朝日の社説の検証の次は、他の全国紙の検証です。読売・産経の主張をみると、朝日・毎日の主張が如何にまやかしであるか、判ります。この問題の「分かれ目」は、憲法違反の日本版NSCと特定秘密保護法を認めるか、否か、しかないのです。議事録作成とか、情報公開とかというのは、法案を通すためのマヤカシ、スリカエ、方便、トリックです。こんなデタラメは許されるものではありません。
それは、以下の戦後の歴史=ものさしを見れば明瞭です。これらのものさしを踏まえず、日本版NSCと特定秘密保護法のみを論じているのです。しかも、議事録の作成と公開を、法案の認知、成立の条件としているのですから、現状追随になることは明らかです。
これでは戦前の軍部が武力衝突を既成事実化して、戦争を拡大していった過ちから何も学んでいないことと同じです。これでは同じ過ちを繰り返すことになります。これは戦後に繰り返してきたことでもあります。
1.サンフランシスコ条約締結にあたって片面講和か、全面講和かどうかを曖昧にしたまま「片面」からのみを優先して講和し、「独立」「主権回復」と標榜しながら、秘密裏に、国民不在で日米安保条約を吉田首相の一存で結んだこと。
2.その日米安保条約にもとづく米軍基地が憲法違反かどうかを争った伊達判決に対してアメリカが合憲化するために最高裁長官に工作をして合法化するなど、国家主権を侵していたことに然り。
2.沖縄返還に伴う密約と核兵器の密約にして、非核三原則の空文化にして然り。
3.日米軍事同盟の「極東条項」「事前協議」にして、「周辺事態法」から集団的自衛権行使論にして然り。
4.憲法違反の自衛隊の合憲性を正当化する「専守防衛」論にして、「国防軍」にして然り。
5.イラク戦争を正当化する大量破壊兵器情報がウソであったにもかかわらず検証もしない政府とマスコミにして然り。
6.武器輸出三原則の空文化にして然り。
憲法九条と人権規定あって無きが如し!と言えます。しかし、同時に、憲法九条の活かし方も発展してきました。90年代になると国際紛争を解決する手段として国家が起こす戦争は放棄する、威嚇=脅しも、武力行使も放棄する。というのであれば、国際紛争はどうやって解決するのか、それは非軍事的手段で解決するという視点です。
同時に、日米軍事同盟の廃棄とセットで考えるのは、非軍事の対等平等の日米平和友好条約の締結です。憲法九条を条約化した戦争放棄条約の締結です。非核三原則を条約した非核地帯条約の締結です。これは「脅威」に対して、「脅威」をぶつける「抑止力」論ではありません。そもそも安倍政権の主張する「抑止力」論こそ、憲法九条が否定している「武力による威嚇」そのものです。「核抑止力」論です。
以下の読売の言葉が、如何に無味乾燥で非合理的か、検証してみます。以下ご覧ください。大爆笑もんです。
読売は、以下のように法案の必要性を書いています。しかし、このことは、角度を変えれば、中国や北朝鮮も同じです。
北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍備増強など、日本を取り巻く情勢は厳しさを増している。 日本の平和と安全を確保するため、安倍政権は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)の創設を目指している。
愛国者の邪論風に、読売の言葉を変えてみました。ご覧ください。
アメリカの核の傘の下にある日本の集団的自衛権行使論や日本版NSC法設置法・特定秘密保護法など、憲法改正に向けた動きや軍備増強などの、中国(或いは共和国)を取り巻く情勢は厳しさを増している。中国(或いは共和国)の平和と安全を確保するため、中国共産党(朝鮮労働党)政権は、外交・安全保障政策の充実を目指すために、全国民あげて奮闘努力しなければならないことを国民に訴える。
どうでしょうか。「脅威」論と「抑止力」論が、如何に間違っているか、判るのではないでしょうか。
東京の社説は大いに矛盾しています。
1.「外交・安全保障に関する首相官邸の司令塔機能を強化する」日本版NSC(国家安全保障会議)の「モデルは米英両国の組織だ」と言いますが、そのような目的を持った法案を出してきたそもそもの理由は何か、東京はどう思っているのでしょうか。
2.また米英が、誤った情報を流して「イラク戦争」断行し、正当化し、多くの無辜の国民を殺害したのです。そもそも「イラク戦争をめぐる日本政府の政策判断が正しかったのか」というのではありません。間違っていたのです。その間違いについて、今もって、その政策決定の際の情報を公開して総括も検証もしていないのです。このことを、東京はどう考えるのでしょうか。
3.「中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発など、アジア・太平洋地域の緊張は増している。それが軍事的な衝突に発展しないよう、情報を集約、分析し、外交・安保政策の決定に生かすのは政府の役割である」というのであれば、その中身をこそ、追及すべきです。
4.「万が一、偶発的な衝突があった場合」が起こらないように、「持てる情報を最大限生かし、外交力を駆使して危機を拡大させない」ような政策をこそ追及すべきです。その「冷静さ」がなくなっているのは現在の日本です。何故でしょうか。中国や北朝鮮の側にのみ一方的に問題があるからでしょうか。日本から見れば、そのような論立ては、ある意味当然かもしれません。しかし、外交は「鬼畜米英」的発想からでは、展望が見えなくなるのは、過去の経験が示すところです。今日本の立場は、「鬼畜中朝」思想が席巻しています。ここに最大の危機があります。
5.そもそも、「NSCを置くために、国民の『知る権利』や基本的人権を侵す危険性がぬぐえない秘密保護法を成立させようというのは、本末転倒ではないのか。NSC法と秘密保護法が成立すれば、官邸機能が強化される一方で、外交・安保にかかわる事項が機密のベールに隠されてしまう」というのであれば、法案は認められないはずです。
6.しかし、東京は、「秘密保護法案はNSC法案と切り離し、成立を断念したらどうか。秘密保護法と一体ならNSCも見送った方が賢明だ」と、盗聴や謀略、無辜の国民殺害の権化となった「米英両国の組織」をモデルとした日本版NSCを免罪し、曖昧に、正当化しているのです。
7.これは、「NSCにより、省庁が縄張り意識を捨てて情報を寄せ合い、総合的な分析が可能になることで、首相の賢明な決断に資するなら、設置も一手かもしれない」論が根拠となっていますが、この思想では、現状の官僚組織の「縄張り意識」を捨てる、ということを大義名分にすれば、全ての政策決定と運営を一箇所に集中しなければなりません。こうした思想と論理が許されるとすれば、これではまさに、「やったもんが勝ち」の典型となることは明らかです。問題は、官僚組織の民主的運営を具体化するかどうかです。問題をスリカエてはいけません。
8.「われわれは、誤った情報で攻撃に踏み切った米国を支持し、自衛隊を『戦地』派遣したイラク戦争の過ちを繰り返してはならない」というのであれば、いかなるものでも、認めることはできないでしょう。何故か、この二つの法案のめざすところは、集団的自衛権の行使論の際の情報隠匿を前提としているからです。集団的自衛権行使論が、憲法改悪を前提としていることは、自民党自身が自衛隊合憲論の根拠にしてきた専守防衛論のなし崩しとスリカエ論であることも明らかだからです。
9.「秘密保護法で、ますます闇の中だ。この際、秘密保護法案はNSC法案と切り離し、成立を断念したらどうか。秘密保護法と一体ならNSCも見送った方が賢明だ。禍根を残してはならない」とするのは、安倍政権のNSC美化論・免罪論です。憲法平和主義を活かすためには、禍根を残さないためには、廃案を主張すべきです。
毎日についても同様です。
1.「厳しさを増す安全保障環境を踏まえ」という、枕詞によって思考停止に陥っているのです。読売や産経と同じです。ここに日本のマスコミが、アメリカ脳、安倍政権脳に侵されていることが判ります。それは日米軍事同盟容認論、深化論に与しているからです。
2.「NSCは米国などから提供された機密情報を扱うため、特定秘密保護法案を一体で成立させる必要性」などと解説していますが、アメリカの盗聴は、日本にも及んでいましたが、日本政府は抗議すらしていません。マスコミは、このような日本政府に抗議すらしていません。まさにアメリカ脳に侵されている実態が浮き彫りになったと言えます。
3.「今回の法案は、問題点が少なくない」のであれば、廃案を主張すべきです。しかし、毎日は、問題の多い法案については、「早急に検討し、きちんと法案に明記し、より多くの国民の支持が得られるようにすべきだ」というスタンスです。「より多くの」というゴマカシはトンデモナイことです。民主主義は少数意見の尊重が原則です。少数者を排除する思想です。
4.「NSCはただ組織を作ればいいのではない。国民の理解を得ながら、効果的に運用する制度設計が肝心だ。抜本的な見直しを求めたい」という「抜本的見直し」をいうのであれば、廃案しかないでしょう。そもそも国民の前で「自由闊達な議論」ができないなどという思想そのものは、「議事録作成」以前の問題で、憲法の国民主権の侵害です。
5.「省庁の縦割りを排して一元的に外交・安全保障政策を収集し、機動的に対応しようという趣旨は理解できる」のであれば、「官邸機能の強化」論に反対はできません。また「安全保障に機密があることは理解できる」のであれば、日本版NSC設置や「特定」「秘密」「保護」法そのものに反対はしません。その行き着く先は「支障があるものは、時間をおいて公表すればいい」という程度の問題になるのです。これでは、あの違法なイラク戦争で殺された無辜の国民に対する哀悼も反省も教訓も出てこないのは明らかです。恥ずべきことです。知的人間的退廃です。
以上。朝日と読売、東京の社説を踏まえると、全国紙の社説が如何に憲法九条の平和主義、国民主権と人権尊重主義の遵守擁護の義務違反であることが判ります。ここに現代日本の最悪最低の実態が浮き彫りになったと思います。この指摘が間違っているか、正当な評価であったか、5年を待たず証明されることでしょう。そのためにも、全国民的運動が必要ではないかと思う今日この頃です。
以下、社説を全文掲載しておきます。産経・読売・毎日・東京の順番です。
産經 NSC法案通過/超党派にこそ意義がある 2013/11/8 6:00
http://sankei.jp.msn.com/column/topicslist/../../politics/news/131108/plc13110803080001-n1.htm
「国家安全保障会議(日本版NSC)」創設関連法案が7日、衆院を通過し、今国会成立へ前進した。NSCの創設により、戦後の日本が外交・安全保障政策の司令塔を初めて持つ意義は極めて大きい。とくに、自民、公明、民主など与野党5党が法案に賛成した点に注目したい。議席数は衆院の9割を超える。外交・安保政策には、政権が交代しても継続性が求められる。党派を超え、国の針路を定める仕組みを作る必要性について一致がみられたことは評価できる。参院における審議は、内外の情報を的確に集められるかどうかなど、NSCが十分な機能を発揮するにはどのような態勢が必要かという観点から、さらに論議を深めるべきだ。衆院採決では、民主党が求めていたNSCの「大臣会合」の議事録作成をめぐって、「速やかに検討し、必要な措置を講ずる」との付帯決議が可決された。大臣会合では、特定秘密に該当する機密が取り上げられる。有事の際の具体的な対処方法など、外部に出ては大きな問題となる議論が交わされることもあろう。そのため、政府内には議事録作成に慎重な意見がある。しかし、記録を残すことによって、首相や閣僚がより責任ある決定に努める効果も期待できる。後世の首相や政府関係者が教訓を得るためや、国民が歴史の真相を知る上でも役立つ。国家の貴重な財産という意識を持ってほしい。付帯決議は、議事録が「現実の安全保障を損なわない形で」あることを条件としている。これを踏まえ、政府は公開の時期や範囲を工夫して対応してほしい。首相は衆院国家安全保障特別委員会で、「脅威に外交、軍事的にどう対応するかを含め、常にシミュレーション(模擬演習)して政策的な選択肢を用意する」と、NSCの役割を説いた。NSCには制服自衛官が多く加わる。その軍事的知見が生かされることが重要だ。一日も早く始動させなければならない。衆院で審議入りした特定秘密保護法案は、米国などから重要な機密情報の提供を受ける大前提ともいえる。同時に知る権利、報道の自由にも配慮している。充実した情報があってこそ、NSCは機能すると強調しておきたい。(引用ここまで)
読売 秘密保護法案/後世の検証が可能な仕組みに 2013/11/8 2:00
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20131107-OYT1T01437.htm
◆国民の懸念払拭へ審議を尽くせ◆
国の存亡にかかわる安全保障上の機密は、守らなければならない。国民の「知る権利」に配慮しつつ、情報保全法制を整備することが肝要だ。 特定秘密保護法案の国会審議が7日から始まった。 防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野で特に秘匿性の高い情報を、「特定秘密」に指定し、漏えいした公務員らの罰則を強化する内容である。
◆安保戦略に欠かせない◆
法案の狙いは、国の安全保障に関する重要情報が簡単に漏えいしない仕組みを構築することだ。 北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍備増強など、日本を取り巻く情勢は厳しさを増している。 日本の平和と安全を確保するため、安倍政権は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)の創設を目指している。設置法案は7日、衆院を通過した。日本版NSCを機能させるには同盟国や友好国と重要情報を共有することが欠かせない。漏えいの恐れがある国に、機密は提供されにくい。「特定秘密保護法」は、米国などとの信頼関係を強める上で大きな意義がある。法案によると、秘密の指定や解除は、防衛相や外相など「行政機関の長」が行う。国家戦略や国益を踏まえた総合判断が求められる以上、妥当な手続きと言える。ただ、省庁が自らに都合が悪いというだけで、情報を秘密指定する事態は避けねばならない。法案は、政府が有識者の意見を聞き、指定や解除の統一基準を定めるとしている。指定の範囲を必要以上に広げない基準とすべきだ。
◆恣意的運用の防止図れ◆
秘密指定が永久に続き、公開されないのではとの危惧もある。法案は、秘密指定の期間を最長5年とし、必要性がなくなれば、解除すると規定している。延長も可能で、内閣が承認すれば、30年を超えることもできる。重要なのは、一定期間を過ぎれば、原則公開し、後世の歴史的検証を受けるという視点である。将来公開されるとなれば、行政機関による恣意(しい)的な秘密指定を相当程度、排除できるのではないか。無論、将来も開示が困難な秘密もあろう。政府は、30年を超えて秘密指定を延長する場合の要件を検討している。自衛隊で使用する暗号や武器の性能などだ。他国からの提供情報には、細心の注意を払う必要もある。文書の保存・管理も課題だ。公文書管理法は、すべての行政文書に保存期間を定めるよう求めている。その上で、歴史的価値のある文書は国立公文書館へ移管し、廃棄する場合には首相の同意を得ることも義務づけている。 だが、現在、自衛隊法に基づく防衛秘密は公文書管理法の適用除外とされている。2011年までの5年間に、保存期間の過ぎた防衛秘密の文書約3万件が防衛省幹部の判断で廃棄された。特定秘密保護法案が成立すると、防衛秘密は特定秘密に統合される。小野寺防衛相が法施行まで、防衛秘密の文書を廃棄しないよう指示したのは適切である。特定秘密も、公文書管理法の下で厳格に管理すべきだ。 国民に対し、説明責任を果たすのは、民主主義国家における政府の当然の責務である。法案が国民の知る権利を制約する懸念は、7日の衆院本会議で与党議員からも指摘された。
◆「知る権利」への配慮を◆
自民、公明両党の修正協議の結果、取材・報道の自由への配慮が法案に明記された。報道関係者の取材行為についても、「違法または著しく不当でない限り、正当な業務とする」と規定され、原則、罪に問われないとされた。しかし、秘密を漏えいした公務員らは処罰対象となる。罰則も現行の国家公務員法の懲役1年以下、自衛隊法の懲役5年以下より格段に重い懲役10年以下だ。 公務員が萎縮して取材に応じず、報道機関が国民に必要な情報を伝えられない恐れがある。こうした事態を防げるのか、与野党は議論を深めてもらいたい。国会がどう特定秘密に関与するかという論点も放置できない。法案は、秘密会の開催を条件にして、国会の委員会などに秘密を提供できるとしている。ただ、提供するかどうかの判断は、行政機関の長に委ねられている。国会議員が安全保障上の重要情報を知らずに、日本の針路を決めていいものか。行政に対する立法府の監視機能が働かない可能性もある。国会としても、秘密を共有する仕組みを検討すべきだ。(引用ここまで)
毎日 日本版NSC/議事録作成は不可欠だ 2013/11/6 4:00
http://mainichi.jp/opinion/news/20131106k0000m070146000c.html
政府の外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)を設置するための法案が、衆院を通過する見通しになった。関係省庁のNSCへの情報提供義務を明記するなど、組織の骨格に関わらない部分で、政府・与党が民主党の修正案を一部受け入れた。会議の議事録作成の義務づけについては、法案の付帯決議に盛り込むことで折り合った。議事録の作成は不可欠だ。早急に検討し、きちんと法案に明記し、より多くの国民の支持が得られるようにすべきだ。
日本版NSCは現在の安全保障会議を改組し、首相官邸主導で外交・安全保障政策を企画、立案することを目指す。中核となるのは、首相、官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」だ。事務局として関係省庁の出身者ら約60人でつくる国家安全保障局を内閣官房に新設する。厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、省庁の縦割りを排して一元的に外交・安全保障政策を収集し、機動的に対応しようという趣旨は理解できる。しかし今回の法案は、問題点が少なくない。まずNSCは米国などから提供された機密情報を扱うため、特定秘密保護法案を一体で成立させる必要性があると政府は主張する。特定秘密保護法案は、安全保障で特に重要な情報を特定秘密に指定し、情報漏えいに厳罰を科すものだ。この法案が成立すれば、特定秘密に関わるとの理由でNSCの政策決定まで明らかにされない可能性が出てくる。情報漏えいへの対応は現行法の活用で可能だ。NSC法案は、特定秘密保護法案と切り離すべきだ。またNSC法案は、政府の政策決定が適切だったか否かを、検証する仕組みが担保されていない。会議の議事録作成が義務化されていないからだ。付帯決議では心もとない。安全保障に機密があることは理解できる。支障があるものは、時間をおいて公表すればいい。しかし議事録が作成されなければ公表もできず、検証しようがない。日銀の金融政策決定会合は、約1カ月後に議事要旨、10年後に議事録を公開している。参考にすべきだ。安倍晋三首相は、閣議の議事録作成を義務づける公文書管理法改正に前向きな考えを示している。一方、菅義偉官房長官は審議の中で、現在の安全保障会議が「自由闊達な議論」などのために議事録を作成していないとして、NSCでも「議事録は作らない」と話していた。矛盾していないか。NSCはただ組織を作ればいいのではない。国民の理解を得ながら、効果的に運用する制度設計が肝心だ。抜本的な見直しを求めたい。(引用ここまで)
中日/東京 日本版NSC/秘密保護法を切り離せ 2013/10/31 8:00
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013103102000161.html
日本版NSC(国家安全保障会議)を設ける法案の審議が衆院で始まった。外交・安全保障に関する首相官邸の司令塔機能を強化するというが、特定秘密保護法案と一体である限り、認められない。内閣には現在、国防上の重要事項などを審議するため、首相を議長、外相、防衛相、官房長官らを議員とする「安全保障会議」が置かれている。しかし、審議はするものの、決定はあくまで閣議に委ねられており、形骸化も指摘されてきた。省庁の縦割りで情報が円滑に伝わらないなどの弊害もあった。NSCはこうした問題を解消するため、安保会議を改組し、機能を強化しようというものだ。外交・安全保障について協議するため、首相、外相、防衛相、官房長官の四者会議を常設。事務局として内閣官房に「国家安全保障局」を新設し、外務、防衛、警察などの省庁から要員を集めるという。モデルは米英両国の組織だ。中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発など、アジア・太平洋地域の緊張は増している。それが軍事的な衝突に発展しないよう、情報を集約、分析し、外交・安保政策の決定に生かすのは政府の役割である。万が一、偶発的な衝突があった場合でも、持てる情報を最大限生かし、外交力を駆使して危機を拡大させない冷静さが必要になる。NSCにより、省庁が縄張り意識を捨てて情報を寄せ合い、総合的な分析が可能になることで、首相の賢明な決断に資するなら、設置も一手かもしれない。しかし、NSCを置くために、国民の「知る権利」や基本的人権を侵す危険性がぬぐえない秘密保護法を成立させようというのは、本末転倒ではないのか。 NSC法と秘密保護法が成立すれば、官邸機能が強化される一方で、外交・安保にかかわる事項が機密のベールに隠されてしまう。 われわれは、誤った情報で攻撃に踏み切った米国を支持し、自衛隊を「戦地」派遣したイラク戦争の過ちを繰り返してはならない。イラク戦争をめぐる日本政府の政策判断が正しかったのか、政府や国会は秘密保護法がなくても十分な検証をしようとしないのに秘密保護法で、ますます闇の中だ。 この際、秘密保護法案はNSC法案と切り離し、成立を断念したらどうか。秘密保護法と一体ならNSCも見送った方が賢明だ。禍根を残してはならない。(引用ここまで)