争ができる国」に進める歯車の役目さえ果たす。日本版NSC(国家安全保障会議)を設ける法案とセットで提案されているうえ、その先には国家安全保障基本法案が見えているからだ。自民党の法案概要では、憲法九条を改正しなくとも、集団的自衛権の行使ができる魔法のような法案だ。同党幹部は米中央情報局(CIA)のような諜報機関を新設することも公言している。この文脈が示すのは、軍事や治安分野への傾斜度を格段に高めることだ。秘密保護法案をめぐる国会の議論は、この大きな視野が欠けている。政府は米国から情報をもらうために秘密保護法が必要だと説明する。だが、他国の軍隊や治安機関から情報を得るには、相互主義が基本である。「ギブ・アンド・テーク」が鉄則とされる。「秘密保護」という表面の言葉に惑わされず、裏面の「ギブ」にも注意を払うべきだ。米国に提供されうる重要情報である。現状は不明だが、その収集活動にあたるのは防衛・公安当局などだ。対象は中国や北朝鮮、イスラム系など在留外国人の動向にとどまらないはずだ。米軍基地の反対運動や反原発運動など、幅広い市民活動に対しても監視が強まるだろう。これを正当化し、本格化させるのが裏面の目的といえよう。そもそも、法案の前提にされる「日本はスパイ天国だ」という指摘は本当だろうか。安倍晋三首相が「過去十五年間で情報漏えい事件を五件把握している」と答弁したのが、正直な現状ではないか。現行法でも十分に対処できるうえ、立法事実も存在しない。もし、この法案が成立すれば、蛇口を閉じるように、行政機関からの情報量が大幅に減る心配がある。何が「特定秘密」かも明らかでないため、公務員側はジャーナリストの取材にたじろぐ。一般情報さえ口にしにくい空気が役所内部に醸成されよう。個人情報保護法ができたとき、さまざまな名簿が忽然と消えた。それ以上の萎縮効果が広がるだろう。民主主義社会は自由な情報に基づいて築かれている。厳罰法制は、知る権利や報道の自由などに鎖をつけるに等しい。行政機関の情報漏えいならば、内部の情報保全を徹底すれば済む。社会全体に投網をかける必要はない。情報統制色を帯びる法案を成立させてはならない。 (論説委員・桐山桂一)(引用ここまで)
沖縄タイムス 秘密保護法案審議/迷走答弁が示す危うさ 2013/11/18 8:08
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2013-11-18_56867/
国会審議を通して見えてきたのは、やはりこの法案の持つ危うさである。機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案を審議している衆院国家安全保障特別委員会で、担当閣僚の答弁が揺れ、閣僚間の意見が食い違うなど、法案成立を急ぐ政権の拙速さが目立っている。法案を担当する森雅子内閣府特命担当相は、特別委の審議で「法案成立後も改善を尽くす努力と説明を果たしたい」と、成立後の見直しに言及した。これでは自ら法案に不備があることを認めたようなものだ。当初の制度設計に問題点があったことを厳しく問われて当然だ。「特定秘密」指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置には「謙虚に受け止め、検討したい」と前向きな考えを示していたが、2日後には「具体的にどうするかは、今後の課題だ」と発言を後退させた。「特定秘密」漏えいがあった場合、報道機関への家宅捜索の可能性を問われ、森氏は「オフィスにガサ入れ(家宅捜索)することはない」と明言していた。しかし、谷垣禎一法相らは「具体的な事例に即し、検察で判断すべきだ」と家宅捜索の可能性に含みを持たせた。これらの認識の違いは、行政による恣意的運用の余地を大きく含む法案の危うさが、早くも露呈したものと言わざるを得ない。国民の「知る権利」などを侵害する重要法案を、わずかな期間で成立させようというのは、あまりにも乱暴だ。
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特定秘密保護法案について、本紙が県内41市町村長にアンケートを行ったところ、約4割(17人)が法案そのものに「反対」の意向で、約7割(31人)が議論不足などを理由に、今国会での成立には反対だった。また、賛成・反対のどちらでもなく「現時点で判断できない」とした回答が最も多く20人に上るが、法案の問題点を指摘した意見が多い。一方、県関係の衆参国会議員10人のうち、自民党の5人全員が「賛成」と答えている。同法案では、特定秘密を漏らした国会議員も罰則の対象となる。成立すると国政調査権や国会議員の活動にも影響が及ぶ。「秘密会」などを通して特定秘密に接する国会議員が、国会の外で秘密を漏えいした場合、最高5年の懲役が科せられる。賛成を表明した議員は、これらの認識が薄いのではないか。
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自民、公明両党は野党と法案の修正協議を行い、今週中に衆院を通過させる構えだ。安倍晋三首相は16日、第三者機関の設置について「第三者的な仕組みによって適切な運用をすることも重要な課題だ」と述べた。しかし、それで指定の妥当性までチェックできるのか不透明だ。共同通信が10月下旬に実施した世論調査では反対が50・6%と過半数を占め、慎重審議を求める意見は82・7%に上った。国民の懸念は膨らむばかりである。政府は世論を受け止め廃案にし、一から出直すべきだ。(引用ここまで)
京都 秘密法修正協議/安易な妥協許されない 2013/11/18 10:05
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20131118_3.html
自民、公明両党は週内に特定秘密保護法案を衆院通過させようと、日本維新の会やみんなの党との修正協議を急いでいる。協議の焦点は、秘密指定の期間に「30年以内」の上限を定めるかどうかと、秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関設置の是非だ。与党の示した見直し案は、枝葉の文言の微修正にとどまっており、骨格部分には何ら手を付けていない。半永久的に秘密にされるとの批判に対し、自公は「原則30年」の表現で、妥協を求めている。しかし、「原則」というだけでは、例外扱いで政府が伏せて置きたい情報をいつまでも闇の中に隠し通せる。ずっと秘密が指定解除されない制度的欠陥は、温存されたままだ。また第三者機関の設置についても、付帯決議で「今後の検討」を明記する、としただけだ。具体性はなく、口約束で野党を懐柔しようとしているかのように見える。法成立後に政府が運用で決めることの多さに、民主党から「肝心な中身はこれから、では有権者に説明ができない」と疑問の声が出ているが、当然だろう。安易な妥協は許されない。国の情報は国民の財産だ。政府の都合で情報を隠したり、知る権利が制約されたりしないよう、きちんと明文化された法制度を構築するのが先だ。外部の識者らでつくる委員会を設けても、それだけで透明性や独立性、国政へのチェック機能が担保されたことにはならない。過去の原子力政策をみれば明らかだ。法案は、国会による政府へのチェック機能を弱め、国会議員の首を自ら締めるようなものだ。特定秘密漏えいが刑事事件になると、裁判所が「特定秘密」の内容にアクセスできず、公正な判断ができなくなる懸念もある。国家による情報統制への道を開き、国会や司法の機能さえゆがめかねない重要法案は、もっと時間をかけ、慎重に議論するべきだ。衆院特別委員会での論戦は、問題点を掘り下げていない。これから数日で採決に臨むのはあまりに粗っぽく、到底看過できない。数の上で巨大な与党が修正協議に応じているのは、反対や慎重な声が高まる世論から、強行採決だと批判されるのをかわすための形づくりにしか見えない。日本維新とみんなの党は、法案の危険な本質に立ち返り、与党との協議の場からいったん降りるべきだ。民主も、態度が煮え切らない。この程度の微修正に応じず、野党は協力して法案成立を阻止してほしい。(引用ここまで)
熊本日日 特定秘密保護法案/審議で懸念さらに強まった 2013/11/18 12:06
http://kumanichi.com/syasetsu/kiji/20131118001.shtml
機密を漏らした公務員らへの罰則強化などを盛り込んだ特定秘密保護法案の審議が、衆院国家安全保障特別委員会で続いている。自民、公明両党は今国会中の成立を目指しているが、これまでの質疑で同法案への懸念は払拭されるどころか、ますます強まるばかりだ。審議では政府側の答弁の曖昧さ、特に同法案を所管する森雅子内閣府特命担当相の発言のぶれが目立つ。例えば「特定秘密」指定の妥当性を監視する第三者機関の設置について、森氏は12日の答弁で「国民のための情報なので、なるべく明らかにしていくことを検討するのは重要」「設けてはどうかとの指摘は謙虚に受け止め検討したい」と前向きの姿勢を示していた。ところが、14日の審議では「具体的にどうするかは今後の課題だ」と述べ後退させた。また、「特定秘密」が漏れた場合の報道機関への捜査について、森氏は8日の答弁で「報道機関のオフィスにガサ入れ(家宅捜索)することはない」と明確に否定した。しかし、11日には谷垣禎一法相と古屋圭司国家公安委員長が「個別事案に則して判断する必要がある」などと答弁して家宅捜索の可能性に含みを残し、政府見解の相違を露呈。結局、森氏は14日に「個別具体的な事案について細かく想定して言及するのは避けたい」と軌道修正した。さらに森氏は14日の答弁で、「法案成立後も改善を尽くす努力と説明を果たしたい」と述べている。これは、現段階での法案内容とその説明の不備を自ら認めたようなものではないか。第三者機関設置について安倍晋三首相は16日、「第三者的仕組みによって適切な運用を確保する仕組みを作ることも重要な課題だ」と記者団に語った。だが、7日の衆院本会議では首相自身が「(特定秘密の)指定を行政機関以外の者が行うのは専門的、技術的判断を要することから適当でない」と、設置には否定的見解を示していた。現法案には「特定秘密」の指定基準策定について、有識者会議の意見を聴取する規定が盛り込まれているが、あくまで関与は基準作りだけだ。鈴木良之内閣審議官は有識者会議に関し11日、「秘密の指定、更新、解除の状況を報告し、運用基準見直しの参考にしたい」と答弁したが、これも間接的関与を示したにすぎず、第三者のチェックは不十分なままだ。これでは「特定秘密」の範囲が、行政機関の恣意[しい]的な運用によって際限なく広がりかねないという懸念はとても拭えない。与党は、日本維新の会、みんなの党との修正協議で、第三者機関設置は「付帯決議で検討」などとする見直し案を提示したが、法案の根幹に関わる問題を成立後に先送りするなど論外だ。現段階で協議に応じていない民主党なども含め、野党側は安易な妥協をするべきでない。10月末の共同通信による世論調査でも法案反対は半数を超えていた。にもかかわらず与党は、国民の理解を十分に得ないまま今国会中の成立をにらみ、今週中に衆院を通過させる構えを崩していない。拙速な審議でこのような粗雑な法案を成立させれば、禍根を残すことは必至だ。(引用ここまで)
岩手日報 <秘密法案>/適性評価制度 違憲の疑い見逃すのか 2013/11/17 10:05
http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2013/m11/r1117.htm
特定秘密保護法案は第4章「取扱者の制限」で「特定秘密の取扱業務は、閣僚らが実施した適性評価により漏らす恐れがないと認められた者に限る」と規定。首相や閣僚、内閣官房副長官、副大臣、大臣政務官、その他「政令で定める者」は適性評価の対象外とされている。
適性評価で調べるのは▽スパイ活動などの「特定有害活動」やテロ活動との関係▽犯罪歴や懲戒歴▽情報取り扱いの経歴▽薬物乱用や影響▽精神疾患歴▽飲酒の程度▽経済状態−の7項目。事実婚を含む配偶者と子、父母、兄弟姉妹、配偶者の父母や同居人らの氏名、年齢、国籍や住所も調べられる。「評価」を受けるのは、国家公務員はもとより一部の地方公務員、さらに業務委託を受けた業者や従業員、研究者ら民間人も含まれる。対象者が関わる個人や団体、組織、あるいは渡航歴なども確認されるだろう。近親者にも累が及ぶかもしれない。酒の飲み方や借金の有無などは本来、国にとやかく言われる筋合いのものではない。しかし評価項目を調べ上げようとすれば政治思想や宗教など、個人のプライバシーに深く入り込む可能性が高い。憲法が保障する思想・信条の自由を侵す恐れがある。
もっとも「自主憲法制定」を党是とする自民党、わけても先の衆参両院選挙の圧勝と高支持率を背景に改憲に前のめり気味の安倍晋三首相にとって、憲法に背くことは「恐れ」でも何でもないのかもしれない。法案の目指すところは、「私」を殺して憲法ならぬ政府に忠誠を誓う国民を選別するに等しい。かねて問題視されている秘密の範囲のあいまいさや適性評価の尺度の幅広さ、対象者に関わる人や団体などの多さを勘案すれば、影響が地方にもストレートに及ぶことは容易に想像できる。法案は第7条で、警察庁長官は必要に応じ「都道府県警察に当該特定秘密を提供することができる」とし、第5条3項には、各警察本部長は長官の指示に従い「必要な措置を講じ−」とある。特定秘密の保全が警察の新たな任務になれば、その名の下に個人情報の収集は拡大するだろう。市民団体が情報公開請求してネットで公表している防衛省の資料を見ると、過去の秘密漏えい事件の原因は文書管理の不徹底や保全機能の未整備など。いずれも適性評価制度が想定する調査項目とは無関係なことが分かる。それでも政府が成立を急ぐ理由は一つ。日本版国家安全保障会議(NSC)の設置と合わせ、米国との同盟関係強化だろう。そのためなら違憲の疑いにも目をつぶれというのは無理な相談だ。(引用ここまで)
福井 国家機密と知る権利/国民主権守る仕組みつくれ 2013/11/17 8:05
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/editorial/47016.html
一度失敗した人が再起すると、覚悟の程が違う。理念と使命感があればなおさらだ。安倍晋三首相が7月の参院選で演説した言葉が全てを物語る。「自民党は結果を出した。私たちが進んでいる道は間違っていない。この道しかないんです」 デフレ脱却と経済再生に挑んだ成果を強調。その勢いで「この道」を疾駆する。首相は「積極的平和主義」を政権理念に掲げた。言葉のイメージと裏腹に、強力な官邸主導で国家主義、国権強化に走る危うさを感じる国民も多いのではないか。
■なお強まる国家管理■
安倍首相が目指すのは第1次内閣で掲げた「戦後レジーム(体制)からの脱却」、自前の強い国づくりである。領土をめぐる問題などで緊張高まる東アジア情勢を利用。「この道しかない」ことを国民に強く印象づけて機運を醸成し、憲法改正や国家安全保障基本法制定、集団的自衛権の行使容認、さらに国家安全保障会議(日本版NSC)創設の流れをつくっている。それとセットなのが特定秘密保護法案だ。首相は「特定秘密を保護することがわが国や国民の安全確保のために必要だ」と強調する。だが政府公募のパブリックコメントでは8割が反対。世論調査でも過半が反対し8割が慎重審議を求める。なぜ現行法でダメなのかも説得力がない。特定秘密保護法案は、機密を漏らした公務員らへの罰則強化(最高10年の懲役)を盛り込み、国権による情報支配が色濃い。防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で特定秘密を指定。自民党は「今よりも秘密の範囲が広がることはない」とする。しかし、別表で列挙した事項23項目の36カ所に「その他の重要な情報」とのただし書きがあり、解釈次第でどうにでもなる。
■機能しない三権分立■
言うまでもなく、憲法は思想、信教、表現の自由を定めており、基本的人権である。自民党は、同法案でも国民の「知る権利」や「報道・取材の自由」への配慮が明記され「損なわれる心配はない」とする。首相も「恣意的な指定が行われることのないよう重層的な仕組みを設ける」と述べた。とはいえ「秘密主義」は動かしようがない。罰則強化で公務員らを締め付ければ萎縮し、メディアも取材が困難になれば、知る権利が後退するだろう。特定秘密の有効期限は5年だが、事実上30年を超える延長も可能だ。安全保障に関わる機密と保護は当然あってしかるべきだが、情報の公開は民主主義の基本だ。法案ではメディアや市民、司法、立法府の外部チェックも排除しており、官僚主導による情報コントロールといえる。指定、解除、公開、検証を明確にルール化すべきで、まして三権分立が機能せず、憲法精神を束縛する法とは何なのか。機密保全が暴走することは歴史に学べば分かることだ。
■情報公開を徹底せよ■
法制の背後に同盟国・米国の強い要請がある。その米国は情報自由法や機密解除に強い権限を持つ国立公文書館が機能するなど、政府の恣意的運用に歯止めを掛けている。民主党の情報公開法改正案は、国が非公開とした公文書を裁判所が検証し妥当かを調べる「インカメラ審理」の導入を盛り込むが、国側は裁判所提出を拒否できるのだ。審議で谷垣禎一法相は公務員による漏えいがあった場合、捜査当局が報道機関を家宅捜索する可能性に含みを残した。担当の森雅子内閣府特命担当相は明確に否定していたが後日修正。秘密指定の妥当性を監視する第三者機関設置についても発言が二転三転、首相は柔軟姿勢をちらつかせ野党抱き込みに必死だ。審議が進むほど政府見解の食い違いや未熟な答弁、制度設計の不備が露呈する。国家の安全保障と国民の情報アクセス権。それを調和させた国際ガイドライン「ツワネ原則」がある。専門家は法案が秘密対象の制限や保持期間、解除、処罰など多くの点で違反していると指摘する。国家の暴走を食い止める仕組みを熟議し、国民の知る権利や後世の検証をも保障する成案を得ない限り廃案にするべきではないか。(北島 三男)(引用ここまで)